仮面ライダークラーロ   作:コンテンダー。

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Round1 灼熱のルチャドール①

東京は多彩な街だ。新宿、池袋、渋谷などの都市前とした機能を持つ大きな街や浅草や柴又などの下町を残した街もある。

 

文化が多彩故に集まる人間も多彩になるのだろうか。

 

首都であることも要因の1つなのは外せない。

 

そんな事を頭の中で考えながらも、新宿のキャンパスから下町の空気が根強い東京湾に近いエリアにやってきた宙夢。

 

「……………………………」

 

炎をデザインし、かつ翼を全体にあしらった赤いボディのバイクを古いビルの真下に止めた宙夢はヘルメットを脱ぐと、3Fの年期の入った看板を見上げた。

 

「相変わらずボロっちいな、蘭子の事務所」

 

3Fの看板には達筆な文字でこう刻まれていた。

 

ー神津法律探偵事務所ーと。

 

法律、弁護士?それとも探偵なのか?今一つどちらつかずな印象を看板から受けてしまう事に珍しく愛想笑いする宙夢であった。

 

が、見慣れた光景故にいつもの事だと頭の中で処理をして、ヘルメットをバイクの後ろに引っ掻けて軋む薄汚れたガラス戸を引いて中に入る。

 

古いビル故、石の階段も欠けていたりひび割れがあったりしているのはそれだけ古い建物であるのを示していた。それだけではなく、壁紙も捲れてよどんでいる。

 

もうこの建物はレア物と言っても差し支えない。

 

カツ、カツ、カツ。そんな古い建物内でわざとらしく足音を立てながら、一つ一つの石の階段を昇っていく。

 

すると、2Fの踊り場で仁王立ちしてこちらを見下ろしている女性がいた。

  

「またなんですか、いえ、またなの?宙夢先輩。こちらだって蘭子先輩がいない分をカバーしないといけないんですから付き合っている暇はないんです!」

 

強気に文句を投げてくる声の先は先ほどの女性。 長い黒髪を束ねてポニーテールにしており、アジアンとヨーロッパの中間の顔立ちをしている所謂美人だ。

 

しかもスタイルも良い。

 

そのバランスの良さが勝ち気の強さにピタリと当てはまる。

 

「お、お出迎えとは………これは光栄だね。伊織(イオリ)」

 

なんやかんやでいつも出迎えてくれる彼女に英俊の時とは違う物言いを見せる宙夢。女性でこういう砕けた付き合いをしているのは数人しかいない。

 

その中の一人である彼女。

 

この神津法律探偵事務所の見習い職員で、宙夢のパレハ(パートナー)の一人である佐倉 伊織(サクライオリ)である。

 

「出迎えではありませんから、お断りですから!」

 

宙夢の発言に反論をぶつけてくる伊織ではあるが、そんな事は知らんと言った顔で宙夢が口を開く。

 

「や、俺の指示は蘭子の指示と同じだから。悪いけどな、そういう話をつけてるんだよ」

 

「はい?聞いたことないです。暴論です!」

 

「うっせえな………分かった、分かった!後なんか奢るから」

 

「……………も、モノになんて屈しませんから」

 

伊織の気持ちが若干揺らいだ事を見逃さず、宙夢は問答無用で手を引く。

 

「ほら、行くからな。ほら!」

 

「ああ、もうっ!仕方なくですからね!……先輩、またです………」

 

伊織は宙夢のひねくれた協力要請を撥ね付けられずにそのまま階段を降りていった。

 

一応宙夢はこうやっていつも体制を組み立てていくのであったーー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ー同時刻・幹線道路から外れた裏手の通りー

 

裏手にある銀行の搬出口で現金の詰め込みが密やかに行われていた。

  

「よし、何事もなく完了か」

 

「最近の件があったし、心配してましたけど良かったすね」

 

二人のガードマンが銀行職員が扉を閉める中、運搬車の中で談笑をしていた。

 

「何が手品だ、手品なんてトリックがあるに決まってるしな」

 

「そうすね」

 

乾いた笑い声が響く中、車のエンジンを回し、銀行から離れた瞬間だった。

 

グラリと車体が大きく揺れた。激しい音はないが車体に何かが突き刺さった感覚だ。その衝撃で車輪が空転している。

 

「な、この揺れ!?」

 

「じ、地震!?」

 

だが、周りは揺れていない。揺れているのは車体のみ。

 

「おい、連絡!」

 

「は、は、はい!うわわわっ!?」

 

何かが起きている。すっかり落ち着きを失った二人は連絡を取ろうとするが、慌てて無線が手につかない。

 

「ッ!見てくる!落ち着いて、連絡を!」

 

「せ、先輩!?ちょっ!?先輩!」

 

このままでは埒が空かないと思ったのか、運転手役のガードマンが何が起きているのかを調べるために外に飛び出した。

 

「こっ、これはっ!?」

 

見たこともない光景に驚き、目を丸くするガードマン。それは必然やかも知れない。

 

頑丈なはずの運搬車の真横に穴が開き、そこから次々と札束の入ったケースが『消えて』いっているのだから。

 

いや、消えると言うのは間違いだ。

 

穴を通してアタッシュケースが生き物のように飛びながら、穴を通ると姿を消す。

 

さながら見えない何者かに収納されているようだ。

 

「ッ!」

 

思わず非常時のために持っている拳銃をホルスターから抜き、穴に向ける。

 

「……ハッ、ハッ、ハッ………ッ!」

 

ズッン!と慣れないながらも銃口から弾丸が一撃飛んでいく。重い反動が体に響くがそんなのには構っていられない。

 

ただどうにかしなければの一点でガードマンは一撃を撃ち込んだのだ。

 

『………ああ、バレちゃったか……。まさかこんなに簡単に化けの皮が剥がれるとはね』

 

穴に弾丸が突き抜けようかとした微か前で、弾は透明な硬いモノに衝突したのだ。からりんと落ちた薬莢と低い声が物語る事実だ。

 

見えなかったモノは徐々に姿を見せる。

 

徐々に透明だったボディが運搬車の荷台に合わせた銀から、メタリックのかかった黒に変化し、足のメタリックグリーンも見えてくる。

 

「か、怪人!?う、噂の………」

 

ガードマンは噂に聞いていた怪物の名前を思い出していた。

 

不可思議な犯罪を引き起こす存在。人間が装甲を纏い変身すると言う怪人ーアセンブル。

 

きっと今目にしているのは、アセンブルなんだと確信したガードマンは腰を抜かして座り込んだ。

 

「先輩、大丈夫で………か、怪人だああああああああっ!」

 

あまりにも遅く、先ほどの音がだめ押しになったのか、運転手のガードマンがやって来て悲鳴を上げた。

 

『五月蝿い………騒がれたらやりずらくなっちゃうなあ………』

 

荷台に張り付いたアセンブルの姿が完全に露になった。

 

メタリックブラックとメタリックグリーンが所々に混ざりあった身体と背中に背負った丸い貯金箱のようなタンク。顔はカメレオンがモチーフ。

 

連続輸送車金消滅事件の犯人『バンクス・アセンブル』だ。

 

『ここまで上手く事を運べていたのに………。ま、一人も二人も片付けてしまえば同じ部類だよね』

 

ついに狂気を見せつけたバンクス・アセンブルは長いカメレオン特有の舌をだらりんと伸ばし、二人のガードマンの胴体を縛り上げた。

 

「がっ!?」

 

「あがあああああああああっ!?」

 

一瞬の出来事で対処できなかった二人の腹部と骨に同時に痛みが襲いかかる。

 

圧迫と骨の軋み。2つの痛みが神経を徐々に乱していく。

 

「「あがあああああああああっ……………」」

 

同じような悲鳴をあげていた二人の身体が力を失っていった。

 

そして、グチャリグチャリ内臓が、心臓が、血管が、潰されていく。

 

バキリバキリと骨が砕けていく。

 

もはや助かる術など無かった。

 

この日、連続運搬車金消滅、いや強奪事件で初めての被害者が出たのだったーー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ー素晴らしい商品です。うちでも是非導入させていただきたいー

 

「ありがとうございます、それでは契約はアポを取らせていただいてと言う形で」

 

強請な社長室だろうか、大きなモニターを通して契約を取り付けた白いスーツの男。

 

この男が社長を勤める『オメガ工学』は新進気鋭の多ジャンルの工学分野でトップを走る会社だ。

 

「…………フン、下手に出るのはどうも好きになれん」

 

先ほどの爽やかな笑顔とは全く異なる冷めた表情を浮かべた男、藤堂 龍馬(トウドウ リュウマ)は手元のダイスを手に取り、つまらなさそうに手の中で転がし始めた。

 

「面白い話は無いものか………。バンクスのダイスはなかなか見処がありそうだが………」

 

藤堂の視線の先にはーー何がある?

 

きっと彼の目線の先にあるものはー栄光にして、軌跡の形。

 

「社長、お時間です。次の予定が入っております」

 

とそこに秘書らしきグラマラスで美しいと言う形容がピタリと合う女性が現れた。

 

「………そんな時間か……リゼ、バンクスのチェックを欠かさずにおこなってくれたまえ」

 

藤堂の指示にリゼと呼ばれた秘書は軽く頭を下げる。

 

「かしこまりました……。スカルに注意をさせます」

 

「ならばよろしい。アッハハハハハハッ!」

 

高らかに笑いながら社長室を後にする藤堂の背中をリゼは複雑そうに見送った。

 

「………藤堂社長………一体どこまで行くつもりなのですか?」

 

リゼ改め、藤堂の秘書であるリゼロッド・アサンブラシュは狂い続ける社長の背中を見て何を思うのだろう。

 

静かにスマホを取り出すと、手早く文字を打ち込みある手配を進めるのであった。

 

その連絡先には、ある大学の准教授の名前があったのを最後に付け加えておこうーー。

  

 

 

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