「う、あー……気持ち悪い」
額を押さえながらグワングワンと酔ったような違和感を耐えながら、戦って、……ジムトレーナーさんに心配されながらも見送られた。
「バトルしてるときのほうが安心するなんて……」
思いもしなかった。もはや顔面蒼白なリクにエリートトレーナーを始めとするジムトレーナーさんにバトルする前から心配され、勝利した後も心配され、……いや、差し出されたおいしい水はありがたくいただいたけど、いやいやだって聞いてない!あんなに勢いよく回るなんて私聞いてないから!思いもしなかったよ、バトルする前に瀕死になりかかるなんて。
「ぜっっったい殴ってやるんだから」
低くくぐもった声が発せられた。後ろからはどす黒いオーラが湧き出る
クルクルクルーなんて可愛らしい音を出すが現実悲惨だ。私なんて回る勢いに耐えきれず座り込んでただ停止するのを待っていた。
「…………グリーン、あれ止めてあげるのはダメかしら」
「あー…いや……流石にあんな小さい子のことまで考えて設計してなかったからな…」
「平均の人と比べてリクちゃんは軽すぎで回転数が多くなってるのね」
グリーンとナナミはリクの様子を見てを哀れむが設定パネルはここにはない。もうすぐそこまで来ているリクには悪いが我慢してもらおう、とグリーンはナナミに伝える
「あの子真っ青…」
「………う…」
「この後のバトル乗り越えられるかしら」
「………」
「私の弟はこんなに人でなしだったかしら」
「……―――っ!あー分かった分かったって!」
助ければ良いんだろ!?とナナミさんの圧力に堪えられなくなったグリーンが勢いよく立ち上がった
ずんずんと苛立ちを露に少女……リクといったかその子の元まで駆け寄り小さいその身体を持ち上げる
「…!?」
ドン!!と弾き飛ばされた
その突き飛ばした奴を見れば自分の手を見つめ呆然としていた。無意識だったのかそうじゃなかったのか定かではないがせっかく手を貸してやったのにその態度はなんだと憤慨した
少女を怒鳴り散らすことは紳士だからか心の中でだけだが
「え…っと……」
「………大丈夫か?」
「………」
「…………」
無言で歩く二人にナナミは苦笑いを浮かべる。どうやらこの二人に溝が出来てるみたい。もどかしく思いながら二人を見てどうにかならないかな、と頬に手をあてながら考え込む
リクは、向こう、ホウエン地方で生まれ育った。幼い頃も両親の手伝いをしており、間違いなく…知識とそれに劣らない才能にも恵まれている。なんたって長けているところはこのカントーのジムで最後の砦と謳われるこのトキワジム
そしてそのジムトレーナーを(多少酔って顔色が良くないが)涼しい顔で倒しちゃくちゃくとグリーンに歩みを進めてしまったほどのタクティクス。
「あの子たち、これからまだまだ伸びるわ」
楽しみで思わずふふ、っと笑みが溢れてしまった。
「…………なんで、あのよくわからない装置から出してくれたんですか」
話題を切り出したのは少女からだった。なんでってそりゃ、見てたら憐れに思ったからだ。姉さんに言った通りあんなにこじんまりとした女の子がここまで来るとは本気で思わなかったから。これが本音。ただし、こんなことは口が裂けても言うつもりはない。自分がもし少女の立場だったら侮辱されたと捉えるから。ただでさえ顔色の悪い少女に無理をさせたくないのに。
一人で黙々と考え込んでいたら、突き飛ばされた、なんてことは空の彼方だった。
「あの、」
「……ああ、悪いなんだった?」
「どこへ向かってる…んですか?」
「次の相手まで」
「……はあ、」
意味がわからない、と顔をしかめながらも相槌を打つ少女に苦笑を浮かべる。なぜ?と疑問詞が頭上に浮かんで見える
「装置の代りにここのジムトレーナー全員に勝てたら挑戦受けてやるよ」
酷かとも思うが、小さいから、なんて贔屓しては他の挑戦者に示しがつかない。頑張れよ、と頭を軽く叩いてやれば鬱陶しそうに払われた。いい加減に傷付くぞオイ
「気安く触んないで」
「わ、悪い…」
幾分か体調が戻ったのか顔色が良くなっていた。ここのジムトレーナーを相手にしても威にも思ってなく、あしらう程度にどんどん勝ち進む少女、姉さんが連れてきた珍しい挑戦者。たしかにあいつらじゃ足下にも及ばない
少女は最後のトレーナーもあっさり勝負をつけた