Sword Art Online〜仮面の裏の〜   作:黒っぽい猫

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まさかの2話目までに9ヶ月……終わるのかなこれ?

まぁはい、ともあれ第2話、よろしくお願いします


攻略会議

「はぁ………」

 

「ん?どうかしたのか、リュウ?」

 

アインクラッド第一層の迷宮区。その最奥の安全地帯で盛大にため息をつくと、すかさず相棒の気遣いが入ってきた。

 

何故迷宮区にいるのか。別段それは攻略の為ではなく、ただの利己的なレベリングの為だ。キリトはちょこちょこマッピングをしているし、そのデータを無料で情報屋に横流ししているところをみかけるが僕はそれを手伝いはしない。

 

そんなのは自分が強くなる為なら不要だから。

 

「いや、憂鬱だなって思っただけ。まさか一ヶ月かけて一層も攻略が進まないなんて思ってなかったからさ」

 

この調子では、この城の最終層まで攻略するのに百ヶ月以上もかかってしまう。冗談にしては笑えない期間だ。九年もすれば向こうの世界で僕達の命を繋いでいる機械に限界が来る。

 

「まあまあ。明日はそのための集まりだろ?なんだかんだ言ってもベータの時よりはレベルも技術も士気も高いだろうし、一気に二層三層と攻略される可能性もあると思うぜ?」

 

キリトは根が楽観的なのもあり、寧ろ楽しそうに笑っている。本当にゲームを楽しんでいるようだ。初日やその直後こそ色々あったものの今となってはキリトは明るさを取り戻している。

 

「それはそうなんだけどね………嫌な予感がするよ」

 

天気などが見えない洞窟の天井を仰ぎみて再びため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、それじゃあ五分遅れたけど始めさせてもらいます!!そっちの人はあと三歩こっちに来ようか!」

 

そして翌日。第一層の迷宮区に最も近い都市『トールバーナ』で第一回の攻略会議が行われようとしていた。半円形の広場には40人前後の人が集まっていた。

 

(少ないな………)

 

広場の中心で仕切る男性の自己紹介を聞き流しながら周囲を確認する。正確な数は僕を入れて45人。フロアボスの討伐戦にしては人数が少ない。

 

セオリーとして本来なら2レイド──48人組が1レイドなので96人──で挑むべきなのだが、これでは1レイドにも満たない。

 

「壇上の青髪さんのカリスマもこの程度かな………?」

 

「おいおい、リュウの口が悪いのは知ってるけど戦う前にプレイヤーのヘイトを集めてタゲられるなよ?」

 

キリトが苦笑しながら冗談交じりに言ってくるのに肩を竦めて返す。

 

「僕は別に口は悪く無いよ?それに青髪さん、大層なことを言ってるようで実は大したこと言ってないし」

 

彼の言っていることは別段間違ってはいないが、だが別に過剰に絶賛されるようなことでは無い。人前に立ってそれを言えるのはとても評価できる点なのだけれども。

 

僕のその言葉に苦笑いを深めながらキリトは頭を掻く。

 

「まぁ、リュウの言ってることもあながち間違ってないけど……「ちょお待ってんか!!」」

 

会議に急に割り込まれた声。広場の方に目を向ければ先程まで青髪さん──ディアベルと言ったか──が立っていた場所にI〇サプリで良く投げられていたモ〇ッとボールみたいな頭の小柄な男が腕を組んで立っていた。

 

もう通じないかな?あの番組随分と前に終わったからなぁ……。

 

「ワシはキバオウっちゅうもんや!攻略の話し合いをする前にワシからひとつ言わせてもらうで!このゲームの全プレイヤーを現在進行形で裏切っとる卑怯者達についてや!」

 

「キバオウさん。君が言う卑怯者とは──」

 

曖昧に笑うディアベルに、キバオウと名乗った男はハッキリと言う。

 

「元ベータテスター共に決まっとるやろ!ワシら初心者達を裏切った最悪の奴らや!!奴らはココがデスゲームに変わった瞬間に初心者を見捨てて次の街に行きよった!

 

九千人の初心者たちを捨ててや!!それもただの初心者やないぞ!他のMMORPGでトップを張ってた一線級のプレイヤー達や!

 

一ヶ月で既にその二割以上が死んどる!技術もコルも無かったからや!二千人はベータテスター共に殺されたようなもんやろ!!

 

この中にも混じっとるはずやぞ!ワシらを見捨てたクズ共が!

 

持ってるコルもアイテムもみんな吐き出させてキッチリケジメをつけさせんと、ワシはそんなヤツらの命を預かれんし預けられん!!」

 

滅茶苦茶な論法だし、言ってることは感情的だ。でも、きっと賛同者は一定数いるのだろう。

 

「気に入らないね……」

 

だからこそ、誰かがその五月蝿い口を黙らせておくべきだ。明確な対立構造が出来上がってからでは遅いのだ。

 

ここで立ち上がれば面倒な事になるのは確かだし予定も随分と狂うが、僕はこれ以上攻略を遅滞させるわけにはいかない。

 

「お、おい?!リュウ!」

 

「なんやと?!おいお前!何が気に入らんのや!こっちに来てはっきり言いや!」

 

「そう。それなら失礼して──」

 

静止するキリトを振り切って思い切り跳躍。広場の中心に着地する。まさか本当に前に出てくるなんて思わなかったのだろう。ディアベルとキバオウは毒気を抜かれたような顔をしている。

 

「──ここではっきり言えばいいのかな?」

 

「お、おう!せや!何が気に入らんのかはっきり言えや!」

 

そう聞くとキバオウは頷く。それに殺気を向けてから全体に向けて口を開く。心臓音は先程から鳴り止まないし耳鳴りもする。元々人前に立つのは苦手なのだ。喉がカサカサに乾いたような錯覚すら覚えながら言葉を捻り出す。

 

「──気に入らないのは貴方の主張だ、キバオウ。ベータテスターのせいで多くのプレイヤーが死んだ?馬鹿馬鹿しい推論をさも正論であるかのように言うのはやめなよ」

 

「事実として一ヶ月で二千人も死によった!それが何よりの──「なら証拠は?」──なんのや!」

 

「決まっている。その死んでいった二千人が全て新規プレイヤーであるという事の証拠だよ。

 

もっと言えば、元テスターの死亡率より新規プレイヤー達の死亡率が高いという事の証拠だ。それを貴方はここにいる全員が納得できるように提示できるのか?」

 

ここで大切なのは本当にそうなのか、という前提をこの場にいるプレイヤーに疑わせること。別に亡くなった二千人が本当に新規プレイヤー達のみではないという証明は必要ない。理論は、それが真実ではない可能性を孕んだ時点で破綻する。

 

「そ、それは──」

 

「もし何も証拠がないなら、あなたが言っているそれは正論でもなんでもない。ただの憶測だ。貴方は憶測でここにいるトッププレイヤー達を混乱させようとしている。それもボス戦の前にだ。

 

そもそも、元ベータテスターに謝罪させアイテムもコルも全て吐き出させて、それで許すのか?貴方の言う通り元ベータテスターが新規プレイヤーを見捨てた。そして新規プレイヤー達がその結果死んだと仮定して、貴方に人殺しの元ベータテスター達を許す権利はあるのか?」

 

「…………」

 

「死んだ人間のことを引き合いに出して自分が優位に立とうとするんじゃねえよ、ふざけるな」

 

おっと、危ない。素が出てしまうところだった。自己反省会を開いていると遠慮がちな声が後ろからかかった。

 

「リ、リュウ君。君の主張はわかった。僕も君の意見には賛同出来る所は確かにある。だからその辺にしてあげてくれないか?その………」

 

この攻略会議の主催者のディアベルだった。その視線の先に僕も目を向けると膝をつき項垂れるキバオウの姿。

 

「完全論破されて、キバオウさんの心が折れそうになっている」

 

「そんなのは知ったことじゃあないよ()()()()()さん?」

 

「!!!」

 

耳打ちをするように放った単語だったがちゃんと聞こえたらしい。そしてその反応を見る限り図星のようだ。

 

「今夜22:30にこの広場だ。来なければ──わかるよね?」

 

「ああ………わかった」

 

だがそこは人をまとめる立場に自ら立候補するだけはある。即座にこちらを殺しにくるのではなく話には応じるか。

 

「──邪魔したねディアベルさん。別に僕はあんたの攻略会議を邪魔したかったわけじゃない。キバオウの言い分が気に入らなかっただけだ。用は済んだし元のように輪に戻る」

 

そう言い残して再び跳躍し元いた場所に座り直すと、相棒が少し焦った様子で話しかけてくる。

 

「ったく……肝を冷やしたぞ、リュウ!何やってんだよ!」

 

「……悪い、キリト。さすがに我慢できなくてさ。キリトはもう何人も他のプレイヤーを助けているのに侮辱されるのはおかしいだろ?」

 

「それを言ったら、リュウは何十人も助けてるじゃないか。お前が嫌われる必要なんて──」

 

「──僕は仕事以外で彼らを助けたことは無い」

 

「それってどういう──」

 

「お喋りはここまでだ、キリト。僕はこの場を離れる。ボス戦には他の人とパーティーを組んでくれ」

 

無理矢理キリトとのパーティーを解散すると彼は驚いた顔でこちらを見ている。恐らく、まだ理由がわかっていないのだろう。

 

「な、なんでだよリュウ……!」

 

だが、これ以上彼の評判まで貶めるわけにはいかない。

 

俊敏(AGI)をフルに活用して広場を離脱し、そのまま安全地帯の外に駆け出す。とりあえず夜までは時間を潰す必要があるから適当に狩りをするつもりだ。

 

「っとと、その前に──」

 

僕はメニューのフレンド画面からキリトとクラインを削除した──きっとここからは、僕一人でやらないといけないことだから。

 

「……邪魔をされたらたまらない」

 

首を大きく振って躊躇いと脳裏に浮かんだ二人の笑顔を振り払い思考を取り戻す。

 

現状のプレイヤーは大きく分けて三種類いる。元テスター、そして彼らをそれぞれ否定する人、肯定する人だ。

 

肯定組、元テスターは今回どうでもいい。厄介なのは元テスターを忌避するキバオウのような人間だ。彼らは恐らく今後も『初心者を見捨てた』ということを公然と掲げて元テスターへの補償を要求するだろう。そんな事態は起こらないに越したことはないが、万が一の場合がある。

 

「そうなったらキリトが困る」

 

ベータの時から三ヶ月、共にこの場所を駆けた相棒に思いを馳せる。ゲームの中で関わっただけでも、キリトの優しさは伝わってきた。

 

きっと優しい彼は、自分の事を投げ打ってでもその衝突を回避しようとするだろう。

 

「違うよ、キリト。それは君の役回りじゃない──」

 

向こうで薄汚れていた僕にこそそれは相応しい。今は触れられない、リンクする前首に掛けたロケットがある位置で拳を握る。

 

「嫌われるのは、僕だけの仕事でいいんだよね──しーちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回「第一層、攻略」




なるたけ早めに次をお届けできるように頑張ります……

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