気付けば本編ゆゆゆいも10話目。しかし原作的にはその半分の5話部分という。このペースならマジで60話越えますね。
防振りが終わり、デジアドのリメイクが始まり、ブルーオースやら絵師神やらも配信されと本編書いてる間に色々と起きました。FGOは久々にピックアップが仕事して無事お母さんになりました←
コトダマンも銀魂イベント来ましたね。伊藤さんと高杉を無事満幅に。ゴリラは勝てる気がしません。いやマジでなんだあの変態ゴリラ体力多過ぎるだろ……。
感想で知りましたが、本話投稿時点でお気に入り数がゆゆゆ作品で最多でした。お気に入り多い順で探すと本作が1番先に来るということ……こんなに嬉しい事はない。皆様、多くのお気に入り登録、誠にありがとうございます!
さて、いよいよあの2人が……。
諏訪の勇者である歌野ちゃん、巫女である藤森さんが加わってからしばらく。その間に起きたことは、今までとそう変わらない。2人が加わったことでより賑やかになった勇者部の活動をしたり、たまに寄宿舎で皆で一緒に食事をしたり、前にも行った蕎麦屋に行ったり、かめやに行ったり。
強いて言うなら、歌野ちゃんに“農業が出来る良い場所はないか”と聞かれたことくらいだろうか。友奈と一緒に居た時にそう聞かれ、2人で考えた結果讃州中学近くの拓けた場所を教えた後、3人で実際にその場所に向かってそこで農業することが決まったくらいだ。勿論、その場所が本当に使っていいのかは友華さん経由で責任者の人に聞いて許可をもらっている。
そして今日もまた、いつもと同じように自分達は勇者部へと集まっていた。流石に手狭になってきたなと思うと同時に、圧倒的なまでの男女の人数差に少し参ってしまう。救いなのは、自分という存在に彼女達がそれほど悪感情を抱いていないことだろう。これで蛇蝎の如く嫌われていたら目も当てられないところだ。
「ヒナちゃんヒナちゃん。ここも大分賑やかになったね」
「はい。勇者だらけの部屋、勇者ルーム。なんと心強い響きでしょうか」
「……正直狭いわ。犬吠埼さん、なんとかならないかしら」
「元々8人くらいの部室だからねぇ。まあ我慢して頂戴な、千景」
窓際の壁に寄り掛かってのこちゃんのネット小説を見ながら友奈とひなたちゃんの会話を微笑ましく聞いていると、千景さんと姉さんのそんな会話が聞こえてくる。そういえばこの部室は、元々は8人の部室だったと思い出す。
勇者を1ヶ所に集める為の部だった勇者部。最初は自分と姉さん、友奈と美森ちゃんの4人だった。そこに樹が入学して加わり、後から夏凜ちゃんがやってきて、散華が戻ってからのこちゃんと銀ちゃんが入部した。それで8人だったのが、今では21人。倍以上とは、随分と増えたものだと改めて思う。
「じゃあ空間を確保する為に、私はぐんちゃんの膝にすーわろっと♪」
「……まあ、人が多いということは戦力も増えて……良いことだわ、うん……」
「じゃあわたしもアマっちの膝の上~♪」
「こらこら……もう、仕方ないねぇ」
「カエっち、わたしの膝の上に座る~?」
「どうしてその考えに至ったんだい? 流石に座らないよ」
宣言通りに椅子に座っていた千景ちゃんの膝の上に座った高嶋さん。座られた千景ちゃんが満更でもなさそうなのを見てついくつくつと笑ってしまう。少し視線をずらせば、その2人に影響された小のこちゃんが同じように椅子に座っていた小さい自分の膝の上に座る。
相変わらずスキンシップが激しいなと思っていると、そんな2人の隣の椅子に座っていたのこちゃんがぽんぽんと自身の膝を叩きながらそう言ってきた。唐突な提案に苦笑いしつつ、首を降って拒否する。逆ならまだしも、女の子の上に座るのは流石に、ねぇ。
「ヒナちゃん神奈ちゃん水都ちゃん質問! これで召喚される勇者は全員なのかな?」
「ううん、後2人呼……来る予定だよ」
「その2人はちょっと特殊なケースという神託が……」
「それは、神樹様が“特殊なケース”って言う言葉を使ってるんですか?」
「ね、神託ってどんな感じで来るの?」
ネット小説を一旦閉じ、友奈達の会話に耳を傾ける。勇者……まだ増えるんだねぇ。只でさえ部室がいっぱいいっぱいなのに、これ以上増えると満員電車みたいになりそうだ。勿論、戦力が増えるのは心強いし、まだ見ぬ勇者に会ってみたい気持ちもあるが。
「明確な言葉ではなく、イメージとして伝えてくる感じだね……」
「それを私達が解釈していくんです。大抵は分かりやすいイメージですが」
「あくまでもイメージだからね、たまに解釈違いをされ……じゃなくて、しちゃったりする時もあるんだ」
「へー、そうなんだね。ウチの所は精霊が色々教えてくれるケド」
そう、巫女の3人がそれぞれ友奈の質問に答えた時、自分の視界に見知らぬ少女が映った。少女はごく自然に会話に入り、溶け込んでいる。いつから居たのか、自分には分からない。それくらい唐突に、彼女は現れた。
「そ、それは便利だね……」
「……え? いきなり何? 誰?」
「ね、ねぇうたのん……知ってる人?」
「聞いてみればいいじゃない。エクスキューズミー。あなたはどなた?」
「私は秋原 雪花。北海道から来た勇者だよ。宜しくお願いシャス」
「北海道とはまた、随分寒いところからよく来たねぇ」
夏凜ちゃんが驚き、水都ちゃんと歌野ちゃんが軽く相談した後に聞くと、少女はそう名乗った。眼鏡と少し大きいカチューシャが特徴的だねぇ。眼鏡を掛けている人は知り合いだと安芸先生くらいだから何だか新鮮な気分だよ。
「北海道!! ……北海道? そこって寒いの? 楓くん」
「あ、そうか。神世紀の人はピンと来ない……あれ、でも楓くんは知ってるんだ? そう、北海道は上の方のさむーい所だよ」
「……まあ、知識としては知ってるだけだけどねぇ。気温が零度を普通に下回ってたり、雪掻きが必須だったり……まあ、この四国と比べると寒さとか積雪とかで中々大変な場所ってイメージだけど」
「あ、あー! なるほど、北海道! 試される大地! ようこそ勇者部へ! 握手握手!」
「握手握手。ふふ、面白い人達で良かった。それに、本当に男の勇者って居たんだね。北海道のことも知ってくれてるみたいだし、こりゃびっくりだ」
ついうっかり前世の知識のままに喋ってしまっていたが、そう言えばここでは四国しかない上に周りは火の海だから他の都道府県の事を知ることなんて無かったか。流石に資料とかはあるし社会の授業にもある程度出ることは出るからそこまで不審には思われなかったみたいだが……。
試される大地という友奈の北海道の認識についまた苦笑いしつつ、握手する彼女達を見る。どうやら少女……秋原さんはノリが良い性格のようだ。友奈とも直ぐに仲良くなれたようだし……いや、これは友奈の人徳かな。
「えーと、ここにも1人いらっしゃるのですが……」
そう言ったのは須美ちゃん。そちらへと目を向ければ、彼女の隣には褐色の肌に無表情の、姉さんと若葉さんよりも少し高い身長の少女が居た。彼女もまた、秋原さんと同じようにいつの間にか召喚されていた勇者なのだろう。秋原さんとは違い、無口なようだ。
「お、お名前が分からない……水都さん、神樹様から聞いていますか?」
「し、神樹様はそこまではケアしてくれないかな」
(だって“私達”の声は普通は聞こえないからイメージしか送れないんだもん……名前なんてどうイメージしたらいいのか分かんないし……)
「……古波蔵 棗。沖縄から来た」
「北海道の勇者に続き、今度は沖縄の勇者ですか……両端からよく来てくれましたねぇ」
「楓くん楓くん。沖縄ってどんなところ?」
「北海道とは逆に南の方にある暑いところだよ。海が綺麗らしくて、民家の庭に普通に果物とかが生ってるとか……」
「おお! なんか凄そう! あなたもようこそ勇者部へ! 握手握手!」
「……ん。沖縄の事を知ってくれているのは嬉しく思う」
何やら申し訳なさそうというか、どんよりしている神奈ちゃんが気になったが、彼女の自己紹介に耳を傾けていると友奈から聞かれたので答える。生憎と北海道も沖縄も前世と今も無縁だったから本当に知識だけだ。いつか、現実の世界でその2つの場所に行けるようになるといいんだけどねぇ。
友奈が雪花の時のように棗と握手した後、元々部室に居た21人は今度は自分達の番だということで自己紹介を順番にしていき、この世界の現状とお役目の事の説明を風がしていく。流石に21人ともなれば相応に時間が掛かるし、説明そのものもそれなりに掛かる。が、2人は文句を言ったり表情を歪ませたりすることもなく、自然体で黙って聞いていた。
「以上が、それぞれの自己紹介と現在の状況ね。だいたい分かったかしら?」
「把握した。分かりやすい説明、感謝する」
「同じく。状況は精霊からだいたい聞いてたけど、更に理解出来たよ」
「ん? 精霊から聞いてたってそれ……アンタの精霊も喋ったりする訳?」
「そだよ。まぁ心の中で……テレパシーで会話するって感じだけどね」
「驚いたな。テレパシーとは言え、会話できるまで明確な言葉を発することが出来る精霊とは」
雪花の返答に疑問を覚えた夏凜が問い掛けると、雪花はさも当然のようにそう返し、若葉が感心したように頷く。それは他の者達も同じであった。
現状、勇者達の精霊は言葉を発する事はない。せいぜい夜刀神が“シャー”と鳴いたり、夏凜の義輝が幾つかの単語を発するくらいで流暢に会話をするには至らない。だが、雪花の所ではテレパシーに限るが会話出来ると言うのは予想外だった。自分の精霊だけが喋られる事を少し自慢に思っていた夏凜も、思わず“やるじゃないの”と言いつつ心に少しダメージを受けていた。
「北海道と四国で結構差があるんですねぇ」
「そこは神様の性質の違いなんじゃないかな。お互い土地柄の加護って点では同じだろうけど」
「そうか……北海道の神様と神樹様では神様の系統が違うんですね」
「こっちの神様は“カムイ”って呼ばれてるよ。沖縄の神様も、独自の系統だよね?」
「そうだ。私のは海の神……こう……ええと……」
雪花の言うとおり、カムイは日本の一般的な八百万の神々とは系統が異なる。簡単に言えば、カムイとは北海道アイヌというアイヌ系民族の神であり、雪花に勇者としての力や精霊等の加護を与えていたのはこのカムイである。地の神々の集合体である神樹とは別の神であり、必然的に与えている力の内容等にも違いが出るのだろう。
楓と杏が納得したように雪花の説明に頷きながら、彼女は棗の所もそうだろうと話を振る。棗は頷き、自然と他の者達の視線も集まる中で説明しようとするが……中々上手く言葉に出来ないらしい。そして少し経ち、ようやく口を開いた彼女が言ったのは。
「海の底から、ゆらっと来た……分かるか?」
「分かります」
「むしろ簡潔であたし達的にはありがたい」
「良かった」
「海の底から、ねぇ……確か、海の底に封印された神が居たような。いあいあ、だっけ?」
「楓君、それ以上はいけないわ。というか何で知ってるの……神世紀にもTRPGってあるのかしら……?」
棗の言葉に思わずずっこけそうになるのが数人程居たが、行動派の銀達を初めとした数人は納得がいったようで頷く。ふと楓が思い出したように呟いた言葉には千景がツッコンでいた。尚、この会話の意味を理解出来ていたのは杏と園子達くらいである。
「……私達の時代で、北の大地と南西の諸島から生命反応があったって聞いていたけど、それ……」
「私達のことでしょ。今回はウチの神様と神樹様とで同盟を組んだって感じね。それで参戦出来たの」
(目的の相手が天の神なのは同じだし、人間を守護するという気持ちも同じだしね……)
「現実世界でもこうして合流出来るといいが……どうも神樹の中と現実世界では勝手が違うようだ」
(“私達”みたいに大元の神話体系が同じならともかく、他の神話体系の力が混ざっちゃうと色々と不具合が起きかねないからね……下手したら力に耐えきれずにパーンってなっちゃうかも知れないし)
気を取り直した千景が思い出すように言うと雪花が肯定する。西暦では雪花と棗、諏訪の歌野のように日本各地に勇者が居た。しかし様々な要因で命を落としていき、その数もどんどん減っていってしまったのだ。その勇者の数が最終的にどうなったのかは、神世紀の歴史と現状が示している。時折うんうんと頷く神奈を何人かが不思議に思いつつ、話は続く。
「でもいいな、ここに居る人達はチームで戦えて。ちょっとは楽出来るでしょう?」
「楽なんて事はないぞ。毎回毎回必死だ」
「こっちは独り身だから、戦う最中歌とか自分で歌って気分を盛り上げたりしてるよ。イェアーって」
「……それは確かに大変だな」
「その話を聞かされると、自分達は確かに楽な部分があるかもしれませんねぇ。人数に武器、戦略。取れる手段も頼れる仲間も居るし、ねぇ」
雪花に言われ、そんな事はないと若葉が否定する。確かに仲間というのは頼もしいし、1人よりも複数居る方が戦闘は楽に映るだろう。しかし、相手はバーテックス。幾ら勇者達の一人一人が強いとは言え、その物量は決して無視できない。西暦組の元の世界ならば精霊バリアも無いため、一撃でも食らえばそれだけで戦況はひっくり返されてしまう。決して、楽だとは言えないのだ。
しかし、そうは思っていても雪花の……1人で戦う勇者の話を聞くと確かに自分達は恵まれているのだとも考える。お互いの短所を補い合い、長所を伸ばすことが出来る。背中を預けられる、信じられる相手が居る。支え合える人が居る。それは決して、1人では得られないかけがえの無いモノ。勇者達は改めてそう認識し、内心仲間の存在に感謝した。
「うたのんと同じ感じなのかな」
「私はみーちゃんが居るから独りじゃないわよ。心の栄養は常にマックス! サンクスみーちゃん」
「う、うたのんってば……でも、嬉しいな。私の方こそ、サンクス……」
「ビュオオオオオオウ……創作意欲を高める波動を感じるね~」
「そのビュオオオオオオウってなんだい?」
「波動をキャッチした音だよ~」
「今、一瞬風が吹いたような……というか自分で口で言うのか。波動って何さ」
1人で戦う勇者、と聞いて水都は諏訪で1人戦っていた歌野を思い浮かべ、そのまま口にするが本人からは水都が居るから独りではないと否定が入り、感謝される。水都にとって歌野が大事な存在であるように、水都もまた歌野にとって大切な存在なのだ。
お互いに見つめ合い、感謝し合う2人から何かを感じたのか、園子(中)が両手を合わせながら目を輝かせる。彼女の口から出た謎の擬音について楓が聞くとあっさりとそう返し、銀(中)も疑問に思ったがそれは答えられる事はなかった。
「何だか皆、凄く真面目なんだね。もっとそこそこでいいのににゃあ」
「お役目でそこそこなんて、そんな事は……」
そう、雪花の言に須美が言葉を続けようとした時、部室に聞き慣れたアラームの音が鳴り響く。瞬間、新しく召喚された2人を除いた者達が一斉に端末を手に身構えた。そして樹が反応出来ていない棗に近付き、口を開く。
「あ、あの、これは出撃の合図……なんですけど。いきなりで大変でしょうが……」
「分かった。戦闘は任せろ」
「……か、カッコいい……お兄ちゃんとはまた別のカッコよさが……」
「秋原さんも大丈夫ですかねぇ?」
「うん、問題なし。最初くらいは張り切らせてもらおうかにゃあ」
何やら樹が小声でぼそぼそと言うのを不思議に思いながら楓が雪花に聞けば、彼女からはそう返ってくる。何とも頼もしい言葉だと彼が朗らかに笑うのと同時に、世界は極彩色の光に包まれた。
「全身に力が漲っているのが分かる。この時代の勇者システムは素晴らしい戦闘力だ」
「びっくりの力だよねぇ。楓君なんて空まで飛んじゃうし……いやー、良い経験したわ。あ、ちょっと素振りするから離れていてね」
(白い勇者服に黒い勇者服……なんとも対称的だねぇ)
(楓以外にも白い勇者が居たなんて……あ、でも杏も近い色してるし、ちび楓のオレンジと球子の勇者服も被ってるし、夏凜と銀と千景の赤もそうだし……案外、色が被るのも珍しくもないのかしらねぇ)
樹海化した世界で、早速と勇者服姿に変身した勇者達。バーテックスの反応がある場所まで楓の光の絨毯で移動して少し離れた場所に着陸した後、自身の時代との勇者システムの差が分かるのか、漲る力に少し興奮している様子の2人。その内の1人である棗に、勇者達は驚きの表情を浮かべていた。
黒い民族衣装風の勇者服を着ている雪花に対して、棗は白い勇者服を着ていた。それだけでなく、黒かった髪も白く染まっている……まるで楓のように。本人達は特に気にしていない様子だったが、他は風を筆頭に驚きを隠せていなかった。
「……ようし、チューニング終わりっと。棗さんは体動かさなくて大丈夫?」
「大丈夫だ。移動している間に軽く確認しておいた……気遣い、礼を言う」
「んふふ、新規参戦同士、仲良くしましょーね。握手握手」
「うん……握手……」
園子ズが持つ槍よりも幾分か短く細い槍を振るい、突き出して西暦の時の自身と最新の勇者システムになった今の自身の動きの違いを認識し、振り回されないように慣れようとしていた雪花。少しの動きで馴れたようで、最後にくるんと槍を回して石突きを地面に置いて動きを止める。その動きを見ていた者達はその馴れた様子に北海道を守っていたのは伊達ではないと悟る。
雪花に問われた棗は彼女のように動くことは無かったが、楓の光の絨毯に乗っている間に既に慣れていたらしい。棗は気遣われた事に無表情ながら礼を言い、雪花の握手にも対応する。そんな和やかなやり取りが行われていたが、その空気を壊す敵が現れた。
「っ、バーテックスを複数体確認! この世界に来てから最大規模の侵略よ」
「あ、あんな大きい敵がいっぱい来るなんて……で、でも皆が居る。私も、頑張る」
「そういう事だな、あんず。なぁに、タマに任せタマえよ。ちょちょいのちょいだ!」
「球子さんの言葉には、毎回励まされます」
「頼もしいよねぇ。毎回盾投げた後に隙が出来ては自分達でフォローすることになってるけど」
「うぐっ……こ、今回は大丈夫だ! 見てろ楓! タマ大明神は、勉強以外は何でも無敵なんだぞ!」
(土居さんってホント、姉さんに似た反応をするよねぇ……弄るとたのしい)
美森が言った通り、バーテックスの大群が現れる。それも今までよりも大量に。しかも杏が呟いた通り、大型のバーテックスも数体向かってきていた。相変わらず何ともビジュアルの説明に困るそれらは、その大きさも相まって小型、中型バーテックスとは違う威圧感を勇者達に与える。
まるで壁が迫ってくるかのような疑似バーテックス、だらりと複数の触手を垂れさせているような疑似バーテックス、円盤から細く長い牙が延びているかのような疑似バーテックス。さながら腹部がない蜘蛛のようにも見える疑似バーテックス、エビに見えなくもないような姿をした疑似バーテックス。
それぞれ後に“カノン”、“セプテット”、“カプリチオ”、“ロンド”、“スケルツォ”とデータ状呼称される大型の疑似バーテックス達である。これだけの大型が同時に出てきたのは初めての為に少し気後れしたが、勇気を出す杏に球子が胸を張って言い、須美はそう言って頷く。
楓も須美に同意はするが、これまでの戦闘でフォローすることも多かったのでくすくすと笑いながらそう溢す。身に覚えが有りすぎる球子は否定することなく、今回はそうはならないと楓を指差しながら宣言。そんな反応をする彼女を見て、楓はその反応を楽しみながら背筋に少しばかりゾクゾクとした危険な陶酔感のようなモノを感じていた。
「えーと……な、な、棗……アンタ、大丈夫?」
「……」
「あ、これ全然大丈夫ね。既に気を練ってる。頼もしいじゃない」
「凛とした佇まい……私、棗さんのファンになりそうです」
夏凜が黙ってじっとしている棗を気遣うように聞いてみるが、本人はバーテックス達を見据えながら静かに戦意を高めていた。この世界に来てから間も無く戦闘に来ているにもかかわらず戦闘態勢に入っている彼女に頼もしさを覚え、樹は樹で今まで勇者部に居た者達とは別の凛とした姿に心を掴まれている。
「おぉー、敵さんでっかいなー。そして複数体かぁ……先生、今日は初戦闘って事で自分、見学いいですか?」
「本当に怖いならそれもありでしょうけど……違うわよね? アンタ絶対強いタイプでしょ。楓みたいな一人称使ってふざけてるし」
「ふひー、これを相手にするのは中々骨ですなぁ……」
棗とは対称的にバーテックス達の姿を見た雪花は少し眉を下げ、口調だけは不安そうに、後ろ向きな様子を見せる。が、風はその口調や言葉の割に後ろに下がる姿勢を見せない事からそんな訳はないと否定する。雪花としてもそこまで本心という訳ではないのだろうが、彼女自身バーテックスと言えば星屑のような小型ばかりと戦っていたのだろう、大変そうだとは思っているようだ。
確かに、大型のバーテックスに加えて星屑を初めとした小、中型も多数存在しているのだ、それらを相手取ろうとするのは大変であるし、無謀とも言えるかもしれない。しかしそれは、独りで戦うのならば、の話である。
「だから、連携すればいい」
「そうだよせっちゃん! 皆が居るもん!」
「力を合わせれば、大抵何だって出来るよ!」
「前衛はアタシに任せろー!」
「いざとなれば自分が駆け付けますよ。足には自信ありますからねぇ」
「ここに居る全員、とっても頼れる仲間ですよ~」
最初に若葉、友奈と高嶋が続き、銀(小)と新士と次々に雪花に、そして棗に向かって声を掛け、園子(小)が締める。この場には雪花だけではない、棗だけでもない。2人を除いても、総勢16人もの勇者が居るのだ。
「貴女は今まで独りだったから個人技で戦わざるを得なかったでしょうけど……今はフレンドが居る。心強さにびっくりするわよ。仲間との連携……やってみれば分かるわ」
「単独で戦闘していたっていう貴女の言葉だと説得力マシマシだね。そういう事なら、連携してみましょ。秋原 雪花、そこそこにやりまっせ!」
「おおい!? そこそこじゃ困るぞ!」
「古波蔵 棗、戦闘を開始する。人類の敵……花により散れ」
「か、カッコいい……!」
「女の子相手に失礼かもしれないけど、本当にカッコいいねぇ。自分もファンになりそうだよ。同じ白い勇者で、こうも違うんだねぇ」
「大丈夫! 楓くんもカッコいいよ!」
「ふふ、ありがとねぇ、友奈」
水都が居たとは言え、雪花達と同じように諏訪で独りで戦わざるを得なかった歌野。彼女もこの世界に来てからの日々を皆と共に戦うことで、独りではなく仲間と共に戦うことの頼もしさや心強さを感じている。雪花達の戦う環境を最も理解出来る彼女だからこそ、その言葉は雪花の胸に響いた。
先程までの後ろ向きの様子から一転、やる気を出す雪花。だが、その口から出た言葉は少し頼りなかったので思わず若葉がツッコンでしまう。棗は己の武器であろうヌンチャクを手に持ち、銀(小)と新士と共に先にバーテックス達に向かって行く。その際の台詞に、杏は胸をときめかせていた。
その近くに居た楓もまた、棗にカッコいいという感想を抱いていた。妹と同じく、ファンになってしまいそうだとも。同じ白い勇者である楓だが、その言動や雰囲気はあまりに違う。それはただの感想だったのだが、どう感じたのか友奈は楓の前に出てぐっと両手を握りながら満面の笑みでそう言った。そんな彼女に、楓も朗らかな笑みで感謝する。
それからは皆意識を戦闘のモノへと変え、いつものように前衛は突っ込み、中衛はそのサポート、後衛は楓の光の絨毯で空中の敵と下方の味方の援護。今回はその前衛に棗を、中衛に雪花を交えていた。
「ふっ! はぁっ!!」
「せいや! やっ!」
ヌンチャクを振るう棗。一見すればその武器は攻撃範囲が狭く、扱いも難しそうではある。しかし、彼女が振るえばそれは小型バーテックスを粉砕し、流れるような連撃を与えることで中型も難なく撃破する。それはすぐ近くで戦う若葉や風、友奈達に夏凜、銀(小)、新士に心強さを感じさせ、自分達も負けていられないと奮起させるには充分だった。
槍を振るうのは雪花。近付くバーテックスは横凪ぎに、或いは貫いて倒し、離れた場所に居るバーテックスにはその手の槍を投擲することで撃破する。まさかの武器を手放すという行為に近くに居た樹と園子(小)、千景、球子、歌野が驚愕の表情を浮かべるが、彼女が投げた筈の槍がバーテックスを貫きながら独りでに手元に戻ってきてキャッチする様を見て再度驚愕する。
「いやはや、北海道と沖縄の勇者も凄いねぇ」
「本当、頼もしいわね」
「私達もお2人に負けて居られませんね」
「そうですね。まずはいつも通り、制空権を取りましょう」
その様子を上空から空のバーテックス達を撃ち落としながら見ていた4人は感嘆の息を吐き、地上の皆にも負けていられないと同じく奮起。光の矢を、銃弾を、数多の矢を放ち続けて撃破速度を上げていく。
「うわー、何あの弾幕。あれ4人だけで張ってるってマジですかい」
「お兄ちゃん達は凄いんですよ!」
「あんずもやるもんだろ?」
「わっしー先輩とわっしーもですよ~」
「ね、味方が居るって凄く心強いでしょう?」
「あはは、うん。こりゃ心強いわ」
雪花が空の戦いを見て驚きの声を上げると、樹達が笑いながら自慢気に言い、歌野が確認するように問い掛ける。雪花は周囲の戦いに目をやり、自身以外の勇者が戦い、危ない所はカバーし合う姿を焼き付けるように見て……笑って、肯定した。
心強い、その一言に尽きる。槍を投げて戻って来るまでの無防備な時間は仲間が守ってくれる。取り零した敵は味方が倒してくれる。危なくなった時も味方が助けてくれる。逆に雪花自身も、味方が危なくなれば相棒の槍で守り、助ける。そして、1人では厳しいであろう数も、見たことがないような大型の敵でさえも。
「行くわよ棗、合わせなさい!」
「了解した……ふっ!!」
「新士、あたし達も! でりゃああああっ!!」
「分かったよ銀ちゃん。はああああっ!!」
「「勇者、パアアアアンチッ!!」」
「風!」
「若葉! 任せなさい!」
仲間達が、力を合わせて倒す。迫る壁を友奈達が殴って砕き、エビのような敵は棗と夏凜が斬って破壊する。風と若葉が触手諸とも斬り捨て、蜘蛛のようなバーテックスは銀(小)と新士がその体を駆け巡りながら切り裂いていく。
「後はあいつだけだねぇ……やるよ、3人共」
「ええ、楓君」
「目標、敵大型バーテックス!」
「撃ちます!」
そして、円盤のようなバーテックスは上空の4人によって正面から射たれ、その体を蜂の巣にされ、穿たれる。それが、この戦いの一旦の区切りとなる攻撃となったのだった。
原作との相違点
・な、なんだこの場所は……辺り一面敵(相違点)だらけじゃないか!
という訳で、北海道&沖縄勇者合流、第一波撃退完了のお話でした。今回1番苦労したのは間違いなく疑似バーテックス共の描写です。ビジュアルの説明マジで悩みました……あんなのどう説明しろっちゅーんじゃ(怒
原作では棗が現代の勇者システムに馴れたのは敵が居る場所に行くまでの道中ですが、本作では楓の光の絨毯がありますのでそこで馴れたことに。ところで、沖縄の海神って誰なんですかね。キングシーサー?
改めて考えると後衛3人と楓を乗せた光の絨毯がヤバい。制空権もそうですが、ミサイル染みた威力の光の矢(拡散もする)、狙撃銃に散弾銃×2に自立起動光学兵器に極太レーザーに拳銃、異常なまでに連射出来るボウガン。近付くとワイヤーやら鞭やら剣やら斧やら爪やらと距離を選びませんし弾幕も威力もおかしい。戦艦かな?
本編では最後にちらっとだけ出てきた雪花との絡みが番外編以外でも書ける喜び。勿論防人組と赤奈も楽しみです。赤奈は……番外編時の記憶が何故かあったら面白いなとか思いましたが、確実に修羅場になるというか多分試練とかそっちのけになるのでしません←
番外編でも某ハゲの人のように各キャラに番外編の記憶が降りてきて修羅場に……という話も考えていたのですが、これまた確実に修羅場……を越えて流血沙汰になるのでボツ。子供到来で姉妹をおばちゃん扱いするのは面白そうですが。
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