咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました。今度こそ1週間以内に更新出来ると思ったのに、見直しの最中に寝落ちするとか誰が予想出来ただろうか(´ω`)

また色んなガチャで爆死続きな私です。でもコトダマンで新しいアイとゼツボウが、きらファンではくるみと瑠姫が、このファンではウィズと冬服リーンが来てくれました。リーン可愛すぎかよ……。

先日ランキング見てたら29位に本作の名前がありました。投稿した訳でもないのに何があったのか……嬉しいですがね。

本作のアクセス解析から見られる全期間各話PVを見たところ、DEifだけが2万越えてました。他は番外編が多い見たいですね。皆様、沢山の閲覧ありがとうございます。

さて、今回のキーワードは……“なぜベストを尽くしたのか”です←


花結いのきらめき ― 8 ―

 「雰囲気は違うが……しかし、この声はまさか……まさか、白鳥さん……なのか?」

 

 「およよ、私を知っている? それは話が早い……ん? その声はまさか……」

 

 「乃木……若葉。乃木 若葉だ、白鳥さん!」

 

 「本当に……本当に乃木 若葉さん? うどんと、蕎麦……優れてるのはどっち?」

 

 「うどんだ!」

 

 「間違いなく乃木 若葉さん! こうした形で出会えるなんて!」

 

 (う、うたのんいきなりなのに会話が弾みすぎだよ!? 私、どう自己紹介していいか……)

 

 (なんで今ので確信に至れるんだろう……うどんって凄いなぁ)

 

 そんな会話の後に風の言で勇者達を緊急収集することになり、小学生組4人が先輩達の役に立つ為にと集めに奔走すること数十分。勇者達は新たに召喚された2人を連れて勇者部部室へと集まっていた。

 

 「改めまして、諏訪の勇者、白鳥 歌野です。皆さん宜しくお願いします。趣味は農業です」

 

 「諏訪の巫女、藤森 水都です。宜しくお願いします……趣味は、特にないかなぁ、と」

 

 「今回は巫女さんまで来てくれたんだね。良かったね、ヒナちゃん、神奈ちゃん」

 

 「はい。勇者の皆さんに対して私達2人ではそろそろキツかったので、もう大歓迎ですよ、水都さん」

 

 「1人増えただけでも大助かりだね。宜しく、水都ちゃん」

 

 「お、おんなじ顔が3人も……え、あ、はいっ! 色々、その、至らぬ所があるとは思いますが……宜しくお願いします!」

 

 そんな自己紹介から始まり、勇者達も2人を歓迎する。特に巫女である水都の参加は同じ巫女である2人にとっても非常に有り難かった。何せ勇者達は西暦組5人、中学生組8人、小学生組4人の総勢17人。更に今回呼ばれた歌野を合わせれば18人になる。対して、巫女はわずか2人だったのだ、喜びもひとしおと言うモノ。それでも3人と勇者達の6分の1しか居ない訳だが。

 

 そうして巫女達が親睦を深めているのと同時に、若葉と歌野も握手を交わす。2人は西暦で直接会ったことはなく、“勇者通信”という音声でのやり取りしかしたことがなかったと言う。それ故に、この邂逅は奇跡的であり……だからこそ、お互いに嬉しい出逢いであった。お互いに名前で呼び合うにし、風が趣味の農業について詳しく聞こうとしたその瞬間、今回呼ばれた2人には初耳の、以前から居た勇者達には聞き慣れたアラームが鳴り響く。

 

 「んん!? 何の音かしらこれ!? この時代特有のハザードか何かかしら?」

 

 「何って、樹海化警報でしょ。敵が来たのよ。来たばかりで何だけど、戦闘よ」

 

 「あっ、理解した。成る程、手荒い歓迎ね。上っ等! 諏訪パワーを見せつける!」

 

 「ともかく、携帯端末を持っていって下さい、歌野さん。使い方は皆さんが教えてくれます」

 

 「はいこれ、貴女用の端末。失くしちゃダメだよ?」

 

 「うたのん、ファイト!」

 

 「サンキュー! それから、任せてみーちゃん! 勇者、白鳥 歌野! 征きます!」

 

 聞き慣れない警報を聞いて驚く歌野だったが、夏凜に説明されて直ぐに理解する。呼ばれて早々に戦闘することになったが文句を言うこともなく、むしろやってやると戦う意思を示す。

 

 そんな彼女にひなたは待ったを掛け、神奈が彼女が呼び出されると決まった時点で用意していたのであろう他の皆と同様の端末を手渡す。歌野は渡された端末を握り締め、水都の応援を受けてそれに笑顔で返し……そして、世界が極彩色の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 「敵が来た! ということで、よーし行こう! 勇者になーる!」

 

 「や?」

 

 「私も、勇者になーる!」

 

 「やや!?」

 

 「それじゃあ自分も、勇者になーるってねぇ」

 

 「ややや!?」

 

 樹海化に歌野が驚く間も無く、友奈、高嶋が続けて端末の画面にある勇者アプリをタップして変身。歌野が驚きの声を上げるが、聞こえていないのか楓も冗談っぽく笑いながら友奈達の真似をして勇者アプリをタップする。

 

 瞬間、楓の端末の画面から溢れる白い花菖蒲の花弁。その花弁が楓の首から下を覆い隠すように動き、通り過ぎるとその服装が讃州中学の制服から全身を覆う黒いインナーへと変わっており、右足で上段回し蹴りをするとそこに花弁が集まり白い具足となる。そのまま勢いを止めずに左足で上段後ろ回し蹴りをすればまたそこに花弁が集まり同じ具足となる。

 

 両足を地に付け、目を閉じながら両手を左右に伸ばすと両手を花弁が包み込み、一瞬の発光の後に白い手甲へと変わる。楓が口元に笑みを浮かべながら右手を下ろしつつ左手を開いて頭上に掲げると花弁が白い光となって滝のように降り注ぎ、それが消えると腰まであった黄色い髪が真っ白に染まって膝裏まで伸び、インナーの上に腰から前後左右に長く白い布がはためく中華風の勇者服へと変わっていた。

 

 楓は目を開けて朗らかに笑うと掲げていた左手の拳を握りながら前方向に曲げて手首の位置を顔の辺りに合わせる。するとそこに白い光が集まってひし形の水晶を作り出し、下ろしている右手にも同様に水晶を作り出す。そして左手の水晶の中に白い花菖蒲の満開ゲージが刻まれ、その手を真横に払いながらくるりと回転し、最後に少し両足を開いて右腕を軽く後ろに引きつつ曲げ、左拳を突き出すポーズで変身を終えた。同時に、歌野を除く他の勇者達も変身を終えている。

 

 「よーし、迎撃態勢完了……って、どうしたの? 早く変身しないと……敵、来るわよ?」

 

 「サプライズにも程があるわ……皆、ボタン1つでチェンジ出来るなんて……都会!」

 

 「……そうか。歌野は変身する時、着替えていたと言っていたからな」

 

 「しゅ、手動で着替えていたんですか!?」

 

 自身は変身することなく周囲の者達を驚いた表情で見ていた歌野を不思議に思ったのか夏凜が声を掛けると彼女はそう返す。その場にいる全員がどういうことだ? と首を傾げるが、西暦の時代から通信での交流があった若葉が記憶にある彼女の言葉を思いだし、それを聞かされた樹が驚愕の声を上げる。

 

 歌野以外の勇者にとってボタン……アプリをタップすることで即座に変身出来るのは常識と言っていい。しかし歌野の場合は勇者服に自力で着替える必要があったという。

 

 「せいって脱いで、そいって着て……で、私の勇者服はどこかしら? せいっ!」

 

 「「わわっ!」」

 

 「ちょっ、楓達も居るんだから脱ごうとしなくていいの! アンタの勇者システムもこの世界なら最新版よ!」

 

 「あ、そうだった。今は男の子も居るんだったわね。諏訪にいたお爺さんお婆さんみたいな雰囲気だったから気にならなかった……ん? 最新版ということは私もボタン1つで大変身? 都会だわ……というより未来か」

 

 「頼むから自分達が居るときは脱がないでね……友奈、助かったよ」

 

 「のこちゃんもありがとねぇ」

 

 「びっくりしたよー……」

 

 「えへへ~」

 

 「ソーリー2人とも、これから気をつけるわ。それでは早速……やっ! メタモルフォーゼ!」

 

 そのせいだろうか、歌野は男が居るにも関わらずその場で躊躇うことなく自身の服に手を掛けて脱ごうとした。直ぐにその手は風が掴んだことで止まり、友奈と園子(小)は即座に楓と新士の後ろから手で目を隠して見えないようにする。

 

 風に言われてから気付いたように歌野は恥ずかしがることもなく、目隠しをされている楓達の方を見ながら呟く。楓達は呆れ混じりに溜め息を吐きながら目隠ししてくれた2人に感謝した。そんな彼らに謝りつつ、歌野は皆がしていたように端末に指を伸ばしてアプリをタップ。次の瞬間には彼女が西暦で着ていたのであろう勇者服を着た姿へと変わっていた。

 

 「……お、おおっ!? おおーっ! いけた、いけたわ! スゴい便利! ……で、この辺り一面木のワールドは何?」

 

 「樹海化も諏訪には無かったんですねぇ……」

 

 端末での変身に喜ぶ歌野が溢した疑問。樹海化についての説明を楓がした後、彼女はふむふむと頷いた後に諏訪に居た時の事を話す。諏訪では敵がやってくるとそれを知らせるサイレンが鳴り、人も建物もそのままに戦っていたのだという。

 

 自分が居た時代よりも遥か未来。自分の時とは違う変身方法、戦うフィールド。勇者達の回りに浮いている小さな生物。幾つもの違うことに驚く歌野に西暦組と小学生組も共感する。

 

 「驚くよな。タマ達も精霊が……具現化? 実体化? してるの見て驚いたからな」

 

 「私達の時代では体の内部に入れていたからな」

 

 「“精霊”って新種の野菜か何かかしら? 私の知識には無いんだけど」

 

 「精霊も無かったんですね……」

 

 「というか、戦闘力も飛躍的に向上している気がするわ。パワーが漲るの」

 

 そう言って歌野は自身の武器である鞭を軽く振るう。その動作1つで諏訪に居た時よりも己の力が強くなっている……戦闘力が向上していると確信する。その事実に笑みを浮かべる彼女に、銀(小)と千景からも同意する声が上がる。他の西暦組、そして小学生組もうんうんと頷いていた。

 

 その最新版を常に使っていた勇者部6人……その中で、楓と美森以外の4人は自分達のシステムの基本的な部分が如何に恵まれていたかを改めて感じる。自分達が使っている勇者システムは、これまでの勇者達の戦いがあったからこそなのだと。そうして感謝している時……遂に敵が戦闘可能な位置まで近付いてきた。

 

 「ここから私の初参戦、記念バトル! 諏訪の誇りを胸に、いざ征くわ!」

 

 「我々も征くぞ!」

 

 やってくる数多のバーテックス目掛け、鞭を手に歌野が突っ込む。同時に若葉も声を上げながら突っ込み、他の近接戦闘型の勇者達も突撃する。遠距離型の勇者4人はいつものように楓が作る光の絨毯に乗り、飛び上がって上空の敵を殲滅しに掛かる。

 

 「っ!? 若葉、未来の勇者って空まで飛べるのね! 都会だわ! 未来だわ! 私も飛べるかしら!?」

 

 「残念ながら、あれは楓が特殊なだけだ! 飛びたければ彼に直接聞け! 彼なら快く乗せてくれるだろう、さ!」

 

 空を飛んでいる楓達を見て興奮が隠せない歌野に、若葉は苦笑い気味に大きな声で言いながら星屑を切り捨てる。歌野も興奮こそしているが戦闘に支障は無いようで、鞭を振るってバーテックスを打ち付ける。するとまるで刃物で切ったかのようにバーテックスの体が切断された。

 

 そうして敵を屠っていきながら、歌野は自分以外の勇者達の戦いを横目に見る。格闘戦を仕掛ける友奈達と新士。3人は拳に蹴りで、新士は爪も交えてバーテックスを打ち倒していく。夏凜と銀(小)はその手の2刀と2斧を振るい、時に短刀や斧を投げたりして高速で殲滅していく。

 

 風と千景、タマは武器の性質上どうしても大振りになったり隙が大きくなったりとすることがあるが、そこはサポートに秀でた樹、園子(小)が上手くカバーし、先の5人にも劣らない速度で倒して行く。

 

 上空の4人はその攻撃を殆んど外すことなく的確に敵を撃ち抜いていっており、下で戦う仲間達の援護も忘れない。周囲に、上空に仲間が、味方が居る。1人で前線に出て戦っていた時とは違う安心感と充実感に、歌野の顔に自然と笑みが浮かぶ。

 

 「はぁっ!」

 

 「若葉、流石ね! やぁっ!!」

 

 「歌野こそ!」

 

 そして、先に突撃したからか自然と近くで戦っていた若葉。勇ましく、そして凛々しく日本刀を振るう彼女と共に戦える事が、歌野には嬉しかった。声だけでなく姿を見られ、更に共闘することが出来ている。今、彼女のテンションは上がりに上がっている。

 

 「どんどん来なさい! 今の私は、ベリーストロングよ!」

 

 「私も歌野に負けていられないな!」

 

 程無くして、第一波の敵が全て倒された。空に居た楓達も地上へと降りてきて皆と合流し、一息入れる事にする。全員怪我も無くそれほど息も切らしていない。歌野を加えた記念すべき初陣は完勝と言って良いだろう。

 

 しかし、敵の反応はまだ存在する。休憩こそ入れるが警戒は怠らず、戦いの空気もそのまま。一同はいつでも戦えるように心構えはしておく。

 

 「ふふふ……タマ達もこの世界に来て調子が良いし、助っ人も加わってるし……勝ったな!」

 

 「敵も強くなってきている。油断はするなよ」

 

 「これだけの戦力だから、連携についても今一度話し合っておいた方がいいと思います」

 

 「ですね。仲間が増えるのは心強い限りですが、増えた数をしっかり活かさないと」

 

 「誰が指示を出して、どういう陣形を作るか……色々と議論になりそうね」

 

 「それに、相手もいつまでも制空権を取られっぱなしにはしないだろうし……こちらの戦術、戦力が対応された場合の事も考える必要があるねぇ」

 

 「そういう事を話し合える仲間が居る……エクセレントじゃない。いっぱい会議しましょう」

 

 球子がこれまでの戦いを振り返り、今の状況を見ながら自信満々にそう言い、若葉はそんな彼女に油断しないよう注意する。しかし、球子の言うこと分かるのだろう、その表情は苦笑いであった。

 

 杏と須美は戦力が増えたからこそ、今一度戦略なり連携なりを考える必要があると考えた。それに風が乗り、楓も顎に手を当てながら続く。彼の呟きには皆も頷いた。

 

 楓が射撃組を乗せた上で空を飛べると分かってから今まで常に制空権を取ることで戦いを有利に進めてきた。それが無くなったとしても、これまではそれが無くても問題無かったのだから戦える自信が勇者達にはある。

 

 しかし、仮に対応されてしまえばこちら側の戦術を1つ潰されることになる。だからこそ、その場合を想定しておかなければならない。そんな風に戦場で話し合える仲間が居なかった歌野にとって、この会話は新鮮であり、楽しいモノだった。そんな彼女の呟きに、勇者達は仲間が居るという事は心強く、嬉しいことであると改めて再確認する。

 

 「そうね……仲間が居る。当たり前に思えていたけど、素敵な事よね」

 

 「今回の出撃が終わったら、皆で食事をしましょう。より分かり合えると思うので!」

 

 「いいわねぇ。そういうコミュニケーションの取り方、大好きよ」

 

 「皆で美味しい蕎麦でも食べましょう。蕎麦は至高の食べ物だから」

 

 

 

 【えっ?】

 

 「えっ?」

 

 

 

 歌野がそう言った途端に時間が止まり、空気が凍る。瞬間、彼女は悟った。

 

 (……何……今のエアー……ま、ま、まさか……ここにいる皆……若葉と同じ!?)

 

 そう、ここに居る者達は皆、若葉と同じうどん派なのである。晩御飯にうどん、部活帰りにうどん、お昼もうどん、なんなら朝にもたまにうどん、例えインスタントであろうともうどん。話題もうどんであれば止まるところを知らず、味の好みは違えど大元がうどんであるのは変わらず。

 

 ここは四国、その中の香川県。うどん消費量日本全国堂々の第1位の県。その香川で四国を守り抜いてきた勇者達がうどん嫌いな訳が無い。つまり、ことうどんか蕎麦かの話において……ここは蕎麦好きな歌野にとって超アウェイなのだ。

 

 「蕎麦か……ここしばらく食べてないねぇ。白鳥さんは蕎麦好きみたいだし、折角だから歓迎会もかねて蕎麦を食べに行こうか」

 

 「そうですねぇ。どうせなら好物を食べて欲しいですし……たまには蕎麦も良いですねぇ」

 

 だからこそ、楓と新士の朗らかな笑みと共に出た発言は歌野にとって福音ですらあった。それは土地が土地だから仕方ないと半ば諦めていた彼女に救いであり、希望であり……獲物であった。

 

 (最初は蕎麦派にする為の種を撒くところからと思っていたけれど、これは思わぬラッキー! 若葉達と同じくうどん県である香川に居ながらのその思考はまるで如何なる作物にも対応する良質な土壌! これは大事に育てるべきよね……まずはうどん寄りであろうその考えを少しずつ蕎麦派に向けていかないと……ハーベストの時まで慎重に、大事に、ね」

 

 「あのー、全部聞こえてますけど……お兄ちゃん達をどうしようとしてるんですか……」

 

 「愉快な奴のようだ。気に入った」

 

 「おや、自分は白鳥さんに蕎麦派にされちゃうのかねぇ? 自分としては蕎麦……と言っても焼きそばの方ですが、まあ好きなので吝かでは……」

 

 「歌野で良いわ。あなたは楓君、だったわね。勿論、無理強いはしないわよ? 蕎麦もうどんも、勿論焼きそばも全部美味しいでいいんだし……いいんだけども……それでも何か捨てられないこの拘り……なにかしら」

 

 「愛よ」

 

 「ラブ!」

 

 「あるいは、魂!」

 

 「ソウル! ソウルフードって言うわね、確かに」

 

 途中から思考が口に出ているので考えが駄々漏れになっている歌野に樹がジト目で見ながらツッコミ、中々に愉快な奴だと球子は快活に笑う。楓と新士は別に蕎麦派だうどん派だという派閥争いには興味が無いのでくすくすと笑いながら冗談混じりに呟く。

 

 歌野はそんな2人が気に入ったのか若葉と同じように名前呼びで問題無いと伝え、蕎麦派にするとは言ったものの……と悩ましげに頭を振る。そんな彼女に風と銀(小)は強い語気でそう言えば、歌野は納得したように頷いた。その後の若葉の言葉により、うどんと蕎麦、どちらも認め合いつつ切磋琢磨していこうという所で話は終わった。

 

 「そのっち、そのっち起きて」

 

 「のこちゃん、そろそろ次の敵が来るよ」

 

 「……おおう、一瞬寝ちゃった~。でも集中力はバッチリ回復したよ~」

 

 「これで戦闘時は冴え渡ってるから凄いよな。タマなんて1度寝たら最低10分は起きないぞ……抱き着かれタマま微動だにしない新士も中々だけどな」

 

 「私も歌野ちゃんって呼んでいいかな? 連戦だけど大丈夫?」

 

 「オーケーオーケー。どんな敵が来ても畑の肥料にしてあげる。絶好調だし」

 

 「バーテックスを畑の肥料!? 若葉ぁ、そんな事言ってるとまたひなたに怒られるぞ」

 

 「今のは私の発言じゃないだろうが! 冗談でもひなたに言うなよ? 絶対言うなよ!?」

 

 「それはフリという奴ですかねぇ? 若葉さん」

 

 「違う! 楓も絶対に言うなよ!?」

 

 これまでの会話の途中でいつの間にか新士の右手を抱き枕に立ちながら寝ていた園子(小)を須美と新士に2人で起こし、起きた彼女の言に球子がうんうんと頷きながらそう言った。実際、園子(小)は立ちながら寝るという奇行や天然のような発言に目が行くが、そのスペックは勇者達の中でも高い。頭脳や発想に至っては正しく“天才”の一言である。

 

 4人の会話を聞きながら友奈が心配そうに歌野に問うが、返ってきたのは自信満々な言葉。畑の肥料にするという冗談か本気かわからない発言に球子がにししっと笑いながら若葉に言えば、彼女にしては珍しく本気で焦った表情で念押しし、楓が悪乗りすれば更に焦ったように念押しした。若葉がこうして焦るのには、勿論理由がある。

 

 なんと若葉、西暦の時代でバーテックスの星屑を実際に食った……正確には食いちぎった事がある。味は不味く喰えたものじゃないらしい。何故そんな事をしたのなと言えば、西暦の時代では星屑が人々を食い殺していたからその報いを受けさせる為であるとか。後にひなたにそれがバレ、しこタマ怒られたらしい。その怒り様が怖かったのだろう。そんな若葉を見て、歌野はくすくすと笑った。

 

 「ふふ、改めて思うけど、若葉って通信の時に抱いてたイメージとほんのり違うみたいね」

 

 「ふ……それを言うなら歌野も同じだろ?」

 

 お互いがお互いに抱いていたイメージとは異なる人間性である事を明かし、笑い合う。そうして和やかな雰囲気が漂い始めた時、美森が驚いた様子で口を開いた。

 

 「っ!? 敵が来たけど……これは、なんて大きさ……」

 

 「んん……すっごいビッグ。あれはちょっと肥料には大きすぎるわね」

 

 「私達でも初めて見るサイズだな。これは強敵だぞ」

 

 3人以外の勇者達もその姿を見て唖然とする。形としては鳥のようにも見えるだろうか。後に“レクイエム”と呼称されるようになるその疑似バーテックスは、正しく“ボス”と呼べる威圧感を持って勇者達に迫る。その威圧感に一瞬たじろぐ勇者達だったが、直ぐに戦闘態勢に入る。そこに、怯えの表情はない。

 

 「まあ、敵も進化してくるのは知ってたけど……それれにしたってデカいじゃないのよ」

 

 「見るからに威圧的ね……ボスと言ったところかしら」

 

 「ど、どんな攻撃をしてくるんだろう?」

 

 「大丈夫大丈夫! こっちにはこれだけの勇者が居るんだもん!」

 

 「そうだね。皆で力を合わせて、えいやーってやっつけちゃおう!」

 

 夏凜と千景、樹がレクイエムに対して驚きと不安がない交ぜになったような声を出すが、そんな声とは逆に明るく友奈と高嶋が告げる。それには勇者達全員が内心で同意し、頷いた。そうだ、こちら側にはこんなにも頼もしい味方が多く居るのだと。

 

 相手の数が多かろうが、その体がとてつもなく大きかろうが関係ない。星屑との戦いで大量の敵との戦闘に慣れている西暦組。星座の名を冠するバーテックスとの戦いで大型の敵との戦闘に慣れている神世紀組。連携は手慣れたもので、それぞれ戦った事がなかった対多数、対大型の経験もこの世界に来てから積んだ。勝てない通りなど無い。そもそも、負けるわけにはいかないのだから。

 

 「おお、三つ子の内の2人が良いこと言ったわ。全くその通り! 皆、合体奥義よ!!」

 

 「友奈と楓以外そんな技無いけど、力を合わせるのは分かったわ! 後ついでに、友奈達は三つ子じゃないからね!?」

 

 「2人には合体奥義があるの!?」

 

 「ありますよ。それはさておき、敵は強大。されど勇者部五箇荘。成せば大抵……」

 

 「なんとかなる、だよね? お姉ちゃん」

 

 「イェース。じゃあ包囲していきましょう!」

 

 「突っ込むのは、この火の玉ガールに任せてください!」

 

 「おっと、銀ちゃんに遅れる訳にはいかないねぇ」

 

 「結城ちゃん、私達も!」

 

 「うん! よーし、行っくぞー!」

 

 まさか半分冗談で言った合体奥義を使う者が居ると知った歌野は驚きの声を上げ、美森はそれを肯定しつつ五箇荘の1つを呟き、樹が続く。成せば大抵なんとかなる。実際、大抵のことは勇者達はなんとかしてきたのだ。今更新しい巨大な敵が1体現れた所で何するものぞ。

 

 まず銀(小)と新士が突っ込み、友奈達が続く。他の勇者達も続き、遠距離4人はまた光の絨毯で空を飛ぶ。そしてまた、戦いは始まった。

 

 数多存在する、星屑を初めとした中、小型の疑似バーテックス達。それらを銀(小)の双斧が、新士の拳と爪が、友奈と高嶋の拳が、夏凜の双剣が、若葉の刀が、園子(小)の槍が、球子の刃付きの盾が切り裂き、貫き、打ち抜く。

 

 少し遅れ、風の大剣が、千景の大鎌が、歌野の鞭が、樹のワイヤーが多数の敵を一気に凪ぎ払う。上空からは楓の光の弓が、美森の狙撃銃が、須美の弓が、杏のボウガンが距離に関係なく敵を撃ち抜く。例え敵が近付いたとしても楓が操作する光の絨毯に攻撃を当てられない。武器の同時操作は、楓が得意とすることなのだから。

 

 やがて、レクイエムも攻撃を始める。体にある幾つかの赤い球体から放たれる、獅子座を思わせる太いレーザー。或いは光の玉を放ち、それを広範囲に渡って爆発させる。

 

 「獅子座と攻撃の仕方が似てる? 皆、レーザーみたいなのが来るかも知れないわ! 横に避けて!」

 

 「じゃああの光の玉も何かあるかも~。アマっち先輩達、お願いします~!」

 

 「了解だよ、小のこちゃん」

 

 そう、攻撃の予兆が獅子座に似ている。そして、その獅子座と戦った事がある勇者部だからその攻撃に気付けた。美森の声で全員がレーザーに当たることはなく、爆発する光の玉にも何かあるだろうと予想した園子(小)に言われて撃ち抜いたことでそれが爆発するのだと誰も巻き込まれることなく把握出来た。

 

 攻撃の予兆と方法が分かってしまえば、もう勇者達が負けることはない。それどころか予兆が知れたのだ、遠距離組がその攻撃を全力で邪魔をすることだって出来た。巨体故にダメージが通りにくいし、その巨体そのものの動きに当たれば小さくないダメージを負うだろう。しかし、最早その戦闘は一方的と言ってよかった。

 

 攻撃しようとすれば射撃組に邪魔される。進もうとすれば友奈と高嶋の勇者パンチ、風の巨大化させた大剣で真っ向から止められる。動きが止まれば銀(小)と夏凜、新士と千景がその体を駆け回りながら切り刻み、樹と球子はワイヤーと投げた盾で少なくなった雑魚の掃討。そしてレクイエムがダメージの許容を越えたのかぐらりと傾いた時。

 

 「トドメを刺すぞ、歌野!」

 

 「ええ、行くわよ若葉!」

 

 「「はああああっ!!」」

 

 若葉の刀と歌野の鞭が×字を描くようにレクイエムの体を一閃する。数秒の間、レクイエムは身動き1つせず佇み……やがて、虹色の光となって消滅。念のためにと上空の杏が肉眼とレーダーで残りの敵を確認するが、反応はどこにもない。それを全員に伝え、皆が警戒を解いて力を抜き……。

 

 

 

 「我々の勝利だ!」

 

 「イェイ! ファーストミッション、ビクトリー!」

 

 

 

 

 そんな2人の高らかな勝鬨の声が、樹海に響いたのだった。




原作との相違点

・なんかたくさんありました



という訳で、原作4話の戦闘部分でした。ゆゆゆいでは戦闘のアニメ映像なんか無いわけですから、割りと戦闘シーンはあっさりになってしまいますね。というか私の技量ですとこれだけのキャラの戦闘シーンをがっつり書くとそれだけで1、2話消し飛ぶ……かも←

前書きのキーワード部分は勿論楓の変身シーンです。なぜここまで全力で書いてしまったのか……私にも分からん。変身シーンや戦闘シーンは書くの好きですがね、需要あるかどうかは別にして。因みに、彼はまだ変身を2回(散華状態、新士)を残している。この意味が……分かるな?

後はうたのんと若葉の絡みを書けたので満足。代わりに巫女組は控え目でしたが、次回はきっと出てくれるでしょう。

それから、前回のコメントでオリキャラ好きだと書いて下さった方、ありがとうございます。養父は相変わらず嫌われもので何より(?)。今後も愛されるオリキャラ、愛される作品であれるように頑張って参ります。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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