咲き誇る花達に幸福を   作:d.c.2隊長

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お待たせしました、ようやく更新です(´ω`)

東方ロストワード始まりましたね。東方projectは私がハーメルンにて最初が完結させた作品の元ネタですので思い入れがあったり。この1週間楽しませてもらってます。別に楽しむあまり執筆が遅くなったとかはナイヨー。椛と小悪魔はよ来て。

もう言うまでもなく分かる方も居るかもしれませんが、ガチャ関連は爆死済みです。魔王ノッブ欲しい……本当に欲しい……。

以前にニコ生にて一挙放送されたゆゆゆを見て、その中に楓(新士)が居るのをついつい想像してしまう病気を発症しました。わすゆOPの最初の3人が歩くところに新士が居たらなーとか。ゆゆゆ見て二次作品書く人とか本作を読んでくれる方とかもっと増えろ。

前回の番外編、感想を見る限り好感触なようで何よりです。皆様ヤンデレ好きなのね……そう言えば私の場合、番外編かつ暗めな話だと感想が増える傾向にあります。何故だ←

さて、今回は本編です。それでは、どうぞ。


花結いのきらめき ― 12 ―

 「皆お帰り~」

 

 「ただいま、皆」

 

 「お疲れ様です。皆さんご無事で何よりですね」

 

 「温かい紅茶と緑茶もあるから、好きなのを選んでね」

 

 「うたのんにはそば茶を用意してあるよ」

 

 「お菓子もあるからな!」

 

 樹海から戻ってきた自分達を出迎えてくれたのは、留守番組の5人の温かな言葉と用意してくれた飲み物にお菓子だった。歌野ちゃんなんて水都ちゃんから受け取ったそば茶……どんな味なんだろうか……を美味しそうに飲んだ後、喜びながら彼女に頬擦りをしている。

 

 自分達も各々ただいまと返し、飲み物を受け取ってテーブルの上のお菓子をつまみながら戦いの疲れを癒す。新しく召喚された2人とも先の一戦で随分と打ち解けられた気がする。それは今、自分の直ぐ近くで同じようにお菓子をつまんでいる秋原さんと樹と杏ちゃんに挟まれている古波蔵さんを見ても明らかだろう。

 

 「うどんの国で蕎麦を推していくとは……まあ私はラーメン派だけど」

 

 「ラーメン時々食べるよ。美味しいよね~」

 

 「自分もラーメンは食べるねぇ。北海道でラーメンだと……札幌ラーメンとかかねぇ」

 

 「結城っちはラーメン派なんだ! と喜ぶのは罠。あくまでメインはうどんのハズ。かーくんは……意外と脈アリと見た。札幌ラーメンも確かに好きだけど、私は旭川ラーメン派だね」

 

 「……沖縄そばはいいぞ」

 

 「また新たな麺類が……!!」

 

 この場所がうどん県である香川であることは知っているからだろう、秋原さんはそば茶を出す水都ちゃんに対して驚いているようだった。そんな彼女はラーメン派らしいが、確かに北海道ではうどんや蕎麦よりもラーメンのイメージが強い。

 

 自分は姉さん達と影響でうどんをよく食べるが、神樹館時代の同級生から聞かされた好物の影響か熊本ラーメンを食べに行ったりする。そもそも美味しい物に貴賤はない。まあ派閥争いが起きるのは仕方ないとは思っている。

 

 というか、“かーくん”とは自分のことだろうか。あだ名を付けられたのはのこちゃん以来かもしれないねぇ……なんて友奈とのやり取りや何やらキラリとメガネを光らせながら自分の事を見る秋原さん、力強く宣言した古波蔵さんと驚く球子ちゃんに苦笑いしながら考えていた。

 

 「様子を見るに、皆戦いを通じて仲良くなったみたいだね」

 

 「そうだねぇ。秋原さんにはのこちゃんみたいにあだ名で呼んでもらったりしてるしねぇ」

 

 「その雪花さんは私の畑で農作業をするプロミスすらしてくれたわ」

 

 「いや、私は親戚が農家って言っただけなんだけど……でも面白そうかも、土いじり」

 

 のこちゃんの言葉に同意しつつ、お菓子に手を伸ばす。本当に、戦いを通じて仲良くなれたと思う。いきなりの戦闘で彼女達にとっては初のチーム戦。最初は多少連携が取れていなかった部分はあったもののそれも直ぐに無くなり、1度息が合えばそのまま。最後の若葉さんとの連携によるトドメの一撃は今も目に焼き付いている。

 

 「棗も凄腕の勇者だったし、戦力的にも大収穫よ。このまま敵の土地に攻め込みたいぐらいね」

 

 「棗さん。今度、稽古に付き合って下さい!」

 

 「あぁ、宜しく」

 

 「戦力的に大収穫、か……正に今が次のステージに行くタイミングなんですね」

 

 「うん、勇者の数も実力も充分だからね」

 

 「何かあったんですか? ひなたさん、神奈さん。新しい神託とか……?」

 

 「うん、正に神託があったんだ。皆が戦ってる間にね」

 

 夏凜ちゃんは古波蔵さんの戦闘を近くで見ていたし、その実力をより近くで感じていたからだろうか、まだ少し興奮している気がする。遠目で見ていても彼女の実力の高さは分かったから、それも理解出来るけれど。稽古……自分も入れてもらえないかな。ヌンチャクを持った人との組手の経験は流石に無いし。

 

 そう思っていると、何やらひなたちゃんと神奈ちゃんが皆に聞こえる声でそう呟いた。須美ちゃんが緑茶の入った湯飲みをテーブルに置きながら聞くと、水都ちゃんが答える。そして3人の巫女を代表するように、ひなたちゃんが話し始めた。

 

 「皆さん、初期目的は覚えていますか? ズバリ、造反神を鎮めることです」

 

 「そいつが神樹の中で暴れているんでしょう? だから私達勇者が、何とかする」

 

 「うん……鎮める為には、奪われた土地を取り戻さないといけない」

 

 「今までは防戦一方だった。でも、皆が沢山頑張ってくれたから、遂にこっちから攻めることが出来るようになったんだよ」

 

 おお、と自分も含めた勇者側から声が上がる。成る程、夏凜ちゃんが言ったことが図らずも実現したという訳だ。確かに神奈ちゃんが言うように、これまで自分達は敵が攻め込んできたという警報を合図に樹海に行き、そこでバーテックスを撃退してきた。

 

 だが、今度は自分達が攻めに行く。今まで守ってきた自分達が、だ。現実の世界でも防衛しかしていなかったし、初めて攻勢に出るのだと聞かされて少し高揚している自分が居る。

 

 「なんか良いタイミングで呼ばれたみたい。ねぇ、棗さん」

 

 「そうだな雪花……腕の振るい甲斐がある」

 

 「神託に従って、次の満月に仕掛けます。土地を奪還していきましょう」

 

 「ある意味、ここからがスタートラインだな」

 

 「うん、皆と一緒に頑張ろう! 全員で挑めば大丈夫!」

 

 (大丈夫どころか過剰戦力な気がしなくもないけど)

 

 「美しい我が国の為に、力を尽くします」

 

 「ふっふっふ、ガンガン耕すわよ」

 

 「私達の新しい戦いが、また始まる……!!」

 

 「そうだねぇ。どんどん勝ち抜いて、土地を奪い返そう」

 

 【おー!】

 

 高揚しているのは自分だけでは無いようで、皆心なしかテンションが高く言葉に熱が籠っている気がする。途中の神奈ちゃんの苦笑いが少し気になったが、それも直ぐに皆の熱の中に埋もれて気にならなくなった。

 

 自分の言葉にノリが良い何人かが同意して手を上に向かって突き出す。若葉さんが言ったように、ようやく自分達はこの世界でのお役目をこなすスタートラインに立ったんだ。後は仲間達と共にゴールを目指して突っ走るだけ。

 

 これは現実世界での未来が掛かっている戦い。決して軽く見るつもりも、ましてや遊び半分で挑むつもりもないが……なに、自分達は8人で1度世界を救っている。なら20人の勇者に3人の巫女が居る今回のお役目だってこなせるハズさ。そう思いながら、そのまま皆と共にのんびりと過ごすのだった。

 

 (そう、ここからが本当の戦い……ここからが、本当の“試練”だよ、皆)

 

 

 

 

 

 

 あれから数日立った日の休日。神託により、攻勢に出る日は次の満月の日という事になった勇者達は戦いの日々で疲れた精神的、肉体的疲労を癒すように思い思いに過ごしていた。召喚される前は夏真っ盛りだった西暦組も、後一月もせずに年を越すこの世界に多少混乱していたが、今ではすっかり慣れたもの。

 

 その日、寄宿舎の広い庭に一部の勇者達は居た。寒空の下遠出をするのも億劫であるし、しかも雪まで積もっている。が、体力系勇者達にはそんな事は関係無いようで……。

 

 「さぁ行くわよ銀くん、棗さん! 私達のスノーボールを受けてみなさい!」

 

 「頑張ろうね! 歌野ちゃん!」

 

 「おっと、そう簡単にはやられませんよ、歌野さん! 棗さん、いっきますよ!」

 

 「ん、任せろ。雪合戦は初めてだが、頑張る。その後に食べる温かいご飯はきっと美味しい。うん、美味しい」

 

 歌野と遊びに来ていた友奈が、銀(小)と棗がチームを組み、雪合戦を楽しんでいた。それはもう全力で、犬のように。棗は出身地では見られない雪と初めてやる雪合戦に興味津々であり、遊んだ後のご飯を想像してか無表情ながら目を輝かせている。

 

 ある程度距離を取り、霜焼け防止にしっかりと手袋を嵌めた状態で雪玉を投げ合う4人。勇者としての訓練の賜物なのかお互いに避けるので雪玉は中々当てられず、それでも楽しんでいる様子の4人を食堂の窓から見ている者達も居る。

 

 「わんぱくですなー。私はあんな元気無いや。こうして温かい場所で温かいお茶飲んでるのがいいな」

 

 「私も余り外には……温かい場所と言えば、こたつでもあれば良かったんですが、流石に食堂には置けませんね」

 

 「銀ちゃん達は元気だねぇ……はい、須美ちゃんに雪花さん。温かいお茶を持ってきたよ」

 

 「おっ、ありがとね新士君。やっぱり寒い日は温かいお茶だよね」

 

 「あ……ありがとう、新士君。頂きます」

 

 「どういたしまして」

 

 窓に近いテーブルに向かい合わせに座る雪花と須美。お互いに外に居る4人程運動するのが得意ではないというかゆっくりしている方が好きな者同士でのんびりと会話をしていた。そこに丸いお盆に温かいお茶が入った湯飲みを3つ乗せた新士が現れ、2人の前に湯飲みを置いてから須美の隣に座る。

 

 置かれた湯飲みを見てから新士の方に顔を向け、朗らかに笑う彼と目が合うなり少し顔を赤くして直ぐに視線を反らす須美。そんな彼女を雪花はにまにまと、新士は変わらない笑みを浮かべていた。

 

 以前の戦いの時、未来の自分達である美森と楓の夫婦のようなやり取りを見てその距離の近さと未来ではそれほどに心を許している自身の姿を知った須美。それからと言うもの、どうにも新士の事を意識してしまっていた。

 

 元々、彼の事は嫌いではない。この世界に来る前の時点で数回の戦いと訓練、合宿と過ごした時間は長く濃密で、人となりもある程度把握している。それに、鷲尾の義父を除けば最も近しい異性は彼であり、それが余計に意識する理由となっている。これは銀(小)も同じであった。彼女の方はこの数日中で折り合いを着けたようだが。

 

 (銀は“銀さんは銀さん、あたしはあたしだしな!”とか言って先に解決しちゃうし…それに東郷さん、あんなに安らいだ顔をして……楓さんも自然と受け止めていて……わ、私も新士君とあんな風に……?)

 

 真面目であるが故に、1度考えてしまうと中々抜け出せない。何より、そうなった自分達の姿を想像して“悪くない”と思っている自分も居るのが不思議であり……その気持ちが心地好くもあった。そう思いつつ須美はお茶に手を伸ばし、新士も同じタイミングでお茶を持ち、同時に飲む。それを雪花は息がぴったりだなーと感想を内心で溢し……。

 

 「「ん……ふぅ……あぁ、お茶が美味しい……」」

 

 「既に未来の2人の片鱗が見え始めてるよ。須美ちゃんも新士君も本当に息ぴったりと言うか老成し過ぎと言うか……まあ、それが良いところなのかもしんないけどね」

 

 感嘆と少しの呆れが混じった苦笑と共に、今度は心情が口から漏れた。そんな雪花の手元には1冊の手帳があり……そこには自身の元居た世界ではなかった、この世界でのルール等を纏めたものを書き記していた。この後3人はその書かれた内容についての話し合いや他愛のない談笑をしていたそうな。

 

 「そう言えば、残りの小学生……園子ちゃんは何をやってるんだろ。新士君と一緒に居ないの珍しいね」

 

 「別に自分達は常に一緒に居る訳じゃないんですけどねぇ……まあそう思われるのも仕方ないとは思いますけどねぇ」

 

 「そのっち、普段から新士君にべったりだもの。雪花さんが言うのも分かるわ」

 

 「あんたと外の銀ちゃんもだ。ホント、4人は一緒に居ることが多くて良いチームだと思うよ……羨ましいな。私は1人だったから……精霊は居たけど」

 

 「雪花さん……」

 

 園子(小)が共に居ないことを不思議に思いながら聞く雪花に新士は苦笑いを浮かべながら答え、須美もくすくすと笑いながら呟き、そんな彼女に雪花はお前もだとこれまた苦笑いで言って……本当に羨ましげにそう言った。その表情と言葉を聞いた須美が思わず痛ましげに名前を呟いてしまう。

 

 「ごめん、小学生に愚痴ることじゃなかったね。新士君は本当に小学生が疑わしいところがあるけど」

 

 「それも、自覚はしてますけどねぇ」

 

 「その……応援してくれる人とかは……」

 

 「利用されてるって感じでどうにもね。心を許せる同年代の友達が欲しかったよ」

 

 年下の小学生に暗い話を愚痴のように聞かせてしまった事を恥ずかしく思ったのか謝る雪花。場の空気を改めようとしたのか茶化すように言うと、新士もまた苦笑いを浮かべる。

 

 その隣で、須美の脳裏には自分達を応援してくれていた親やサポートをしてくれる安芸の事を思い浮かべながら雪花に問う。自分達にもそういった存在はいたのだからきっと彼女にも……と。しかしその思い空しく、返ってきたのは横に振られた首とそんな言葉。堪らず、須美は俯いてしまう。

 

 「なら、自分達はどうですか? こうして一緒にお茶をして色々お話したんですしねぇ」

 

 「そ、そうね。雪花さん、私達でよろしければ」

 

 「おっ、仲良くしてくれる? やー嬉しいね。北海道に戻る時着いてきてよ」

 

 「そっ!? それは、その……」

 

 俯いてしまった須美を横目で見た後、新士はお茶を一口飲んでからそう言って雪花に笑いかける。彼の言葉にハッとして顔を上げた須美も同じように言うが、雪花の言葉にまた声を詰まらせた。

 

 仲良くするのは何の問題もない。だが、北海道に共に行くことは出来ない。歴史好きな彼女としては北海道は非常に魅力的であるが、それとこれとは別。お役目の事もあるし、それを途中で投げ出す訳にもいかない。何より、共に行っては未来がおかしくなる。そうやって真面目に考えている須美を見て、雪花はまた苦笑いを浮かべた。

 

 「本当に真面目だにゃあ須美ちゃんは。冗談、冗談だよ。ごめんねからかって。でも嬉しいよ2人共。ここは本当に良いところだ」

 

 「……そうですねぇ。自分も、この世界は良い場所だと思います。久しぶりに姉さん達にも会えましたし、西暦の皆さんとも……こうして雪花さんともお話出来ましたしねぇ」

 

 「私も! 私も……そう思います。雪花さんとも、他の皆さんとも出会えて良かったと、そう思います」

 

 「あははっ! 本当に、2人共良い子だ。うん、私も2人にも、皆にも会えて嬉しいよ。もう北海道に帰りたくないくらいにさ……あそこは寒いよ。色々と……」

 

 考え込んでしまった須美を見て雪花は冗談だと笑い飛ばす。どこまでが本心で、本当に冗談だったのか……須美には分からない。どう返していいのかも。また悩んでいる須美の隣で、新士はいつも通りに朗らかな笑みを浮かべて雪花に同意する。

 

 お役目を果たすまでは叶わないと思っていた家族との再会。本来有り得る筈のない別の時代の人間との出逢い。想像すらしてなかったそれらの出来事は、新士にとっても嬉しい出来事。だからこそ、雪花の事を聞いて同情や哀れみを覚えるのではなくこの喜びを分かち合おうと思った。

 

 彼の言葉を聞いて、須美もようやく言葉を紡ぐ。雪花の境遇に対して何かを言えるほど、彼女は人付き合いが得意ではない。それでもこの出逢いを“嬉しい”と口にするくらいは出来る。相手の目を見て、言葉に感情を乗せることは出来る。

 

 2人の言葉が響いたのか、雪花は目尻に涙が浮かぶ程に笑った。その言葉に、その気持ちに嘘はない。肌ではなく、心で感じる温かさに……嘘はない。それはとても心地好いモノで……この世界でようやく感じられたモノで。元の世界に戻りたくないと……冗談か本気か口にしてしまう程で。

 

 「……雪花さん。時間が大丈夫なら、もう少し色々話しませんか? 折角ですしねぇ」

 

 「お、いいの? それじゃあ新士君しか知らない須美ちゃんの事でも聞いちゃおうか」

 

 「えっ!?」

 

 「そうですねぇ。それじゃあ、以前自分の家に3人が覗きをしてきたことでも……」

 

 「え、そんなことしてたの? 未来のあんたも大概だったけど、こっちもこっちでかー」

 

 「し、新士君!?」

 

 

 

 外では雪合戦、食堂では色々と話をしている者達が居る一方で、2階の園子(小)の部屋で杏がうっとりとしながら園子(中)が書き上げた小説を読み耽っていた。

 

 「はぁ……園子先生の小説作品、相変わらず素敵です……心が豊かになっていきます」

 

 「今は普段通りのあんずだな……うちのあんずはすっかりソノコストになってしまったようだ」

 

 「流石園子先輩ですな~。肩揉み肩揉み」

 

 「お゛お゛~。いやいや~、そのっち程の瑞々しい感性はもうないかもね~」

 

 そんな杏を見て、今の彼女が以前から知る彼女の状態である事に安堵する球子。この世界に来てから度々彼女が暴走するので、こうして小説を読んでいる彼女を見ると心底安心するようになってしまっていた。

 

 杏を虜にする小説を書き上げた未来の自分に尊敬と労いの意を込めて肩を揉む園子(小)。過去の自分に肩を揉まれて気持ち良さそうな声を出しながら、謙遜なのか天然なのか分からない事を言う園子(中)。自画自賛とも言える状況に特にツッコミを入れることもなく、球子は杏が読み終えた小説の1つを手にとってパラパラと捲る。

 

 「タマは小説読むと眠くなるけど、ソノの奴は楽しく読めるぞ」

 

 「ふぁいんせんきゅー♪」

 

 「……しっかし、ホント若葉の子孫には見えないよなぁ、2人共さ」

 

 「カエっちは似てるって言ってくれるんだよね~」

 

 「アマっちも言ってくれるんですよ~」

 

 (その楓と新士が一緒に居ないことにこんなにも違和感を感じるとは……)

 

 基本的に考えるよりも体が先に動くタイプの球子はあまり勉強は得意ではないし、活字を読むのも眠気を覚える。だが、園子達の小説は驚くほど楽しく読むことが出来ていた。今ではタマに杏と並んで読み耽ることもあるほどだ。

 

 そんな球子から見て、2人が若葉の子孫であるのは理解していてもそうは見えない。方や真面目でキリッとしているリーダー、方やほけほけぽやぽやとした天然娘。それを伝えると、2人は顔を見合わせながら嬉しそうに語った。その際、普段その2人にべったりな彼女達が彼らと共に居ないことにすっかり違和感を感じるようになってしまった球子であった。

 

 「タマっち先輩の子孫はどんな人なんだろうね」

 

 「生意気な奴かもな。場合によってはご先祖様が上下関係を教えてやる必要があるかもしれんぞ」

 

 「子孫だったりそうじゃなかったり、色々とややこしいから皆全部同じ家系で良いかもねぇ」

 

 「ダメですよ~園子先輩。皆同じだったら、誰もアマっちと結婚出来ないですよ~」

 

 「それは大変だ~。じゃあ、カエっちは違う家で……わたし達と一緒になって同じ家に入ってもらおっかな~。皆幸福(しあわせ)だよ~♪」

 

 「おお、なんだか壮大な小説ネタを閃きそうだよ~。ようし、早速没入だ~」

 

 ふと、杏がそんな事を言い出すと球子はまだ見ぬ子孫を想像しながら好戦的な笑みを浮かべる。若葉と園子達という事例があるが、流石に自身の子孫が彼女達の様であるとは思わないらしい。

 

 それを聞いた園子(中)が顎に右人差し指を当てながらそう言えば、園子(小)は満面の笑みで恥ずかしげもなく言った。それに園子(中)が乗っかり、勇者も巫女も引っくるめた大家族計画を想像する。勿論、自身が彼の妻役である。

 

 「相変わらず楓達はソノ達に愛されてるなー……いや待て、それを口に出すのはまず……」

 

 (皆同じ家系、ということは私とタマっち先輩も本当の家族、姉妹関係になると言うことで、他の皆さんも……そうなると私は何女くらいになるんでしょうか。そして園子先生と楓さんがそうなった場合は……やはりシンプルに義理のお兄さんに? いえ、他の皆さんも居るのですから先生次第では結城さん達が第2、第3婦人ということにも……ああ、もしそうなるとやはりいずれは私達も? つまりタマっち先輩の可愛い姿からあんな姿やこんな姿まで特等席で……)

 

 「い……って遅かった。色々考えてるのが丸わかりのシイタケみたいな目をしてる……おーいあんず、帰ってこーい」

 

 

 

 寄宿舎でそんなやり取りが行われてから暫く時間が立って日が沈み始めた夕方頃、夏凜が普段鍛練の為に訪れる浜辺に数人の人影があった。人影達は積もっている雪と寄せては返る波を浜辺から眺め、人影の内の1人……若葉が最初に話し始める。

 

 「穏やかでいい浜辺だな。次の満月に備えて鍛練するにはもってこいだ」

 

 「良かったですねぇ若葉ちゃん。いい修行場所を紹介してもらって」

 

 「ここでの稽古は身が入るわよ。今の時期は流石に寒いけど、鍛練してる内に気にならなくなるし。んと……その」

 

 私服姿で居る若葉、そしてひなたが浜辺を見る。次の満月までは数日先だが、それまでの間に備えて鍛練することは必須。この浜辺は夏凜が普段から鍛練は使う場所であり、適しているのは実証済みだ。そう語る夏凜だったが、不意に口ごもり……少し恥ずかしそうにしつつ若葉に対して呟く。

 

 「こっ、今度一緒に鍛練……どうかしら。攻め込む時はお互いに先頭に居るだろうし」

 

 「ああ、是非お願いする。敵の土地に行くわけだからな、しっかりと準備はしておきたい」

 

 「……流石初代勇者、いい心構えね。内の部長なんか弟の楓さんを見習ってもうちょい鍛練してもいいと思うわ」

 

 「まぁ、人それぞれですし」

 

 「ひなた、あんたも一緒にどう? 勿論、独自にメニュー組むわ」

 

 「良い運動程度に抑えてくれるのなら……お手柔らかにお願いします」

 

 それは、あまり人付き合いが得意ではない夏凜なりの勇気を出した言葉であった。それを若葉は快く了承し、夏凜も彼女の意気込みを流石と評する。その後に出た愚痴のようなモノはご愛敬というモノだろう。

 

 部長……風のフォローを入れるひなただが、夏凜に聞かれて困ったように笑いつつも受け入れる。巫女である彼女は直接的な戦闘はしないのだが、やはり体力はあって困るものではない。それに、鍛練中の若葉を間近で見たいという下心も多少はあった。

 

 「今度皆で合同鍛練をしてもいいな……千景辺りは文句を言いそうだが」

 

 「こっちは樹辺りの体力が心配ね……それにしても、この海岸は勇者部の人気スポットになったわね。知っている顔がチラホラ居るわ」

 

 「~♪」

 

 お互いに心配の対象を頭に浮かべ、お互いに想像出来たのか苦笑いを浮かべる。そうして話が一段落したところで、夏凜がそう呟きながら改めて浜辺を見渡す。そこには彼女達3人以外にも何人かの見知った姿が見えた。

 

 その内の1人は水都。散歩に来たのか彼女は浜辺を歩きながらご機嫌そうに鼻歌を歌っていた。そんな彼女の元に歩み寄る人影が1つ。

 

 「なんだか機嫌が良さそうだねぇ、水都ちゃん」

 

 「わっ、か、楓さん……わ、私やうたのんは海、あんまり行ったことないから……珍しくてついはしゃいじゃって」

 

 「諏訪は長野県、だっけ? そっか、そこは海無いんだねぇ……でも確か、湖が無かったっけ? 諏訪湖って言う……」

 

 「うん、そうなんだ。確かに諏訪湖はあるけれど……それに見慣れちゃうとね」

 

 「ああ、どんなに大きくて綺麗でも見慣れちゃうと感動も減るか……うん、分かる気がするねぇ。樹海とか最初は驚いたけれど、今じゃそんなこともないしねぇ」

 

 「樹海を見慣れるって、言葉にするとなんだか凄いね……」

 

 人影は楓であった。その手には本が入った袋があり、どこかの本屋で買った帰り道である事が伺える。浜辺に寄ったのは数人の見知った顔があったからであり、挨拶でもしてから帰ろうと考えたからだった。

 

 鼻歌を聴かれていた事に恥ずかしそうにする水都だったが彼と話している内にそれも落ち着き、お互いに笑いながら会話を楽しんでいる。出逢った時であれば異性ということもあって中々面と向かって会話するのは慣れなかったが、今ではこうして談笑出来るようになったのだ。

 

 「ところで、水都ちゃんはここで何を? 冬の海は寒いから、あまり長く居るのはオススメしないけどねぇ」

 

 「綺麗な貝殻があったから、幾つかうたのんに持っていってあげようと思って」

 

 「成る程……水都ちゃんが持っていったら、歌野ちゃんも喜ぶだろうねぇ」

 

 「うたのんなら貝殻を潰して畑の肥料にしちゃいそうだけど……それでもいいかなって」

 

 (それでいいんだ……)

 

 楓がふと気になって聞いてみると、水都は握っていた幾つかの綺麗な貝殻を見せながら笑顔でそう言った。それで海に……と納得した彼は脳裏に貝殻を手に笑い合う2人の姿を浮かべていたが、彼女が笑いながら言った瞬間にその貝殻を手で握り潰して粉状にした貝殻を畑に撒く歌野を想像してしまい、苦笑いを浮かべた。

 

 それから少しの間、2人は談笑をしていた。普段は歌野や園子(中)と達と共に居てあまり接点が無かったが、この際だと言うことで会話を楽しむのだが……自分達の事よりもやはり共に居る人間の事を中心に話が弾んでしまうのは仕方のないことだろう。

 

 「ああそうだ、この間のそば茶は美味しかったよ。こっちではあまり蕎麦は食べないんだけど、そば粉を使った料理とかってあるのかな?」

 

 「そば粉の料理なら、有名なのはガレットかな? クレープも作れるし、蕎麦がきとか……あっ、パンとかクッキーとかも出来るよ。でもやっぱり、そば粉は蕎麦として食べるのがいいかな」

 

 「色々作れるんだねぇ……」

 

 後日、楓は歌野と共に水都が作ったそば粉を使った料理をご馳走してもらう事になり、そのまま更に親睦を深める事になる。

 

 

 

 その日の夜、寄宿舎の千景の部屋では部屋の主の千景と高嶋、神奈、銀(小)の4人が寝間着姿で集まって最早日常の一部であるゲームをしていた。たまにこの4人に他の小学生組と球子が混ざるが、今日は居ないようだ。

 

 「今日こそ千景さんに勝ーつ! 大富豪に、あたしはなる!」

 

 「掛かってきなさい。カードゲームでもボードゲームでも負けないわ」

 

 「ぐんちゃんも銀ちゃんもやる気満々だねー」

 

 「テレビゲームでは勝てないけど、とらんぷなら……」

 

 千景の部屋に集まれば普段ならテレビゲームと洒落込み、千景に教えを乞う神奈と応援する高嶋、練習相手をしたり共にゲームに挑む銀(小)の姿が見られるのだが、今日はトランプで大富豪をするようだ。しっかりシャッフルされた束からカードが配られ、4人は四方からテーブルを囲んで手札を見やる。

 

 結果から言えば、10戦やって千景が圧巻の全勝を果たした。銀(小)が2位に収まり、高嶋と神奈の2人は3位と最下位を行ったり来たり。まさかの同列最下位立ったりする。

 

 「ゲームにおいて、私に敗北の2文字は無いわ」

 

 「千景さんカッコいいっす! でも負けたのは悔しい……いつか絶対勝ちますよ!」

 

 「楽しかったねー神奈ちゃん。やっぱりぐんちゃんは強いなー」

 

 「むぅ……楽しかったけど勝てないのは悔しい……その、他のもやりたいな。まだ皆と遊びたいよ」

 

 「ええ、勿論いいわ。今度は何をしましょうか……」

 

 「ババ抜きとか7並べとかですかね。あっ、UN○とかもありますね。今度はこっちもしてみます?」

 

 「いいね! まだ寝るまで時間あるし、沢山楽しもう!」

 

 その後、4人は珍しくテレビゲームではなくカードゲームで夜遅くまで盛り上がった。7並べでは千景に止められて神奈が涙目になり、スピードでは高嶋が凄まじい反射神経をもって千景から勝利をもぎ取り、ババ抜きでは顔に出やすい銀(小)が最下位になって項垂れ、UN○では手札に恵まれた神奈が遂に1位になって本気で喜んだりもして。

 

 そして、夜更かしになれている千景を除いた3人が部屋に戻る前に遊び疲れて力尽きてしまい……1つのベッドでぎゅうぎゅう詰めになって4人で眠ることになるのだった。

 

 「くかー……」

 

 「んにゅ~……すぴー……」

 

 「すぅ……くぅ……」

 

 (た、高嶋さんが右腕に抱き付いて神奈さんの寝息が耳元に……銀ちゃんも手を握って離れないし、そもそも3人との密着具合が……今夜は眠れるかしら……)




原作との相違点

・帰って来た皆に飲み物以外にもお菓子を振る舞う

・原作よりも季節が進んでいて冬になってる

・神社でジグモ云々ではなく寄宿舎の庭で雪合戦

・雪花の話を聞くのが水都ではなく須美と新士

・海岸で水都と会話するのが楓

・他にも色々あると思ったり思わなかったりしたりしなかったり←



という訳で、原作4話の最後~5話の序盤までのお話でした。

 基本的に原作沿いに進めてる本作ですが、今回は主人公の存在や時系列の問題で大筋はそのままに結構変えてます。本編だとこの時期なら友奈は丁度天の神の呪いを受けている頃ですが、ゆゆゆいだと雪合戦楽しんでます。勇者達には笑顔が似合うんやなって……。

雪花の話の下りや水都との会話は人を選ぶかもしれませんね。本来ならこの2人が会話をして色々と闇が見えるシーンですが、本作では改変。今更ですけどね。ここまで本作を見て下さっている皆様は慣れたことかもしれみせんが。

そう言えば、そろそろ100話……話数3桁が見えてきました。100話目にはまた記念番外編を書く予定です。書く書く詐欺をしてきたDEifの新士誕生日話、親密√、楓と樹の遊戯化(二重人格的な意味で)、ハーレム√、二神再降臨。書いてないリクエストが沢山で目移りしてしまいますね。

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