ー遺体が見つかったってー
ー真っ二つになっていたんだって、怖いなー
ーしかも、バケモノがいたとか………ー
ーお金もやっぱりやられていたんだとー
ーこれも連続消滅事件の犯人かしらー
昼下がりのオフィス街、裏手へと入る通りの周りを野次馬が取り囲む。
それだけでも異常な光景だが通り事態がロープと立ち入り禁止のテープで封鎖された挙げ句、ブルーシートで見えないようにシャットアウトが施されていた。
「………………そこの写真を……………こまなく調べて。細かな傷も確認」
その悲惨な現場の人動指揮をとっている若い刑事は細かい情報を頭で整理しながら、上手く立ち回っていた。
そこへだ。刑事の電話が鳴った。
「すまない、席を外す、長くなるかもしれない。指揮を代わりに」
「は、はい」
隣にいたベテラン刑事に指示の件を伝え、若い刑事は一旦そこから離れて、連絡を受ける。
『兄さん、今大丈夫かしら?』
「…ああ、大丈夫だよ。伊織」
その刑事の連絡の相手はなんと佐倉伊織だったのだ。少しばかり口調も柔らかくなる刑事。
「宙夢君はそこにいる?」
『ええ、代わるつもりで連絡したの。宙夢先輩、はい』
電話口の向こうで音が遠くなる。受け渡しでもしているのだろう。
『あい、東賀宙夢です』
連絡先が面倒そうな声に代わる。伊織と共にいる宙夢だ。
「………宙夢、輸送車がやられた」
宙夢の挨拶に頭を抱えながら刑事は話を切り出していく。
『で、今現場と。ま、騒ぎになってるから分かるよ。で、指揮を取るのはお前なんだな、そうなんだな。俺も英俊の話を聞いてから伊織と一緒に現場を見て回ってる』
今、宙夢達は何件か連続で起きているバンクス・アセンブルによって引き起こされた事件の現場を見て回っていたようだ。
だが、相変わらず話の腰を折らないペースで喋ってくる。それは慣れたと動じない刑事。さらに宙夢は現場を見て回っていることを踏まえてさらに続けてきた。
『しかし、どこもちょうどいいぐらいに裏手だな。まるで光に当たるのが嫌なのかな』
『うん、宙夢先輩の言うことも一理ありますね』
宙夢は現場を見ていくうちに襲われたポイントが裏手や影の多い、ビルの谷間での襲撃が多いのではと言う仮説を立てているようだ。
だが、案外外れとは言いにくい。
刑事が振り替えると確かに今回の事件が起きた裏手も丁度、ビル影が重なる地点だと言うことがわかる。
「うん、確かに今回のポイントもそうだ。今までと同じように影が多い。しかし、何故影なんだ?」
刑事が不思議に思うのも間違いではない。確かに『影』と言う共通項はあるが、それがどんなポイントになっているかが分からない。だが、偶然と片付けるのもナンセンスだ。
『………いや、これは俺の勘なんですがね、影は重要なキーポイントなんじゃないですか?』
今までのやる気のない声のハリが宙夢らしからぬ丁重な言葉使いに代わると同時にかちりと締まる。
「キーポイント?」
『ええ。光によって身体が目立ってしまうと犯行がしにくくなる、のでは?』
カメレオンは身体を周りの色に変色させる能力があるのは有名な話だ。
だが、光によっても身体の色が変わる事がある。
光が強い場所では緑に、影だと焦茶になどだ。
もしカメレオンの生態を今回の犯人に当てはめるならば、犯行をカモフラージュすると同時に自らの身体を影に溶け込ませることが大切だ。
宙夢が考えたのは光が強すぎると、身体の色をコントロール出来ないのではないかーーと言う結論だ。
「…………それは伊織の言う通り一理ある。分かった、この件を少し踏まえてみよう。被害者も出てしまった以上、後出には出来ないッ!」
宙夢に背中を押される形で刑事はある捜査を思い付いた。ならばやってみようか、と言わんばかりに。
そして、若き指揮官である刑事、佐倉 正道(サクラ マサミチ)は現場に戻っていったーー。
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「切れたッ!んだよ、正道のヤツ」
その頃、初めの消失があった路地裏の道路に大の字で転がっている宙夢がいた。
「宙夢先輩、いきなり寝ないでください!恥ずかしいです!電話が切れたからって駄々を捏ねないで!」
人目はないとは言え、一応の。いや、それ以上の宙夢のモラルの無さに強く言いつける伊織。
「駄々は捏ねてない。ちょっとイラッとしただけだ」
イラッとして大の字なんぞ聞いた事はないのだが、お構いなしだとばかりにすぐに宙夢は立ち上がるとポンポンと背中を叩き、土を祓う。
「………なら、なんで大の字になったんですか?」
今更ながら伊織にもよく宙夢が良く分からなくなった。これでよくコンビを組んでいられると自分で自分を褒めてあげたい。
「頭の整理と周りの目を気にすることどちらが大切か?今起きている事件の前じゃ、そんなのは気にすることじゃないな」
宙夢は屁理屈ともとれるような、破天荒のような、なんとも分からない言い分を伊織にぶつける。
「分かりましたから!分かりましたから!………ッ、もう………」
宙夢のペースに振り回されながらも、なんやかんや言いながらも付き合ってしまう自分にため息をついてしまう。
だが、伊織は宙夢の態度に隠された過去を知っている。
だから、彼との付き合いを変える事が出来ない。
伊織はもう1つ知っている。今の宙夢の葛藤を。
だから、彼とのコンビを崩すわけにはいかないのだ。
「宙夢先輩、次いきますよ。ほら!」
無理矢理に宙夢を引っ張り出す伊織。分かっちゃいるけど少しは癪に触る。ここは少しでも晴らしてやろうか、鬱憤を。
「ち、分かった!分かった!行くから!」
珍しく宙夢の先手を打てたことに伊織はにんまりと笑みを溢したーー。
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一時間経ち、夕刻が迫る時間になった。
宙夢達が捜査を続けている中、一人ある場所を訪れていた英俊。
「准教授、こちらです」
彼がいるのは都内にあるビリヤードバーだ。
薄暗い照明とビリヤードの台をぼんやり浮かび出させる光が絶妙にマッチしている。
一言で言えば大人の世界とでも言うのが一番照っとり早いか。
そんなビリヤードバーの中でも入り口から一番端にあり、丁度影になっている台を背にしているテーブルの方から呼ぶ声が聞こえた。
「こちらでしたか、リゼさん」
先程宙夢と会った時にボサボサだった髪出来る限りの綺麗にまとめた英俊はその声に呼ばれるまま、台に向かった。
「…………お呼び立てして申し訳ありません、急用でしたので」
座っていた相手は立ち上がると丁寧に頭を下げて、英俊を迎えた。
英俊と対面しているのは金髪で秘書をイメージさせるリクルートのスーツをまとった女性。
いや、秘書だ。
彼女はリゼロッド・アサンブラシュ。
あの藤堂の秘書であった彼女が英俊と密会していたのだ。
そう、藤堂から指示を出されたあとのあの連絡受けて指定された時間にやってきたのだ。
「マスター、パイルドライバーを」
リゼに手招きされるまま、隣に座った英俊はまずは先にカクテルを注文して彼女と顔を見合わせずに話始めた。
「…………事件の件ですね…………しかし、いつも不思議に思うのですがどうしてあなたは………」
英俊から切り出していく。まずは嫌らしく気になることからだ。
だが、リゼは静かに笑みを称えながらも英俊の問いにこう答える。
「それはまだ聞いちゃいけないことと約束しましたよね?あまり切り込みすぎると嫌われますよ?」
「…………そうでした………。貴女には貴女の訳があり、僕には僕の訳がある。その距離は守る約束ですね」
未だに踏み込めない場所。互いに決めた場所。ここが二人の交わり。
「ええ、約束です。それでは………」
英俊のグラスが届いたと同時にグラスのみを向かい合わせる。
「「乾杯」」
英俊とリゼは確認と距離を取りながら小さく乾杯をする。
「………今回の件が皮切りになりそうです」
「そうですか………」
この不思議なツーショットが何を示しているのか……そんなことは未だに分からない。
だが、これだけは言える。
仮面ライダー側と組織側の間に何らかの繋がりがあると。