咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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また1週間間に合わなかった……お待たせしました(´ω`)

相変わらずアプリで爆死しまくってる私ですが、辛うじてこのファンで風呂アクア出たので満足です。オデュッセウス欲しかった……男なら皆欲しがるじゃろあんなの←

突然ですが、二次創作で気を付けたいのがキャラのセリフです。このキャラはこんなこと言わない! というのをなるべく抑えたいと思っているのが私です。所謂キャラ崩壊を売りにする作品もありますがね。

前話の感想のほぼ全てに神奈に対するモノがあってにっこり。オリキャラが愛されるのは嬉しいですよね。そして敢えて聞こう……本作に出てくるオリキャラ達は好きですか?←

天華百剣はストライクブラットのコラボ、ドカバトはサイヤの日、ゆゆゆいはバースデーイベ、これまた忙しくなりますね。皆様お互いに頑張りましょう。

今回は遂にあのキャラが……それでは、どうぞ。


花結いのきらめき ― 7 ―

 あの歓迎会からほんの数日程経ったとある日のこと。いつものように部活をしていた最中にすっかり聞き慣れてしまったアラームが鳴り響き、世界が樹海へと姿を変え、バーテックス達が四国の土地を占領するべく襲い掛かってきた。

 

 が、数日の内に西暦の勇者達との連携にも慣れた自分達は早々遅れを取ることもなく第一派の撃退に成功。次に来るであろう第二派までの間に小休止を入れる。

 

 「ふふん、最新型勇者にバージョンアップしたタマ達に掛かればこの通りだ」

 

 「流石です球子さん!」

 

 「こら銀、調子に乗らないの」

 

 「球子、お前もだ。とは言え、確かに西暦の時とは大分違うな」

 

 「そうだねー。力が漲ってるよー!」

 

 「精霊バリア、だったかしら。西暦ではそんなもの無かったから、防御力も段違いね」

 

 「それに精霊も私達の時代と違ってこうして実体があるなんて……ひんやりしてます」

 

 「便利ですよねぇ、このバリア。自分達の時にも無かったものですし」

 

 「精霊さんも居なかったんよ~」

 

 胸を張る土居さんと褒める銀ちゃん、その2人を注意する須美ちゃんと若葉さん。もうこのやり取りに似た事を何度か見ているからか、皆も苦笑い気味だ。

 

 そうして注意した後、若葉さんが確かめるように手を握ったり閉じたりし、その後の言葉に高嶋さんが同意する。以前にも説明されたが、この世界での勇者システムは最新型……つまりは自分達の時代の物に統一されている。その為、例え西暦の時代のシステムで戦っていた若葉さん達も自分達と同じシステム、戦闘力が引き上げられる。

 

 ……因みに、今は皆の側にそれぞれの精霊が浮いている。伊予島さんは自身の精霊……“雪女郎”を抱き抱えていた。やはり雪女郎という名前だけあってその体は雪、ないしは氷で出来ていたりするんだろうか。球子ちゃんの傍らには車輪の中に人魂があるような姿の“輪入道”が、若葉さんの近くには夏凜ちゃんの義輝や自分の与一に似た武者のような姿の“義経”がいる。

 

 「そうか、乃木達の時代には精霊が居なかったのか……私達の時には精霊はあったんだが、こうして実体化することは無かったんだ」

 

 「そうなの? アタシ達の時には初めから居たからねぇ……犬神とも長い付き合いよ」

 

 「長い付き合いって、まだ1年も経ってないよお姉ちゃん……」

 

 「精霊はあったのに実体化してないって、じゃあどうしていたの? 千景さん」

 

 「そうね、私達の時は“切り札”……体に精霊を入れて、その力を使っていたの。私の場合は“七人御先”と言って、文字通り私自身を7人に分身させることが出来たわ。それに、姿も少し変わるの」

 

 「ああ、それでその精霊は7体に分身してるような姿に……って精霊を体に入れる!? 大丈夫なのそれ!?」

 

 若葉さん達の会話を聞いていると勇者システムも本当に進化したものだと思う。小学生の時点では精霊も精霊バリアも無かったからバーテックスの一撃一撃が致命傷になり得るから肝を冷やさなかった事はない。まあ戦闘は常に命懸けだから、冷やさない方が少ないが。

 

 そうして過去を思い返していると、こんどは美森ちゃんと千景さん、夏凜ちゃんの会話が聞こえてきた。“切り札”……自分達で言う“満開”のようなモノだろう。自分達の場合は貯まった神樹様の力を解放することで大きな力を得るが、あちらは精霊の力使うらしい。

 

 しかし、夏凜ちゃんが心配するのも分かる。自分達の満開は散華という代償があった。なら、その切り札とやらにも何かしらのデメリットがあってもおかしくはない。尤も、切り札を使った所を見たことはないし、彼女達自身にもそれらしいモノは今のところ見当たらないが。

 

 「私の“一目連”はすっごく速くなるんだよ! 1000回連続で勇者パンチ出来るくらい!」

 

 「せ、1000回も!? 高嶋ちゃんも一目連も凄いなー。私も高嶋ちゃん達みたいに“切り札”を使えたら……牛鬼ならどんな能力になるんだろう?」

 

 「牛鬼か……ふふ、友奈に牛鬼みたいな角と羽根が生えて、凄く食いしん坊になるんじゃないかねぇ」

 

 「あ、あはは……確かに牛鬼は食いしん坊だし……楓くんと夜刀神ちゃんならどうかな?」

 

 「さぁ……想像がつかないけれど、とりあえず角は生えるんじゃないかねぇ」

 

 「あっ、私の一目連にも角あるよ。皆お揃いだ!」

 

 「あっ、ホントだお揃いだ!」

 

 「ふふ、そうだねぇ、お揃いだねぇ。自分だけ一角だけど」

 

 切り札を使った友奈……なんとなく、牛鬼の着ぐるみを着てぼた餅をむぐむぐと食べ続ける彼女の姿を想像してしまい笑ってしまう。その想像を口にすれば友奈は苦笑いし、質問されたので答えると高嶋さんが精霊達の共通点を見付けてはしゃぎ、友奈も同じようにはしゃいだ。

 

 ふと、小学生組の傍らに浮く精霊達を見る。本来なら4人の時点では存在しなかったそれは神樹様の内部だからなのか、未来の自分達の精霊と重複していた。小のこちゃんは“鉄鼠(てっそ)”、須美ちゃんは“刑部狸”、銀ちゃんは“鈴鹿御前”、小さい自分は“陰摩羅鬼”。同じ精霊が2体同時に存在するのはなんとも不思議な光景だったねぇ。

 

 「さて、敵が来たよ。お喋りの続きはまた後で、だねぇ」

 

 「あっ、ホントだ。行くよ、高嶋ちゃん!」

 

 「うん、結城ちゃん! 私もやるぞー!」

 

 「私達も行くわよ!」

 

 「ええ……第二波のバーテックスも、全部塵殺してあげるわ」

 

 「前衛は任せたよ。千景さんも行ってらっしゃい。援護は自分達に任せて」

 

 「……ええ、行ってきます。任せたわ、楓君」

 

 第二派のバーテックス達が見えたのでそう言うと、友奈達を筆頭に前衛組が突っ込んでいく。その際に近くに居た千景さんに声を掛けると、立ち止まって自分の方へと向き直り、少し微笑んでから同じように突っ込んでいった。

 

 あの歓迎会以来、千景さんも笑顔を浮かべることが多くなった。最初の警戒心の高さと言い、心根の優しさと言い、自分の2つ目の養子先の義理の父に似た名前と言い、なんとなく彼女を気に掛けてしまう。他にも疑問に思うところがあるが、今は置いておこう。

 

 「さぁ、自分達も援護に行くよ」

 

 「了解です楓さん!」

 

 「分かりました。楓さん、いつものをお願いします」

 

 「すっかり慣れちゃったわね、この“空飛ぶ光の絨毯”にも」

 

 前衛組に遅れる訳にはいかないと後衛の3人に声を掛け、伊予島さんの頼み通りに以前と同じように左腕の水晶から光の絨毯を作り出し、右腕の水晶からは須美ちゃんの弓と同じ形の弓を作り、3人が乗ったのを確認してから飛ばす。

 

 上空のバーテックスは自分達4人で抑え、空からの奇襲という可能性を無くす。また、彼女達の射撃は正確無比と言っても過言ではない為、地上の皆の援護も容易い。自分は絨毯の操作もあるのであまり手が回らないが。

 

 「やはり制空権を握られるのは大きいですね。楓さんの光の絨毯は戦略的に見ても非常に助かります」

 

 「乗り心地はあんまり良くないけどねぇ」

 

 「そんな事ないわ楓君。それに、風を切る感覚は気持ちいいもの」

 

 (皆さん話しながらでも全然外さない……私も、遅れないように頑張らないと!)

 

 その後もちょっとした軽口を挟みつつも攻撃する手は休めず、地上の皆の活躍もあり、今回の襲撃も無事に乗り越える事が出来た。そして部活に戻り、全員で恒例になりつつある“かめや”へと向かってうどんを食べ、寄宿舎の前で別れ、それぞれの家へと帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 そんな戦いから更に数日経った日の事。いつものように部室へと集まっていた勇者達は手狭になってきた部室を不満に思うこともなく、これまたいつものように思い思いに過ごしていた。

 

 「どう皆。こっちの生活にはもう慣れた?」

 

 「ああ、とっても快適だぞ結城。昨日なんて8時間以上スヤスヤしたぞ」

 

 「私の子孫は今もスヤスヤしているがな……しかも新士の膝を枕にして。まあ……寝顔は可愛い。うん」

 

 「ふふ、のこちゃんの寝顔は可愛いですよねぇ。今度、若葉さんが膝枕してみます? きっと喜びますよ」

 

 「わ、私は別に……」

 

 友奈が球子へと声を掛ける。西暦組がやってきてから早くも1週間が過ぎている。そろそろ慣れた頃だろうと聞いてみれば、返ってきたのはそんな言葉。すっかり馴染んでいるようだ。

 

 2人の会話が聞こえた若葉は自身のすぐ隣、椅子を2つ並べて座っている新士と彼の膝枕で眠る園子(小)を見ながら呟く。その表情は少し緩んでおり、言葉通り子孫の事を可愛いと思っている事が分かる。新士は彼女の感想に同意しつつ、膝枕をしてみないかと誘うと満更でもなさそうな反応をされたのでまたくすくすと笑った。

 

 「そのっちはよく寝るねぇ。すくすく育ちそうだね。どんな子に育つんだろうね~」

 

 「今の君みたいになるんじゃないかねぇ。すくすく育ったね、のこちゃん」

 

 「それもそうだね~。うん、大きくなったよ~」

 

 「園子さん……自分の事を“そのっち”と呼ぶというのは、なんだか混乱しない?」

 

 「大丈夫だよちーちゃん。自分が2人居るってね、結構楽しいんだよ~」

 

 「凄いのね……私は楽しく感じないと思うわ……環境の変化とか、そういうの好きじゃなくて……だから西暦組のクラスが校内で独立している計らいは気に入っているわ」

 

 スヤスヤと眠る園子(小)を見ながら、ぽやぽやと笑って両手を合わせながら園子(中)が呟く。隣に居た楓は特にツッコミを入れることもなく、朗らかに笑いながらそう言えば彼女もまた笑いながら返す。そんなやり取りに部室内のツッコミ気質が何か言いたげにしていたが、その前に千景が疑問を投げ掛ける。

 

 疑問に対し、園子(中)はあっさりと答えた。が、千景の同意は得られない。彼女はあまり人付き合いが得意な方ではない。同じ西暦組、そして神世紀の勇者達とは友好を深められたが、それ以外の人間とは自分から関わりに行くこともあまりない。

 

 しかし勇者達は皆知っている。彼女の優しい心を持ち、意外と面倒見が良いことを。この数日の間に児童館の子供達と遊ぶ依頼があり、その際に不器用ながら子供達と接し、一緒に遊んだり泣いてる子に自身の口元を指で引っ張って作った笑顔を見せて笑わせたり、最後には名残惜しそうに手を振って別れた事を。だから皆、微笑ましそうに千景の方を見て笑っていた。

 

 因みに、彼女の言った通り西暦組の6人、そして神奈は大赦の計らいで讃州中学の空き教室を1つ使って授業を受けている。当時とは変わっている歴史や勉強方もあり、何より召喚された過去の人間であるからだ。神奈は単純に学校に行っていなかった為、ついでにと放り込まれた形になる。“勉強するのは初めてだけど楽しいね”とは彼女の言葉だ。

 

 「のびのび戦えるのが1番だからねぇ。放課後はいつもここに集まる訳だし、勇者アプリで連絡取れるし」

 

 「でも同じ授業も受けてみたいなぁ。杏さん、選択科目何にしました?」

 

 「おぉ、おぉぉ……見て楓、樹が杏と仲良くしているわ。今夜はご馳走ね。お赤飯とうどんと、うどんね……」

 

 「気持ちはわからないでもないけど、いちいち感動しなくても……あと、うどん被ってるから」

 

 樹が杏へと話し掛けている姿を見た風が楓を呼びつつ感動のあまり少し涙声になりながら今夜のメニューを呟く。少し過剰とも取れる姉の姿に楓は苦笑いしつつ、そうツッコんだ。

 

 「風は本当にうどん好きなんだな。薦めてくれるうどん屋は全部美味いし」

 

 「ってことで今日もうどん巡りツアー発足! 我こそは、と思う勇者は手ぇ上げ!」

 

 「はいはい参加しまーす! あいらぶうどん! ぐんちゃん、銀ちゃん、ミノちゃん、どうする?」

 

 「そうね、高嶋さんが行くなら……参加しようかしら。うどんはとても良いものだし」

 

 「も、ち、ろ、ん! 参加します! うどん食べてレベルアーップ!」

 

 「と、う、ぜ、ん! あたしも参加! うどんは食べれば食べるほど強くなる!」

 

 「タマが行かなければ始まらないだろう! タマとうどんは、前世でそういう関係だった」

 

 「今日はどんな美味しさに巡り会えるのかな。うどんはまるで、1冊の本のよう……」

 

 (どうして皆はうどんという食べ物にそこまでの情熱を向けられるんだろう……)

 

 風の発言を聞いて次々と手が上がる。ここは四国の香川県、日本で1番うどんを食し、消費している県である。住人はほぼ全員がうどん大好きと言っても過言ではなく、勇者達も例に漏れない。この反応はむしろ正常なのである。が、神奈は苦笑いするだけでそこまでうどんに対して情熱と愛情を持つ皆の事が少し分からなくなっていた。それに気付いたのは、苦笑いを浮かべたままの楓と新士だけである。

 

 「うどんは生命の根源。あらゆる力の元だからな。勿論私も行く……ちらっ」

 

 「はい、勿論参加させていただきます」

 

 「どう夏凜。うどんを通じて、西暦の皆とも更なるコミュニケーションを謀る部長の姿は!」

 

 「ただうどん食べたいだけでしょ。でも、いーんじゃない? 私達も全員行くわけだしね」

 

 「まあ、そうだねぇ。皆で食べれば美味しいモノはもっと美味しく感じるだろうし。神奈ちゃんも行くだろう?」

 

 「うん、皆が行くんだから私も行くよ。今日は何にしようかな……前は天ぷらで、その前はきつねだったから……」

 

 若葉とひなたも参加表明をし、風が胸を張りながら夏凜に聞くと笑いながらそう言った。それに続くように楓も神奈に問い掛け、頷く。皆のようなうどんへの愛情は無いと思っている神奈だったが、勇者達と交流する内にすっかりうどん好きとなっている事に気付いてはいなかった。

 

 「では、伝達事項は早めに伝えておきましょう。嬉しいお知らせですよ。実は新たな神託が……」

 

 「おっ、もしかして新しい友達!? ひあ、かむず、あ、にゅーぶれいぶまん!?」

 

 「はい。また1人、勇者が召喚されるようです」

 

 「しかも今回は四国以外に存在した勇者が来るんだよ」

 

 「増えていく仲間、頼もしい限りですね」

 

 うどんを食べに行く前に、とひなたが口を開く。高嶋がそう聞けば、ひなたは嬉しそうに笑い、神奈がそう続ける。四国以外という部分を聞いて皆が驚く中、ひなたはそう言ってくすくすと笑ってしみじみと呟く。

 

 西暦勇者の5人が加えてまだ勇者が来ると聞き、夏凜が思ったよりも勇者が存在した事を驚きつつも大歓迎だと言う。風はやってくる勇者を祝う為にうどんを食べようとはしゃぎ、同じように友奈と高嶋もはしゃいだ。

 

 (新しい勇者、それも四国以外……それはもしかして……予感が当たると、嬉しいのだが……)

 

 そんな中で“四国以外の新しい勇者”に心当たりがあるのか、若葉だけは腕を組みながら難しい表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 「ん、今日は東郷と楓だけか、部室に来ているのは。なんだか珍しいな」

 

 「こんにちは、若葉さん。とてもいい天気だし、皆思い思いに外に繰り出しているわ。私はコラムを仕上げ中」

 

 「こんにちは、若葉さん。自分はそんな美森ちゃんの手伝い、ですねぇ。まああまりやることはないんですが、意見を聞いて答えるくらいは出来るので」

 

 「……そうか。ああ、言い忘れていた。こんにちは、2人共」

 

 翌日、1人部室へと訪れた若葉。そこに居たのは珍しく美森、そして楓の2人だけであった。パソコンの前に座る美森とその隣に座る楓は入ってきた若葉に顔を向け、挨拶する。若葉も挨拶を返し、2人に近付いた。

 

 「……そうだ、2人には改めて聞いてみたい事があったんだ」

 

 「おや、なんですか?」

 

 「楓と新士、東郷と須美は同一人物だろう? なんというか、自分がもう1人いる状態は……その……大丈夫か?」

 

 若葉が聞いてみたかったこととは、もう1人の自分……小学生組が存在している事をどう思っているかというものだった。鏡や写真を見ている訳ではなく、確かな実体を持って存在し、その己と向き合うのは強烈だろうという心配からの質問だった。

 

 「園子は心底楽しんでいるようだし、銀も姉妹のように接していてあまり苦ではなさそうだが……」

 

 「ええ、私は大丈夫よ、直ぐに慣れたわ。心底ありがとう。須美ちゃんは国を愛する良い子だしね」

 

 「自分もまあ、小さい自分が居ると言うのは別に思うところはないよ。ただまあ、新士と名前を呼ぶのは抵抗あるけどねぇ」

 

 「東郷は自分で言うとは……お前、やるな。楓は名前で呼ぶことだけか? 抵抗があるのは。確かに、お前の口から“新士”と聞くことはあまりないが……」

 

 「まあ、それだけではないと言えばそうですが……」

 

 「私も、悩み事もあるといえばあるけれど……」

 

 「やはり何かあるのか。良ければ聞くぞ」

 

 東郷の自画自賛とも取れる言葉に戦慄を隠せない若葉だったが、楓の言葉を聞いて驚きが加わる。彼女から見ても、楓は年齢不相応に大人びていて誰かに悪感情を抱いていたり抵抗があるような仕草を見せることは少ない。最近は杏相手だと苦笑いが増えたような気もするが。

 

 とは言え、悩み事が全くない訳でもない。2人がそう呟くと若葉はそう言い、少しの間を置いて2人は語りだす。

 

 小学生組の未来の姿である以上、当然2人は新士、須美が今後どうなるかを知っている。辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、そのような運命がやってくる事を知っているのだ。その運命を、小学生組にどう話すべきか。いっそのこと、話さないでおくべきか。悩みとはそのことである。

 

 現状、未来の出来事は話していない。今はこの世界でのお役目、造反神を鎮めるのが先決であるとして現実世界のことは話していないのだ。

 

 「自分達の意見としては、話すべきだとは思っているんだけどねぇ……」

 

 「大事な問題だから、よく考えているの」

 

 「う~む、それは確かに悩ましい問題だ……即答出来ん。須美達は知りたがっているとは思うが……う~ん」

 

 話を聞いた若葉は悩む。彼女は西暦時代の人間であり、今回のような不思議空間でなければ2人とは、神世紀組とは何の接点も持てなかった筈の人間だ。彼らの過去についても小学生組から聞かされた話程度であり、詳しくは知らない。

 

 そんな2人がここまで悩んでいるのだから相当な事があったのだろうと予想は出来る。だからこそ、明確な答えを持ち合わせていなかった。養父が怨敵の天の神への生け贄にする為に楓と養子にしたとか右腕を失うとか美森の記憶が消えるとか園子と銀が大赦に管理されることになるとか、そこまでの予想は出来るハズもないが。

 

 「いいの、聞いてもらっただけで楽になったから……ありがとう」

 

 「まあ、のんびり考えますよ。明日明後日に出さないといけないような問題でもないですしねぇ」

 

 「そうだな……いずれにせよ、この世界をどうにかしてからだ。それまで私も一緒に考えよう。因みに、西暦の……私達の詳しい話を知らないか? 人類を護れたのはいいが、更に詳細があれば……」

 

 「西暦時代の勇者のお話は、大赦が情報を操作しているから私達も全然知らないの」

 

 「そもそもこっちの時代では勇者の存在自体秘匿されていますしねぇ。自分達が見られる部分では情報は期待出来ないと思いますよ」

 

 「でも、知っている限りで良ければ今話そうか? 大した量じゃないから」

 

 「自分も、それで良ければ話しますよ。美森ちゃんと似たり寄ったりですがねぇ」

 

 「い、いいのか? 是非頼む。私はリーダーとして知っておきたい。受け止めて見せる」

 

 若葉に頼まれ、2人は話し始める。あの男から教えられた外の世界の真実。四国の周囲を覆う結界の外の世界は既に滅び、今や炎の海。倒すべきバーテックスはそれこそ数えきれない程存在していること。流石に若葉と親しいひなたという巫女の存在がある為、奉火祭については伏せたが。

 

 自身の予想を越えた惨状に流石の若葉も目を伏せ、ショックを隠しきれない。それは彼女達の時代では、バーテックスの襲撃によって荒廃こそしていたがまだ土地……世界が残っていたからだ。まさか丸々炎の海である等と誰が予想出来るだろうか。

 

 「……何かが行われたな、それは」

 

 「でも、我が国の民は生きている。だから……」

 

 「分かっている。驚きはしたが、役目に支障はない。教えてくれて礼を言う」

 

 「この話をきちんと受け止められるとは、流石は風雲児様、ですかねぇ」

 

 「からかうな楓。それに、私個人は今の話を受けきれる程強くはない。ただ、こうして受け止めることが出来る程に強くしてくれる存在がいる」

 

 「分かるわ」

 

 「うん、自分も分かるよ」

 

 確かに話を聞いてショックを受けた若葉だったが、それを受け入れて尚前を向く。その姿勢に西暦勇者のリーダー足る姿を見た2人。その後に語られた“自身を強くしてくれる存在”との言葉に深く共感する。

 

 1人では決して立ち上がれなかった。1人では決して生きていられなかった。こうして立って進める事は、こうして今を生きていられる事は、周囲の人間の手助けがあってこそ。誰かが手を引いてくれて、誰かが側に居てくれるからこそ。それを良く知る2人だから、若葉が強く居られる理由を確かに感じ取れた。そこで話は1度途切れ、若葉は考える。

 

 (四国の外は灼熱の世界……か。あそこは大丈夫なのだろうか)

 

 そう考える若葉の脳裏には、過去に話したことがある1人の勇者の存在と……その勇者が守っていた筈の土地の事が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 そんなやり取りからまた数日経ち、場所は寄宿舎。部活も終わり、一部の勇者達は寄宿舎の一室に集まっていた。

 

 「高嶋さん。何かお困りの事などありますか?」

 

 「寄宿舎暮らしはあたし達の方が長いから、助けになると思いますよ」

 

 「とは言っても、高嶋さん達も住み始めてから時間が経ってきてますから、あんまり無いと思いますけどねぇ」

 

 「皆ありがとうね、大丈夫だよ。良い子だね~。よしよし」

 

 「とても快適だぞ。ほら、杏を見てみろ。未来の小説読みまくりだ」

 

 「~♪」

 

 「あれはかなり上機嫌だぞ~。タマがワッフルをこっそり食べてしまっても許してくれそうだ」

 

 「ぐんちゃんも神世紀のゲームいっぱいやってるよ。なんだかんだ楽しいみたい。神奈ちゃんにも色々やり方とか教えてあげてるみたいだし」

 

 西暦組の元へと訪れ、困った事はないかと聞き歩く須美と銀(小)、新士と園子(小)の4人。と言っても率先して動いているのは須美と銀(小)で新士は付き添い、園子(小)は彼の後ろをちょこちょこと付いて回っているのだが。

 

 4人の頭を順番に撫でる高嶋と快適だと述べる球子。その視線の先に居る、本棚の横の壁にもたれ掛かりながら神世紀の小説を楽しそうに読んでいる杏。基本的に読書が好きな彼女は時間があれば大体本を読むか園子(中)の携帯小説を読んでいる。

 

 今この場に居ない千景はゲーム好きであるからか遊戯室に置いてあるゲームの使用率が1番高い。1人で楽しんでいる時もあれば、他の勇者と協力なり対戦なりしたり神奈に教えていることもある。その甲斐あってか、少しずつ神奈のゲームの腕は上達しているらしい。

 

 「何よりです。銀、新士君。若葉さんの様子も見に行こうか」

 

 「そうな。この数日ちょっと口数が少なくてさ……心配なんだよな」

 

 「新しい勇者が自分達の時よりも神託があってから召喚されるまで結構経ってるし、それが理由なのかも知れないねぇ」

 

 「あらあら、銀ちゃんも新士君も鋭い目を持っていますね。確かに、ここ数日は哲学若葉ちゃんです」

 

 「っ!? い、いつの間にあたし達の後ろを取ったんだ……ひなたさんも時々、底知れない時があるなぁ」

 

 「あはは……ところで、“哲学若葉ちゃん”とは……?」

 

 高嶋達の言葉に納得し、2人にそう声を掛けてか移動しようとする須美。そんな彼女に、2人も動こうとしつつそう呟いた。

 

 美森と楓と話した日から、若葉は以前よりも口数が減っていた。何か考え事があるらしく難しい表情を浮かべては思考に更ける姿を幾度と見掛け、しかし真剣に悩んでいるようで周りとしては心配ではあるが聞きづらいのだ。

 

 そんな3人の会話に、不意にひなたが混じった。勇者として訓練をしている2人に気取られることなく背後に回っている彼女に銀(小)、顔にこそ出てないが内心驚いている新士を戦慄させながらそう言い、気になった新士が問い掛ける。

 

 「何か色々考えている状態の若葉ちゃんのことです。直ぐに私が相談に乗ろうと思ったのですが……何かあれば直ぐ私に相談、というクセがついても若葉ちゃんの為になりません」

 

 「それはまあ、そうでしょうねぇ」

 

 「なのでここ数日、心を鬼にして見守っていました。でももう限界です! ですから話を聞きに行く所なんです」

 

 「それは確かに心配だね。よし、私も行くよ。高嶋 友奈が仲間に加わった!」

 

 「わたしもご先祖様の所に行く~♪」

 

 新士の問いに心配そうな表情を浮かべながら説明するひなた。実際、ここ数日はひなたも若葉に話を聞いていないし、若葉がひなたに話したこともない。そんな風に部分的にとは言え若葉と共に居られなかったからだろうか、ひなたは全身で若葉に会いに行くのだと訴えていた。

 

 そんな訴えを聞いてか、高嶋が共に行くと手を上げて立候補する。“仲間に加わった”の後に何やらそれらしい効果音が聞こえた気がするが空耳だろう。同じように園子(小)も手を上げた直後、部屋に風と楓、神奈が入ってきた。

 

 「お、遊びに来てみれば……集まってどうしたの? 美味しいうどん屋の情報でも入ったかしら」

 

 「あ、風先輩達。よーし、もうどうせなら皆で行きましょう! これだけ集まればどんな悩みもイチコロさ!」

 

 「おや、誰か悩んでいるのかい?」

 

 (悩みもいちころ……? 悩みって殺せるモノなのかな……?)

 

 そんな銀(小)の発言により、今入ってきた3人も連れて若葉の部屋へと直行する一同。そう時間を掛けることもなく辿り着いた部屋の扉をノックし、出迎えた若葉は人数の多さにびっくりしつつも部屋の中へと一同を入れる。そしてここに来るまでの経緯を聞き、嬉しさと申し訳なさが混じった苦笑いを浮かべた。

 

 「それで皆で私の部屋に来てくれたのか……嬉しいが、心配を掛けたようだな。すまない……実は、諏訪の事を考えていたんだ。つまり、“白鳥”さんの事だな」

 

 「すわ? すわわ?」

 

 「どこかの地名だろうが、あたしは分からん!」

 

 「そんなに力強く言うことじゃないよ銀ちゃん……確か、長野県だっけ?」

 

 「そうよ新士君。かつて長野県にあった街で、諏訪湖に接しているという……」

 

 若葉の口から出た“諏訪”という単語に首を傾げる風と銀(小)。そんな2人に苦笑いしつつ新士と須美がそう説明すると、今度はひなたが口を開いた。

 

 以前に神奈が言っていたが、西暦には四国以外にも勇者が居たのだという。若葉が言った“白鳥さん”とは、その諏訪でバーテックスから諏訪に張られていた結界と人々を守護していた勇者の名前らしい。その諏訪には召喚される前、西暦組の勇者皆で調べに向かう話も出ていたと高嶋は語る。

 

 「だが、神世紀では壁の外は大変な事になっているという……諏訪は大丈夫なのだろうか。白鳥さん……」

 

 「若葉ちゃん……それで色々考えていたんですね」

 

 憂いを帯びた表情を浮かべる若葉に対し、ひなたを筆頭に皆が一様に痛ましげに見つめる。外がどうなっているかを知っている風と楓、神奈は特に。そうして誰もが暗い表情をしていた時。

 

 

 

 若葉の部屋に、光が溢れた。

 

 

 

 「っ!? な、なんだこの光は……もしかして、新しい勇者が!?」

 

 「ええ、どうやら到着したみたいですね」

 

 「今回は時間掛かったね」

 

 溢れた光が全員の視界を白く染め上げる。若葉が驚愕の声をあげ、ひなたと神奈が安心したように呟き、彼女が以前と同じく願うように両手を合わせる。そうして光が収まった時……。

 

 

 

 「……? あら? ららら? こ、ここはどこかしら?」

 

 「うたのん。ほら、さっき話してたやつだよ。私達、神樹様に呼ばれたんだよ」

 

 

 

 濃い緑色のショートヘアーの少女と、茶髪のふんわりとしたショートヘアーの少女の姿があった。




原作との相違点

・切り札や精霊等のお話

・要所要所に楓、新士、神奈が入る

・まあ他にも色々あるんだけどそろそろこの相違点要らないと思うんだがどうだろうか←



という訳で、原作4話の前半部分くらいのお話でした。あのキャラが……ちょっとだけ登場。彼女達の髪色とか髪型とかどう書くか悩みました。

今回はワザリングハイツさんは大人しめ、一部キャラの登場も控え目。これからどんどんキャラ増えてきますし、その辺りも悩みどころですね。ゆゆゆいそのまま丸写しにもならないように気をつけねば。

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