咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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かなり間を空けてしまって申し訳ありません。ようやく更新できました(´ω`)

色々アプリでイベントが起きましたのでそっち集中してました。fgoとかドカバトとかきらファンとか天華百剣とか。ガチャは軒並み爆死、ドカバトだけはまあ速悟飯や知セル、ゴジベジ等のLRを揃えられましたが。55連チケを一枚残しする意味は果たしてあったのか……。

通算UAが30万行きました。皆様ご愛読誠にありがとうございます! これは番外編書くしかねぇ。明るい系か、それとも暗い系か……←

今回も西暦組との出逢い、原作3話部分です。そう、3話……DEif3……ワザリングハイツさん……うっ、頭がああああっ(頭パーン


花結いのきらめき ― 5 ―

 あの時部室で自分とのこちゃん達が考え付いたのは、自分の光を広げてその上に全員を乗せて飛ぶことだった。これなら自分1人が先行する必要もないし、戦力を分ける必要もない。それに現場まで最短距離で直行出来る。便利だし、なぜ今まで思い付かなかったのかと思うくらいだ。

 

 形もそこまで複雑にする必要はない。全員が乗れる広ささえあればいいのだから。後は落ちないように足を固定するか手刷りのようなモノでも作ればいい。自分の武器の縛りとして1種類のモノしか形作れないが今の自分には水晶が両手で2つあるので2種類作れる。飛行する足場と手刷り、それで丁度2種類。足を固定するだけなら足場の形を少しだけ変えれば1種類で問題ないし、そのまま攻撃も出来る。五体満足で無ければ、この案は使えなかったかもしれない。

 

 そして生まれたのが“空飛ぶ光の絨毯”。と言ってもただの光で出来た四角い足場なのだけど、まあ空飛ぶ絨毯の方が外聞が良いだろう。後はさっきの通り、西暦は勇者達が居る場所まで最短距離を最速で飛び、到着したら空から奇襲。近接戦闘の皆には飛び降りてもらい、自分と美森ちゃん達で上空からの遠距離攻撃で殲滅。

 

 敵が居なくなったことを確認し、ゆっくりと降りる。自分達が降りる頃には先に飛び降りた皆も集まってきていて、絨毯を消して樹海の根の上に降り立つ。そして改めて西暦の勇者達の方へと視線を向けると、そこには驚きの表情を浮かべている5人の少女の姿。

 

 「突然空から降りてきてびっくりさせましたかねぇ?」

 

 「……はっ!? あ、いや、確かに驚いたのは驚いたが……」

 

 「お、男……の勇者? というか、他の奴らも勇者か!? タマ達以外にも勇者が居たんだ!」

 

 「ああ、やっぱり気になりますよねぇ」

 

 「ちょっと土居さん。ヒトの形をしているからってあまり気を緩ませない方がいいわ。それに男の勇者なんて……今まで見たことも聞いたことも無かったのだから」

 

 驚かせてしまったかと苦笑いしながら言えば、どこかのこちゃん達と似た雰囲気を感じる青い勇者服の少女が先に反応し、オレンジ色の勇者服の樹程の小柄な少女が自分達の姿を見てどこか嬉しそうにした。が、真紅の勇者服の長い黒髪の少女は少し警戒しているようだ。特に自分を……まあ、それも仕方ないだろう。

 

 「まずは挨拶からね。こんにちは、西暦の勇者さん達よね? 話はひなた……上里さんから聞いてるわ」

 

 「っ!? ひなたを知っているのか!?」

 

 「ええ。アタシは犬吠埼 風。こっちの男の勇者は弟の楓、この時代の勇者よ。お仲間だから、まずは安心してね」

 

 「乃木 若葉と言う。宜しく頼む……この時代、か。それに男の勇者……何やら色々と複雑そうだな」

 

 「の、乃木!? アマっち、ミノさん、わっしー。わたしのご先祖様発見だよ~!」

 

 「うん、のこちゃん達とどこか面影があるねぇ」

 

 「つまり、この人が風雲児様だ……ごくり」

 

 (今の声、もしかしてあの子も男の勇者……でしょうか。男性の勇者が2人……若葉さんが言うように、状況は何やら複雑そうです)

 

 やはり彼女はのこちゃんのご先祖様の若葉さんだったらしい。ひなたちゃんの名前にも反応したし、自分からも名乗った以上は彼女達が西暦の勇者で間違いないんだろうねぇ。ひなたちゃんが言っていた人数とも合う。そうして彼女達を確認していると、1人の少女に目が止まった。それは自分だけではなかったようで。

 

 「ああああっ!? ゆ、友奈! あれ、あれ!」

 

 「え、どうしたの夏凜ちゃん? そんなに驚いて……って、あー!」

 

 「っ!? ちょっ……高嶋さん!! あそこを見て!」

 

 「え、どうしたのぐんちゃん。って、わー!?」

 

 「ゆ、友奈さんのそっくりさんが神奈さん以外にもう1人……!?」

 

 「いや、3人とも……確かに驚くことだけど、ひなたちゃんが予め言っていただろうに」

 

 1人の桜色の勇者服の少女は、友奈と非常に似通っていた。神奈ちゃんと同様、瓜二つと言ってもいい。自分も内心驚いてはいたが、部室でひなたちゃんが言っていたから夏凜ちゃんと友奈ほどの驚きはない。だが、向こうは向こうで2人と同じように驚いていた……無理もない。本当に鏡合わせのようにそっくりなんだからねぇ。

 

 ……恐らく神奈ちゃん……神樹様がモデルにしたのは友奈ではなくあっちの勇者の子なんだろう。もしかしたら、彼女の名前もまた“友奈”なのかも知れない。なんて考えていると、樹海の奥からやってくる敵の姿が見えた。

 

 「驚いている暇は無さそうだねぇ。姉さん、敵だよ」

 

 「OK楓! まずは協力して敵を倒しましょ。その後、ひなたの居る拠点で話しましょ」

 

 「聞いていただろう? 皆、行こう。連戦だが、一気に味方が増えたぞ」

 

 「待って、無条件に信じすぎだと思うわ。ここは樹海なのよ? 警戒心を捨てないで……彼女達が味方だと、あの男の勇者も本物だと決まった訳ではないのよ?」

 

 「ちょっと、楓は本当に勇者よ!」

 

 「こらこら姉さん、熱くならないの。向こうには男の勇者が居なかったんだから疑うのも無理はないよ」

 

 「そ、そうだよお姉ちゃん。それに、今こっちの世界に来たばかりなんだから」

 

 姉さんと若葉さんは協力する気だったようだが、真紅の少女が待ったを掛けた。警戒心が強いようだし、今言ったように疑うのも無理はない。姉さんが自分の事で憤ってくれるのは嬉しいが、樹が言うように彼女達はこの世界に来たばかりで何もわからない状況なのだ、警戒心を持つのが自然だろう。

 

 ……最悪、自分だけでも武装解除した上で端末を預けるのも視野に入れようか。そう思い始めた時、白い少女が口を開いた。

 

 「この人達は大丈夫……そう思います。でも、千景さんの言うことも確かです」

 

 「杏もそう言うのなら……分かった、間を取ろう。団結ではなく、連携で当たる」

 

 「まあ、こっちのほんわかした空気には戸惑うわよね。いいわ、一塊じゃなくて、まずは連携で」

 

 「分かったわよ……行くわよ楓、ちび楓! あんた達が本当に勇者だってことを見せ付けてやるわよ!!」

 

 「自分は全然気にしてないんだけどねぇ……」

 

 (これまでの時間の中で分かっていたけど、未来の姉さんは自分達のことになると分かりやすく感情的になるねぇ)

 

 一先ず話は纏まったかと思いつつ、自分達よりもやる気を出している姉さんを見て苦笑い。余程自分達が勇者であると疑われたのが気に入らないのかご立腹な様子だ。それだけ自分達の事を思ってくれているのだから嬉しいんだけどねぇ。

 

 「新士君達の事も、私達の事も直ぐに分かってくれると思います。敵は目前、行きましょう!」

 

 「OK! 銀さん暴れるぞー! なんてったって、風雲児様が見てる!」

 

 「ほほう? 威勢の良いのが居るな。タマだって大活躍するからな!」

 

 「パッと見た感じだと、そちらは近距離が3人に遠距離が1人と……盾だから防御役ですかねぇ?」

 

 「あ、いえ、タマっち先輩の武器は確かに盾ですが、遠距離攻撃が出来るんです」

 

 「おや、そうなんですか……ふむ。今回は自分も遠距離に専念しようか。ちょっと前衛が過剰気味だしねぇ」

 

 次々と迫るバーテックス達に向かって行く神世紀の勇者と西暦の勇者達を見送りつつ、白い少女とそんな会話をした後に今回は自分も足を止めて遠距離に専念することにする。この場には勇者がもう15人も居ると言うのに、遠距離攻撃型は3人……いや、4人らしいが件の盾持ちの少女は一緒になって突っ込んでいっている。

 

 ……成る程、盾の周りには刃状の何かが出ている。その盾を射出してその何かで切り裂くように攻撃しているのか。だが、飛ばしている間は無防備になっている。

 

 「……先程の空飛ぶ絨毯のようなモノは、もう1度出せますか?」

 

 「うん? ああ、出せますよ。あれは自分の武器ですから」

 

 「ひ、光が武器……? いえ、でしたらそれに乗って上空の敵を私達で倒しましょう。制空権を奪えれば、前衛の皆さんも戦い安くなると思います」

 

 「あの……いいんですか? その、先程風雲児様が連携でって……」

 

 「それに、あの黒髪の人も楓君の事を疑っているみたいですし、貴女まで一緒だと……」

 

 「確かにそうかもしれませんし、私も分かるとは言いましたけど……なんででしょうか。自分でも不思議なんですが、貴方は大丈夫だと思ってる私も居るんです」

 

 「……分かりました。問答している時間も惜しいですし、早速やりましょうかねぇ」

 

 前衛で戦う皆と西暦の勇者達を観察しながら須美ちゃんの弓を模した光で射撃に徹していると、同じようにボウガン……にしてはやたら連射しているが……で敵を射抜いている白い少女からそう提案された。成る程、制空権……普段なら空の敵は自分が飛んで直接相手するが、そういった考えはなかった。

 

 案は良い。が、今はまだ自分達と西暦組は信頼関係を築けていない状態だ。それに、男の勇者という恐らくは彼女達の常識外の存在である自分は真紅の勇者から疑われている。ここでこの子と共に行動してはあらぬ疑いを掛けられるかも知れないが……どこか樹に似た、か弱そうな雰囲気の中にある芯の強さをその瞳に見てしまった上に信頼されているような言葉を言われれば頷く他ない。

 

 「それじゃあ早速……美森ちゃん、須美ちゃん、乗って」

 

 「分かったわ」

 

 「はい!」

 

 「君も、お手をどうぞ」

 

 「あ、ありがとうございます……わ、本当に乗れる……不思議な感じです」

 

 「ふふ……それじゃあ、行くよ」

 

 「「「はい!」」」

 

 左手の水晶から出した光で先程の四角い光を出し、そこに乗って美森ちゃん達も乗るように促し、戸惑った様子の少女に手を差し出す。彼女は少しばかり視線を迷わせたが、意を決したように自分の手を取って光に乗った。

 

 不思議そうにする彼女の姿を微笑ましく思いつつ、声を掛けて3人から返事が聞こえると同時に浮き上がり、敵へと向かう。落ちないように足を光で固定し、右手の水晶から弓を作り出し、傍らにはいつの間にか与一の姿。

 

 「上空の敵は自分達がやる!」

 

 「皆さんは上の敵を気にせずに戦ってください!」

 

 「ナイスよ楓! 皆、行くわよ!!」

 

 「なっ、伊予島さん!? なんであんな所に……」

 

 「あんちゃんいいなー、私も乗ってみたい!」

 

 「あんず!? ずるいぞ、タマにも乗せろー!」

 

 「やれやれ、連携すると言ったハズなんだがな……だが、杏の事だから何か考えがあるんだろう。私達も行くぞ!」

 

 下で戦う皆に声を掛けつつ、上空に居るバーテックス達を撃ち落としていく。自分と須美ちゃんの光の矢が、美森ちゃんの狙撃銃が、少女のボウガンから放たれる大量の矢が瞬く間に多くの敵の体に風穴を量産する。

 

 下では下で姉さんが大剣を、夏凜ちゃんと若葉さんが刀を、小さい自分が双爪を、銀ちゃんが双斧を振るって次々に敵を切り裂いていく。友奈と友奈そっくりの少女が同じように“勇者パンチ”と叫んでは殴り飛ばし、真紅の勇者は大きな鎌で屠り、小のこちゃんは槍で貫き、小柄な少女は射出した盾で切り裂いていき、樹もワイヤーで切り裂く。

 

 そしてそう時間も掛からず、敵の殲滅は完了し……降り立った自分達と姉さん達は合流し、取り敢えずはお疲れ様と言ってお互いに労いあったのだった。

 

 

 

 

 

 

 「お帰りなさい、皆。怪我は無いみたいで良かった」

 

 「……皆……お帰りなさい。無事で良かったです。若葉ちゃん、お久しぶり」

 

 「ああ……ひなた。お前も無事で何よりだ……しかし、久しぶりとはどういうことだ?」

 

 「また高嶋さんに似た人が……いえ、それも気になるけれど。とりあえず敵は倒したわ。詳しい説明は貴女から聞いてと言われているわ、上里さん」

 

 「ええ、では説明させていただきますね」

 

 西暦の勇者達5人と共に部室へと戻ってきた10人の姿を見て安堵の息を吐きつつ喜ぶ神奈とひなた。特にひなたはようやく再会出来た若葉、そして仲間達を見ることが出来て喜びも大きい様子だ。

 

 話で聞いていたとは言え、やはり自身の目で見るのは違うのだろう。若葉達もひなたの元気な姿を見られて安心する。が、彼女の言い回しに疑問を覚えた若葉は首を傾げ、黒髪の勇者が神奈を見てまた驚愕しつつひなたに説明を求める。なので、ひなたはかくかくしかじかとこの世界について、及びこれまでの出来事を丁寧に説明した。

 

 「神樹様の世界……未来の勇者達、か……驚いた。私とひなたとの間で時差があることもな」

 

 「不思議な世界ですから、柔軟に考えてください。やわらか若葉ちゃんです」

 

 「それで、私の子孫というのが……?」

 

 「はーい、わたしです~風雲児様。乃木 園子、小学生バージョンです~」

 

 「よろしくね~ご先祖様~。乃木 園子、中学生バージョンだよ~」

 

 「そ、そうか、よろしく。体のパーツは私だが、雰囲気はひなたに似てないか……?」

 

 「うふふ、不思議ですねぇ……うふふ」

 

 説明を受け、先に来ていたひなたとは1ヶ月近い時差があることを含めて改めて驚きつつも受け入れる若葉。それは他の4人も同様のようで、各々のふむふむと頷いている。そうして受け入れた後、説明の中にあった“子孫”の言葉を思い出したように聞くと、直ぐに反応があった。

 

 手を振りながら自己紹介する園子ズを改めて確認し、同じ人間が時代別で2人存在しているからか、それとも子孫と言う割には己と色々違うからか少々戸惑う若葉。彼女の言葉にはひなたが妖しく笑いながらそう答え、その隣では神奈が目を逸らしている。真実を知るのはひなたと……まあ神樹くらいだろう。

 

 「あ、あの、自分、小学生の方の三ノ輪 銀って言います! 良ければサインしてください、風雲児様!」

 

 「あ~、わたしも、わたしもサインして欲しいな~。ご先祖様でも欲しいものは欲しい~♪」

 

 「こ、こら、あんまりはしゃがない」

 

 「まあまあ、良いじゃないか須美ちゃん。それに、須美ちゃんも欲しいんじゃないかい? 風雲児様のサイン」

 

 「し、新士君……うぅ……」

 

 「ちょっと待て。君達、さっきから言っている“風雲児”とはいったい……?」

 

 「ひなたさんからそう聞いてましてねぇ。何でも、容姿端麗、文武両道。弱きを助ける大英雄。町を歩けば皆が振り向く輝くオーラ。自分達を含め、皆が魅力に撃ち抜かれること間違いなしとか……」

 

 「「「うんうん!」」」

 

 「ひ~な~た~!? またお前はそうやって……」

 

 不意に、銀(小)がそんな事を言い出した。園子(小)も同じように若葉のサインを欲しがり、須美が注意するが新士に宥められた後にからかうように言われれば顔を赤くして俯いてしまう。それを見た小学生組3人はまた笑った。

 

 先程からずっと言われ続けている“風雲児”との言葉に何やら嫌な予感を感じた若葉。いざ小学生組に聞いてみれば、新士の口からひなたが言っていた言葉がつらつらと出てくる。同意するように頷く他の3人に若葉はひなたを見ながらわなわなと震えて握り拳を作り、ひなたはてへっと舌を出して誤魔化した。

 

 「待て待てい。乃木 若葉が乃木 園子の先祖と言うのは分かる。名字同じだからな……じゃ、あれらはなんだ?」

 

 「どうも! 改めまして、結城 友奈です!」

 

 「ど、どうも。改めまして、高嶋 友奈です」

 

 「あはは……はじめまして、神谷 友奈です」

 

 そんなやり取りの後に声をあげたのは小柄な少女。彼女としては未来云々の話や先祖だ子孫だと言う話よりも眼前の光景……神世紀の勇者の友奈と西暦の友奈そっくりの少女、いつの間にか2人の近くに移動していた神奈の三者面談の方が気になっていた。

 

 小柄な少女の声に反応し、自然と全員の視線が当人達を除いて3人へと集中する。既に自身のそっくりさんと出会った経験がある友奈は元気な挨拶をし、まさか自身のそっくりさんが2人も居るとは思っていなかった少女……高嶋は困惑しつつ挨拶。そんな彼女に苦笑いをしながら、神奈が挨拶をする。

 

 「高嶋さんは友奈さんと神奈さんの先祖?」

 

 「それとも、あたし達みたいな同一人物?」

 

 「「ど、どうなってんのか分からん。教えてくれ、須美か楓(新士)!」」

 

 「同一人物ではないわね、銀。それから銀ちゃん」

 

 「まあ、時代も名字も違うしねぇ。単純にそっくりなだけかも知れないよ」

 

 「そう考えるのが妥当かもしれませんねぇ。まあ世の中には自分のそっくりさんが3人は居るって話だし、時代が違えばその時代毎に居てもまあ……不思議じゃないのかもねぇ」

 

 「あ、東郷さんと新士達が答えた」

 

 「そっくりさんが3人って……それにしたってこうも集まるかね」

 

 同じ顔、同じ声でありながら答え方は正しく三者三様。より困惑が大きくなった銀達が楓達に助けを求めれば、それぞれから返答があった。銀達だけでなく他の者達も楓達の考えを聞いて成る程と頷いては居るが、銀(中)は都合が良いと言えば都合良く集まった3人に腕を組みながら首を傾げた。

 

 「そっくりさん……そうね、高嶋さんとあの人達は別人。それは私にもなんとなく分かるわ」

 

 「そ、そうなんですね……でも、高嶋さんについては千景さんが言うと説得力があります」

 

 (あっち側にも東郷みたいなのが居たのね)

 

 (未来にも千景みたいなのが居たんだな)

 

 楓達3人の言葉に声にして同意したのは黒髪の千景と呼ばれた少女。千景の言葉に頷く白い勇者……クリーム色の長髪の少女も彼女の言に頷いた。それらのやり取りを見ていた風と小柄な少女はそれぞれ千景と美森を見ながら、お互いに似たような事を思っていた。その直後に、また長髪の少女が口を開く。

 

 「み、皆さん改めて宜しくお願いします。精一杯頑張りますので……」

 

 「こちらこそ、宜しくお願いします。仲良くやっていきましょう」

 

 「ねぇ、楓、ちび楓。あの子、何だか樹に似てない? 雰囲気というかこう、奥ゆかしいというかなんというか」

 

 「ああ、自分も樹海で見た時からそう思っててねぇ……案外、どこかに繋がりがあるのかもしれないねぇ」

 

 「自分にもそう見えるねぇ。小動物みたいで、だけど芯が強そうな所とか」

 

 長髪の少女と樹が会話するのを見ながらすすす……と楓の隣にやってきた風が近くに居た新士にも聞こえるように呟くと2人から同意の答えが返ってくる。楓は1番近くで少女の事を見ていたこともあり、よりその気持ちは強かった。

 

 「……そう言えば、若葉さんと高嶋さん以外の人の名前、まだ聞いてませんでしたねぇ」

 

 「あ、そういえばまだ自己紹介していませんでした……説明を聞いてからそのままでしたね。私は伊予島 杏、中学1年生です」

 

 「同じ……学年……?」

 

 ふと思い出したように楓がそう言った。瞬間、周囲の者達も今気付いたように“あっ”と声を出した。樹海では自己紹介する暇もなく、名前を言ったのは若葉だけだ。部室に戻ってからもひなたとの再会にこの世界の説明等が続き、自己紹介するタイミングはすっかり失われていた。高嶋だけは友奈、神奈としていたが。

 

 それでは、とまず最初に自己紹介したのは長髪の少女、伊予島 杏。ペコリと礼儀正しくお辞儀をしながら自己紹介をしたが、樹が彼女の背丈や一部分を見ながらわなわなと震えつつ復唱する。杏は樹よりも色々と大きかった。そんな妹の姿を見てしまった姉と兄はそれぞれ目頭を抑えたり苦笑いを浮かべたりしていた。

 

 「タマは土居 球子だ! 杏よりお姉さんの中学2年生だ。チビ共はちゃーんと“先輩”って呼ぶんだぞ?」

 

 「わっかりました! 球子先輩!」

 

 「おう! 樹海の時も思ったが威勢がいいなー」

 

 「宜しくお願いしますねぇ、土居先輩」

 

 「お、おう。こっちはのんびりしてるな……」

 

 次に自己紹介したのは小柄な少女、土居 球子。樹より少し高い程度の小柄な体躯だが杏よりも年上、楓達とは同い年に当たる中学2年だと言う。その声からは元気の良さが勇者部にも伝わってきており、同じく元気を売りにする銀達とは相性が良さそうである。球子自身、銀(小)のことは気に入っているようだ。新士はその老人のようなのんびりとした雰囲気と朗らかな笑みのせいか調子が狂うようだが。

 

 「……郡 千景よ。学年は中学3年」

 

 「……え、終わり? 千景、短すぎるぞ……」

 

 「そう言われても困るのだけど……何を言えばいいのかわからないわ」

 

 「千景……そう言えば、彼を疑っていた事は謝ったのか?」

 

 「う゛っ……それは、まだだけど」

 

 「そうだった! 楓達は男だけど立派な勇者もぐもご」

 

 「はいストップ、姉さんは黙ってて。郡さんも謝らなくても良いんですよ。ひなたちゃんからそちらの状況はある程度聞いてましたし、男の勇者なんてこっちでも自分しか居なかったんですから、郡さんが疑うのも仕方ないですしねぇ」

 

 次に自己紹介したのは黒髪の少女、(こおり) 千景。と言っても名前だけで、他に何も言わなかったが。それは短すぎるだろうと球子が言うが、千景も困ったような、睨み付けるような表情を浮かべてわからないと言った。彼女自身、あまり人付き合いは得意な方ではないらしい。

 

 そんな彼女に若葉が少し眉を潜めながら言えば、彼女は少したじろぐ。樹海で会った時は状況がまるで分からなかったので“男の勇者”と言う常識外の存在故に楓達を怪しみ、疑い掛かっていた。しかしここまでくれば流石にそんな疑いは晴れ、ただの杞憂だったと分かる。尤も、自己紹介同様に謝るタイミング等無かったに等しいのだが。

 

 思い出した事で怒りがぶり返して来たのか風が言い寄ろうとするが、その前に楓に手で口を塞がれ、新士は腰に抱き付いて動きを封じる。そのまま楓は謝罪は不要だと言うのだが、そう言っても千景の表情は曇ったまま晴れなかった。しかし謝ることもまた、無かった。

 

 

 

 それから少しの時間が経った。神世紀組の自己紹介も終え、喉を潤すのと糖分補給の為にと美森がお茶とぼた餅を全員に手渡し、あれから数を増やしたパイプ椅子を出してそれに座りながら皆が美味しいと言いながら舌鼓を打っていた。そして食べ終わった頃、若葉の視線が楓達に向いた。

 

 「……しかし、男の勇者か。楓が言った通り私達の時代には居なかったから、不思議な気分だ」

 

 「本当だよな。新士の奴なんか最初女かと思ったし。髪長いし、顔もそっちの……妹の子に似てたしな」

 

 「土居さん……見れば分かるでしょう」

 

 「タマっち先輩……樹ちゃんだよ」

 

 「新士くんは過去の楓くんなんだっけ。2年で凄く変わるんだねー」

 

 「ちび楓は本当に樹に似てて可愛いわー」

 

 「なんでまた膝の上に乗せるのか……苦しい苦しい」

 

 自己紹介の際、楓から呼び捨てで構わないと言われていた若葉は呼び捨てにしながら彼と風の膝の上に居る新士を見ながらふむふむと頷き、球子が同意しながら言えば千景と杏に飽きれ混じりに突っ込まれる。そんな彼女達の間に居る高嶋は笑いながら楓と新士を交互に見ながらそう言った。件の新士は風の膝の上に座らされて抱き締められながら頬擦りされて苦しそうにしているが。

 

 「まあそれも気になっていたんだが……その……の、乃木」

 

 「「なんですか~? ご先祖様~」」

 

 「ああ、どっちも乃木か……ややこしいなってそうじゃない。どうして乃木は楓の膝の上に居て、園子は楓と手を繋いでいるんだ」

 

 「「そこにカエ(アマ)っち(先輩)が居るから~♪」」

 

 「どこぞの登山家かお前達は」

 

 「おお、若葉の貴重なツッコミだ……というか気にしないようにしてたのに……」

 

 「仲良しさんだねー、楓くんと園子ちゃん達」

 

 「……そうね、高嶋さん」

 

 「もしや中学生カップル……いえ、あの構図はともすれば夫婦と親子にも……落ち着いた雰囲気の旦那さん、のんびりとした雰囲気の奥さんと奥さんそっくりの子供……家庭円満なおしどり夫婦みたい……甘々な恋愛小説を見てるみたいで……はふぅ♪」

 

 若葉の視線が楓の膝の上に座る園子(小)と彼の左隣に座ってその左手を握っている園子(中)を交互に行き来し、疑問をそのままぶつけてみれば返ってきたのはそんな言葉。思わずと言った様子でツッコミを入れる若葉を珍しそうにした後に球子が苦々しげな表情を浮かべ、高嶋はニコニコとして3人を見ており、千景は彼女に同意するものの楓達から視線を逸らした。

 

 そんな中、杏はぶつぶつと周りの人間に聞こえない程の小さな声で呟きながら3人の状況を見ていた。次第にその目はどこかうっとりとし始め、目の前の光景を焼き付けるように凝視してはトリップし出した。どうやら彼女は恋愛物が好きらしい。

 

 「まあ、その内慣れるわ。アタシ達はもう慣れたし」

 

 「そ、そういうものなのか? しかし、場を弁えることも必要なのでは……」

 

 「あの光景を止めるなんてとんでもない! あの蕩けた幸福そうな顔を見てください若葉ちゃん!」

 

 「いやまあ確かに幸福そうではあるが、どうしてひなたがそこまで言うのかが私にはわからないぞ」

 

 「あの表情を若葉ちゃんがしていると想像するだけで、私の胸はいっぱいになるんです! あの光景があったからこそ、若葉ちゃんに会えない時間を耐えられたと言っても過言ではないんです!」

 

 「私の何を想像しているんだお前は!?」

 

 笑いながら手をひらひらとさせる風の言葉に若葉は少し戸惑うものの、やはり男女が周りの目を気にすることもなくべったりとしているのは……と苦言を溢そうとするも、それは隣に座っていたひなたから止められる。その言い分の一部は納得するものの、まさかひなたから止められるとは思って居なかった若葉は更に混乱していた。

 

 混乱する彼女に追い打ちをかけるかのようにひなたの熱弁が入る。若葉が居ない寂しさを今日まで耐えられたのは、若葉に似た園子の表情を若葉がしていたらと想像していたからだと。まさかの言葉に若葉自身も想像してしまったのか、少し頬を赤くしながら目をキラキラとさせているひなたへと声を上げた。

 

 「園ちゃん園ちゃん、交代して?」

 

 「は~い、ゆーゆ」

 

 「わーい♪」

 

 「自分の手を握るのはそんなに楽しいのかねぇ……」

 

 「楽しいし、嬉しいよ? それに安心するんだー」

 

 「分かるよゆーゆ。カエっちの手を握ってるとあったかいんだよね~♪」

 

 「ね~♪」

 

 「おお、結城ちゃん大胆だ……私そっくりだからかな。私が楓くんと手を繋いでるのを見てるみたいでなんだか恥ずかしいな」

 

 「た、高嶋さん。私の手で良ければ……」

 

 「いいのぐんちゃん? わーい♪」

 

 ふと、いつの間にか楓の右隣に居た友奈が園子(中)に交代して貰えないかと聞き、了承を得て座る場所を代わってもらい、彼の左手を握る。彼の右手は園子(小)を支えているので空いていなかったのだ。楓は自身の手を握るのが好きな2人に苦笑いしながら疑問を口にするが、2人はニコニコとしながら共感している。

 

 友奈の行動を見ていた高嶋はまるで自分自身がそう行動しているように見えてしまい、恥ずかしさから顔を赤くする。何せ彼女自身は異性と触れあうことなど勇者になってからもなる前もそう無かったと言うのに、目の前の自分そっくりの少女は楓と言う異性と触れあって何とも幸福そうに笑っているのだから。そんな彼女に千景は自身の手を差し出すと、その手を嬉しそうに高嶋は握るのだった。

 

 「タマ達の時代には男の勇者なんて居なかったからそういう話は出なかったからなー……う、羨ましくなんかないぞ。なぁ、あん……」

 

 「これは三角関係? でも女の子同士の仲は良好……いえ、だからこそ後半になれば……そうだ、頼んだら恋愛小説やドラマでしか見たことないようなあれやこれも見せてくれないでしょうか。出来ればタマっち先輩にも……そうすればタマっち先輩の可愛い姿が見られるかも……私自身も経験してみたいですし、ああでもまずは見てみたいシーンをチョイスして……」

 

 「それならいいのあるよ~。私の書いてる小説なんだけど、これとかこれとか……後こんなのも……そうだ、さっきの“壁どん”とか“顎くい”って奴を教えて欲しいな~」

 

 「こ、これは! こんなものまで!? この男性、モデルは完全に……こっちは女の子同士まで……あれ、このお婆ちゃんっぽい喋り方の人のモデルも同じ人なんじゃ……この発想は素晴らし過ぎます! 展開も私の好みで……はぁ……はぁ……ぜ、是非とも先生と呼ばせてください! 勿論ネタの提供はさせてもらいます! あ、壁ドンと言うのは……」

 

 「ほうほう、そうすることをそのまま壁ドン……顎クイ……西暦ってスゴいね~。今度カエっちにやってもらお~♪」

 

 「あんず!? 頼むからタマを置いて遠い所にいかないでくれ! ていうか今タマの名前出した? そいつに話して大丈夫なのか!? なぁ、あんず聞いてる!? あれ、なんか近くに居るのにあんずが凄く遠くに居る気がするぞ!?」

 

 (壁ドンに顎クイ……成る程、そういうのもあるんだ……それをか……え、でくんにやってもらうと……やって……はぅ)

 

 西暦では同年代の異性との関わりはなく青春染みたことなど皆無に等しかった為、恋愛やら青春やらを謳歌しているように見える神世紀組を羨ましげに見る球子。強がるようにそうは言うが、誰が見ても羨ましそうに思っているのは明白だったので周りから生暖かい視線が向けられる。その視線から逃れるように杏へと顔を向けた球子だったが、そこには未だにぶつぶつと言い続けている杏の姿と、その背後から忍び寄る園子(中)の姿。

 

 園子(中)は杏に自分のスマホの画面に写っている自作の小説を見せながら、彼女が呟いていた神世紀では聞き慣れない言葉の意味を問う。その言葉達に、面白そうな匂いを感じたからだ。杏は見せられるままに読み、直ぐにその内容に魅了される。彼女の好みに園子(中)の作風は合っていたらしい。

 

 そうしてファンを増やしつつ、西暦の知識を増やしていく園子(中)。2人の話はどんどんヒートアップしていき、止まる様子がない。球子が至近距離から制止の声をあげているにも関わらず。他の者達も2人の勢いに押されて声を掛けられずに居た。楓達にひなた、美森は2人を黙って微笑ましげに見守っているが。神奈は聞こえてきた会話の内容を想像してしまい、楓の方を見て真っ赤になって俯き、自身の指を膝の上で弄んだりしていた。

 

 その後も2人の楽しげな会話は止まることはなく、周りの者達も各々情報交換の続きや思い出話等をして互いの事を知っていく。それは夕方になるまで続き、自然と信頼関係を築き上げていき……。

 

 (……謝るタイミングが掴めないわ……)

 

 その中で千景だけが、何度も楓に視線を送っては剃らしを繰り返していたのだった。




原作との相違点

・ファーストコンタクト時にちょっとゴタゴタ

・杏大暴走(作者の手を離れています)

・セリフ回り色々

・その他。もう探すのも疲れただろう?



という訳で、まだまだ続く西暦組との出逢いのお話です。長くなったので本当にまだ続きます。

杏、ひなた、園子(中)大暴走&爆走。DEifより更に割り増しでお送りしております。どうしてこうなった。杏なんていつかの東郷さんのように私の手を離れました。どうしてこうなった。

キャラが増えたことにより、あれもこれもとセリフやら描写やらしているとついつい10000字を越えてしまいます。今回も12000程ありますし。どうにかして減らしたい所ではありますが……。

さて、30万UAに到達しましたので次回は番外編を予定しております。リクエストから発掘するか、それとも依然から言われていたDEif楓誕生日ネタか、それとも親密√か、いっそ鬱系ボム投げ込むか……悩み所ですな。敢えてアンケートは取りませんが、ね。これ見たい! と言うのがあればボソッと小声で呟いてみて下さい←

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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