「………バカじゃないの」
「バカで結構。レッドが認めたやつなら是非とも手合わせ願いたいからな」
ほんと、バカみたい。
怒ればいいのに。怒鳴り付けたらいいのに。なんで笑って許すの…嫌い嫌い嫌い!
「カイリキーストーンエッジ!」
崩れて足元にある瓦礫を使いカイリキーに命じればグリーンは真っ向勝負を挑んでくる。
見据えてる先には私なんかいないくせに、止めてよ、私はそんな勝負したくないから
それでも自分から止められないのは目の前の相手が目指してきた人だから。
「………っ…!」
ドサッとカイリキーが倒れた。ハッとし前を見れば"追いついた"と口を動かし得意気に笑っていた
「嫌な奴」
「俺も負けるわけにはいかないんでね」
「ドサイドン!」
「ロゼリア!」
明らかに体格負けをしているロゼリアがニッと笑った。グリーンが訝しげにみれば、リクの命令なしに何かを発射させた。
「なっ!?」
「ソーラービーム…鬼だねロゼリア…」
ロゼリアが怒っているのを見て思わず呟き苦笑い。幾分和らいだリクに観客席にいたナナミはホッと安堵した。
「おまえの手持ちたち一体どうなってんだよ」
グリーンがポツリと溢した台詞にリクが反応する。たしかに、少し可笑しい。私が閉じ籠っていたとき、彼らも普通の生活をしていたはずだ。なのに何故、レッドやグリーン…カントー屈指の強豪トレーナーである彼らと互角に渡り合えるのか、なぜなのか私にも説明が出来ない。
いや、シロガネやまへヒビキやソウルと向かった時に違和感を確かに持ったのだ。ボールの中にいるチルタリスに目線を落とす。長時間、それもトップスピードで飛び回ったはずなのに疲れを見せなかったチルタリスにその時疑問を抱いた気がした。
「もしかして、私が…立ち止まったときも、君たちは進み続けてたの……?」
ひとつ、結論がでた。
カイリキーもそうだ。
………っ……私が、私が集中しないから、カイリキーも困惑して集中出来なかったんだ。
ごめんね、一つの目的を達成したからって、イラついてたからって、君たちの実力を見せずに終わるのはあってはならないことだったよね。鈍っていなかった仲間を思い浮かべて。
悔しさと戸惑いが溢れ出て…いつの間に、と唇が震えた。
戸惑って固まったままのリクにグリーンは声をかけた。これでは試合が進まない。そう思ったんだろう。
先ほどから垣間見る深く暗い表情につい、やりにくい、と考えてしまう。トレーナーとしては一流であるだろうはずの彼女のムラにやりにくさを感じる。
彼女もまた考えていた。負けられない理由ができた。
私以上に勝利の二文字に貪欲な彼らのために、お礼を込めバトルに挑もう。
「あー……すみません、バトルに集中してなくて。」
もう、大丈夫です。
彼らの気持ちがわかったから、勝利の二文字の理由が。
相手がずっと目指していた兄だからとか、七光りと言われ続けた反骨心とか、そんなこと関係なくてこの子たちのために、勝とう。私以上に頑張ってきた彼らのために、それができるのは彼らのトレーナーである私だけだから。
「決めるよ、ラプラス絶対零度!」
「な、そんなのあたるわけが…」
「あたるよ!」
これは自負でも驕りでもなんでもない。きっと当ててくれる。ラプラスの努力だ。小手先の技があたらないなら、避けられないほどの力を見せてやればいい。
ジムが凍りつくのをリクは見つめながらカチカチカチ、と凍りきったポケモンピジョットに向かって呟いた
一 撃 必 殺
呆然としているグリーンにへらり、と笑みを向け
「私の勝ちだね」
兄さん。とシンと静まり返った建物の中にリクの透き通った声はよく響いた。
リクはグリーンが茫然自失しているのをみて、やっと追いついた。と目を細めた。
この人だけには負けたくなかった。
全部全部、私の手持ちが叶えてくれた私だけの目標。ヒビキやソウルに出会って、勇気を貰った。レッドさんに会ってきっかけを貰えた。お姉ちゃんに会って愛情を貰えた。
いろんな人に支えられて、今私がここにいるんだ。
とりあえず、いまだあそこで呆けている兄に声をかけようか。
「楽しかったよ、あのバトル。私には目標があってね、あなたに、グリーンさんに会って、私の事を認めてほしかったんだ。
その途中、いろいろ感情が入り交じっちゃってぜんぜん集中出来なかったんだけど」
今はちゃんと、会えて良かったって…言える。
黙っているグリーンをペシペシ…と尖った髪を叩きながら言えば、くしゃっと顔を綻ばした。あと、バトル中の失礼な態度とか、大嫌い発言とか、後悔はしてないけどマナー違反であることには違いないため謝っておいた。
ジムトレーナーの方たちもわらわらと集まってきたため私の台詞は打ち切りとなった。
グリーンがスッと立ち上がりナナミからあるものを受け取ってから私の前に再び立った。
「ほら、これがグリーンバッチだ」
「あ…ありがと。」
「さっきの答えもこれで十分だな」
答え?首をかしげ意味を問いただそうとナナミがこっそり耳打ちしてくれた。
「認めて欲しいってやつよ」
「………!兄さん…!」
「は、はあ?だから兄さんって……」
「あなたよ、グリーン」
「姉さ…」
「リクは正真正銘血の繋がった私たちの妹よ」
「はあああああ!?」
絶叫と驚愕がジムの中に広がった。リクはリクで存在すら知られてないのか。とりあえず傷ついた手持ち達にげんきのかけらを与え、ミックスオレを器にうつしていた。