朝、町外れでヒビキと向かい合っているのはいくら目を背けようとも私自身であることには変わらなくて、思わず汗ばんだ手を服で拭う。
大丈夫、迷いは無い。
そう言い聞かせ落ち着くように小さく深呼吸を2、3回する。
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「リク」
「ソウル…」
真剣な顔をして呼び止めたソウルにどうしたの?と首を傾げて問えば重たそうに口を開いた。
何をそんなにも戸惑っている。
「アイツと、本気で勝負するんだろ」
「……」
肯定の意を込め頷けば眉間にシワを寄せるソウル。あーあ、跡が付いちゃうよ?とは口が裂けても言えない空気だった。そんな雰囲気の中ソウルが口を開く
「アイツは、あんな奴だがジョウトのチャンピオンだ」
は?間抜けに声を出して思わず固まる。……チャンピオン?ジョウトの?誰が?……ヒビキが?ぐるぐると頭を駆け巡る思考に片手で頭を押さえる。とりあえず、お願いです。叫ばして下さい。
「あれ、おはよう2人とも」
叫びたい。そう思って口を開いたら、朝早いんだね!とにこやかに且つ爽やかに挨拶をするヒビキに出くわす。思わず吃りながら挨拶を返した。
「お、おはよ…う」
ヒビキはそんなリクの様子を不思議に思ったが口に出さず、ご飯食べてくるね。と早々に立ち去ってしまった。
幾分落ち着いた様子で、その後ろ姿を見つめながら、アレがジョウトのチャンピオン。と目を細め胸のうちでつぶやく。
「チャンピオン…ね」
「お前、本当にバトルするのか?」
「もちろん。」
にこり、と口元だけで笑みを作る。
迷いはもうない。
「私も制覇者(チャンピオン)だから」
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そう、制覇者なんだ。
ああ、そう言った時のソウルの表情はなんとも滑稽だったことか。これもまた口を裂けても言えない。
思わず口元が弛む
バトルなんて久々だ
制覇者という言葉も久々に使う。
報道に遭った以来…それだけ気にしていた自分に思わず苦笑い。
どれだけ捉われていたんだ。……最低でも目の前にいるこのジョウトのチャンピオン…制覇者に真っ正面から見据えられないほど、なんだろうな。
これじゃあ旅に出る前と何一つ変わらない。
何のために旅立ったのか、何のために変わろうと決心したのか、なぜ気にしないと心に…仲間に誓ったのに気にしているのか。
私は、みんなを誇りに思ってるから。
自分で言ったんじゃないか。
始まったバトルは地形が崩れるんではないかというほど白熱した戦いとなった。
ヒビキも必死で、リクも必死だった。
負けられなかった。負けたくなかった。
最早意地だけでその場に踏みとどまる。使用ポケモン3体の入れ換え有りのこのバトル……お互い、相手の想像以上のレベルの高さに戸惑いが隠せなかった。
デンリュウとウィンディが同時に倒れる。
「ロゼリア!」
「オオタチ!」
ボン!と出てきたのは小柄な2匹で、先程の大型達と比べ圧迫感は少ない。が、そこらのトレーナーよりも威圧感は圧倒的だ。
ソウルはただ息を呑む。レベルが高過ぎるのだ。これが制覇者同士の戦い。バトルなのか、と。普段挑んでいたあいつは俺とこんなにも差を着けていたのかと。
「あいつら…」
苦虫を噛み潰した様に苦渋を呑む。単純に悔しい。なんとも思っていなかった、今朝まで震えていた、ただの少女がここまで強かったことにも、ライバルであるアイツが本気になっていることにも。
自分はまだまだだと思い知らされた。
その時、視線を向けたリクが「ソウル」と自分の名を呼んだ。
「マジカルリーフ!」
「守るんだ!」
小柄ながら威力のある攻撃に避けれない、と判断し“まもる”を使うオオタチ。当然のように傷は付かなかった。
リクの口元が上がる。
「はなびらのまい!」
マジカルリーフよりも威力が数段上の技。はなびらのまいにヒビキは“かげぶんしん”を指示する、が全体攻撃である“はなびらのまい”には回避率がまだ足りなかった。
ドン!と強い衝撃ののち、オオタチは少し離れた樹にぶつかった。
「私、今楽しいよ」
「ボクもだよ」
独り言、自己満足を口にしたらオオタチの様子を見ていたヒビキも相槌をした。
「ソウルとのバトルも楽しそうだった」
「あのバトル凄く好き」
後ろを振り返り先程の続きだと言わんばかりに笑いかける。ソウルは面を食らったように顔を崩しその後赤くした。恥ずかしかったためだろうか?
「楽しいよ…けどね…
私は、彼らのためにまだ負けられないんだ!
カイリキー!」
(昨晩はいなかった)
(この子も私の仲間だよ)