バトルは好き、彼女はそう言った。バトルは怖い、彼女はそうも言った。ボクは1人の伝説を…最強を思い出した。
ならば、
「リク、やっぱりボクとバトルしよう」
「ヒビキ…?」
ソウルが何故、と行いたそうに視線を寄越した
リクは反射的に肩を震わせた。
「戦わなきゃ駄目だ、会わせたい人がいるから」
あの人は原点で頂点だ。バトルが、ポケモンだけにしか興味を持たない。そんな人だ。この地上に強い人を見出だせなくなった彼はシロガネヤマへ狂暴な野生のポケモンを相手に山籠りを始め己を鍛えた、と言う
まだ山から降りていないはずだ。
あの人に、会う資格が少しでもあるか。それを確かめるにはバトルしかないから。
「…………」
真っ青な顔を見て決心が鈍りそうになるがギュッと拳を握りリクを見る。ソウルはリクを心配そうに目を向けていたが沈黙を守っていた。
ガタガタ!
どこから音が響いた。小さな音だったが静かな部屋には十分だった。
その音が鳴った場所に視線を移す、もちろん3対の眼が。
「……みんな?」
リクは驚いたように立ち上がりボールを置いてある机へと近寄った。リクがそれを手に取り覗き込んだ
無数の視線を感じとった
「ヒビキがどうしたの?」
「ボク?」
戸惑った様子で手持ちとヒビキを見比べるリク。思わず首を傾げたがピタリとそれを止める。無数の視線の正体はソコだった。
それはとても小さな騎士(ナイト)の様で、目が反らせなかった。
「バトル、したい?」
リクが目を見開いてこちらを見たが、気が付いたら声に出していた。ごめんね、と思いながらもこんな眼をするリクの手持ちたちに僕は思わず心臓が速くなる。
その晩、ポケモンセンターから母さんに電話をかけた。カイリキーを送ってもらうために。
本当は、私が自分で迎えに行きたかった
だけどそんな時間、今は無い。
「そう…うん…、うんよろしく」
カントーには着いた?と聞かれ、まだだよ。と答えれば「おっそいわねぇ…」と呆れられた。悪かったね!と内心ぼやいた。
用件を言い終えてカチャン、と静かに受話器を置いた。
「まったく、あの人はもう…」
会話を思い出し肩を竦めて苦笑した。暫くしたらボールが取り出し口にあって、迷わずそれを手に取った。
もう他の客は寝入っているせいか静かで、室内は電気が点いておらず月明かりなせいもあり少し不気味に感じた。
音をたて自ら出てきたカイリキーに驚きながらも、久々に見たその姿に思わず笑みが零れた。
「久しぶり、元気だった?」
筋肉質なその身体にギュッと抱き付けば力加減を忘れたように思い切り抱き締められた。うぐ、苦しい。
「ちょ…!骨折れるよ!」
焦った様にカイリキーに言うと肩を落としてスルリと腕を離した。
「カイリキー」
落ち込んだ様子のカイリキーを呼べばスッと顔を上げる。暗くて表情はあまりわからないが声からすれば、おそらく困惑した表情なのだろう。
「久々のバトル、だよ」
…!
息を飲む音が聞こえた。驚いてるのだろう、私も未だに手が震える。
心配したように顔を覗き込むカイリキーに安心させるよう強がった笑みをうっすら浮かべる。
「武者震い、だよ」
キミはキミのままでいいんだ。
言葉を紡いで彼の肩を叩いた。バトルが好き。なら、楽しめばいい…キミたちがバトルをしたいなら私もソレを望むよ。