反響ーエコーー   作:志摩 暁月

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第12話

 

ヒビキの家を出て数時間たった現在、リクは現状に戸惑っていた。

 

旅の目的地を伝えてから、「そういえば僕らもそっち方面に用事があるんだ!途中まで一緒に行かない?道案内するよ」とヒビキに捲し立てられ、遠慮したものの、何故だか彼らは本当に着いてきた。呆れた視線をプレゼントすればソウルは睨み付けてきた。ヒビキは知らぬ存ぜぬを貫き通す気だ。

 

睨みつけられたままは流石に気分の良い空気とは云えなかったが、今まで手持ちのみんなと自分だけの旅であったため、リクは延々と自問自答を繰り返すだけの道のりに辟易としていたことも事実だった。そう考えると、今の現状も悪くはないのではないか。

 

そんなことを考えていたら、口角が上がっていた。

 

ヒビキの道案内により、空を飛んでいるため会話らしい会話は出来ないが、流石現役チャンピオン。しばらく飛んでいるにもかかわらずカイリューにあまり疲れが窺えなかった。

 

その反面、外出自体を拒んできたリクはもちろん、ポケモンも体力の消耗が激しかった。

 

時々気遣いながら進むリクの顔はだんだんと驚きに染まっていく。

 

「チルタリス?」

 

旅に出てしばらく経つが、今は普段の倍以上のスピードで進んでいるにも関わらずチルタリスは疲れた表情一つ見せていない。

 

おかしいな。小さな矛盾。僅かな違和感。

それを感じたのは初めてではなかった。この旅を始めてから何度も感じていた。それを無理矢理自分に都合の良い解釈をして納得させていたんだ。

 

ふ、と思考を戻せば少し先に、いつの間にか野生のポケモンたちが顔を覗かせていた。オニドリル、地上にはギャロップやドードリオたちだ。いずれにしても普通に飛んでいて出会える確率なんてない。

 

チルタリスにごめんねと謝り、少しスピードを上げてヒビキと並走してもらう。

 

「ねえヒビキ!だんだんと荒れ狂った道になってるんだけどどこに向かってるの?」

 

早口になり横を走るヒビキを見ればあはは、と笑われた。

 

「頂上」

「ちょうじょう?」

 

ソウルをちらり、と見れば我関せず。だけど呆れた表情を隠していなかった。

 

「え、と…え?

 …目的地、シロガネ山なの…?」

 

荒れ狂った道無き道を慣れたようにスイスイ進んで行く。先程あったゲートはヒビキが職権濫用…もとい何かを告げてなんの問題もなく入ることができた。数歩離れたところでその様子をソウルと窺っていたがそれはもう快く了承してくれた。

 

何度かジロジロと見られたが深く帽子を被ってマフラーで口元を隠した。怪しいけど意外に分からないものだ。

 

ヒビキに言われ厚着をゲートで購入してきたが今は、凄く暑い。パタパタと手で扇いで気を紛らわした

 

ゲートを出てすぐにマフラーとコートを剥いだ。

 

山の麓にあるポケモンセンターでしばし休息を取り、再び飛び立つ。

 

「うーわー」

「いつもながら荒れ狂ってるね」

「え、ねえ、本当にこの頂上に人がいるの?」

 

いるいる。怪物みたいな人が。怪物みたいな、と言われてもいまいち想像力に欠けるリクは曖昧に頷いただけだった。

 

 

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結構奥まで来た。

山の頂上を目指しているのでは?洞窟の奥に向かいながら、キンと凍えるような冷えが増して、おもわず両腕を擦り彼らを追う。流石に耐えきれなくなり、カバンにしまい込んだコートとマフラーを身に纏った。

 

うう、凍える…。

あ、でもすごい。さっきから見たことないポケモンがいっぱいだ。

 

ホウエンでは見かけないリングマやオニドリルたちの群れをおっかなびっくりで通り過ぎていけば周りは雪景色。飛行タイプは寒さに弱いのに…チルタリスを撫でヒビキに視線を戻すとヒビキもリクを見ていた

 

「吹雪いてきたし…ここからは歩いていこうか」

 

視界が悪くなっていることを言っているんだろう。

チルタリスに声をかけゆっくり降下してもらう。冷たくなった身体を擦り、礼を言ってボールに戻ってもらう

 

「さ、ここまで来たら後は彼を探すだけ……2人とも大丈夫?」

 

寒さに震えているのが分かったんだろう。心配そうにリクを見る。ソウルは別に、問題ないと顔を変えない

 

「うん…まだだいじょ、ぶ…」

 

いくら気の持ちようが変わったところでリクはリクだ。少し前まで閉じこもっていたのだ。ホウエンのあたたかい地方の出身で、ここまでの気温の変化に耐えれるはずがない。それでも自分を叱咤し先を促す。

 

「この間来た時はダイヤモンドダストだったから天候にそこまで問題は無かったんだけど…今日はかなり吹雪いてるね」

「前見えないしな」

「多分あそこにいるのかも」

 

ヒビキが下りはじめたので、もちろんこれほど野性ポケモンの聖地と化した山(聖地と言っても人にとっては意味のなさい凶悪な山だ)になど訪れたことのない、同年代の少女より実力はあってもただの少女はただ後をついていくので精一杯であった。

 

「あ、あれが彼がよくいる洞窟の入り口だね。」

 

感覚的にはまっすぐに歩いてきただけだったのだがたしかに入り口は存在した。そして黄色い色をした、愛らしいポケモンが少し入った場所で顔を覗かせていた。

 

「あれ、ピカチュウ…?」

「めずらしいな…」

 

ん?っとヒビキが振り向いて目を丸くさせた。薄暗い洞窟の中、この場所で出会うハズが無い。しかしこのピカチュウはヒビキは知っているようだった。

 

タッ!と音を立てヒビキの頭に飛び乗った

 

「知ってんのか?」

「うーん、恐らく」

 

ほら、レッドさんの手持ちだよ。ピカチュウの頭を撫でながら口元を僅かに引き吊らせた。

 

「ピカチュウ、レッドさんのとこまで案内してくれるか?」

 

ぴっか!元気よく鳴いてヒビキの頭上から飛び降り着いて来いと言わんばかりに一度振り向き、洞窟の奥へ足を進める

 

多少中に入れば寒さも幾分か和らいできた。なるほどここは良い場所だ。寒くもなく暑くも無い。リクは感心した様子で辺りを見回した。

 

「ここはそんなに暗くないんだな」

「そうだね」

 

ヒビキとソウルの会話を聞きながら目線を走らすと、その拓けた場所の奥に人影がみえた。

 

「………!」

 

初めまして、赤いヒト

 

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