10日以上更新出来なくてエタったのではと不安になった方やその不安から本作から離れた方もいるかもしれませんが、ご安心下さい。本作はゆゆゆいもしっかり完結させます。
fgoでは相変わらず爆死してますが、天華百剣ではUR巫剣が5振り程、ゆゆゆいでは雀と風姉さんの新ssr、このファンではメイドミーアとそれなりに恵まれました。fgoの沼からも抜け出したい……。
去年の今頃はゆゆゆのクライマックス辺りを書いてますね。風姉さんの心の叫びや友奈のトラウマ克服、東郷さんの暴走等、書き応えがあったのを覚えています。
今回は100話目前の99話目です。後書きにはアンケートもありますよ。それでは、どうぞ。
(今日か明日辺り、あの子達が初めて攻勢に出る)
機械に疎い私の代わりにひなたちゃんが設定してくれた目覚まし時計が鳴り、それを止めて上体を起こしてからしばらくボーッとしていた私は我に返った後にそう思った。
神としての存在の“格”を下げてあの子達に存在のレベルを合わせ、この世界に限りあの子達と同じ“人”としての
その神託で出した、造反神に奪われた土地を奪還する為の戦いを始める日……それが今日か明日辺り。勿論、始めるにはまだ時間はある。なにせ今はまだ早朝で、まだ外は薄暗いんだから……と言っても、実のところ私自身そこまで正確に始める時間を決められる訳ではない。
私の……神谷 友奈の“本体”は“神樹”であり、“私達”の中の“私”である。けれど今、“私”は神としての……存在の格を人間と同じレベルにまで落としている。だからこそ皆に視認され、言葉を交わし、触れあうことが出来る。代わりに、現実世界のように神としての力を行使できる訳ではない。出来て神託としてのイメージを“私達”と共に巫女達に届けるくらいで、後は“私達”が担ってくれているのだ。
(私が出来る事は少ない。今の私は非力な少女でしかないから。それでも私が此処に居るのは……見定める為)
改めて、“私”の役割を頭の中で繰り返す。いずれ来る未来に、勇者が……人間がどこまでやれるのか。果たして人間とは、“私達”が加護し、“私達”と人類を守り続けてきた勇者とは、その未来を手にする事が出来る可能性を持つのか。そしてその可能性をこの世界で……見せつけ、魅せつける事が出来るのか。
そう、これは“試練”。私はその試練を皆が越える事が出来るか否かを最も近い場所で見定める為に此処に居る。それだけの為に、神谷 友奈という架空の人間は存在する。
(――なんて、ね)
思わず、苦笑いが浮かんだ。役割だ見定めるだとか言っても、本心はまるで違う。そもそも、私からすれば見定める必要なんかない。だって私はとっくの昔に信用し、信頼し、出来ると信じて疑っていないんだから。この“私”という自我を得て、喜怒哀楽の感情を知り、彼らを見てきたからこそ、そう思える。
神谷 友奈として過ごす日々は、とても輝いている。お供え物じゃないご飯は美味しい。皆で食べるともっと美味しい。皆で歩くなんの変哲もない道はただそれだけでキラキラと装飾されて、言葉を交わす口は止まらなくて、触れあう手は心地好い温かさで。ゲームは負けると悔しいけれど、一緒に遊ぶことが楽しくて笑顔が勝手に浮かんでくる。
1日毎に皆が好きになっていくのが分かる。神だからじゃない。“私”が、この胸に宿った“心”から好きになっていくのが分かる。敵と戦い、助け合い、勝利し、笑顔で帰ってくる皆が好きになっていくのが……分かる。
だからこそ、“私達”の中の“私”だけは信じられる。皆がこの試練に打ち勝つことが出来ると。きっと、順風満帆とはいかない。造反神である彼の存在の試練はそんなに生易しくはない。意見の対立やケンカだって起きるかもしれないし、仲違いだって起きても可笑しくはない。確かに皆の事は好きだけど、それだけ心というのは厄介だと知っているから。良くも悪くも、“感情”がどれだけの力を持つのか、私は知っているから。
そして……絶望した友達の心を救い、神ですら想定していなかった奇跡を引き起こして。最後には良い結果を、より良い未来を手にする姿を……私は、見たのだから。
「……そろそろ着替えなきゃね」
箪笥……クローゼットだっけ。その中から制服と学校指定のコートを取り出して寝間着代わりの襦袢を脱いで着替える。クローゼットの中にある服は、それらを除けば後はひなたちゃん達と同じ巫女服と……まだひなたちゃんと一緒に暮らしていた時に大赦から贈られた無地の服とスカートくらい。この2つは昨日の内に部屋にある洗濯機の中だけど。
因みに、今は冬休み中とのことで学校自体はお休み。ただ、部活をやっている人達の為に学校は開放されてるから部室に行くのは何の問題もない。だからこそ集合場所にしてる訳だし……皆で年末年始に色々やったけど、楽しかったなぁ……私がお参りに参加する側になるなんて思ってもみなかった。
取り敢えず着替えた私は歯磨きと顔を洗って乾燥機を回してから……この操作を覚えるのに2週間掛かった……部屋を出て食堂へと向かう。食堂には既に何人かの姿があって、調理場には割烹着姿……あれ、エプロンだったかな……の新士君と須美ちゃん、銀ちゃん、園子ちゃんの姿。今日は小学生の皆がご飯を作ってくれているらしい。
「おはよう、皆」
「おはよう神奈。友奈と違って早いな」
「おはようございます、神奈さん」
「グッドモーニング、神奈さん。今日は須美君達が野菜たっぷりのお味噌汁を作ってくれるらしいわよ」
「おはよう、神奈さん」
「……おはよう」
「おはよう神奈。あれ、なんで制服? 今冬休み真っ只中だよ?」
挨拶をすると皆から挨拶が返ってくる。ただそれだけの事が何だか嬉しくて、笑顔を浮かべているのが自分でも分かった。高嶋ちゃんと千景ちゃんの姿はない……昨日私が自分の部屋に戻ってからもゲームしてたみたいだし、また夜更かししたのかな。
若葉ちゃんとひなたちゃんが居るテーブルに行き、ひなたちゃんの隣に座る。歌野ちゃんが言う野菜たっぷりのお味噌汁はとても楽しみだ。此処に居る勇者達の中で1番年下の小学生の皆だけど、新士君と園子ちゃんが須美ちゃんと銀ちゃんに教わりながら4人で作る料理はとても美味しい。なんなら、この寄宿舎の中で1番美味しく作れるかもしれない。
「制服、楽なんだよね。後は着物とか寝間着とか巫女服とか、そういうのしかないし。大赦から支給された服は洗濯機の中だしね」
「……え、それで全部? 他には?」
「……? ないよ?」
雪花ちゃんの質問に答えると、何故か彼女だけでなく周りの子達からも絶句された。確かに皆に比べたら少ないかもしれないけれど、私としては別に少なくても問題はない。元々、そういうモノには関心も無ければ必要も無かった訳だし。
と言っても、流石にこの姿を象るようになってからは裸では不味いという知識くらいはあるので蓄積された記録の中から彼女の姿に合いそうな着物を着ていたのだけど。それに、感情を得てからと言うもの彼の前で裸になるなんて恥ずかしくて想像するだけで顔から火が出そうなる。だけどまあ、着られるなら何でもいい訳で。
「……勿体無い……結城っち達と同じ顔で器量良しだってのに着飾ることもないしオシャレに無頓着……? ああ、勿体無いよ。本当に勿体無い」
「せ、雪花ちゃん?」
「雪花、どうしたの?」
「あ、秋原さん……?」
「どうした雪花」
私の答えを聞くなり何やら俯いてぶつぶつと呟き出した雪花ちゃん。私達3人が居る場所とは少し離れていて、この距離だと流石に聞こえない。彼女と同じテーブルに座る3人もよく聞こえてないのか、顔色を伺うように恐る恐る俯く彼女の顔を見ようとして……バッと、急に彼女は顔を上げた。
「神奈、今日の予定は?」
「え、っと……昼過ぎには部室に行く予定だから、それまではのんびりしようかと……」
「つまり空いてるって訳だね。なら好都合。ちょっと町まで付き合って貰うよっていうか連れてくから。これ、決定事項!」
「え? は、はい!?」
「何やら、神奈は雪花の地雷を踏み抜いたみたいだな」
「神奈さんの衣服の数が随分少ないなとは思っていましたが、まさかそこまでとは……」
顔を上げるや否や、立ち上がってつかつかと私の所まで歩いてきて両肩をがっしりと掴んでくる雪花ちゃん。眼鏡越しに見えるその目は据わっていて、思わずビクッと体が跳ねた。
予定では戦いは今日か明日の昼過ぎ~夕方の手前くらいから。それまでは暇になるからのんびりと過ごしつつ、いい加減あの人の名前をつっかえずに言えるように練習しようかと思ってたんだけど……あまりに強い彼女の口調と圧力から思わず頷いてしまい……私の予定が決まった。
「皆さん、朝食の準備が出来ましたので各自取りに来て下さい」
「今日も美味しそうですよ。須美ちゃん特製の野菜たっぷりの味噌汁と、今日は卵焼きを作ってみました」
「アマっちと一緒にわっしーとミノさんに教わりながら作ったんよ~♪ 甘いのとお出汁の2種類ありますよ~」
「後は焼き魚と漬物です! 納豆もあるけど、それはお好みで」
「おはよう~。あっ、ご飯出来てる! ありがとう皆! ほらぐんちゃん、一緒に取りに行こ!」
「あふ……待って高嶋さん、まだ眠気が……おはよう、皆」
そんな小学生の皆の声が聞こえてきた所で雪花ちゃんから解放され、皆と一緒に“ありがとう”ってお礼を言いながらお盆を手におかずを取りに行く。飲み物とご飯は後で自分達でやるのが、この寄宿舎での食事風景。
途中で高嶋ちゃんと千景ちゃんもやってきて全員揃った。私達が取った後に小学生の皆も自分の分を取り、席に着いた所で皆で一緒に両手を合わせる。
【いただきます!】
今日も皆で食べるご飯は、つい笑顔になるくらい美味しかった。
朝食後、少し時間を置いて宣言通りに服を買いに街中へとやってきた神奈と雪花。他には歌野と水都、棗、それから銀(小)と須美の姿もあった。小学生の2人は一行の先頭に立ち、こほんと銀(小)が軽く咳払いをする。因みに、神奈以外は皆私服姿である。
「香川、長野、沖縄、北海道の先輩方。今日は三ノ輪ツアーへのご参加、ありがとうございます。皆さんはまだこの辺に詳しくないと思うんで、あたしがくまなく案内しますよ!」
「可愛いガイドさんだなぁ。でもガイドさんも地元ここじゃないんでしょ? それに今回のメインは服屋なんだから、くまなく案内してもらう時間は無いんじゃないかにゃあ」
「時間を見つけては探検してますし、買い出しとかでこの辺歩き回ってますから地理は極めました!」
「元気な小学生ね。取れ立てのトマトのように瑞々しくて」
「それ、誉めてるのかな……?」
「うたのんの例えは、1歩間違えれば相手にケンカを売りかねないから気を付けてね……」
途中までツアーガイドになりきっていた銀(小)が自信満々に言うと、雪花は彼女の姿を微笑ましく思いながら笑った後にそう呟く。今回の目的はあくまでも服屋であり、雪花的にはぶらぶらと探索する予定はない。なのに他のメンバーが居るのは、特にやることがないのと単純に服を見に来たという理由からだ。
雪花の言葉に対し、グッと握り拳を作りながら改めて自信満々に告げる銀(小)。大橋に居た小学生組は確かに讃州市に馴染みはないが、活動的な彼女はある時は1人で、ある時は球子や園子ズ等と共に讃州市をくまなく歩き回って地理の把握に努めていた。最早彼女に知らぬ場所は殆んどないと言っても良いだろう。
そんな彼女の姿に、歌野はうんうんと頷いた後にそう評価する。が、いまいち分かりにくかったらしく神奈は苦笑いと共にそう呟き、同意するように水都も苦笑いを浮かべて注意を促す。そのすぐ後に、銀(小)の隣にいる須美が口を開く。
「銀だけでは皆さんに失礼があるかもしれないので、私が支援します」
「ということで、何かあった時の苦情は須美にお願いします」
「全くもう……先に謝っておきます。皆さん、銀がすみません」
「ふ……仲良しだな。海もお前達を祝福している」
そんな2人のやり取りに棗が微笑と共にそう溢した後に、一行は街中を2人の先導で進む。目的の服屋は何件かあるようで、銀(小)はそれらへと向かう傍ら他の店の説明なんかも欠かさない。
あの通りには食事処が多い。あの辺りにあるスーパーや百貨店は品揃えが良い。あそこにあるうどん屋は美味しい。あの辺にはよく犬の散歩をしている人が居る。向こうの公園には美味しいジェラートやクレープを販売するキッチンカーが来て小学生組でよく食べに来る。そういった事を喋りながら歩くことしばらく、ようやく目的地の服屋に辿り着いた。
「で、この辺で服とか買う感じです。多分、ここが1番大きい服屋だと思います」
「お、ありがとう。それじゃ早速入ろっか」
そして店内へと入っていく一行。初めて入る場所である為、ひとまず固まって物色することに。時折服を手にとってみたり、あれが似合いそうこれが似合いそうと楽しむ。
「ガイドさんの案内してくれてお店だけあって中々良い服がありますな。棗さん、どう?」
「私は動きやすければそれでいいからな……雪花のチョイスは素敵だと思うぞ」
「この服どうかな、うたのん。水玉模様に大きな文字が面白くない?」
「んん~、そっちは中々前衛的なチョイスを……」
「エクセレントみーちゃん! 私が選んだ服はどうかしら? この派手な柄に大きな文字!」
(どうしよう、服の良し悪しが全然分からない……)
「須美、これとかどう? 前に園子の家で着た奴よりは地味かもしんないけど」
「ま、またこんな非国民な……」
棗に似合いそうな服を手に本人に見せる雪花。しかし棗自身は動きやすさ重視であまり服には拘らないようだが、彼女が選んだ服を見て満更でもない様子。その少し離れた場所で、水都が手にした服を誉める歌野と似たような服を見せる歌野。その服のデザインを見て、雪花が言葉を選びつつ眉間に手を当てる。
その近くでは、神奈が服を物色しながら困った顔をしていた。ファッションやらアクセサリーやらに全くと言っていい程興味も知識もないのだ、どの服がいいのか等分かるはずもない。銀(小)はどこにあったのか手にしたゴスロリを須美に見せ、須美は口ではそう言うも興味はあるのかチラチラとその服を見ていた。
「あー……歌野も水都もその服、本気で選んでるって解釈でいいのかしら?」
「そ、そうだけど……どうしたの秋原さん」
「センスは人それぞれ。指摘するのは野暮だと分かってる。それでも言わずにはいられない! 諏訪組は、服のセンスがそこまでよろしくない気がする。素材が可愛いのに勿体無いよ」
「むっ、みーちゃんの服に文句をつけるなんて。ナスの光沢のように光ってるみーちゃんなのに!」
「あはは……うたのんも含まれているんだよ。後、その例えはやっぱりどうかなと」
(なぁ、あれって誉めてるのかな?)
(た、多分……歌野さんにしてみれば、そうなんじゃないかしら)
(あの服、あんまりよろしくないんだ……服って奥が深いなぁ)
思わずというように雪花が疑問を口にすると、諏訪組の2人は彼女が何を言いたいのか分からないのか首を傾げる。そこに雪花の野暮だとは思うものの物申さずにはいられないと言葉にしてハッキリとした指摘をした。
少しだけ怒った様子の歌野に、水都は苦笑いを浮かべる。それを外から見ている4人の内、棗は取り敢えず黙って成り行きを見守り、小学生組はひそひそと小声で話し、神奈は諏訪組の服の何がいけないのか分からず周りの服と見比べていた。。
「センスよろしくないかなぁ? 選んだ服を着たみーちゃん絶対可愛いよ」
「だからね、素材が可愛いから何を着ても可愛く見えるだけであって……もっと服選びに気をつければ、更に女子力が上がっていくって寸法よ」
「センスは普通だと思っていたわ……ここら辺、棗さん神奈さん銀君須美君はどう思う?」
「ノーコメントだ。よくわからない。なんならこの位置からでも母なる海に聞いてみようか……うん、海もよくわからないって」
「あたしもそういうの、あまりわからなくて……須美は洋服か和服かで判断しそうだし……」
あまり納得はしていない様子の歌野だが、こうもはっきりと言われてしまうとそうかもしれないと思い至る。雪花としても美少女と言って差し支えない諏訪組も神奈も服選びに難があるのは残念で仕方ない。あまりよろしくない服装でも可愛いのなら、もっと合う服を着れば更に可愛くなるのは自明の理なのだから。
「そもそもなんでこんなに服ってあるんだろうね……やっぱり、私は服の良し悪しがよくわかんないや」
「すみません、私もあまり……」
「皆勿体無いなぁ……よし、ここは部室に居るであろう皆にも意見を募る為に学校に行こう。その前に、目的である神奈の服を選んじゃおっか」
「え? あ、別に急ぐ必要は……それに、服にも困ってないし」
「あーまーいって! というか、私服がドシンプルなの1、2着とか有り得ないから! 神奈って素材良いんだからさ、もっと着飾ろ? あれとかこれとか似合いそうだし、神奈は結城っち達とは顔似てても合いそうな服はまた違うし……ガーリッシュに攻めるか、それとも大人しめか、クール系も捨てがたい……」
「あ、有り得ないんだ……わわ、雪花ちゃん選ぶの早いっていうか多くないかな!? 待って、こんなに持てないよ!?」
「すみません、神奈さん。ぶっちゃけ、あたしも流石に少なすぎるかなって思います」
「……雪花が燃えているな。意外な一面を見た」
神奈と須美も続けて答えるが、神奈は店内の服の種類やデザインのあまりの多さに目を回しそうになっており、須美としてもそこまでファッションに詳しくない訳でもない。揃いも揃ってファッションに関して知識や熱意がそこまで感じられないことに嘆きつつ、雪花は皆にそう告げる。もとより目的は神奈の服。そこを履き違えてはいなかった。
しかし、それは部室で意見を聞いてからで、なんなら服を買うこと自体別の日でもと思わないでもない神奈。だがそれを言えば雪花が遮るように神奈が詰め寄りながらはっきりと口にする。そんな彼女に圧倒されて言葉も出なかった神奈であったが、次の瞬間には彼女から離れて瞬時に彼女に合いそうな服を選別していく雪花に両手の上に次々と服を投げ込まれて大慌て。
慌てる彼女に銀(小)は腕を組みながら雪花に同意してうんうんと頷き、棗は珍しく燃え上がっている雪花に柔らかな眼差しを向けている。この後バランスを崩しそうになった神奈を全員で支え、それなりに時間を掛けて服を選び……数着を購入することになった。
それからしばらく経った同日、場所は部室。部活が無くとも半ば溜まり場と化しているそこには既に何人かの勇者達の姿があった。尤も、今回の攻勢に出る為の集合場所がここなので当然なのだが。
「……で、最後に恋人の正位置。という訳で高嶋さんは今、健康運金運恋愛運絶好調ということになります」
「わー、色々と絶好調だ! 恋愛運もかぁ。つまり今の私ならぐんちゃんを口説いちゃう事も可能かな?」
「どうかしらね。私というゲームの攻略は難しいわよ」
(およ?)
「そっかー、いっぱいアタックしないとだね!」
(成る程、こうなると。千景先輩賢い~。そして尊い~。アマっちにもこのテクニックは通用するかな~?)
「ん? どうかした? のこちゃん」
「なんでもな~い♪」
部室の一角で、樹が高嶋をタロットで占っていた。結果を聞いた高嶋は喜び、隣で占いを一緒に聞いていた千景の方を見ながらそう言うと、彼女はクールに言う。いつもの反応とは違うと様子を見ていた園子(小)が首を傾げると、また2人がそんなやり取りをしたので千景の思惑に気付き、成る程と頷いて2人に対して手を合わせて拝んだ後、すすす……と新士の腕に組み付く。新士は微笑みつつ問い掛け、彼女は笑いながら首を振った。
「樹、アタシの恋愛運占ってどうぞ」
「お姉ちゃんとお兄ちゃん達は、占うまでもなく絶好調だよ」
「そーか、モテ期が来てしまうのか。武勇伝を聞いてしまうかね?」
「なんで自分達まで絶好調なのかねぇ……」
「ふふ、そうやって小のこちゃんとくっついてるからじゃないかい? あと、武勇伝はもういいから。帰ってから聞いてあげるから」
「どういう意味よ!?」
すすす……と樹に近寄って囁く風に、樹はタロットカードを纏めながら笑ってそう答える。その答えに満足した風が嬉しそうに笑いながらいつもの話をしようとするが、そこは新士と楓の2人に苦笑いと朗らかな笑みと言葉によって止められる。楓に至っては毒まで吐いているので風はちょっと怒った。
2人のやり取りに周りが苦笑いやくすくすと楽しげな笑みを浮かべると同時に何度も聞かされた“風のチアガール姿に惚れた男子が居た”という話をインターセプトした楓に感謝する。流石に2桁も聞かされればうんざりもするというものだ。
「ただいま。ふぅ、良い汗かいたわ。流石に若葉とやると疲れるわね」
「小休止したら、また鍛練しよう夏凜。間も無く満月だ、備えなくては」
「そうね。という事で風、お誘いがあるんだけど?」
「ん? 何よ?」
途中、動きやすい服装の若葉と夏凜が首に掛けたタオルで流れる汗を拭き取りながら部室へと入ってきた。もうすぐ戦いになると理解している為、それに備えて2人で鍛練をしていたらしい。そのやり取りが聞こえていなかったのか、夏凜が風にそう言うと彼女はなんだなんだ? と首を傾げ……また部室の扉が開いた。
「こんちわーっ。そしていきなりなんだけど、ちょっと皆に聞きたいことと見てもらいたいのがあるんだ」
「んん? 何よ」
「ファッション……もとい、女子力に関する話よ」
「女子力? それはもう、アタシが居なくちゃ始まらないでしょう」
「って、緊急じゃないなら声掛けるの早かったこっちを優先しなさいよ。お役目についての案件よ」
「おやおや、夏凜ちゃんに秋原さんと、姉さんにモテ期が来てるねぇ」
「あ、モテ期ってそういう……? 女子にもモテるアタシか……」
入ってきたのは雪花だ。やってきて早々挨拶もしたところで即座に本題に入ろうとする雪花。なんだなんだと風が促せば、真剣な顔をして彼女がそう言うと分かりやすく反応する風。
しかし、そこに待ったを掛けたのは夏凜。彼女としては先に声を掛けたのは自分なので話を聞くにしても優勢してもらいたいとのこと。それにお役目に関することとファッション関係では優勢すべきは此方だろうという意見もあった。
そんなやり取りを見て、楓は可笑しそうにくすくすと笑いながらからかうような風にそう言うと、少し不満そうにそう呟く。が、部員達に好かれている、と考えると悪い気はしない風であった。
「あー、まあ風さんは後でもいいや」
「と思ったらフラれたんですけど!?」
「女子力云々の話もしたいけど、本命はこっちだしね。さあ入って入って!」
「わわっ、雪花ちゃん引っ張らないで……」
夏凜の言葉を聞いてひらひらと手を降る雪花にそれなりにショックを受ける風。その反応に苦笑いしつつ、雪花はにんまりと笑って1度部室の外に出る。そして誰かの手を引いて再び戻ると……。
「わー! 神奈ちゃん可愛い!」
「そうね、よく似合ってるわ。朝に言っていたのはこういうことね……」
「ああ、確かにそんな話をしていたな。服装で大分変わるな……似合うじゃないか、神奈」
「神奈先輩可愛いですよ~♪」
「驚いたわ。友奈とはやっぱり違うのね……に、似合ってる、わよ」
「そ、そうかな……」
そこには、ガーリッシュな服装に身を包んだ神奈の姿。いつかの乃木邸での友奈のファッションショーで彼女が着た風プレゼンのガーリッシュスタイルに近いだろうか。普段は纏めている髪も降ろし、いつも以上に女の子らしさと大人しさがある。
高嶋と千景、若葉、園子(小)、夏凜と続けて絶賛され、本人は恥ずかしそうに俯く。服屋に似て同じような反応をその時のメンバーにもされたが、褒められ馴れていないのか顔から赤みが抜けない。
「どうよこの会心の出来ぃっ! やっぱり元が良いからさ、しっかり着飾れば更に可愛くなるのは当然の帰結だよね」
「中々やるわね雪花……この女子力、アタシに匹敵するやもしれんわ」
「その自信はどこから来るんだろうねぇ……でも本当に似合ってますねぇ、神奈さん」
「神奈さん可愛いです!」
絶賛の嵐に今の服装を選んだ雪花としても手応えを感じていたのだろう、思いっきりガッツポーズをする。良い仕事をしたと流れていない汗を拭う仕草をした彼女を風はライバルを見つけたかのような表情で見ていた。
新士はそんな風の言に苦笑いを浮かべた後、朗らかな笑みを浮かべて褒める。それに続くように樹も目を輝かせながら両手を合わせて絶賛する。そして楓も何か言おうとしたところで、聞き慣れたアラームが鳴り響いた。
「おっと、襲撃!? じゃ、なかったっけ。もう攻める時間なのかしら?」
「お姉ちゃん、準備しようよ」
「出撃タイミングが少し早いな……」
「今のタイミングが攻め込む最高のチャンスということやつかも? ご先祖様」
「成る程、確かに。戦場の状況次第で攻め込むタイミングがずれることもある、か」
(……もうちょっと後でも良かったのに……“私達”のバカ)
アラームが鳴ったことで先程までの空気が変わり、皆意識を戦いのモノへと変えていく。全員がスマホを手にし、そんな会話が交わされる中で、神奈は楓が感想を言う前にアラームを鳴らしたであろう神樹……“私達”に対して内心で少しの不満を溢す。
「攻め込む、か……戦いは新たなステージに行くのね。第2戦術……」
「服の事は一旦忘れて、畑……もとい領地を広げにいざ! 白鳥 歌野のカーニバル開始!」
「あんまり忘れてほしくないけど、神奈の御披露目も出来たしまあいいか……一旦切り替え切り替え」
「今ここに居ない人とは、
千景もまた同じようにスマホを手に持ち、遅れて入ってきていた歌野がやる気を漲らせ、雪花は彼女の言葉に溜め息を吐いた後に笑って部室の窓の外に見える極彩色の光を見る。そして楓が部室を見回しながらそう言った後に神奈へと視線を合わせ……そして、世界は極彩色の光と花弁に包み込まれた。
「よく似合ってる。可愛いよ」
朗らかな笑みと共に紡がれたその言葉は、しっかりと神奈の耳に届いた。
「あ、あら? 神奈さん? 顔が真っ赤ですけど……」
「かーゆが新しい服を着てるよ~。可愛いよかーゆ!」
「確かに似合ってるけど、大丈夫か? 神奈。ひなたが言うように凄く顔が赤いぞ?」
「あはは……沢山褒められてたもんね」
「……うん。服装……気にしてみようかな……」
樹海化した後の部室にて、お留守番組の間でそんな会話があったそうな。
原作との相違点
・神谷 友奈は実は“私”だったのさ!(ナ,ナンダッテー
・三ノ輪ツアーに神奈参加
・部室でのやり取りに楓と新士参加
・遠足での約束前に料理を教わってる園子(小)
・相違点だ! お前相違点だろ! 相違点探し出せ!
という訳で、原作7話前半のお話です。次書くのは戦闘ですね。
今回遂にはっきりと神奈の招待を書きました。当然勇者達は知りません。皆様もびっくりしたでしょー(棒読み
後半の神奈の服装は勇者部所属の時のガーリッシュ友奈参照です。活動中な友奈も勿論似合いますが、比較的大人しい方の神奈もきっと似合うと思います。見た目も一緒ですしね(親馬鹿
さて、今回が99話目。次回が大台の100話目になります。勿論記念番外編を書きますよ。どんな話になるかは、アンケート次第です。何になるかなとわくわくしますね。
それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
遂に100話! その記念番外編は……
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