『アイマスSSに偽装された好きな曲を紹介する転生者の話』 作:黒崎セシル
大忙しの人気アイドルたちが、その日は珍しく全員午前中に事務所へと召喚された。
つい先日二度目のオールスターライブを終えたばかりの彼女たちは、理由を思いつかないままに社長の到着を待っていた。
そして、到着後流れるように前回のオチとなったため彼女たちは一瞬理解が及ばなかった。
数秒を経て、音楽と歌に並ならぬ情熱を持っている如月千早が覚醒する。
「専属の方を雇うんですか?!」
「その通りだよ如月君!そして彼はすでにみんなのために楽曲を作ってくれているんだ!」
食い気味の社長の返答に、少女たちが相次いで歓声を上げた。
晴れてトップへの道を歩み始めた彼女たちにとって、作詞と音作りのできる人員は、これまで外側の人だった。
今回伊達直人という男が入社することで、今まで以上に楽曲を売り出すことが可能になる、と思われる……はずだ。
問題になるのはこの男の実力のほど、この一点。
「もー作ってるってことはー、もしかしてダテッチ音源持って来てるってこと?」
「ハイパーサウンドクリエイターじゃん!」
双海亜美が早速あだ名で呼びつつ期待の目を向ければ、続く姉・真美が不確定な賞賛を浴びせた。
「はっはっは!それぞれのイメージの楽曲やアルバム何枚かなら、すぐに出せるという自信があるよ」
直人はからからと笑い、自慢げに少女らに伝える。
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「はっはっは!それぞれのイメージの楽曲やアルバム何枚かなら、すぐに出せるという自信があるよ」
早速双海パイセン(妹)にあだ名をつけられていい気になった俺は即座にドヤ顔でそう言った。
全員から「お~!!!」と声が上がる。
事実楽曲自体はかなりあるしイメージに沿ったものも多々書き下ろしている。
まあすべてが前世では存在していた楽曲だ。
今この世界には俺が書いた楽曲が実在しない。
このアイマス世界線(世界線って言いたいだけ)は芸能界、それも歌手やアーティスト、作詞家に至るまで、戦後以降の歴史が大幅に違っている。
そのうえで転生時に手に入れたであろう、所謂チート的な能力がおそらく「音楽に関する才能」。
それを使って、前世に置いて好きだったあらゆる楽曲を書き起こし再現して、ため込んである。
765プロのアイドル諸君をこの先10年以上食わせていくだけの数が余裕でどころかあふれてるレベルだわ!
俺はさっそく持ってきたノートPCを取り出しファイルを開く。
「まあ、不安もあるかもだし、皆まずは一曲聞いてみてくれ」
ファイル名は『Perfect Star Perfect Style』終わってしまった大切な恋を想い、過去に戻りたいという淡い悲しみを歌った、前世のテクノポップユニットの一曲だ。
残念ながらあんなかわいい声は出せないので、音源は音声合成ソフトを使った女性の声を加工して使っている。
いくらチートを賜ったとはいえ、そこまでの力を天は与えないのだ。
皆聞き入ってくれて、ビートに合わせて首が動く子もいる。
借り物の楽曲(この世界に置いてはオリジナルとされてしまうが)でも、反応が良くてうれしくなってしまう。
いい曲だもんね、これ。
あれこれ思考しているとあっという間に4分と少しの楽曲が再生を終える。
「どうだったかな?皆には歌ってほしい曲がいくつもあるんだ」
余韻を壊さないように極力優しい声色で俺は問うた。
わかりやすい音程と、歌詞の内容的にも年頃のお嬢さん方にはかなりぶっ刺さる曲だと思う。
「すごい……すごいです!」
一番最初に反応をくれたのは我らがリーダーレッド、天海春香だった。
それを皮切りに余韻を抜けた少女たちの目が輝く。
すいません、それ、すごいの俺じゃなくてもとの楽曲なんですよwww
「初めて聞いたのに、なんだか懐かしいような……ちょっと悲しい曲のはずなのに、なんだかすごくあったかい感じなんです」
すっかり引き込まれてくれたのか、カラテ乙女の菊地真は、少し潤ませた瞳と、軽く上気した頬で郷愁を吐露した。
めっちゃオトメやんけ!かわいすぎて倒れそうになるわ!
「ちょっとだけ胸がチクってなったけどとってもいい曲ですーっ」
高槻やよいちゃんが俺に向けて笑顔で感想をくれた。天使かよ(結婚しよ)……あ^~耳がニゴニゴしゅりゅ^~しあわしぇ^~
「まあ、ジャンル的に竜宮向きではあるわね」
間髪置かずに水瀬伊織。うひょ~!素直!素直いおりんマジ聖母。
なんやねんこの神がかった順番、百年たたずともやよいおりってことか!?
「てくのぽっぷと申しましょうか、まことに良き曲です」
おお!四条貴音お姫ちん!わざわざひらがな横文字(語彙かいめつ)
で答えてくれるとは!ありがたや~。
ホントに色っぽい声してらっしゃる。
「美希的にはもっと明るい感じがいいかな~、でもいい曲なのはジジツなの」
脱・昼寝キャラを達成した星井美希はストレートに自分の意見をくれる。
生の美希は、キラキラしすぎてすごい、具体的にはヤバい(小並感)
「曲としてはユニット向きだよね☆」
「三人か四人くらいがベストと見た!」
双海姉妹の亜美・真美はそれぞれ鋭い感性で指摘する。
おめーら天才かよ、その通りユニット向けの曲ってか三人用だよw
「伊織ちゃんの言う通り、竜宮みたいな二人以上のユニット向けな感じがするわねぇ?」
あ、あずさパイセンもその意見ですか。
まあテクノポップ系かつユニット曲経験者だもんな。
「でもどちらかというと、生歌向きの曲とは違う感じがします」
さすちは!!!そこに気が付くとは。
「自分としてはダンス向きとも言えないけど、パフォーマンスとか演出で見せる曲なんじゃないかとおもうぞ」
おお!我那覇!響!
君たちの鋭さは何かこう、ユニークスキルかなんかか?
ダイス振って事前に高ステ持って生まれたのか?
「ジャンルと持ち歌の影響もあるけど、萩原さんにはなじみ深い曲調じゃないかな?」
なかなか初期位置から距離の縮まらない雪歩氏にあえて俺からも話を振る。
萩原雪歩のアイドルとしての初期の持ち曲である『Kosmos,Cosmos』に通じるジャンルのはずだ。
「は、はいっ!ガチャガチャしすぎない曲だし、リリックも素敵ですっ!」
ほう、なかなかにアーティスティックな意見、っていうかリリックに食いつくのか、そしていまだに距離遠いなwww
「伊達さん的にはどうなんです?生歌やエフェクトに関しては」
羽根Pはさっそく売り出しの算段か、悪くない。
「俺としては765のみんなは歌うの上手だし、エフェクトはCD音源のみ、もしくは両方サンプリングとして考えてます」
これは、俺独特の意見だ。
確かにパフォーマンス重視の口パクもありかもしれないが、アイマスの子たちはみんな生歌ガチ勢(今名付けた)なのでどちらでもできると思っている。
でも、ただ売り出すための曲ってだけじゃ彼女たち自身が納得いかないだろう。
せっかくの楽曲、ライブでも思いっきり歌ってほしいのがホントのところだ。
「スタジオ押さえて準備もしなきゃいけませんねっ」
真と同じくらい曲にノリノリだった事務員の音無小鳥が興奮気味に告げる。
正直メンバーが決まってスタジオさえあれば後はアイドル達に曲を覚えててもらうだけなのだ。
「竜宮の楽曲も依頼できますかね……?」
控えめな声で秋月律子プロデューサーが尋ねてきた。
「あったりまえだろぉ~?(急激なハイネ感)765の音楽屋なんだから当然書きますし、何なら明日にでもフルアルバムで渡しますよ」
まあアルバムはさておきヨロシクりっちゃん!
トランジスタグラマーでできる女で世話焼きで姉属性でおしゃれメガネでヒップラインのエロいパンツスーツのりっちゃんホントすこ。
おっぱいもおっきいし。
「まあそういうわけで、伊達君を中心とした新プロジェクトも開始しようと思うよ、名付けてD PROJECT!彼をコンポーザーとして、すべての楽曲を手掛けてもらいつつ、特別編成ユニットによる連続リリースだ!」
力強い社長の宣言に、すっかりその気のアイドルたちの掛け声が事務所に木霊した。
某日、とあるテレビ局
「おおー、じゃあ何?765さんに新しく入った人が作詞も作曲もやってくれてるんだ?」
サングラスにオールバックの『お昼の顔』で有名な番組MCが少女らに声をかけた。
壇上に設けられた椅子に座り、周りの名だたるアーティストたちにも引けを取らぬ堂々とした輝きを放つ765プロの面々。
「はいっ!D PROJECT コード:パルファムっていうチーム名で今回は私と雪歩と美希のユニットになったんです」
まぶしい笑顔でユニットリーダーの春香が答える。
「あ、あのっ、ポップな曲調ですけど、世界観のしっかりしたリリックにも注目ですっ」
雪歩が相も変らぬ緊張気味な声で続け「ムネにキュってくる歌詞だと思うの」と美希が締める。
「なーるほど、新人さんの作った曲だけど自信満々だねぇ……それでは早速、準備の方おねがいします」
MCに促され席を立つ三人。
「さあ、ではお聞きいただきましょう、今や押しも押されぬ765プロダクションの新曲、今回はあたらしいプロジェクトのユニットとともにお届けします」
流れるような男性MCのアナウンスに、そばに控えていた女性MCも続く。
「それではお聞きください、今月15日にリリースされます、765プロ『D PROJECT コード:パルファム』で『Perfect Star Perfect Style』です」
この世界にはなかったはずの楽曲で、アイドルたちが輝きだす。
「ああ、光が……」
スポットライトの輝きに目を細め、転生者は一人、そんなネタをつぶやいた。
初めて聞いたとき私は真と同じ気持ちになった。
今回起用した楽曲
パーフェクトスター・パーフェクトスタイル
Perfume ファーストベストアルバムより
作詞・作曲 中田ヤスタカ
歌 Perfume