目の腐った青年はシンデレラ城に迷い込む   作:なめ!

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どうも。またテスト前に風邪を引きました。毎回毎回テスト前に風邪を引いてる気がするけれど、多分気のせいだと思います。筆者です。ということで、今言ったように近々テストなので次の投稿は1週間遅れます。ご承知下さい(近況報告からの流れる様な投稿遅延告知)


16話

「はぁ……。そういや、さっきはヤバかったな…………死ぬかと思った……。」

 

あの後俺はちひろさんに絞……楽しくて為になる話をたくさん享受された。もちろん、例の3人と一緒に。余程怖……楽しい話だったんだろう。笑いを堪えていたのか体はビクビクと震え、それでも堪えきれなかったのかヒクヒクと笑っていた。あとなぜか目から光が消えていた。なんでだろう!俺にはわかんないけど!俺は途中から記憶が無かったから知らないが、余程有難いお話だったんだろう。うん。そうに違いない。その後すぐに仕事に移り、横でちひろさんが天使の様な笑顔をたたえる中ひたすらにPCの画面に集中しひたすら文字を打ち込んだ。決して横の天使様が怖かったわけじゃない。決して。ちひろさんは優しくて気立てが良くてしっかりしてるとってもいい人。異論反論は一切認められません!……あれ俺なんで呼び方がちひろさんに……どうしよう。なんか絶対にそう呼ばなきゃいけない気がする。怖い。マジ怖い。

 

「あやべ、早く机拭かねぇと。」

 

一通り振り返りを終えた俺は、いけないと気を取り直し、さっきまでお客さんがいたテーブルの天板を水に濡れた台拭きで拭いていく。

 

ここは346プロと併設した小さなカフェ。名前は確か、美城珈琲、だった気がする。仕事と同じで今日から仕事入りだ。今日ちょうど社員証を貰ったので、面接と仕事の説明をしてもらい、早速仕事に入れてもらってる。翌日から仕事、ということになると思っていたが、今は9時半。今日から始めさせてもらっている。なぜ今日からになったのかというと、主にお隣の終業時間が原因である。346プロの終業時間は基本的に7時なので主な客層を346の社員が占めるこの店はこの時間にはもう殆ど人が入ってこないからだとか。ここのマスター曰く、人がいない内に仕事を覚えてもらって、早めに仕事に慣れてほしいとのこと。正直人がいるところで慣れないことをするのは嫌なのでこの配慮はとても有り難かった。今日の分のお金も貰えるし。

 

ここでみんなはこう思うだろう。なぜ基本専業主婦希望の俺が仕事終わりにバイトなんてものをやってるのか、と。しかし、これにはちゃんとした理由があるのだ

 

その理由は2つ。1つは生活に使う金を稼ぐ為。もう1つは常務から貰った一万円を早急に返す為。この2つだ。何しろ次の給料日は2週間後。そこまでは自前で生活費を稼がないと、食事などの最低限のことすらできないし、人に迷惑をあまりかけたくないという俺の考え方もあって、常務に借りた一万円をなるべく早急に返したいのだ。稼ぐだけ稼がないでなんかあって返せなくなったらやだしね。

 

机を拭き終わった俺は、流し台で台拭きを洗い、カウンターに戻っていく。

 

「お疲れ様。一回休憩してきていいよ。」

 

「あ、はい。お疲れ様っす。」

 

このダンディーそうな渋いおっさん(CV:速水奨)がここのマスターである。最初入って落ち着いた低音ボイスが聞こえた時はここはラビットなハウスなのかと思ったよ。どうやら既婚者で元346の社員らしい。嫁さんが今も346で働いていて、結婚を機に仕事をやめて、夢だったカフェを開いたそう。事務所の隣に店を構えたのは、嫁さんが頻繁に来て話す為と、会社の知り合いがそのまま常連になると踏んで、最初から安定して稼ぐつもりだった為らしい。商魂逞しい人である。あと補足すると超いい人。とにかく優しい。

 

洗い終えた台拭きを置いてから休憩の為に控え室に入り、ふぅ、とため息を1つ。目を伏せると同時にキィ、とドアのつがいの軋む音が『すみません遅れましたー!』と焦った声音の可愛らしい声と一緒に聞こえてきた。

 

「ぜぇ、ぜぇ、遅れてごべんなさい!ふぅっ、仕事の打ち合わせが、はぁ、長引いちゃって!げほっげほっ!」

 

入ってくると共に思いっきり咳き込み、肩で息をしながら膝に手をつく少女。この感じだと、多分この人がマスターが言っていた“もう1人のここで働いてる少女”なんだろう。

 

「はぁ、はぁ、ふぅ……あれ?えっと、もしかして新しいバイトさんですか?」

 

可愛らしい童顔に大きなリボンで1つにまとめた明るめの茶髪。黒のミニスカにピンクの柄ブラウス。その上に黄色い耳付きパーカーを羽織るというなんとも庶民臭い、というか垢抜けてない感じである。

 

「あ、比企谷っす。よろしゅくお願いします。」

 

「へぇ。比企谷さんって言うんですか……今時の若い人は目が腐っ……個性的なんですね!」

 

「おい。」

 

「……ごめんなさい。ついうっかり。」

 

そう謝りながら目をそらすこの人こそ、知る人ぞ知る超長歴地下アイドルでここのカフェで働くもう1人の少女。安部菜々17歳さんである。店長曰くポロポロこぼすらしいが、最初から思いっきりこぼしてる安部さんを見て、俺も少しだけからかってみたくなった。

 

「……ん?今時?」

 

「⁉︎…………あ、あー!そうだ!自己紹介を忘れていましたね!私としたことがついうっかりっ!では早速私から始めますね!」

 

『ん”、ん”ん”っ』とやっぱりどこか古臭い感じのする咳払いの後、隠す気もなく盛大に焦った様子で年齢詐称の容疑者が自己紹介を始める。

 

「」

 

「……17歳?」

 

「え、えぇ!そうですとも!ナナは17歳!ウサミン星出身の17歳ですっ‼︎」

 

「ウサミン星。」

 

「ウサミン星っ‼︎」

 

「片道電車で?」

 

「1時間!……の所にウサミン星行きのワープ装置があるんです!」

 

なんだこれ。超楽しい。

 

俺のからかいやカマかけにまんまとハマってオーバーリアクションを取る安部さん。 年はきっとあっちの方がだいぶ上だと思うが、思わずからかってしまう。それほどにいじりがいがあるのだ。

 

「じゃあ学生証出してくださいよ。持ってるでしょ?」

 

「そっそそそそれは……い、家に!家に置いてきちゃったんですっ!」

 

「知ってますか?学生が学生証を持たないでこんな時間まで外出してるとどこでもすぐに見つかって補導されるんですよ?」

 

「え”っっ⁉︎」

 

「学生さんなら早く家に帰った方がいいんじゃないですか?きっと親御さんが心配してますよ?帰りが遅いなって。」

 

「で、でも、この後シフトが……」

 

「この後シフトですか?ダメじゃないですか学生がこんな遅い時間に仕事なんてしちゃあ。というか、さっき仕事の打ち合わせが長引いたとか言ってたじゃないですか。学生にこんな遅い時間まで打ち合わせするなんて、そこの会社ちょっとやばいんじゃないですか?」

 

「えっと、ええっと、でもバイトが……かといって歳を……なんて絶対ダメだし。でも補導は嫌だなぁ……。」

 

「あ、それ嘘です。」

 

「ですよねぇ。どうしよう……でも補導されちゃ……え⁉︎う、嘘っ⁉︎ええっっっ⁉︎」

 

「まぁうろついてるとこを見つかったら補導ですけどね。」

 

……やばいな。ほんとに面白い。

 

ちょっと涙目になりながら必死になって訴える安部さんの姿になんだか背筋の辺りがぞくりとした。自然と口の口角が上がる。今ならあいつらが城ヶ崎さんをいじる気持ちちょっとわかる気がする。

 

「比企谷君。菜々ちゃん。シフトお願い。無事に仲良くなれたのは結構だけど、仕事の時はもうちょっと静かにね。」

 

カウンターの方のドアが開いて、マスターから休憩の終了と注意が飛んでくる。どうやら外に漏れていたようで、聞かれてたらしい。ちょっとはしゃぎ過ぎたと反省。もしマスターがめちゃくちゃ厳しい人だったらって思うとちょっとすくんでしまう。やっぱりマスターがここのマスターでよかった。

 

それから仕事に戻り、安部さんと2人で仕事をこなしていった。といっても、こんな遅い時間にお客が殆どこの店に寄り付くことなんてないから殆どやること無かったし、暇な時間結構あったんだけど。

 

バイトも終わり、夜も遅いということで、俺が安部さんを駅まで送って行くことになった。やっぱりずっと年上だからなのか、安部さんは気を使って話を振ってくれて、とても話しやすい。昨日もそうだが、いつも基本的に1人か小町と登下校してた俺は、この状況を新鮮に感じる。

 

「そういえば、比企谷君ってなんでここでバイトを?やっぱりお小遣い稼ぎですか?」

 

「生活費捻出の為です。」

 

「えっ。」

 

「ちょっと親元離れてるんすよ。仕送りも無いからここで働いてるって感じです。」

 

「でも、え?比企谷君ってまだ高校生の歳じゃ……」

 

言われてからハッとした。これは失言だった。俺の歳では普通まだ高校生だ。今時中卒の人はそれこそ学校の中に数える程しかいないくらいだし、親元離れてこんな遅くまで生活の為にバイトしてるならそれは自分の生活の困窮さをそのまま言ってる様なものだ。しくじった……まぁ、もうここまで言ってしまったなら仕方ない。どうせそう深く関わる事にはなんないだろうし話しちまえ。

 

「あー。えっと、まぁ、所謂高校中退ってやつですよ。ちょっといろいろありましてね。でも今はちゃんとした会社入ったし、初任給貰えれば稼ぐ必要もないですから。」

 

「あの、ごめんなさい比企谷君。ちょっとデリカシーが無かったです……。」

 

そう言ってシュンとしてうつむいてしまう安部さん。

 

「いや、大丈夫っすよ。これでもちゃんと食い扶持はあるし、その……俺のことを、ちゃんとわかってくれてる人もいるんで。そんなに心配してないっつーか、なんていうか……」

 

途中まで言って言葉が詰まる。正直、あの事についてはあまり思い出したくは無い。ギリギリで漸く保っていた均衡が一瞬で崩れ去ったあの記憶は、今も俺の中に深く残ってるし、あそこに拾って貰う前は、毎晩の様に夢を見ては涙が出て、心をすり減らしていた。でも、もう俺もあの事はなるべく気にしないようにはしてるし、その、アホみたいに俺に優しくするあいつらを見て、まだ確信……はできないが、あそこが俺にとって、新しい居場所になった。と思う。でもちょっとだけ、まだちょっとだけ、それを言うのは恥ずかしい。

 

「そ、それより、そんなこと言ってたら安部さんだってそうじゃないですか?学生だったらなんでこんな遅い時間まで働いてるんですか。」

 

「う、それは……う、ウサミン星の高校生はそこら辺ゆるいので大丈夫なんです!」

 

「万能ですよね。その設定。」

 

「せ、設定じゃないもん!」

 

「はは。どうだか。」

 

「あっ!今鼻で笑いましたね⁉︎」

 

「笑ってない笑ってない。ふくく……」

 

「あー!許さない!もう許しませんからー‼︎」

 

こういうのも案外、悪く無いなって。そう思いながら駅までの道を2人で歩いていく。

 

安倍さんを無事に駅まで送り届けた俺は、寮について寝間着に着替えて、倒れこむ様にしてトラブル続きの大変な、濃い1日の幕を閉じた。

 




補足ですが、八幡は菜々さんとの初対面後から次の会話迄に自分の歳を明かしています。その時には、やっぱり凄まじくびっくりされたとのこと。初対面時から呼び方が変わったのはこのせいです。年齢も同じ(?)なので。違和感を感じられていた人はごめんなさい。これで納得していただけると嬉しいです。話の展開の自然さ的にここの話を書けなかった為こちらに書いときます。

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