目の腐った青年はシンデレラ城に迷い込む   作:なめ!

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さっき一昨日の投稿の反響を見てみたら、思いのほか読まれていてびっくりしました。読んでくれた方々、お気に入りやコメントをつけてくれた方々。ありがとうございます。これから気楽にやっていこうと思います。


プロローグ 〜side奈緒〜

「なぁ、2人ってき、気になる人っているのか?」

 

トライアドプリズムが結成されてから3回目のユニット練習での帰り、土砂降りの雨の中、3人で傘をさしながら歩いていると、あたし、私立総武高校2年生、神谷奈緒は、いつのまにか思いついた疑問を口に出していた。

 

–––––出してしまった。

 

「–––あれ?あたしもしかして今……」

 

「えっ!なになに⁉︎もしかして奈緒好きな人いるの⁉︎」

 

「へぇ。それ、詳しく教えてよ。」

 

加蓮は爛々と目を輝かせながら食い気味に、凜は落ち着いた調子で興味深そうに、あたしに言葉を被せて聞いてきた。

 

「は、ははははぁ⁉︎そそそそそんなわけ無いだろ⁉︎」

 

「えぇー、あやしぃー。」

 

「これは絶対なんかあるね。早く吐いた方が身の為だよ。奈緒。」

 

やっちまった。やっちまったよこれ……。こうなって仕舞えばもう止まらない。あたしが折れるまで問い詰め、それをネタに散々いじり倒すのだ。しかも加蓮の場合昔が昔の為、強く出れず、タチが悪い。それはもうこの前の2回で嫌という程わかったというのに、何をしてるんだあたしは。バーカバーカ!あたしのバーーーカ‼︎

 

「い、いや別に、好きってわけじゃ……」

 

「「ダウト」」

 

「いやホントだって。ちょっと気になるってだけで。」

 

「ふーん。で、なんで好きになったの?」

 

「いや好きじゃないって言ってるだろ⁉︎」

 

「じゃあ嫌いなの?」

 

「い、いゃ、別にそぅいぅ訳じゃ……」

 

なんだか恥ずかしくて声が尻すぼみになってしまった。

 

「んふふ、やっぱり奈緒は可愛いねー。」

 

「そうだね。奈緒は可愛いね。」

 

「なっ⁉︎や、やめろよぉ⁉︎」

 

またからかわれてしまった。一応あたしの方が年上なのに。うぅ……。

 

「まぁそれは置いといて、その奈緒が気になってる人ってどんな人なの?」

 

凜が聞いてくる。

 

「えぇー……。」

 

「わくわく!」

 

「ど、どきどき……」

 

「凜、無理しなくてもいいんだぞ。」

 

「ばっ⁉︎べっ別に無理なんかしてないっ‼︎」

 

「凜のそういうトコ、可愛いねー!」

 

「そうだな!凄い可愛かったぞ!」

 

よしっ!仕返し成功!いやぁスッキリしたー!ついでにこれで話しもそれてくれると……

 

「ま、まぁそれは置いといて、吐いて貰おうか。奈緒。」

 

デスヨネー

 

……はぁ。こうなっては仕方ない。大人しく白状しよう。

 

「うぅ……。わかったよ!話せばいいんだろ!でもその後にお前らにも話して貰うからな‼︎」

 

「うんわかった。」

 

「りょうかーい。」

 

えぇ、いいのかよ……。ま、いいか。

 

「そ、そのだな、あたしがき、気になってるやつはな、同じ学校の同級生なんだがな?」

 

「ほうほう?」

 

「特徴とかはあるの?」

 

「んー。あ、最初はなんか吸血鬼みたいだなって思った。」

 

「吸血鬼?」

 

「え、なになに外国の人?」

 

「あ、いや、そういうわけじゃないんだ。ある作品の登場人物が吸血鬼なんだけど、そいつとなんか特徴が似てるんだよ。」

 

「へぇ。その特徴って?」

 

「んーと、まあまあ顔が整ってるとことアホ毛があること、あと目が腐……目つきが鋭いところかな?」

 

「今腐ってるって言いかけてなかった?」

 

「気のせいだ。」

 

「え、でも「気のせいだ。」……むー。」

 

あたしはそんなこと言ってない。言ってたとしてもあいつの目が悪い。

 

「ところで、その人はどんな人なの?」

 

「簡潔に言うと超めんどくさい。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「ああ。ザ、高二病ってかんじだな。」

 

「こうにびょう?」

 

「どこか悪いの?」

 

「あ、いや、そういう訳じゃないんだ。思春期特有の病気でな、よく言う中二病の派生みたいなもんだ。どういう病気かはあとがきみろ。」

 

「最後の誰に言ってるの?」

 

「ごめんあたしもわかんない。」

 

「奈緒大丈夫?」

 

「ああ多分。ありがとう。」

 

「でも、そんなめんどくさい人なら何で気になり始めたの?」

 

「あー、最初は別にそんなんじゃ無かったんだよ。」

 

「あたしがアイドルになる前なんだけどな?偶々席が隣になったんだよ。最初は全然話さないし、こっちが話しかけても寝たふりとか聞いてないふりとかして反応しないし、正直嫌いだったんだよ。」

 

「お、おおう。」

 

「奈緒を無視するって凄いね。こんなに可愛いのに。」

 

「今可愛い関係無いだろ⁉︎

……ごほん。まぁとにかくその時は嫌いだったんだよ。だけどな?ある日の昼休みに、1人でプラプラ歩いてたらそいつが1人でいてさ。その時はそのまま素通りしたんだけどさ、ちょうどあたしが通ったところでそいつがあたしのキーホルダー見てつぶやいたんだよ。「あ、フルボッコちゃん」って。いやーあれはびっくりした。マジで電流走った。」

 

「フルボッコちゃんって今人気のアニメだっけ?」

 

「ああ、そうだ。そんでそこから少しずつ話すようになってさ。そしたら意外と面白いやつで、同じ話題を共有できるやつは初めてでさ。話せるのが嬉しくてほぼ毎日昼休みに話してたんだよ。」

 

「ほうほう。」

 

「それで話してる内に好きになったとか?」

 

「いや、話し始めてしばらくした頃にあたし階段から落ちたんだけど、そいつが身を呈して庇ってくれたんだよ。多分そこから。あとまだ気になるってだけで好きかどうかはわからないぞ。」

 

「おおー!ロマンチックだね!」

 

「うん。少女漫画みたい。」

 

うぐっ⁉︎そ、その例えは恥ずかしいからやめてくれ凜……!と、取り敢えず話変えないと!

 

「で、でもさ‼︎何故かクラスの中では全然話さないし反応もしないんだよ。理由聞いても自分はぼっちだから云々って言ってよくわかんないし。」

 

「うーん、なんでなのかな?」

 

「……あ。」

 

「どした加蓮?」

 

「アタシわかったかも。」

 

「え⁉︎」

 

「ホントか⁉︎」

 

「うん。その人は自分のことぼっちって言ってたんだよね?」

 

「ん?あぁ。そうだけど?」

 

「ならきっとその人は奈緒を庇ってたんじゃないかな?」

 

「あたしを?」

 

「庇う?」

 

庇うって何からだよ?

 

「うん。2人はスクールカーストっていうのはわかる?」

 

「うん。校内での発言力みたいなものだよね。まぁ、私はあんまり気にしないけどそういうのがあるのは知ってるよ。」

 

「まぁあたしも一応。」

 

「自分からぼっちって言ってるんだから言い方は悪いけど、きっとその人は友達がいなくて少しクラスから浮いてるんだと思う。」

 

思い出してみると確かに……

 

「まぁそんな感じだったな。」

 

「でもそれがどうして教室で話さない理由になるの?」

 

「んとね?じゃあ2人はクラスの中で普段喋らないと思ってた人が目立つ人と話してたらどう思う?」

 

「んー、多分びっくりするんじやないかな?」

 

あたしも同じ意見だったから頷く。

 

「それだけ?」

 

「それ以外になんかあるのか?」

 

「んー、まぁ2人は可愛くていい子だからそうなるか。」

 

え、どういうことだよ?てか可愛い関係無いだろ。

 

「あのね、2人はアイドルになるほど可愛くて友達も多いでしょ?だから自然と学校の中心にいる人。つまりは校内カーストが高い人になってたの。そんな人と、みんな知らないような影の薄い人が仲良く話してると、他の人達は色々詮索とかしちゃうんだよ。特に女の子はね。だからきっと、その人は奈緒に変な噂がつくのを避けてくれたんじゃないかな?まだその時はアイドルじゃ無かったみたいだからから、後ろ盾も何も無いし、いじめ受ける可能性もあったかもしれないしね。」

 

あいつが、あたしを、助けてくれた……?

 

ヤバイ‼︎なんかスッゲー嬉しい‼︎……ハッ!早く、早く顔隠さねぇと⁉︎

 

あたしはバッと顔を隠したが、もう遅かった。2人はめっちゃニヤニヤしてる。

 

……殴りたい、この笑顔☆

 

「奈緒顔がにやけてる。嬉しかったんだ。」

 

「んふふー。すっかり恋する乙女ですなー。奈緒可愛いー‼︎」

 

「なっ⁉︎ぐっ!……あ"あ"あ"ああああぁぁぁぁぁあああああ‼︎‼︎」

 

「ちょっ⁉︎奈緒!電柱に頭ぶつけないでよ⁉︎怪我したらどうするの‼︎」

 

「奈緒⁉︎どこ行くの⁉︎」

 

「ええいうるさいうるさい‼︎あたしは帰らせて貰うッ‼︎」

 

「凜‼︎奈緒追うよ!」

 

「ガッテン‼︎」

 

閑話休題(それからいろいろありまして)

 

「もぅゃだ。しにたぃ。」

 

「元気出して。奈緒。」

 

「ごめんね、奈緒。まさかそこまでするとは思わなかった。」

 

もう死にたい。消えて無くなりたい。あ、今ならあたし、灰になってどこまでも飛んでいける気がする。今いくよおばあちゃん。

 

「あ、奈緒が死んだ。」

 

「奈緒ー‼︎クァァアアアムバアアアッッック‼︎」

 

「うるさいっ‼︎耳元で叫ぶなぁ‼︎」

 

「あ、生き返った?」

 

「死んでねぇよ!勝手に殺すな‼︎」

 

「加蓮。キャラ崩れてたよ。」

 

「冷静だな⁉︎」

 

「あ、やっぱり?」

 

「気づいてたのかよ⁉︎」

 

やばい。この2人がボケすぎてめっちゃ疲れる。いい加減誰か止めてくれよ。じゃないと死ぬぞ。疲労と酸欠で。あと恥ずかしさで。

 

恥ずかしさで。

 

「ちょっと、もぅ、ケホ、ボケんの、やめて。これ以上は、ヴェッ、ちょと、っらい。」

 

「……大丈夫?」

 

「ごめん。ちょっとやりすぎた。」

 

素直に謝る2人。うーん、いつもはこんな感じでいい奴らなのになぁ。

 

少し休憩して息を整える。

 

「よし!じゃあ次は凜に話して貰おうか!」

 

「え?何を?」

 

おい忘れんなよ。

 

「好きな人の話だよ。嫌だなんて言わせないぞ?」

 

ふっふっふっ。あたしはあんな目にあったんだ。思いっきり恥ずかしがって貰おうか!

 

「あそっか。ごめんすっかり忘れてた。っていってもさっきの奈緒みたいな面白い話はないよ。だって人を異性として好きになったことなんて一度もないし。」

 

……えー。

 

加蓮と一回顔を見合わせ、同時にッはぁぁーーと溜め息をつく。この時やれやれ。これだからこいつはって感じの顔をするのがポイントな。

 

「なにその反応。」

 

「むー。凜つまんなーい。ぶーぶー。」

 

「ないわー。凜、それはないわー。」

 

「なっ⁉︎仕方ないじゃん!ホントに好きな人出来たことないんだから!」

 

まぁそれなら仕方ないか。

 

「じゃあ加蓮はあるか?」

 

「うん、あるよ!それも現在進行形で!」

 

「おお!」

 

「いつから好きになったの?」

 

「それも含めて説明するね。」

 

そう言って加蓮は話し始めた。

 

「去年の春に千葉の病院に検査入院することがあってね?少し体調を崩した日に、少し廊下を歩いてたら気分悪くなっちゃって。」

 

「大丈夫だったの?」

 

「うん。その時にアタシを助けて一緒に病室まで付き添ってくれた人がいたんだ。」

 

「もしかしてその人が?」

 

「うん。アタシの好きな人。」

 

どうやらその後加蓮は毎日の様に、というか毎日その人と喋っていたらしい。そしてさりげないその人の優しさや、ふと見せる仕草に段々と惹かれていったらしい。まったく、どこの少女漫画だよ。

 

「奈緒。それ、特大ブーメラン刺さってるよ。」

 

「やめろ。ナチュラルに心読むな。」

 

「だって奈緒考えてること分かりやすいんだもん。可愛いし。」

 

「今は可愛い関係無いだろぉ⁉︎いい加減にしろよ作者ぁ‼︎」

 

「奈緒メタい。あとメタい。」

 

「奈緒大丈夫?電柱の件(さっきの)で頭がちょっとかわいそうなことになってない?」

 

「大丈夫だ。問題ない。」

 

「奈緒が……ボケに回った……⁉︎」

 

「衛生兵ー!衛生兵ー!」

 

〜閑話休題〜

 

「まぁアタシの話はこんな感じかな?あ、あと実はアタシがアイドルになったのは、夢だったっていうのもあったけど、その人に気づいて貰いたい、褒めてもらいたいっていうのもあったんだ。」

 

「なんかホントに少女漫画みたいだな!」

 

「うん。ちょっとだけ恥ずかしいけど。」

 

少し俯いて、耳まで赤くする加蓮。平静を装っていたが、相当恥ずかしかったんだろう。でも彼女の口元は少し嬉しそうにはにかんでる。

 

加蓮を見ながらニヤついてると、凜からある指摘が飛んで来た。

 

「ねぇ、さっきから思ってたんだけどさ……」

 

 

 

「私達外でこんな話ししちゃヤバイんじゃ……」

 

 

 

「「…………あ。」」

 

3人で急いで周りを確認する。運のいいことにー346の裏出入口に繋がるこの道の人通りが少ないのと土砂降りの雨だったのが良かったんだろう。あたし達3人以外、人は1人もいなかった。

 

……やべぇ。ここ外だった。公衆の面前だった。ていうか自分がアイドルなの忘れてた。

 

「そ、そろそろ事務所だね!」

 

加蓮が強引に話しを変えた為、あたし達もそれに乗っかる。

 

「そ、そそそそうだな!そろそろ着くな!」

 

「あ、あー早く帰ってシャワー浴びたいな。」

 

最後の角を曲がる。ここを曲がれば、あとは50メートル程で裏出入口に着く。ふう。あと少しだな。いやー最近寒いからな。早く入ってあったま–––––

 

「ねぇ。あれ、人倒れてない……?」

 

「「えっ⁉︎」」

 

奥を見てみると、20メートル程先に人が倒れてるのが見えた。

 

「ッ‼︎2人共!行くぞッ!」

 

2人を急かしながらそこに向かって走る。着いたところで、驚愕した。

 

何日も着替えずに着ているのか、ボロボロに擦れて、雨を吸いグショグショになった総武高校の制服。何日か前に見た皮肉屋のそいつの顔は、これまでにない程、他の人には見せられない程、げっそりとやつれていた。知らない訳がない。だってコイツは……

 

 

 

「ハチ君…………?」

 

 

 

だってコイツは……あたしが……

 

 

 

「ひき……がや…………?」

 

 

 

あたしが、今、気になっている人なのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




高二病
中二病及びその要素を嫌悪している事から、主な症状はネガティブな面が主となっているが、
自己顕示欲の発露という根本的部分は中二病と同じであるため、
類似・同一の症例も多く、区別には一定の観察期間を要する場合が多い。

(以下はネットでの定義。)

物語やその設定のいわゆる中二的要素を必要以上に嫌悪する。
特に天才や美形といった派手な要素や特殊な漢字表記・ヴ行単語などに大きく反応を示す。
玄人・通を気取り、人気がある・有名な・流行している物や作品を嫌う。
理想や前向きな理屈を綺麗事・ご都合主義と嫌い、逆に悲観的な正論と妥協を好む。
評論家のようになり、最初から期待することをせず、前情報から粗探しに終始する。
努力や根性、縁の下の力持ちなどといった泥臭い・渋い要素を好む。
ファンタジーやSFなどの話に対して現実・現代的価値観の面から突っ込みを入れ始める。
日常物などのいわゆる平和で明るい話よりも、病んだ状況・言動や暴力・修羅場などが多い暗く陰惨な話を好む。
ストイックを気取り、大衆など広い対象に向けた物事を「ゆとり向け」と嫌う。
オタク的要素を嫌う。(ただし、オタク文化内における高二病の場合はその限りではない)
大きな流行を避ける行為を見下す一方で、そのアンチ流行的態度をさらに回避しようとする。
ブラックコーヒーを中二病と言いつつ、ビールやワインを嫌って日本酒やウィスキーに走るなど。
自分は中二病なんかとは違うまともな存在だと思い込む。
ただし、症例の多くは中二病から派生してその基準が自然に定まっている状況であるため、
中二病とされる要素が変化した場合はそれを否定する高二病の症状も同じく変化するものと推測されている。

※ニコニコ大百科より引用

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