本気で不法侵入しようと意気込んでいるリクを慌て止めれば渋々頷いてくれる。え、ちょっと待てなんで?なんでそんな渋々なの?と問いたくなったが問いたら負けなんだな、分かります。
ヒビキが引きつった笑みを浮かべて自問自答していれば、リクはポケギアを取り出した。
「ならさ、番号交換しようよ!」
ソウルは今更ながら出し惜しみ、眉間に眉を寄せた…ところをヒビキに弾かれていた。
「あ、ヒビキってその『レッド』さんと戦ったことあるの?」
ぴたりと 止まりあはは、と笑う。リクは首を傾げた。何か可笑しかっただろうか?
「な、何回も負けてる…」
ズーン黒い空気を纏いだしたヒビキ。慌てて ゴメン!と慰めるもネガティブモード到来したのかなかなか機嫌は直らなかった。
「うー…とりあえず私カントーに用事が……」
「その前に行こうか!」
「ええええ…」
旅の目的すら華麗にスルーするヒビキに肩を落とす。何でもう復活。さっきまで不貞腐れたじゃないか
「リクの用事ってどこの町なんだ?」
ソウルが間に入り口を開く。そういえば、とヒビキもこちらを見る。そういえばあの人どこの町だっけ?おじいちゃんの家の近くって言ってたからやっぱりマサラ?
「多分、マサラタウンってところ」
なのかな?と語尾に付ければ呆れられた。すみません。シロガネ山とマサラタウンはどっちが近いのかな?
「シロガネ山」
「嘘吐くな!」
さらりと笑顔でヒビキが言うので、そうなんだ。と思わず頷いたところソウルから盛大な突っ込みが入った。ええええ、どっちなんですか。
「確実に登山するよりもマサラに飛んだ方が速いに決まってるだろ」
「……確かに」
ソウルの言葉に納得しチラリ、とヒビキをみたら爽やかな笑みを浮かべていた。これはもう学習したから分かる。逆らっちゃいけない人のソレだと。
本能で悟り、学習した。
----------------
--------ーー
--------
「飲み物持ってきたわよー」
ガチャリ。些か空気読めてない感が否めないがコノ空気を断ち切ってくれたヒビキの母に感謝だ。
ミックスオレでよかったかしら…?コップを差し出し、朗らかに笑うお母さまに思わず感激。人の優しさに飢えているなと自分でも思うが、さすが見知らぬ他人にここまで尽くしてくれるヒビキの母親なのだと再認識した。
「ありがとうございます」
緩まる頬を引き締めずに口に出せば優しく笑いかけてくれた。
「ケーキ焼いたんだけど…一緒にどうかしら?」
「…え、いいんですか…?」
おずおず、と小さく尋ねれば、もちろんよ持ってくるわね。と微笑まれた。よろしくお願いします。嬉くなり顔を綻ばせ頭を下げる。
(……!…おいしいです!)
(うふふ、ありがとう)