目の腐った青年はシンデレラ城に迷い込む   作:なめ!

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やっちゃったZE☆どうも筆者です。さて皆さん。こんかいのシンデレラフェス、温泉ガチャ、どうでしたでしょうか?筆者はSSR0と言う安定の大爆死を遂げ、死に絶えました。お隣ではお友達が抽選3名の激レアサイン入り色紙をゲットだぜしてました。ちくせう。


18話

ところ変わってここはサイゼの店内。2人がけのテーブルに座り、一通り注文をした俺たちは、言葉も交わさず前菜に運ばれてきた野菜サラダをもさもさと食んでいた。

 

「……で?どうだった?」

 

俺たちの中の沈黙を漸く破ったのは木村さんで、最後のトマトを食べ終えてから口元をにやりと歪ませながら口を開く。

 

「なんつーか……凄かったです。」

 

暗く閉鎖的な部屋の中、唯一光が差すステージ。しかしその上で立って演っているのは数人だけ。しかし、その少人数の元から放たれるのは耳が思わず驚いてしまう程の大音量。いくつかの楽器に繋がれたアンプからの音圧に向かい風の様な錯覚さえ覚えてしまう程だった。

 

ハイテンポを狂ったように思いっきり掻き鳴らし、甲高いストリングの電子音をばらまくギター。テクニカルなリズムを響かせ、一層とその音の厚みを際立たせるベース。キーボードがその多彩な電子音からなる装飾や旋律で、曲の遊びを作り出し、数多くのパーカッションを使い分けながらテンポを刻むドラムは、場をひたすらに盛り上げ時折カウンターの様に特大のアクセントをつけていく。その爆音と言っても差し支えない様な伴奏の中でも一際に存在感を発揮するボーカルは、バンド毎に違うそれぞれの声色でメロディーを一気に歌い上げる。曲の全てのパートがメロディーであるという重圧を跳ね除け、胸を張って歌うその姿は凛々しく、圧倒された。それぞれのの音が絡み合い、高め合い、共鳴して、異様な熱気と高揚を作り出す。メンバーはときどきお互いに確認し合い、心のそこからの笑顔を浮かべながら、また不敵な笑みを浮かべながら演奏を絶えず続けていく。そのステージに立っていた全員が、楽しげで、生き生きとしていた。

 

そして、それに当たった観客は熱に浮かされた様にそのステージに向かってコールを送る。その始終を観ていた俺は、暫し呆然と立ち尽くしていて、終わった時にはいつのまにか大声でコールを叫んでいたのを覚えている。記憶は未だ鮮明で、今ですら高垣さんの歌を聞いた、あの時の様な高揚感に身を包んでいた。

 

今回のライブを観ていて、凄い、なんていう抽象的な感想しか湧いてこなくて、具体的で気の利いた言葉なんて、1つも出てきやしなかった。ライブが終わってからもずっと、その熱風と大音量が飛び交う暗室の光景がこの目の裏にしっかり焼き付いていて、たった数時間の、けれど未だ冷めきらない羨望と興奮が俺の脳裏をチラチラと焦していた。

 

「……ぃ。ぉーい。おーい!」

 

いきなり目の前に現れた手の平に気づき、ぱっと顔を上げると、「やっと気づいたな。」と木村さんが苦笑いしていた。どうやら結構考え込んでいたらしい。

 

「……あ。すいません。ちょっといろいろ考えてました。」

 

「ライブのこと?」

 

「えっと、はい。そうっすね。ライブのことです。」

 

そういうと、木村さんは「そっか。」とふっと微笑む。

 

「どうだ?好きになっただろ?アイドルだけじゃなくて、ロックも。」

 

言葉に詰まる。確かに熱狂する程興奮した。あのうるさい程の爆音も嫌いじゃなかった。だけど、恥ずかしいのだ。いざ言葉に出そうとすると。なんていうか、柄に合ってない感じがじて。

「……えっと、まぁ、はい。なんていうか、よくわかんないですけど、なんかもう、凄くて。圧倒されたっていうか、魅了されたっていうか、高垣さ……アイドルのライブでこういうライブハウスみたいなとこには来たことあったんですけど、その時とは全然違くて。まぁこういうのも嫌いじゃ、n……」

 

「そうだろそうだろ!やっぱ初めてのバンドライブっていうのはすげえびっくりするよな!超わかるよ!やっぱ最初はあの音量と音圧に圧倒されるんだよな!確かにロックバンドっていうのは性質上他に比べて音量は違うし曲中のアクセントのインパクトも凄まじいからな!うんうん!あーアタシも初めての時はびっくりして固まってたからなぁ!あ、そうそう!因みに今回出たバンド……colorsはアタシのダチがいるバンドでさ!チケット貰ったのもそいつらからなんだけど、あそこの良さはなんといっても……」

 

「ちょっと待ったストップです木村さん。声でかいです。抑えて抑えて。」

 

さっきからよっぽどバンドの話をしたかったのか、目をキラッキラッ輝かせてちょっとたじろいでしまうくらいの早口で捲し立て始めた木村さん。周りの人達がぎょっとして見てくる中慌てて止めると、はっとしてから、申し訳なさと恥ずかしさが混ざった様な顔で「すまんすまん。」と言って話すのをやめた。人差し指でポリポリと気まずそうに掻かれはにかむその頰は、やっぱりほんのりと赤く染まっていた。

 

「お待たせしました。ミラノ風ドリアとミートソースボロニア風。粗挽きチョリソーです。」

 

「あ、はい。」

 

話が遮られたところで、ちょうどタイミングよく料理が運ばれてくる。店員さんが注文の確認をしてからここを離れ、また2人の間で沈黙が流れる。

 

「……とりあえず、食うか。」

 

「……そうですね。」

 

木村さんの言葉でお互い手にフォークとスプーンを持つ。

 

鮮やかな茶と黄色の陶器に詰められたグラタン風の一皿。ミラノ風ドリア。税込299円。グツグツと滾るミートソースに白いチーズが満遍なくたっぷりとかけられ、チーズとソースの濃厚且つ柔らかな香りが漂ってくるこの皿に、思わずごくり、と喉を鳴らす。

 

「「……いただきます。」」

 

まず両手を合わせていただきます。料理になった命に感謝してからスプーンを入れる。持ち上げるとかかったチーズが伸びに伸び、なんとか断ち切って口に運ぶ。

 

「「うめぇ!」」

 

ターメリックライスの独特でほろ苦い香りとホワイトソースとミートソースの優しくも濃厚な味わい。そこに上に乗ったチーズのパンチの効いた旨味と酸味!あーうめぇ!やっぱこれだわサイゼ最強!

 

これは持論だが、この皿はこれで1つの完成形で、シェフが料理したこの皿は、値段以上の美味しさと価値があると俺は思う何言ってんだろね俺。

 

何日?何食?何日か前に作ってくれた五十嵐の西京焼きぶりののまともな食事に暫く無心でがっつく。これで299円とかやっぱサイゼ最強だわ……299円?

 

……あれ?ちょっと待てよ?俺が毎食食ってる200円バーガーとドリンクのセットで300円。このドリア単品とお冷で299円……………?

 

その時、電流が流れたかの様な鋭い衝撃と共に、数学が壊滅的な俺の頭に天地がひっくり返る様な、とんでもない方程式が浮かんできた。

 

「1円……1円、サイゼの方が安い……?」

 

「お、おい。どうしたんだよハチ?なんかしょうもないこと言いながらすごい顔してるけど……?」

 

「木村さん……俺は今、とんでもないことに気づいてしまいました……。」

 

「あ、うん。今聞いた限りだと途轍も無くしょうもない内容の気づきだってことはわかったよ。」

 

「なんと、ワックの200円バーガーとSドリンクのセットよりサイゼのミラノ風ドリアとお冷の方が1円安いんですッ‼︎」

 

「うん。知ってる。」

 

「な、なんだって……⁉︎し、知っていたのですか……?す、すげぇ……て、天才だ……!」

 

「落ち着け。てかお前そろそろ恥ずかしくなってきただろ。ちょっと噛み始めてるし顔赤くなってきてるぞ。」

 

「……わかってるなら乗ってくれてもいいんじゃないですか?柄にも無く人が勢いに任せて無理やり人変えてやってるのに。」

 

「や、ゴメン。なんかやだった。それに大して面白くも無かったし。」

 

「……そういうこと言うのやめて下さいよ。俺も言ってからそれ直ぐに思ったけど言われると傷つきます。泣きます。」

 

「それはやめてくれ。アタシは、アンタの涙は見たくねぇ……!」

 

「なんとなくカッコよく言ってますけど要はテメェの涙なんぞキモイから見たくねぇよバ–––––––––––カ‼︎とかいう意味でしょこれ。」

 

「前半と後半除けばそういうことだな。」

 

「うわひでぇ!泣いてやる!」

 

「あははっ!いい男がこんなとこで泣いてちゃダメだぜ?てかどっちかって言ったらこんなとこで泣くハチのが恥ずかしいだろ。」

 

「ぐぬぅ……確かに恥ずかしい……。」

 

「ところで、さっきお前憧れた、とか言ってたな?」

 

「え、なんですか急に。ま、まぁ……言いましたけど?……いやでもそれはその、憧れたっていうかなんていうか、言葉の綾で「ならやってみないか?バンド。」だから別にそういうんじゃ……ん?バンド?」

 

「あぁ。バンド。どっかで仲間見つけて、やってみたらどうかな?すげぇ気持ちイイよ?あそこに立つの。」

 

「イヤです。」

 

「……えーっと。とりあえず理由教えてもらっていい?」

 

「え、だって普通に仕事あるじゃないですか。忙しくてまず無理ですよ。」

 

「で、でも、みんなで一緒になって音楽作るの楽しいよ?それにほら!休日使ってみんなで練習すればいいだろ?」

 

「それ以前の問題ですね。そもそも作れませんよ。メンバーが。俺のコミュ力を舐めてもらっちゃ困りますね。ダメな意味で。それに休日なんてもっとイヤです。誰が好き好んで休日っていう超貴重な時間をよく知りもしないやつとの絡みに割かないといけないんですか。1人で楽器を練習するならともかく絶対イヤです。絶対。」

 

「……うん。ごめんな。なんか、付き合わせちゃったみたいで。いきなり迷惑だったよな……。」

 

「あぁ⁉︎違います違います!木村さんのこと言った訳じゃ無いんですよ!今回のは貴重な体験というか木村さんは俺の中じゃそういう人達とは違うっていうか……とにかく木村さんのこと言った訳じゃ無いんでその顔文字みたいに落ち込むのやめてください!」

 

「(´・ω・`)」

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「あ”–––––……。」

 

自室のベッドの上で寝転がりながら、ぼーっと声を上げる。これで何回だっけ。数えてなかったからわかんないけど最低5回はやってる気がする。

 

「また、借りを作ってしまった……。」

 

やっちまった。どうしよう。そう言って何もない筈の部屋の一角に目を向けると、本当に何もない部屋の中で、途轍もない存在感を漂わせるそれが見える。プラスチックのつるりとした光沢を持つ、一本のギターが。

 

「どうすっかなぁ、これ……。」

 

あのあと、めちゃくちゃ頑張ってなんとか木村さんを宥めたら……もういいや説明めんどい。とにかくなんやかんやあって、置く場所が無いからという見え見えな理由でギターを置いていかれた。もちろんピックとアンプと教本もご丁寧に添えられて。至れり尽くせりだなおい。

 

要は趣味、というか娯楽が無いという俺を慮ってギターやってみたらっていう腹で置いていってくれたんだろう。娯楽が無い、みたいなことを言った気がするし多分そうだ。我ながら自意識過剰だとは思うが、もしかしたら自分の趣味を共有したいとか、一緒にギター弾くやつがほしいとかそういう思惑もあったんだと思う。

 

「でもなぁ……ひっじょーに申し訳ないんだよなぁ……。」

 

正直ギターを弾いてみたい、という思いはあった。あの光景を見て、やってみたい、あの上で自分の思うままかき鳴らしてみたい、なんて思った。というか、生活に困らなくなったらやってみるのもありかな、とか思ってた。でもね?でもね?それはあくまで“余裕ができたら”であってこんないきなり借りたとはいえギターが手に入るなんて思ってもいなかったもんで。

 

いや嬉しいよ?やろうと思ってたことが予定より全然早くできるようになったんだもん。そりゃ嬉しいよ?嬉しく無いわけがない。だけどさ、本来向こうに気を使う仕事の筈なのに逆に気使われて、しかもこんなものまで出してもらって申し訳なさが天井突破してるんだよ。あとついでに楽器壊したらとか思うとめっちゃ怖い。

 

「……あ”–––––……。」

 

そう思いながらも、ついちらりと見てしまう。寝っ転がって、ちらりと見て、奇声を上げる。そのループをさっきからずっとやっているのだ。ワンチャンRTA行けるかもしれない。うわくだらねぇ。

 

だがこのままずっといるのはダメだ。拉致が開かない。そう考えた俺は決断し、すっくと立ち上がった。

 

「まぁ、いつまでもうだってんのは時間の無駄だしな。仕方ない。」

 

自分に言い聞かせる様にそう言って、ゆっくりと歩いていく。その先には木村さんのギターセット。そうしてギターの元まで辿り着いた俺はぐわしっとギターのネックを掴む……………………………………

…………ことはせず、教本を手に取った。

 

「ま、まぁ、まずは方法と基礎からだよな……。」

 

自分に言い聞かせる様にそう言って、俺はギター教本のページをパラパラとめくり出した。

 




前回募集した投票の結果です。

桐生つかさ 1
アナスタシア2
新田美波 2
赤城みりあ 1
乙倉悠貴 1
白菊ほたる 1
氏家むつみ 1
道明寺歌鈴 1
小日向美穂 1
緒方智絵里 1
神崎蘭子 4
十時愛梨 1
鷺沢文香 1
二宮飛鳥 2
久川颯 1
久川凪 1
橘ありす 1
三船美優 1
和久井留美 1
服部瞳子 1

と、こんな感じでした。さすがシンデレラガール。4票も票が入っておりました!
というわけで、次回は蘭子ちゃんwith CPメンツ(アーニャ、美波さん、みりあちゃん、チエリエル)でお送りしたいと思います。乞うご期待!……はあんまりしないでやっぱ暖かい目で見守って下さい!
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