「で、この子はマイナン!」
ガタガタと音を立てて小さな身体をめいいっぱい使いボールから飛び出す。勝手に出てリクに甘えているのを見て思わず頬が弛むのが分かる。
先に見せてもらったヒビキとソウルのポケモンたちは思ったよりもかなり鍛え上げられていて驚いてしまった。
この地方のトレーナーはこんなにもレベルが高いのか、と。
2人とも意見は違うがポケモンやバトルが大好きって気持ちがありありと伝わって、ここでボールが開けないのが残念な程だ。
リク以外にもそう思っていたらしく、ヒビキが目を輝かせ楽しそうに提案した。
「朝早く起きてさ、バトルでもして親睦深めない?」
「親睦……」
ソウルが思い切り眉間にシワを寄せて面倒臭いと盛大にアピールする。お構いなしにヒビキはリクに笑い掛け「いい?」と首を傾げた。その時、ヒビキがピタリと止まる。
「リク……?」
ソウルの掛け声にも全く反応を示さないリクにどうしたんだ、と2人は目線で訴えあう。
リクの手持ちであるマイナンも心配そうに下から主人の様子を窺ってる。
「……リク」
「調子悪い?」
2人の心配している様子に気が付いたのか虚ろだった表情を無理矢理歪ませ口元をあげる。
「大丈夫、だよ」
「あ…、明日の朝だよね。うん、わかった。でもヒビキたち強そうだもんなー私なんかが相手になるのかなー…お手柔らか「リク?」
「なに?」
急に1人で話しだしたリクにあわてて静止をかけるため名前を呼べば、にこり、と表情を崩さずに笑うリクに違和感を覚える。違う、さっきまでの笑みとは……ポケモンを見ていた時の表情とは似ても似つかない。思わず目を逸らしたくなった。
ソウルに「下を見ろ」、と促され…スッと下げた先にはマイナンがいた。何やら酷く怒りながらリクを見上げていた。
マイナンには何故、リクがこんなふうになったのか、この様子からして理解しているのだろう。
「マイ、ナン?どうしたの」
ソウルに言われて一緒に下を見たリクは困惑した様子で手を伸ばそうとするが、マイナンはリクにバチッと電気を流し弾いた。目を見開き小さな身体をしたマイナンを今度ははっきりと視界にいれる。リクに攻撃した?口には出さなかった。
「……」
「ヒビ、キ」
暫く俯いて顔を伏せていたリクがヒビキの名前を呼んだ。まるで独り言のように、そして「ソウル」と
「ごめ、やっぱ駄目だ…」
2人は何が、とは聞かない。静かにリクが続けるのを待った。
「まだ、対人戦は怖いよ」
泣いていた。
言いながらボロボロと
彼女は怖いと言った。何が?対人戦……つまりバトルがだ。あんなに楽しそうにポケモンと触れ合っているのに。彼女は“強い”直感で感じ取ったのに
目に見えるほどに震えている彼女を見て何かがあったんだ。とただそう思った。震えている小さな肩が、ガチガチと噛み合っていない歯が、それを物語っていた。
手を伸ばすとビクっと肩を竦める。リクと体制を合わせ撫でてやれば一度、彷徨わせてからまだ涙が溢れる目を合わせてくれた。
マイナンが心配そうにボクを見る。大丈夫キミの主人に何もしないから。そんな感情を込め笑いかければ安心した様子で息をついた
「バトルが苦手なんだ」
一番あり得る線を尋ねれば下を向いて首を振る。ただし、横に。
「バ…バトルは…好き」
小さく呟く様に発っせられた言葉に思わず首を傾げたくなったが「そっか。」と呟き背中を撫でてやる
「でも、ね」
「いくら頭でバトルを求めても身体が震えて…、どうしても私…」
バトルが出来ないの。
(どうして、なんて聞けなくて)
(ただ黙って聞いていた)