目の腐った青年はシンデレラ城に迷い込む   作:なめ!

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どうも。作者です。俺ガイルとデレステのコラボSSです。宜しければ見ていって下さい。


プロローグ

修学旅行の一件の後、俺ー比企谷八幡は担任の平塚先生に呼び出されあるプリントを渡された。恐る恐る、そのプリントを見る。

––––––そのプリントには、‘‘退学処分’’と書かれていた。

 

「すまない、比企谷。やはり文化祭の一件が響いた様だ。あれがインターネットに上げられててな。少し収集がつかなくなっているらしい。その為の学校の処分だそうだ。いろいろと手を打ってみたが、駄目だった。すまない……。」

 

先生は、とても申し訳なさそうに、そして悔しそうにそう言った。彼女の目元をよく見ると目尻に泣きあとが見えた。こんな俺の為に悲しんでくれたのだろうか?最後に俺は知らずの内にとてもいい先生に当たっていたようだ。本当に、なんでこの人結婚出来ないんだよ……。

 

「いえ、大丈夫です。自分でも自覚はありましたし、納得はしています。最後まで気にかけてくれて、ありがとうございました。さよなら。いい相手、見つかるといいですね。」

 

そう言って部屋を出ようとドアに手をかける。すると先生に呼び止められた。

 

「何ですか?」

 

「いや、これだけは言っておきたいと思ってな。まぁ、新しく飛び立つ生徒への応援みたいなものだ。」

 

先生は椅子から立ち上がり、俺の肩を掴むと、一呼吸置いて、

 

「頑張れ、比企谷。お前は私の自慢の生徒だ。これから辛い事悲しい事、あるかもしれない。だけどいつでもめげずに前を向け。そうすればもしかしたら、お前の欲しいものが手に入るかもしれない。」

 

本当。いい人すぎるよ。アンタは。

 

「ありがとう、ございます。……じゃ。」

 

「ああ。頑張れよ。比企谷。」

 

職員室から廊下に出て、帰路につく。この後どうしようか?などと考えながら夕陽のさす廊下を歩いていた。

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

『ごみいちゃんホントに最低だよ。もう顔も見たくない。早く消えてよ。』

 

『ッフ。ザマァねぇなぁアホ息子。じゃあな。もう二度帰って来んなよ。』

 

『アンタには失望したよ。そんな事してたなんてね。ホント、恥ずかしいよ。』

 

『やあゴミクズのヒキタニ君。俺達から逃げたご感想を聞こうじゃないか?』

 

『……あなたはまた逃げるのね。さよならゴミクズ君。金輪際私の前に現れないで頂戴。』

 

『ごめん……ごめんね、ヒッキー……。』

 

学校を退学してから3日後。4日後だったっけ?まぁ、どうでもいいや。

土砂降りの夜の東京、雨の為–––––今この時間帯が遅いこともあるだろう–––––人気は全く無い。そんな中俺は傘もささずに、1人彷徨っていた。頭の中ではあいつらに言われた台詞が忘れようと思えば思う程呪いの様に脳内に反芻される。

 

俺はあの後退学処分の事を家族に話した。どうやら今まで俺がしてきた事が家族全員にバレた様で、親父に散々殴られた後、夜中まで罵られ続け、夜が明けた頃に家を追い出された。その後、学校にある私物を取りに行き、数人の知り合いに声をかけられた。戸塚や材木座。川崎の3人は俺のことを励ましてくれたが、他の奴らはまるでゴミを見るような目で俺を責め、嘲笑した。いや、1人、例外がいた。由比ヶ浜だ。彼女は俺が学校を出る直前に俺を止め、目元に涙を溜めながら謝ってきた。その時俺は、何故謝られたのか、何て声をかければいいのかわからくて、何も言えずに逃げてしまった。しかし、彼女が言った言葉は、何故か、俺の胸に深く突き刺さった。あいつは、俺に何を伝えたかったんだろうか?信頼していた家族の裏切りと、心の何処かで信じていたあいつらからの言葉に、俺の心は簡単に、完全に折れた。

 

これから俺は、どうなるのだろうか。もう手持ちの金も使い切り一文無しだ。雨に濡れた身体は芯から冷え、意識は混濁し、全身が鉛の様に重い。行く当ても、帰る場所も無い。

……独りぼっちがこんなに辛いなんてな。

そう思い至り、フッと自嘲気味の笑みが漏れる。自分からぼっちだなんて言ってたくせに、このザマだ。やっぱどうしようもないな、俺。

 

–––––このまま、死んじまうのかな–––

 

……それも、いいのかもしれない。ここで死んで、もし転生でも出来るんだったら、今度こそ間違えずに、ちゃんとした人生を歩めるのかもしれない。そう思った瞬間、俺の視界がグニャリと歪む。ぐらりと傾いた体を支えきれずにどさり、と倒れこむ。身体が冷たい。動かない。どんどんと身体の力が抜けていく。ハハッ。俺みたいな奴には相応しい最期かもな。ほぼ全てを諦め目を閉じていく。ただ、

 

……ただ、もしも最期に、願いが叶うのならば、次は、‘‘本物’’を、見つけたい。嘘と欺瞞で塗り固められた、薄っぺらい物じゃなくて、歪でも、汚くてもいい。どんなに汚れても消えない、どんなに無残に引き裂かれても直ぐに治せるような、そんな本物を、俺は……

 

そんなことを想いながら、俺の意識は、闇に落ちた。

 

 




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