明日は晴れがいいな   作:代理ちくわ(かまぼこ)

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 きりたんの自宅に着くと、ウナは率先してインターホンを押した。10秒後程でずん子の、はーいという声が聞こえてきた。

「あ、あの、昨日会った音街ウナです。あと、東北さんも一緒にいます」

 ずん子が玄関を開けるときりたんは一目散にずん子の胸元に飛びついた。

「わっ!きりたん、ど、どうしたの!?。えっと、音街ちゃんも、いらっしゃいでいいのかな」

 

 状況が読めないずん子はとりあえず、きりたんを抱き締めように頭を撫でながら、ウナに視線を変えた。

 ウナはじっとその姿を見ていると口をゆっくりと開ける。

「あの、私が、東北さんを怒らせちゃって」

「そうなの、きりたん?」

 ずん子は胸元に抱きつき、顔を伏せたままのきりたんの顔を覗くようにして聞いた。きりたんは4、5秒ほど何も反応を見せなかった後、依然として顔を伏せたまま、首を横に振った。

 

 ずん子はきりたんのその反応を見た後に一度ウナの方を見ると、怯えているというよりかは緊張している状態に近いのが分かった。音街ちゃん、と小学生という幼い存在にする優しい声をかけると、ウナは、はいっ、と肩を震わせた。

「ちょっと話を聞きたいから、音街ちゃん家にあがってもらってもいい?」

 分かりました、とウナが委縮したような反応を見せたので、ずん子は音街ちゃん、大丈夫だよ、と頬を緩めていた。

 

「別にきりたんのことで怒ってる訳じゃないんだよ?何が起きたのか知りたいだけで、美味しいずんだ餅もご馳走するし、家に遊びに来たと思ってくれれば、大丈夫だよ」

 ウナはずん子の柔らかい表情を見ると、肩の力が少し抜け早々と靴を脱ぎ、お邪魔しますと言った。

 

 きりたんはずん子の腕にしがみつくようにして横を歩き、その後ろでウナが歩いていた。廊下を通っていき、途中でずん子は立ち止まり、襖を開けた。

「ちょっと、ここで少し待っててもらっていい?きりたんを部屋に連れていったら、また戻ってくるから」

 そう言って、ずん子ときりたんは廊下の奥へと進んでいった。

 

 部屋の中は畳の部屋に長方形のちゃぶ台が一つと、座布団が一つずつ台を挟んで置かれていた。

 ウナは部屋に入ると襖を閉め、座布団に正座をし、ランドセルとオタマン帽を横に置いた。待っている間に畳の一線、一線を見ていたり、襖の隅の微かな汚れの跡をふいに見つけたり、ちゃぶ台の木の感触を確かめたりしていた。

 

 ウナの脳裏にはきりたんがうずくまって泣いている姿が映り、それは彼女がまだ知らない東北きりたんという人物の一片を表しているのだと思った。責任、後悔、不安、心配という様々な感情がごちゃごちゃに混ざり合い、東北、大丈夫かな・・・、という一文に集約され、心の中で存在を帯びていた。

 

 その内、ウナはランドセルの横に付いているストラップ達を手で弄っていた。紐で繋がったストラップを触ったりして、無くなったストラップの存在を感じていた時だった。

 すーと襖が開く音が聞こえ、ウナは咄嗟にストラップを弄っていた手を引っ込めた。ずんだ餅とずんだシェイクをお盆に載せて来たずん子は、ん?と不思議に思ったがそのままウナの前に、どうぞ、とそれらを置いた。

 台を挟んでずん子はウナと向き合うようして正座をした。

 

 ウナがあの、とかしこまって口を開けるとずん子は上から、ふわっとかぶせるように声を重ねる。

「あはは、いいよ。そんなかしこまらなくて。きりたんのことも普段呼んでいる呼び方でいいよ」

 ずん子はあのような状況の後でも、ウナにかける言葉には優しさが込められていた。ウナはこの人は本当に優しい人だと再認識しながら、ずんだシェイクを一口飲み、

「えっと、東北の具合はどうですか?」

 と心配そうに聞いた。

 

「横にさせたら、少し落ち着いたみたいで、あとでゲームをやったら元気になるって」

 それなら、良かった、と言いウナは安堵の息を吐いた。その後、ずん子の口調は少し深みが増した。

「今回のことは自分が後でちゃんと説明するって言ってたけど、音街ちゃん、ここまできりたんを連れて来てくれて、ありがとうね」

 ウナはずん子の温かい微笑みに思わず、息を呑んだ。

 

「でも、私、ずん子お姉さんに会わせることしか考えられなくて、もしテスト期間じゃなかったら、私、東北に何も出来なかったと思います」

 ウナは素早く言葉をはしらせ、ずん子は小さく首を横に振った。

「そんなことないよ。音街ちゃんがいなかったら、きりたんはここまで一人で来れなかっただろうし、たとえ私が家にいなくても、音街ちゃんがそばにいてくれれば、きりたんは大丈夫だったと思うな」

 そうかな・・・とウナは胸がじんわりと温かくなるのが分かり、ずんだシェイクをまた一口飲んだ。そんな彼女を見てずん子の口調はまた少し柔らかいものに変わった。

 

「音街ちゃん、これからもきりたんのことよろしくね」

「え、それはもちろんです。私もいつも話に付き合ってくれて、東北と一緒にいると楽しいですから」

 ずん子は建前などない本心から嬉しそうにきりたんの名前を呼ぶウナを見て、そっか、と小さく頷いた。思いにふけっている自分に気が付くと、彼女はウナにずんだ餅のお皿を手の平で示した。

「音街ちゃん、このずんだ餅も凄く美味しいから、食べてみて」

 ウナは相槌の代わりにずんだ餅を口へと運んだ。

 

 急にピコ、ピコ、ピコリンとLINE電話の受信音が鳴り始めた。

 ずん子は、ちょっとごめんね、と言い、袖からスマホを取り出して、部屋を出るとスマホを耳に当てた。廊下でずん子が、うん、うん、音街ちゃんに?という会話のやり取りを聞きながら、ウナは噛んでいたずんだ餅を飲み込んだ。

 

 襖を開けて、ずん子が座布団に正座すると会話の内容をウナに告げる。

「きりたんが音街ちゃんに部屋に来てもらいたんだって。行ってもらってもいい?廊下を出て真っ直ぐ行けば、上にきりたんの部屋って書かれた部屋があるから」

 はい、とウナは嬉しそうに立ち上がると横に置いておいたオタマン帽を掴み、ランドセルをバッグのように同じ手で持ち、部屋を出た。

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