咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました。今年最後の更新です……間に合わないかと思った(´ω`)

fgoは福袋発表されましたね、今回は限定クラス別ガチャ……年末年始の福袋にはいい思い出が無かったり(過去二回被ってる

プリコネではカヤとクリイリヤ来ました。そのままクリイリヤは星5になりました(計3回来た)。他にも色々アプリに手を出してたり←

リクエスト増えたなぁ……全部書ききれるか心配です。来年最初の話は番外編か、それともゆゆゆいか。悩む悩む。

前回のお話は……まあまあ、まあ……まあ。愉悦部が湧いたり吐血してたりSANを最大値減らしてたりと様々でしたね。感想を振り返ってみれば本当に初期の頃から読んでくださっている上に毎回のように感想を頂いている方も居て嬉しい限りです。

さて、今回のお話は愛しさと切なさと心強さで出来ています。前回と違って安心して読んで頂いて大丈夫ですよ。

それでは最後のお話、どうぞ。


番外編 咲き誇る花と幸福に ー 友奈if ー

 風先輩が卒業する前のとある日の部活。その日は、皆で手分けして迷子の犬を探すことになっていた。くじ引きの結果、私は楓くんと一緒に街中を探してた。

 

 「中々見つからないねぇ」

 

 「だね~。でも早く見つけてあげないと飼い主さんも心配してるし、ワンちゃんも心配だよー」

 

 「本当にねぇ。それにしても……ふふっ」

 

 「……? 楓くん? どうしたの?」

 

 「いや、以前にも……まだ小学生の頃かな。美森ちゃん達と一緒に大橋から讃州市まで迷子の犬を届けに来たことがあってねぇ。その時の犬にちょっと似てるんだよ。白い毛とか、このモコモコ感とか」

 

 お喋りしながら探してた時、飼い主さんから渡されたワンちゃんの写真を見て楓くんがくすくすと笑う。不思議に思って聞いてみると、写真を見せながらそんな話をしてくれた。写真にはモコモコの白い毛並みのワンちゃんが写っていて……そう言えば、私もこんな感じのモコモコしたワンちゃんを友達の為に探したことがあったなぁと思い出した。

 

 それは、私が初めて“勇者”に出逢った日。そして、私が勇者に憧れるようになった日。

 

 

 

 

 

 

 小学6年生の頃、とあるワンちゃんの飼い主のお婆ちゃんが大橋の病院で入院することになり、その家族の友達の家でそのワンちゃんを預かっていた。でもいきなり居なくなっちゃって、その相談を受けた私がお手伝いしていたのだ。似顔絵を書いて、お家の人に許可を貰ってから壁に貼らせてもらって。そうしていると、男の子と女の子の2人組に話し掛けられた。

 

 『ちょっといいかな? その貼り紙の犬……犬? について聞きたいんだけど』

 

 『わたし達、狛たんって犬を飼い主さんに届けに来たんだ~』

 

 他にも2人の女の子が居て、その子達は居なくなったワンちゃん……狛ちゃんを連れてた。その内の1人が狛ちゃんに私の書いた似顔絵を見せると狛ちゃん本人……本犬? に全力否定されて悲しい思いをしたけど。

 

 なんでも大橋に居た狛ちゃんを首輪に書いてた住所の讃州市の飼い主さん……お婆ちゃんのこと……の家まで届けに来たらしい。凄く遠い所まで同い年の子達が届けに来たのにもびっくりしたけど、狛ちゃんが大橋に居たのにもびっくりした。お婆ちゃんのお見舞いに行こうとしてたのかな。

 

 ちょっとケンカみたいなこともしてたけど、その子達は凄くいい子達だった。たまたま出逢った狛ちゃんの為に、子供4人で大橋から讃州市までの道のりを歩いて来たらしいから。

 

 迷子だった狛ちゃんの為に動いた4人の子供達。弱きを助ける優しい人達。そういう人のことを“勇者”って呼ぶんだよね。だから私は、この時に初めて勇者に出逢って……そんな、勇者みたいな人達になりたいって、憧れたんだ。

 

 

 

 

 

 

 「あの犬の名前、なんて言ったっけ。確か……そう」

 

 

 

 「「狛ちゃん」」

 

 

 

 「……え?」

 

 「だよね、楓くん」

 

 「あ、ああ、そうだけど……」

 

 「じゃあ、あの時の4人って楓くん達だったんだ」

 

 「あの時のって……まさか、あの貼り紙を貼っていた女の子は」

 

 「うん、私だよ楓くん。凄い偶然だね!」

 

 ほんの僅かな時間だけの出逢いだったけど。私もついさっきまで顔とか思い出せなかったけど……でも、思い出した。ぼんやりしてた顔も、お話してた時の声も。写真でしか見られなかった、小学生の時の女の子みたいだった楓くんのことも。

 

 私が憧れた勇者は、楓くん達だったんだ。私は、勇者部に入る前から楓くん達と出逢ってたんだ。そんな偶然の出逢いを思い出せたのが嬉しくて、思わず笑顔になる。すると、楓くんもくすくすと笑ってくれた。

 

 「本当に、凄い偶然だねぇ。まさか勇者部の前から会ってたなんて……つまりあの時は初対面ではなく再会だったってことか……運命的、と言えば運命的かな」

 

 「運命的……」

 

 それを聞いて、ほっぺたが熱くなる。確かに運命的かもしれない。住む場所も学校も違う偶然出会った人と、1年経ってから同じ学校で再会して、その人は同じ勇者だなんて。そんな人達と……そんな人と一緒に部活をして、一緒に勉強して、一緒に戦って。

 

 小さなバーテックスを怖がっていた私を抱き締めてくれて、病院で眠れない時は手を握ってくれて。あの子の模様を受けて辛くて泣いてる時は抱き締めてくれて、悲しくて苦しい時は側に居てくれて。

 

 最後にはいつも、見ているだけで幸福(しあわせ)になれる笑顔を見せてくれる……大事で、大切で、大好きになっていた人。今もこうして一緒に居るだけで胸の奥がぽかぽかと暖かいんだ。こうして……ずっと一緒に居たいって思うような……そんな人。

 

 「なんて、流石にクサイかねぇ。でも、本当に凄い偶然だよねぇ」

 

 「そ、そうだね、びっくりしちゃった……あ! 楓くん、あそこ!」

 

 「ん? ……確かに、写真の犬にそっくりだねぇ。あ、走ってった」

 

 「追いかけよう!」

 

 「そうしようかねぇ」

 

 そう言って追いかける時、ついつい楓くんの左手を右手で繋いじゃって……でも、楓くんは握り返してくれて、そのまま一緒に走って追い掛けてくれた。繋いだその手は、まだ少し寒い時期なのに暖かくて。それ以上に……また、ほっぺたが熱くなった。

 

 離した方が走りやすいのは分かってるのに、この手を離したくなかった。ずっと、ずっと繋いでいたい。ずっと……一緒に居たい。いつもよりもずっと強く、心の底からそう思ったんだ。

 

 ドキドキって胸の奥が高鳴ってる。あの日、呼び捨てにして欲しいって言った時のように。ううん、あの時よりもずっと……幸福な気持ちで。大好きって気持ちがもっと大きくなった。

 

 

 

 この気持ちが、きっと……初めての。

 

 

 

 因みに、この後直ぐにワンちゃんを捕まえて、無事に飼い主さんの所に連れていくことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 あれからしばらくして、風先輩は卒業して、私達は3年生になって、樹ちゃんは2年生になった。クラス替えもしたけど、私達は皆同じクラスになることが出来た。嬉しくなって思わずはしゃいじゃって、皆から生暖かい視線を受けて恥ずかしい思いもした。

 

 風先輩は前に言ってた通り、卒業しても勇者部の部室にやってきて一緒に部活をしてた。ただ、部活の方針を決めたりどんな依頼を受けるのかを決めるのは部長である樹ちゃんだったけど。それに楓くんから“高校の人とも一緒に行動しないと友達居なくなるよ”とやんわり言われてしょんぼりしてた。

 

 勇者部への新入部員は、残念ながら居なかった。不思議に思ってクラスのお友達とか、依頼で会った1年生の子達とかにも聞いてみたんだけど……何でも、私達の仲が良すぎて空気を壊しそうで入りづらいんだって。そう言われると皆「あー」って納得の声を出してた。

 

 嬉しいことも、ちょっと残念なこともあったけど……もう1つ、少し残念なことがあった。2年生の時、私の席の後ろに楓くんが居て、その右隣に東郷さんの席があった。夏凜ちゃんは少し離れてたけど……近くならもっとお喋り出来たのになぁ。

 

 (……楓くん達、楽しそうだな~……)

 

 授業中、窓際の最前列にいる楓くんと園ちゃん、銀ちゃんの姿が見える。楓くんの隣に園ちゃんが居て、園ちゃんの後ろに銀ちゃん。3人は授業中たまに小声で話したりしてて、楽しそうにしてる。

 

 私は……出入口側の最後列で、前に東郷さん、隣に夏凜ちゃんが居る。2人と近くの席になれたことは嬉しいけど……。

 

 (……いいなぁ……園ちゃんと銀ちゃん)

 

 あの依頼の後に自分の気持ちをハッキリと自覚してから、ずっと楓くんのことを目で追ってる。今も授業中なのに、楓くんの背中ばかり見てて……黒板を見る横顔とか、ノートを取ってる所とか……たまに隣を向いて、園ちゃんと銀ちゃんと楽しげにしてる所とか見ていて。

 

 もし、私がそこに居たらって想像して……2人が羨ましいって思う。授業中、隣を見ると楓くんが直ぐ近くに居て……たまに目が合ったりなんかして。ずっと見てたら楓くんに苦笑いされながら“前を向かないと怒られるよ”なんて注意されて……。

 

 「結城さん」

 

 「……」

 

 「結城さん?」

 

 「……え? あ、は、はい!」

 

 「授業に集中して下さいねー?」

 

 「ご、ごめんなさい先生……」

 

 「何やってんのよ友奈……」

 

 「もう、友奈ったら」

 

 そうやって想像しながら楓くんの方を見ていたら先生に呼ばれた。思わず立ち上がって返事をしたら苦笑いで注意されて、皆からもくすくす笑われて恥ずかしいと思いつつ席に座る……あれ、前にもこんなことあったような?

 

 夏凜ちゃんからも呆れられ、東郷さんは仕方なさそうに笑って……また楓くんの方を見ると、私の方を見てる3人と目が合って、苦笑いされた。

 

 (は……恥ずかしい……)

 

 その後は、また注意されたくなかったので真面目に授業を受けた。

 

 

 

 

 

 

 「最近の友奈は以前にも増して楓さんの方を見てるわね」

 

 「え? そ、そうかな?」

 

 「いや、誤魔化すには無理があるでしょ……」

 

 「そうね、授業中は殆んど楓君の方を見てるみたいだし、今日だって先生に注意されたものね」

 

 「そうよ、今日だけじゃなくて前にも……ん? 東郷、あんた友奈の真ん前の席だから友奈のこと見えてないハズよね? なんで知ってるのよ」

 

 「友奈のことだもの」

 

 「いや、答えになってないんだけど」

 

 その日の部活中、私と東郷さんと夏凜ちゃんの3人で海岸でゴミ拾いのお手伝いに来ていた。トングみたいな奴でゴミを拾って袋に入れながらお話してると、夏凜ちゃんが今日の授業中のことを言ってきた。

 

 以前にも増して……そんなに楓くんのこと見てたかな……なんて、前なら思ったんだろうけれど、今は自覚してる。仕方ないよね……だって、気付いたら見てるんだもん。

 

 お話するだけで嬉しいんだ。一緒に居るとドキドキして少し恥ずかしくて、朗らかに笑いかけてくれると幸福な気持ちになって、触れあうとそれらが全部合わさって。

 

 でも……園ちゃん達と楽しそうにしてると、胸の奥がきゅうっとなって。今みたいに側に居ないと……寂しくて。そうなる度に思うんだ。私はもう、楓くんが居ないとダメなんだなぁって。

 

 (でも……私だけじゃないもんね)

 

 東郷さんも園ちゃんも銀ちゃんも私よりも前から一緒に勇者として戦ってて、その絆の強さは見て取れる。特に園ちゃんなんて風先輩に向かって“楓くんを下さい”なんてハッキリ言ってたし。銀ちゃんも銀ちゃんでお嫁さんになるために頑張ってて……私みたいに、楓くんのことをよく見てて。

 

 今の私なら分かる。2人が楓くんに対してどう思ってるのか。東郷さんもきっと、同じなんだって……分かる。

 

 (……お似合い、だよね……)

 

 東郷さんも園ちゃんも銀ちゃんも、楓くんと並んで歩くとお似合いだなって思う。雰囲気とか、お喋りしてる時とか、一緒に依頼をしてる時とか。お互いのことを分かってるみたいで、お互いが一緒に居ると安心出来るみたいで。その空気を……壊したくないと思うくらい。

 

 でも……同じくらい、楓くんの隣に2人が居るのは嫌だなって思っちゃうんだ。楓くんの隣には……私が居たいって、誰にも譲りたくないって……思っちゃう。

 

 (私、嫌な子だなぁ)

 

 そんなことを思った自分の事が……少し嫌いになった。

 

 

 

 

 

 

 それからも、私達のありふれた日常は続いた。天の神との戦いで崩れた建物も大分直って、もうすぐ町は元通りになるって所まで来た。人々の混乱だって殆んど収まって、避難民の人達も自分達の家にどんどん戻っていってる。

 

 学校で授業を受けて、放課後は勇者部の依頼をして。たまに皆でお出掛けもして……遊びに行ったり、テスト勉強したり、美味しいものを食べに行ったり、色んな事をした。

 

 夏休みに入ると、去年みたいに旅館に勇者部の皆で合宿をしに行った。去年は気付かなかったけど、ここは友華さんの家が経営してる旅館なんだって。あの時見た女将さんが友華さんだったなんて…そう言えば、病院で誰かがそんなことを言ってたような気がする。

 

 水着は去年も着ていたのに、今年は水着姿で楓くんの前に出るのが凄く恥ずかしかった。でも、少し勇気を出して楓くんに見せてみると“よく似合ってる”って言ってくれて嬉しかった。今年は楓くんも神樹様が体を治してくれたからかパーカーを着てなくて……つい、まじまじと見ちゃった。勇者として鍛えてたからか、思ったよりがっしりしてるんだよね……うん、かっこよかったです。

 

 その後は恥ずかしさも忘れて皆で遊んで、夕方になる頃には旅館に戻って皆で同じ部屋に居て……去年みたいに、皆で同じ部屋で寝ることになった。楓くんは最初、女の子が増えたしもうすぐ高校生にもなるんだから流石に別室で……って言ってたんだけど。

 

 「去年も一緒だったんだから、今年も一緒の部屋で寝ようよ楓くん!」

 

 「そうだよカエっち! それに小学生の時も一緒だったし、何よりわたしは別にカエっちならナむぐむぐ」

 

 「そこまでだ園子。幾らなんでもオープン過ぎるし、最悪引かれるゾ」

 

 「そのっちは寝る時は柱に張り付けておきましょう。荒縄を持ってきておいてよかったわ」

 

 「なんでんなもん持ってきてんのよ……」

 

 「アタシの目が黒い内は楓に手は出させないわよ!」

 

 「お兄ちゃんの隣は私とお姉ちゃんで塞いでおくね……」

 

 「やれやれ……今年もこうなるんだねぇ」

 

 こんな会話があって、最終的に楓くんも折れたみたい。この後は楓くん以外の皆でお風呂に行って、戻ってくる頃には楓くんがお風呂の入口の所でマッサージチェアで寛いでいて……なんだかその姿が凄くしっくりとして思わず皆して笑ったり。

 

 部屋に戻ったら去年みたいに豪華な夕飯が並んでいて、今度はちゃんと美味しく頂いたり……そう言えばこの時に初めて楓くんに呼び捨てにされたんだよね。あの時は呼び捨てにされたことが何だか恥ずかしくて……でも、それ以上に嬉しくて、幸福で。思えばその時から……もしかしたら、もっと前から私は楓くんが……。

 

 

 

 

 

 

 夏休みが終わると、西暦の生き残りで北海道の勇者だった秋原 雪花ちゃん……せっちゃんが讃州中学に転入してきて、勇者部に入部してくれた。病院にいた頃に比べるとすっかり元気になったせっちゃんの姿と新しい仲間が出来たことが嬉しくて、その日は皆でせっちゃんの歓迎会をした。

 

 せっちゃんは凄く喜んでくれて……少し、涙ぐんでた気もする。でもそれには気付かないフリをして、一緒に風先輩達が作ってきた料理を食べたり、勇者部の活動の事を話したりして……。

 

 「でね、その時は私と楓くんと東郷さんと一緒に居たんだけど、帰る途中で女の子が泣いてるのを見ちゃって……」

 

 「うんうん、本当に色々やってるんだね勇者部って。話してくれてありがとね、結城っち」

 

 「全然大丈夫! せっちゃんは大丈夫だった? 退屈だったりとかしてない?」

 

 「うんにゃ、面白かったし、これからの活動が楽しみになった。後は……結城っちがどれだけ勇者部と、かーくんの事が好きかってことが分かったかな」

 

 「かーくん? って好き!? え、あ、う……」

 

 「うーん、この分かりやすい反応。結城っちは可愛いにゃー」

 

 「そう、友奈は可愛いの」

 

 「うわ、びっくりした。足音も気配も感じさせずに背後に立つの止めてよね東郷」

 

 そうして私ばっかり話してるからせっちゃんが退屈じゃないか聞いたんだけど、せっちゃんは楽しいって笑ってくれて……その後ににやにやとしながらそんなことを言ってきて。かーくんって呼び方も気になったけど、好きって言葉のせいで顔が熱くなる。

 

 私は、勇者部も勇者部の皆も勿論大好きで。楓くんのことも……大好きで。天の神にもそう言ったし、その気持ちは嘘じゃない。ただ……皆の大好きと、楓くんへの大好きは違って……自覚してからも、その大好きはもっともっと大きくなってる。

 

 (……だけど……)

 

 目線を少しずらせば、そこには料理を食べてる楓くんが居て……その隣で、あーんって口を開いている園ちゃんが居て。楓くんは、仕方ないなぁってその手の料理を園ちゃんに食べさせてあげてて。いいなって思う。羨ましいなって思う。私も……して欲しいなって思う。

 

 でも、思うだけで園ちゃんみたいには出来ない。というか、旅館に止まってから楓くんの側に居るとドキドキが止まらなくなる。嬉しくて、恥ずかしくて、ふわふわとして。あーんなんてされたら死んじゃうかもしれないって思うくらいに。だって……想像しただけでこんなにも顔が熱いんだから。

 

 「ノギーも積極的だね。一応これ、私の歓迎会じゃなかったっけ」

 

 「そのっちは昔から変わらないのよ。楓くんが初めての友達だっていうのもあると思うけれど……色々あったから」

 

 「ま、その辺は興味あるけど聞かないよ。ただ、勇者部に入部するって言った時のクラスの皆が私を勇者を見る目で見てた理由は分かった。こりゃ新入部員は勇気いるわ」

 

 「……あの時、せっちゃん慌ててたよねー」

 

 「クラスに居た全員から一斉に見られたらそりゃ焦りますって」

 

 そうして、楽しい歓迎会の時間は過ぎていった。その最中、ちょっとだけ勇気を出して楓くんの隣に行って一緒に食べてたら楓くんが園ちゃんにしてたみたいにあーんをしてくれた。

 

 「雪花ちゃんと一緒に居た時から自分とのこちゃんのやり取りをちらちら見てたからしてほしいのかと思ったんだけど……間違ってたかな?」

 

 「間違いじゃないです……」

 

 そんなことを言われて、二重に恥ずかしくなって……それ以上に、私のことを見てくれてたんだって嬉しくなった。

 

 

 

 

 

 

 せっちゃんが入ってくれて9人になっても、勇者部のやることは変わらない。でも、3年生になった私達には風先輩が辿ったように受験勉強が待っていた。目指すは風先輩の高校。楓くんと東郷さん、園ちゃんは大丈夫そうだけど、私と銀ちゃんはちょーっとだけ怪しくて……せっちゃんは神世紀の人間じゃないから歴史とか社会にちょっと難ありらしいけど、他は問題ないんだって。

 

 「こうしてると、1年生の頃を思い出すねぇ」

 

 「そうね、1年生の頃は私達しか1年が居なかったから……勉強会をするとなると、自然とこの3人で集まったし」

 

 「友奈は毎回のように勉強に頭を痛めて、美森ちゃんのぼた餅で復活するを繰り返してたねぇ」

 

 「いつもお世話になります……」

 

 「今回もぼた餅を用意しているから、後で食べましょう」

 

 「やったー!」

 

 そんな私達は東郷さんの家で勉強会。園ちゃん達は家とか大赦での用事とかがあるそうで残念そうに……本当に残念そうにしてた。なので、私と楓くん、東郷さんの3人しか居ない。1年生の頃や2年生に上がりたての時はそれが普通だったのに……勇者部のメンバーが増えて、賑やかになって、もっと勇者部が楽しくなったよね。

 

 東郷さんの部屋にあるちゃぶ台を3人で囲んで、ノートを開いて勉強……をする合間に、ついチラチラと楓くんの方を見てしまう。大事な勉強をしているのに、近くに楓くんが居ると思うだけでドキドキしてそれどころじゃなくなっちゃう。

 

 でもあんまり進んでないと2人に怒られるので勉強もやって……だけど、やっぱりそっちに目が動いて。何度目かの時に楓くんと目が合った。

 

 「友奈? さっきからチラチラと自分の方を見てたけど、どうかしたかい?」

 

 「えっ!? あ、その……えーっと……こ、ここ! ここの漢字の読み方が分かんなくて!」

 

 「そういうのとは違った気がするけど……まあいいか。相変わらず国語が苦手なんだねぇ友奈は……」

 

 咄嗟にそう答えると楓くんに苦笑いされた。良く見れば東郷さんもくすくすと笑ってて、誤魔化したとはいえ恥ずかしい。読み方がわからないのは本当だけど、ちょっと声が大きかった気もするし。因みに、答えはちゃんと教えてくれた。

 

 また恥ずかしい思いをしたくないから今度は集中集中……と思っても、やっぱり楓くんの方を見ちゃって。それから何回も楓くんと目が合って、嬉しさと恥ずかしさが沸き上がってきて……結局、あんまり勉強が身に付かなかった気がする。

 

 東郷さんのぼた餅も食べて、秋になったから日が落ちるのも早くなってきたので暗くなる前にお開きになった。楓くんと2人で東郷さんとさよならをして、すぐ近くだけど楓くんは私を家まで送ってくれた。

 

 「寒くなってきたねぇ」

 

 「そうだねー」

 

 その少しの時間の中で、私達はちょっとだけ雑談する。この少しだけの2人だけの時間を……少しでも長く楽しんでいたくて。わざと歩く早さを遅くしてたんだけど……楓くんは、それに何も言わずに合わせてくれた。

 

 今は秋で、もうすぐ冬が来る。去年の冬は……あんまり、いい思い出とは言えないかな。楽しかったこともあったけど……どうしても模様のせいで辛かったことを思い出しちゃう。その模様のせいで、私のせいで楓くんは……もう終わったことなのに、未だに後悔と悲しさと辛さがある。

 

 「友奈」

 

 「えっ? あ……」

 

 そんなことを思い出していると、楓くんが名前を呼んで私の右手を握ってくれた。驚いて楓くんの方を見ると、朗らかな笑顔を私に向けてくれてて……嬉しくなって、私も笑顔を浮かべられた。

 

 いつも楓くんはこうして私を安心させてくれる。弱った私を、暖かく包んでくれる。私が憧れた勇者みたいに……その見てるだけで幸福になれる笑顔で私を助けてくれるんだ。いつだって、そうだった。

 

 「今年は皆で楽しい冬を過ごせるよ。雪山に行ってもいいし、また旅館に泊まって温泉に行くのもいいねぇ」

 

 「幼稚園の皆とクリスマス会もしなきゃね! 皆でお鍋もしたいなー」

 

 「そうだねぇ……クリスマス会、勇者部の皆でもやろうねぇ」

 

 「うん!」

 

 今年はきっと、楽しい冬を過ごせる。楓くんと一緒に居るだけで、こうしてお話しているだけで……そう思えた。

 

 そうして楓くんと玄関先で別れながら玄関の扉を開けたら前みたいにお母さんがニヤニヤしながら待ってて……前みたいに物凄く恥ずかしくなって、慌てて楓くんにお礼とまた明日って言って扉を閉めた。因みに、2階の窓から私達のことを見てたらしい。

 

 

 

 

 

 

 天の神を倒してから初めての冬。外の世界の調査が進んだとか、北海道は寒すぎるし装備が不充分だったので一時撤退したとかニュースでやってるのを見たり、四国の冬は北海道に比べれば暖かいなんて言ってるせっちゃんに信じられない思いをしつつ、皆で楓くん達の家にやってきて色々と準備する。

 

 今日はクリスマスイブ。皆でツリーに飾り付けしたり、風先輩と東郷さんと銀ちゃんが料理を作って、樹ちゃんがケーキを作って、それを見た夏凜ちゃんとせっちゃんがびっくりしたりして、私も楓くんと園ちゃんと一緒にお皿を出したりクラッカーを用意したり。そうしてクリスマスパーティーの準備は進んでいった。

 

 「……おや」

 

 「? 楓くん、どうかした?」

 

 「いや、ちょっと買い忘れたモノがあってねぇ……友奈、ちょっと付き合ってくれないかい?」

 

 「うん! いいよ!」

 

 「ありがとねぇ。部屋に財布を取りに行くから、先に出て待ってて」

 

 「はーい」

 

 不意に、楓くんがそう言った。楓くんが忘れ物なんて珍しいなーなんて思いつつ、上着を着て言われた通りに先に外に出る。勿論、風先輩達には楓くんが私と少し出掛けるって言って。でも、何を忘れたんだろう……あ、パーティーの途中でやるプレゼント交換の奴かな。

 

 

 

 

 

 

 「カエっちカエっち、ゆーゆだけ? わたしも……」

 

 「……ごめんね、のこちゃん」

 

 「……そっか……うん……残念、だなぁ……」

 

 

 

 

 

 クリスマスイブとだけあって、街中もイルミネーションでキラキラとしてた。そう言えば、去年もこうして街中を歩いてたっけ。あの時は東郷さんと園ちゃんと銀ちゃんも一緒だったけど。

 

 「楓くん、どこに買いに行くの?」

 

 「そうだねぇ……あそこのデパートなんか丁度いいか」

 

 少し歩くと、私も知ってるデパートの前に来た。デパートの前はちょっとした広場になっていて、大きなクリスマスツリーが色んな飾り付けでキラキラ輝いていて、ついつい顔を上げて見ちゃう。

 

 「綺麗だねー」

 

 「そうだねぇ……友奈」

 

 「なに?」

 

 「ごめんね、忘れ物っていうのは嘘なんだよ」

 

 「えっ?」

 

 「ちょっと2人だけで抜け出したくてねぇ」

 

 隣り合ってツリーを見上げていると楓くんに呼ばれて、そっちを向くとくすくすと笑いながらそう言う楓くんが居た。なんでそんな嘘を? と思った後、直ぐにそう言われて……思わず、顔が熱くなる。

 

 そうだ、今は2人だけしか居なくて……楓くんと、2人きりで。今更そう強く意識すると恥ずかしくなって、あちこちに目線を飛ばしちゃって……その度に、私達と同じように2人きりの男女が目についた。そんな私を楓くんはまたくすくすと笑って……上着のポケットから何かを取り出した。

 

 「これを、プレゼント交換とは別に友奈に渡したくてねぇ」

 

 「え、あ、う……」

 

 「メリークリスマス、友奈。受け取って貰えるかな?」

 

 「わ、私、プレゼント交換の奴しか用意してなくて」

 

 「気にしなくていいよ。これは自分が勝手にやったことなんだから」

 

 「……あ、ありがとう」

 

 慌てる私の手を楓くんは引いて、そのプレゼント…小さな袋を強引に握らせた。どうしよう、本当にプレゼント交換の為に用意してた奴しか無いから何も返せないのに……でも、申し訳なく思いつつも楓くんからのプレゼントを嬉しく思ってる私も居て。

 

 結局お礼を言って、私はそれを受け取る。すると楓くんは今度は“開けてみて?”って言うから、私も中が楽しみなのもあって直ぐに開ける。そこに入っていたのは……1つの髪飾り。

 

 「これ……楓くんの……」

 

 「本当は何かネックレスとかの方がいいかもしれないけれど……それは友奈がもう少し大人になってから、と思ってねぇ。何か良いのは無いかと探してたら偶然見付けてさ。その花の押し花を持ってたし、好きなんじゃないかと思ってそれにしてみたんだよ」

 

 「……嬉しい。ありがとう、楓くん!」

 

 それは、白い花菖蒲の髪飾り。私が大好きな花で、楓くんの勇者服の水晶に描かれていた花で……私が大好きな、楓くんの花。今もポケットの中に押し花があるくらい肌身離さず持っている……本当に、大好きな花。花言葉だって覚えてる。

 

 “うれしい知らせ”と“優しさ”。“伝言”と“心意気”。“優しい心”と“優雅”に“あなたを信じる”。白いモノだとそれらに加えて“純粋”。それから……“あなたを大事にします”。凄く楓くんらしい花だなって思える……大好きな花。

 

 嬉しくて、本当に嬉しくて。泣きそうなくらいに嬉しくて。楓くんがこれを選んでくれたってことが、何より嬉しくて。だから私は、その嬉しさが伝わればいいなって思って……笑顔でお礼を言った。

 

 

 

 

 

 

 少し涙ぐみながら嬉しそうに笑う彼女を見て、改めて自分の中の感情を認める。寒い冬だと言うのに、この胸の奥はその寒さをかき消すように温かく……心臓が少し、いつもより鼓動を速くする。その感情を彼女に対して抱いたのは……いつからだったか。気付けば、抱いたからねぇ。

 

 「そんなに喜んで貰えて、送った自分としても嬉しいよ。ああ、友奈。実はこのプレゼント以外にも君に用があってねぇ」

 

 「? なあに?」

 

 きょとんとする彼女は相も変わらず可愛らしい。勇者部の皆も、勿論姉さんと樹もそうだが……中でもやはり、自分にとって結城 友奈という女の子は特別なのだろう。

 

 前世の妻が、子供が、孫が。そして自分をこの世界に転生させた神が今の自分を見れば笑うだろうか。誰かの為に自分自身を後回しにしてしまうような……それでも、誰かの為に本気で行動出来る心優しいこの子を。

 

 「友奈」

 

 「は、はい!?」

 

 初めて会ったあの時から友達の為だと動いていた。勇者に憧れていて、押し花が好きで、勇者部の活動と勇者部の皆が大好きで。コロコロと表情が変わって、少し天然な所もあって、色んな苦難があっても自分で、或いは誰かと乗り越えて行けて……その心は、天の神の意識すらも変えてしまうほど強く、綺麗で。1つ1つの仕草を、つい目で追ってしまう程で。

 

 

 

 

 

 

 そんな彼女に、前世も含めれば100年近くも生きている爺である自分が……年甲斐もなく本気で恋焦がれ、愛し、寄り添っていきたいと思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 「自分と、付き合ってくれませんか」

 

 答えは、飛び付くような抱擁と……涙声の二つ返事。

 

 

 

 

 

 

 それからしばらく、両手の指で足りるかどうかと言った年数が経った後に、楓は同じ日に大人になった友奈に1つのアクセサリーを送る。受け取った友奈は今日と同じように涙ぐみながら喜び……そのアクセサリーは、涙を拭う彼女の左手の薬指にキラリと輝いた。




今回の捕捉

・本編に近いですが、今回は行進曲があった場合のお話になっています。なので、本編とは少し違う世界線でのお話でありながらその実トゥルーエンドに近いお話になっています。



という訳で、今年最後のお話は満を持しての親密√友奈ifでした。いちゃラブ……いちゃラブかこれ?← とりあえず、ほっこりほのぼのにやにや出来る話にしたつもりです。

友奈と言えば、モチーフは山桜で春のイメージがありますが、私は勇者の章のせいで冬に泣いているイメージが強いんですよね。なので、そんな冬に幸福をプレゼントして〆。

さて、今年はこれで本当に最後です。皆様ここまでのご愛読、本当にありがとうございました。来年は来年でゆゆゆいのきらめきの章完結目指して番外編込みで頑張りますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)












 それは、更に少しの時間が流れた後の話。疲労困憊である友奈と彼女の手を強く握る楓の前に、手術着を着た2人の女性がそれぞれ双子の姉妹の赤ん坊を抱き抱えて差し出していた。

 友奈の赤い髪と楓の黄色い髪をそれぞれ生やした赤ん坊は元気に泣き……その姿に、覚えのある感覚を覚えた2人は嬉しそうに笑い、双子に語りかける。

 「「産まれてきてくれてありがとう」」



 ― また、会えたね ―



 それは、2人しか知らない奇跡のお話。
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