「あ、危なかったね……。」
「マジで、ヒヤヒヤした……。」
「アイドルになってこんなにスキャンダルが怖くなったのは初めてだよ……。」
「……すまん。マジですまん。」
あの後、俺達は逃げる様に店を後にした。スキャンダルとしてネットに拡散されて無いようにというダメ元な望みと、現実的に考えた身バレの確率とその後の炎上の未来に覚える絶望と恐怖を抱え、事務所に帰った。しかし、奇跡的に、本当に奇跡的に、俺達は身バレしておらず、間一髪、渋谷達のアイドル人生はなんとか守られたのであった。この時ばかりは本当に神様に感謝しました。助けて下さった神様のお名前がわかったら速攻でその神様の宗教に入信するか創るくらいには。
「「「「よかっっっったぁー……。」」」」
炎上も無いのが確認できて、全員が張り詰めた糸を緩める様に力を抜く。嫌かって?当たり前だ。炎上なんて嫌に決まってる。それで喜ぶのは真正のドMかクソ雑魚メンタルの炎上野郎だけだ。その証拠にほら。神谷なんかは炎上してないことに安心して力抜きすぎて「おわっ」って言いながらソファから落ちた。ちくしょうかわいい。
「さっきから何回も言ってるけど、本当にすまん。浅慮だった。今回は奇跡的にバレなかったとはいえ、本当に危険だった。」
そう言って3人に頭を下げる。目の前3人は驚いているが、自分のこの行動が大げさだとは思わない。あと一歩で彼女達に多大な迷惑をかける所だった。もっと深く考えて、行動するべきだった。
「そ、そんな⁉︎頭上げてよ八幡!」
「あ、アタシ達だって叫んだんだしお互い様だよ!ねぇ奈緒?」
「あ、あぁ!だからそう気に病まないでくれよ?な?」
「いや、慰めてくれるのは嬉しいが、それも俺の監督不行き届きだ。止められなかった俺にも責任がある。」
「そ、そんなこと」
「ありますよ。」
北条の声を誰かの声が遮った。思わず全員がそちらに向く。
アイドルにも劣らない整った顔立ちに、茶髪の三つ編み。蛍光色のパリッとしたスーツをきっちりと着こなした少し華奢な身体は、女性特有の柔和さを感じられる。しかし彼女の纏う雰囲気はどこか謎めいていて、第1印象は掴み所がない人だな。というものだった。
その声の主は、今まで俺達を手伝ってくれていた事務の女性。千川ちひろだった。
「責任は間違いなく比企君が負いますよ。例え彼が悪くなかったとしても。」
「……どういうことですか?」
千川さんの発言が気にかかったのか、ムッとしながら聞く渋谷。
「簡単なことですよ。凛ちゃん達はアイドルで、比企谷君はここの職員です。彼がどんなに周りに気を使って行動していたとしても、アイドルが問題をおこしたら、それは比企谷君も責任を取ることになります。アイドル達の行き過ぎた行動を抑えるのも、私達の仕事の1つですから。もし、貴方達が問題を起こしたとすれば、叩かれるのは貴方達ですが、それと一緒に比企谷君や関係者の人達も同じ様に叩かれます。教育不足だと。お前はまともなアイドルの教育すら出来ないのか、と。」
「それに、今回は比企谷君も目立つ行動を取ってしまっています。346の職員として、これは看過できません。比企谷君はまだ
「はい……。」
千川さんすっとは目を細めて俺達を見据える。全くもってその通りだった。ぐうの音も出ない。千川さんの正論に、俺達は何の反論も返すことが出来ず、顔を伏せる。
「はい!今回はどうやらバレた訳でもない様ですし、特例で今回は不問にしましょう!次からは、気をつけてね?」
パチン。と手を叩く音が聞こえ、驚いて顔を上げると、そこには真剣な顔を崩し、快活な雰囲気を纏った千川さんが、明るく今回の件を不問にしてくれていた。本当は、今回の件を不問にしてくれたことに驚いて、感謝しなきゃいけないんだろうけど、俺達は、千川さんの速すぎる切り替えに驚いて、というか戦慄して固まってしまった。
なんか、千川さん怖いんだけど。切り替え速すぎない?何考えてんのか全然わかんないんだけど。
「あれ?どうしたのみんな?そんな驚いた顔して。おーい?」
「あ、すいません。ちょっと驚いてました。」
「え?あ、ううん!失敗なんて誰にでもあることだから!比企谷君がちゃんと反省して次に活かしていけるなら、そんなに気にしなくても大丈夫!それに、常務と武内さんが認めた子だから将来が楽しみだしね。こんなところでいきなり躓かせるのはもったいないですから♪」
どうやらうまく誤魔化せたようだ安心あんし……い、いや?別に俺嘘ついてないし?本当の事だし?ちょっと引くくらい切り替え速すぎて怖かったなんて思ってないし?
そういえば、千川さんは怒っていたさっきとは違い、物腰の柔らかい少しフランクな話し方になっている。これも、千川さんなりの切り替えのけじめのつけ方なんだろうか。
「じゃあ、これでこの話は一旦終わりにして、早速お仕事に取り掛かって欲しいんだけど。いきなり慣れないお仕事っていうのは辛いだろうし、先ず今日は寮に入って身体を休めてもらいます!きっと疲れも溜まってるでしょう?」
「あ、え。え?」
「さぁ!時は金なりですよ!行きましょう比企谷君!あ、凜ちゃん達はこの後プロデューサーさんが来るから、合流してレッスンに行ってね!」
「え?は、はい……?」
そう言って千川さんは俺を引っ張りながら颯爽と部屋を後にしたのだった。
「……途中から完全に空気だったよね。アタシ達。」
「あたし、3回しか喋ってない……。」
「…………はぁぁ……。」
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他の女性がいる前で半ば強引に話を切り、2人きりで部屋を出る。しかも腕を引っ張られて、満面の笑みを浮かべながら。こんな状況になった場合、君達男子諸君は、相手からの好意に期待する者もいるのでは無いだろうか?
しかし失恋マスターと呼ばれる(自称)俺は違う。
まず状況。年齢は不詳だが、恐らく成人はしているだろう彼女は、俺になんてさらさら興味無いだろう。だって俺だよ?はい論破。
次に、俺と千川さんは初対面だということ。初対面でしかも目が死んでるやつなんて普通に怯えるか警戒するし。そもそも興味なんて示さないだろう。更に俺だよ?はい論破。流石は俺。なんか自分で言っててちょっと悲しくなったけどこんな時でもクールだぜ!
その後、間も無くして案の定、俺と千川さんは何事も無く女子寮にのエントランス前に着いた。
「……。」
「さぁ着きましたよ比企谷君!ここが君の新たななお家となる……って、どうしたんですか?なんだか残念そうですけど。」
「……いえ、なんでもないです。」
べ、別に残念だなんて思って無いし?わかってたし?最初から期待なんてしてないからー!むしろ凜達がいなくなってから“テメェよくもやってくれたなぁ?あぁ⁉︎”みたいなことになんなくてよかったですわー!
…………あんな素ぶり……い、いや、期待なんてしてないし。
「まぁ、とりあえず行きましょうか。」
「はい。」
ここ346プロダクション女子寮は、大手346プロダクションが直轄で管理している寮の内の1つだ。名前の通り、基本的に男子禁制で、事務所の女優や女タレント。そして女性アイドル達が住む寮だ。しかし、アイドル部門の設立と共に新しく建てた寮の為、今のところ入居者が少なく、部屋が余ってるんだそうだ。
エントランス前にあるパネルに千川さんがにカードを通して、そこで開いた自動ドアを潜る。そこでエレベーターに乗り、千川さんが3階を選択する。ふと辺りを見渡すと、防犯カメラと非常時用のアラームが設置されていた。流石大手の芸能事務所と言ったところか、防犯はしっかりしていた。
そんなことを考えていると、ようやく3階に着いたのか、エレベーターが止まり、扉が開いた。
「そうそう!それでね?卯月ちゃんったら……あっ!こんにちは!ちひろさん……と男の人?」
「あっ!こ、こんにちはっ!ってふぇっ⁉︎お、男の人⁉︎」
その目の前にいたのは、所謂フリースペースの様なところで談笑している2人の少女だった。
どうも。先日のブライダルガチャで7500個石溶かしたのにダウンロードすら入りませんでした。筆者です。最近フェスでしか引けてないのは気のせい?
今回筆者は部活が忙しく、結構早足で書いたので、あまり出来が良くないです。そこには目をつむっていただけると嬉しいです。