目の腐った青年はシンデレラ城に迷い込む   作:なめ!

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歴史科目が、終わらない。どうも。筆者です。最近は天候が非常に不安定ですね。ニュースの報道を見ているとぞっとします。皆さんもどうかお気をつけて。

話は変わりますが、フェス、皆さんどうでしたか?筆者は紗枝はんとほたるちゃんをお出迎えできました!残念ながらフェス限の方はお出迎えできませんでした。どっちも可愛かったのになぁ……。


11話

「えーっとっ?……こんにちは!」

 

「あわわわわ……。」

 

目の前にいるのは茶髪のサイドテール少女と黒髪のアホ毛少女。もちろん美少女はパッシブだ。

 

どうしよう。こうなることはだいたい予想ついてたから千川さんが寮の人達集めて俺を紹介するって時まで誰とも会いたくなかったのに。

初っ端からエンカウントとか……もうやだ。気まずすぎて死ねる。

 

現在俺は向こうの2人同様固まっている。……いや、あっちの2人は困惑してると言った方が正しいか。特にアホ毛の方はあわわしか言ってねぇし。

 

このとにかく気まずい空間をなんとかして欲しくて、縋る様に千川さんに助けてとアイコンタクトを送る。千川さんはそれに気づくと、にぱぁっと、心底楽しそうな笑顔をこっちに振りまいてきた。

 

……畜生絶対この人楽しんでやがるな⁉︎

 

多少の恨みを込めて千川さんをじとっと見るも、当の本人はどこ吹く風。というか楽しそうな気を隠す気も無くニッコニコだ。

 

「……千川さん。お願いします。」

 

それに少しムカついて、少し語調が強くなった。無言の圧力で、“早くどうにかしろ”と急かす。

 

すると、千川さんはそれに気づいたのか、こちらを見てめっちゃニマニマしてくる。いいから早くしてくれ。

 

「この男の子はバイトの子で、前にも言ったようにこの女子寮に一緒に住むことになる子です!仲良くしてあげてね!じゃあまずはお互いに自己紹介をしましょうか♪」

 

漸く千川さんが助け船を出してくれる。やっとできた機会に、俺たちはここぞとばかりに乗っかった。

 

「あれ?ここって女子寮ですよね?男の子が入っちゃっていいんですか?」

 

はい。全然乗っかって無いですね。ごめんなさい。

 

まぁでも、その疑問は誰しもが持つものだろうし、至極当然だろう。なんて言ってもここは女子(・・)寮。本来ならば男子禁制のはずのこの場所に男子の俺が居座っているのはおろか、住むと言っているのだ。そりゃ簡単には信じられないだろうし、ましてやこんな目の腐った男だ。怪しむだろうし、自分に被害があるかもしれないと警戒する方が普通だろう。

 

「それには深い深ーい、事情があるんです!」

 

「いや、そんな深くないですよね?社員寮がいっぱいだっただけじゃないですか」

 

「えっ?そうだったんですか⁉︎」

 

「え?はい。そうですけど。」

 

「そ、そうだったんだ……。あれ?ミキちゃん(常務)に教えてもらったことと違うんだけど!平塚さんから引き継いで比企谷君に脱ぼっちして心を開いてもらう為じゃないの⁉︎

 

途中から聞き取れなかったが、まぁ俺の悪口も言ってるんだろう。べ、別に悲しくなんてないんだからねっ!勘違いしないでよねっ!…………。

 

「あ、あははは……。ま、まぁとりあえず!これからここの寮で一緒になるってことですよね!よろしくお願いしますっ!」

 

おぉ……え、ええ子やぁ……。いかん溶ける。余計に優しさが染みる!笑顔が眩しいっ!

 

と、とにかく。確証は無いが俺が怪しまれて無いようでよかった。嘘を付いている感じも無いし。ずっと気まずいままここで過ごすことにならなくて本当に良かった……。

 

「あ!そういえば自己紹介まだでしたね!すいません!じゃあまずは私から!五十嵐響子!高校1年生です!今年の8月で16歳になりました!趣味は掃除に料理にお洗濯……えっと、家事全般です!女子寮だから色々不便なこともあるかもだけど、何か困ったことがあったらなんでも言って下さいね?できる限り力になります!これからよろしくお願いします!」

 

「お、おう。よろしく頼む。」

 

「はいっ!」

 

それにしても、趣味が家事全般っていうのは驚いた。今時そんな人中々いないんじゃ無いだろうか?いや、いるんだろうけど、大体は自分を良く見せる為のステータスの1つにそう言ってる人なんだろうし。でも本当に家事ができて、しかもそれが趣味だとしたら、きっと五十嵐はとても家庭的な娘なんだろう。

 

「あ、ああああああのっ!わ、わたっ、わたわたわたしはこっこここ小日向美穂ですっ!よ、よりっ、よりょ、よりしくお願いしみゃっ!あうぅぅぅぅ!」

 

「OK。少し落ち着こうか。何を言ってるのか全然わかんない。」

 

「ほら深呼吸!深呼吸して美穂ちゃん!はい吸ってー、吐いてー。」

 

「すぅー、はぁー。すぅー、はぁー……」

 

深呼吸をし続ける小日向を見て、さっきまで感じていた緊張が緩む。あれだ。自分よりテンパってる人を見るとなんか逆にテンパらなくなるアレ。みんなも一回はなったことあるだろうアレ。

 

「……ふぅ。ごめんなさい!私あがり症で、男の人と話したこともあんまりなくて……。こ、小日向美穂です!よろしくお願いしますっ!」

 

「おう。よろしく。小日向。」

 

「は、ははは、はいっ!」

 

……なんだろう。なんかこいつとはえらい親近感を覚えるんだが……会ったのは初めてだし、一体何が……?

 

「じゃあ最後に比企谷君!お願いしますね?」

 

「……了解です。」

 

「なんでそんなに真剣な顔してるんですか。」

 

「緊張してるんです。」

 

息を吸って、吐く。小日向のお陰でだいぶ緊張がほぐれた。やるなら、今しかないッ!

 

「ひ、比企谷八幡。17歳だ。これからいろいろ迷惑かけるが、よろしく頼む。」

 

よ、よかったぁぁ!ちゃんと噛まずに言えたぁ!偉い。偉いぞ俺ェ‼︎

 

「よ、よろしくお願いしますっ!」

 

「よろしくお願いしますっ!ええっと、比企谷さんは17歳……じゃあ美穂ちゃんももうすぐ17歳だから同い年ですね!」

 

「おう。よろしく……って、えっ、小日向って17なの?」

 

「は、はい……。今年の12月で17歳、ですけど。」

 

「ま、まじか……。」

 

絶対年下だと思ってた。いや、実際年下なんだけど、もっと年下だと思ってた。だってほら、あんな小動物然とした態度だよ?同い年だなんて信じられないんですが。やっぱこの業界って見かけによらないわ。まじで。

 

その後も、ぎこちないながらも会話を続けていった。案の定というか、見た目通りというか、五十嵐はやっぱりコミュ力が強く、千川さんと一緒に俺たちが入りやすい話題を振って、俺と小日向をリードしてくれた。正直場違い感が凄いしとっとと逃げ出したいが、俺はいつかここのアイドルのプロデューサーになるのだ。その為にはアイドルとのコミュニケーションも必要だろうし、今の内に練習して慣れておいた方がいいだろう。

 

「比企谷君、そろそろ部屋に行こっか。」

 

「あ、はい。」

 

ある程度話したところで、千川さんが話を打ち切る。

 

「あ、もしかして、この後用事とかあったりしましたか?長話しちゃってごめんなさい!」

 

「ううん。お仕事は今日はもう無いから大丈夫なんだけど、今日は荷物の整理とかがあるだろうし、寮のみんなにも紹介する時の準備もするから、先に部屋を案内することになってるの。」

 

「なるほど!わかりました!じゃあお荷物の整理、手伝いますっ!」

 

「いや、大丈夫だ。」

 

まぁ、荷物の整理なんて言ったって、私物なんてこの今追い出された時に持ってたこのバッグ1つだけであって無いようなもんだし、確実にすぐに終わんだろ。

 

「あ、そ、そうですよね。男の子にもいろいろありますもんね。ごめんなさい!」

 

えっ。あ、しまった。勘違いされてる。言葉が足りなかったか。

 

「えっと、あー、すまん。荷物の整理って言っても私物なんてほとんどないし、多分すぐに終わるだろうから手伝わなくて大丈夫なんだ。言葉足らずだったな。すまん。」

 

「あっ!そういうことでしたか!よかったです!あ、そうそう!比企谷さんはまだお夕飯食べてないですか?」

 

「え?いや、食ってないが。」

 

「そしたら後でみんなで一緒に食べましょう!実は今日入って来る人の歓迎会しようって、比企谷さんの歓迎パーティーを準備してたんです!」

 

「か、歓迎、パーティー……?」

 

「はい!歓迎パーティー!私も腕を存分に振るうので、みんなで美味しく、楽しみましょう!」

 

「お、おう。」

 

確かに、この部屋を見渡してみると、パーティー用の飾りが壁や机に華やかに散りばめられていた。自分がこんなに盛大に祝って貰うのは初めてで、思わず少しだけ感動してしまう。

 

「あっ、あのっ!」

 

「おぅっ⁉︎……っと、な、なんだ?」

 

感慨に浸っていた最中、いきなりの大きい声に驚きながら答えると、その声の主は意外なことに小日向だった。

 

「え、えっと、あの……。」

 

しかし小日向は言いづらそうにもじもじして、一向にこの先の言葉を出さない。まぁ、こういうときってのは凄い勇気がいるのは知っている。気持ちもわかるし、急かすなんてことはせず、じっと待つ。

 

「美穂ちゃん!頑張って!」

 

約10秒、恥ずかしそうに顔を赤らめながら小日向は、喉から出かかっている言葉を出して、戻して。出して、戻して。そして、ぎゅっと目を瞑りながら、漸く、言った。

 

「あ、あの!わ、私人見知りだし、不器用だし、いろんな迷惑かけちゃうかもだけど!私、ここにいるみんなと仲良くしたくて!だからっ!えっと、あの、その……と、ととと、友だちになってください‼︎」

 

そう言って、小日向は勢いよく頭を下げる。その姿はとても初々しくて、人見知りの妹が友人を作ろうと頑張っている。そんな風に見えてしまって、思わず苦笑してしまう。

 

「……おう。俺からも、友達として、よろしく頼む。」

 

思わずというか、小さい頃からの癖というか、ついつい俺はお兄ちゃんスキルを発動させて、友達になろう宣言をしてしまった。いかん。恥ずかしい。こんな年になってこんなこと言うなんて。お兄ちゃんスキルは休んでてくれよ。

 

「えっ!あっ……。」

 

すると小日向はこれ以上ない程に顔を真っ赤に染めて俯いてしまう。そうだよな。恥ずかしいよな。この歳で友達になってってなんか凄い恥ずかしいよな。だって俺もそうだもん。

 

「ひぅ……あぅ……」

 

小日向は更に顔を手で覆い始める。そうだよなぁ。今絶賛悶絶中だよな。わかる。わかるよその気持ち。今すぐ布団に潜ってバタバタしたくなるよな。俺もそうだもん。そんでそのまま寝てしまいたくなる。

 

「あ、あのぅ……。

 

「ん?どうした?」

 

まだ恥ずかしいんだろう。小日向が落ち着くまでゆっくりと待つ。するとおずおずと、蚊でも鳴かない様な小さな声で呟いた。

 

「あ、あの、て、手……。

 

「ん?手?」

 

手に何があるのだろうと自分の腕を見てみる。肩から伸びた腕は肘から更に伸び、その先には小日向の頭の上に置かれる俺の手があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小 日 向 の 頭 の 上 に 置 か れ る 俺 の 手 が あ っ た 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………えっ。」

 

「や、やっと気付いた……。」

 

「あ、あはは……。」

 

周りを見渡すと人2人。困った様に、若しくはドン引きして、引きつった笑みを浮かべる彼女らを見て、目の前で俯いてる彼女は決して自分の発言では無く––––いや、それもあるんだろうが––––俺の無意識黒歴史第247番:『またでたよ無意識お兄ちゃんスキル。なでなでとかセクハラだぞ馬鹿め』のせいで顔を赤くしていることを察した。そして、なにかを悟り、無のままに次の行動へと移るのは、然程時間は変わらなかった。

 

「…………すいませんでした。」

 

……本当に休め。自重しろお兄ちゃんスキル。金輪際出てくるんじゃない。

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「……ふぅ。」

 

何日かぶりのベットにダイブした俺は、今日の出来事をねっころがりながら振り返っていた。

 

「いろいろ、あったなぁ……。」

 

今日はとにかくいろいろあった。濃密だなんて生ぬるいほどに。朝起きたら憧れの高垣楓がいて慰めてもらって、落ち着いたと思ったらここで働くことになった。働く為に常務を説得してクソみたいに精神すり減らした直後に神谷に殺されかけて、マ●ク行ったら北条と再会してアイドル達を身バレさせかけて。女子寮に行ったら行ったで初っ端から心を折りにくる様な黒歴史作るっていう。あの後謝りに行ったらまたお互いに2人であたふたしたけどなんか変なこと口走らなかっただろうか。……大丈夫だろう。と信じたい。

 

あの後、一旦部屋で準備をしてから地獄の自己紹介が始まった。大勢のアイドル達が俺に好奇の視線を向けてくるという、もう訳がわからん状態で俺が平然としていられるわけも無く、散々噛んだ挙句に数人のアイドルにいじり倒され、主役がいじられたままという謎な状態のまま、そのままパーティーになった。もうここからなにを話したのか、俺は一切覚えてない。屋内でちびっ子達とサッカーしたり、酒が入った妙に艶めかしい女性に酒飲まされそうになったり、なんか猫みたいなやつになんか飲まされたり、いろんなことした気がする。

 

…………記憶無くなったの絶対最後のだろ。一体何飲ませたんだあいつ。

 

ただ唯一はっきり覚えてるのは、五十嵐が作ったというパーティー料理が思わず真顔になるほどうまかったことだ。タッパーに入れて持ち帰りたいところだったが、流石にはしたないし、そもそもタッパーを持っていなかったのでそれはできなかったのだが。思わずとんでもないこと口走りそうになったが、理性を保ってなんとか耐えた。ナイスグッジョブ俺の理性。

 

その後俺のSAN値がマイナスを振り切ったのと同時、ちょうど時間もいい頃だしお開き、ということになった。部屋に帰った時にわかったのだが、どうやら五十嵐の部屋と俺の部屋は隣同士らしい。流石の五十嵐も困った様な顔をしていて、ぎこちないままに挨拶を交わして別れた。なんかもう本当に申し訳なかった。ごめんね?

 

「……振り返ってみると、本当に濃密な1日だったな……。」

 

今日は本当に大変な1日だった。明日もこんな大変なのが続くと思うと、明日が憂鬱で仕方ない。

 

でも。

 

それでもここには、あいつらには、自分が嫌だなと思えるものが何一つ無くて、それは俺には初めてで、新鮮で、心地よくて。

 

「ここで過ごすのも、案外楽しいのかもな。」

 

今日は、俺のスタートライン。全て捨てられて、リセットされた俺が踏んだ、初めの一歩。

 

ここからだ。

 

ここから始めよう。平塚先生にも言われた通り、前を向いて。新しく。

 

柄でもないポジティブな自分の思考に可笑しさで笑ってしまう。

 

むくりと差を起こし、ハンガーに掛かった真新しいスーツをちらりと見る。パリッとしたスーツの胸ポケットの中には名刺。新しく作ってもらった、ここで働く為の、俺だけの、証明書。

 

「……明日は9時出勤か。」

 

なら今日は疲れてるだろうし早めに寝よう。起きるのは……念のため7時でいいか。目覚ましを7時にセットして、少しゆっくりしてから出勤しよう。

 

そう思ってズボンのポケットに手を入れる。しかし、そこには目当てのものは無く、焦った俺はズボンの全てのポケットに手を突っ込む。しかしその中にも無くて、本格的に焦り始める。探して探して、とうとう顔を真っ青にしたところで、思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、スマホ持って無いじゃん。てか、目覚まし持って無いじゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が入寮初日からお隣を頼ることになることが確定した瞬間だった。




常務の名前は美姫ちゃんです。可愛らしい名前ですね。
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