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『グツグツ』
『カチャカチャ』
調理器具と食材から出る小気味いい音と一緒に、高垣さんの綺麗な鼻歌が、向こうのキッチンから聞こえてくる。
『サク、サク、』
『トポトポ、トプン』
いきなりだが、今、俺は、
『グツグツ』
今俺は猛烈に–––––
「出来ましたよ比企谷君!どうぞ食べて下さい!」
全国の高垣楓ファンに謝りたい!
–––––回想––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
『あなたの顔を見てると最近ちゃんした食事をしてないことが丸わかりです。あなたには今日ちゃんとしたご飯を食べて貰います!』
と言われた俺は、流石にこんなに迷惑をかけておいてタダ飯を御馳走になる、なんてことは申し訳なさ過ぎて、断った。断ったのだが、
『なら勝手にします。どうしても比企谷君が食べたくないのなら私が食べるので。』
と言ってきた。俺はここまで言われて断われる程強い神経など持ち合わせて無いため、しぶしぶ了解した。てか高垣さん2人分の朝食食うのか。意外に食べるんだな。
いくら年が上で、金を持っているとしても女性に全部払わせるのは男としていいのだろうか。というか、とても申し訳ない。
この状態で外に出るのは流石にまずいので、シャワーと着替えを借り、着替えた。本当に申し訳ない。
けれどいつまでたっても高垣さんは外に出ず、いそいそと何かを準備していた。
『えっと、すいません。いつ外出るんですか?というか、何やってるんですか?』
『?外には出ませんよ?』
『えっ』
『朝ごはんの準備をしてるんです。ふふっ。やっぱりお腹空いてたんですね。今から作りますので少し待ってて下さいね。』
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––回想終了–––––––
見たいなことがあって今高垣さんにご飯を運ばれてきてます。高垣楓ファンの皆さん、ごめんなさい。マジごめんなさい。あ、あと高垣さんのエプロン姿マジやばかったっす。何がって?もう全てが。
「高垣家特製卵粥です。出来たてなのでふーふーしてから食べて下さいね!」
そう言われてごとり、と置かれたのは、1人用の土鍋だった。蒸気口からは湯気と一緒に米の香りが漂ってくる。
だがいざ食べるとなると躊躇ってしまう。俺なんかが食べてしまっていいんだろうか。
「どうしました?も、もしかして卵アレルギーでしたか?」
なかなか手を付けないでいると高垣さんが心配そうに声を掛けてきた。
「あ、いや、そういう訳じゃないんですけど……。ただ、俺なんかが食べていいのかなって。」
そう言うと、高垣さんはぷくっと頬を膨らませる。可愛い。
「比企谷君はおばかです。」
「へ?」
「私が比企谷君の為に作ったのに比企谷君が食べちゃダメなんてことある訳ないじゃないですか。」
「いや、確かにそうですけど。」
「だったら食べて下さい。」
そういう問題じゃないんだよなぁ。
「いつまでも渋ってると無理矢理食べさせますよ!」
高垣さんはそう言うと、土鍋の蓋を開けた。米の優しい香りが鼻をくすぐる。
すると高垣さんは持っていたスプーンで卵粥を掬ってこちらに向けてきた。
「……何やってるんですか。」
「見ればわかるでしょう。あーんです。溢れちゃうので早く食べて下さい。」
「分かりました!食べます!食べますからあーんはやめて下さいッ⁉︎」
「そんなに私にあーんされるの嫌なんでしょうか……?」
高垣さんが少ししょんぼりする。あと小声で言ってるけど聞こえてます高垣さん。いや、違うから。あーんされる恥ずかしさと全国の高垣楓ファンへの申し訳なさからだから。普通こんな美人にあーんされるとか昇天もんだから。」
「え、えっとその、流石にいきなり言われると、心の準備が……」
何故か突然高垣さんの顔が赤くなる。な、何かそんなに怒ることがあったっけか……?
「と、取り敢えず食べて下さい!」
「は、はい。じゃあ、い、いただきます……。」
スプーンでお粥を掬い、口に運ぶ。
「…………美味ぇ。」
このお粥はすごく、すごく、美味しかった。お粥自体に何かあっと驚かせるような、斬新な工夫がある訳では無いし、高垣さんの料理の腕が特別に上手いわけでもない。至って普通の卵粥だ。しかし、普通のはずのこのお粥は、何故か、今迄食べたことがない程、美味しかった。もう一口、もう一口と食べていく。昨日から殆ど何も食べてないからか、胸の辺りがキュッと痛むが、お粥を掬うスプーンが止まらない。一人前の朝ごはんにしては結構な量があったお粥は、一瞬で無くなっていた。空になった鍋を机に置く。
「御馳走さまでした。」
何故か、声が震えた。
「はい。お粗末さまです。あと、これ。」
そう言うと高垣さんはスッと手を差し出す。その手には薄緑色の綺麗なハンカチがあった。差し出された意図が分からず、少し戸惑う。
「えっと、これは?」
また声が震えた。
「比企谷君……。」
顔を上げると、真剣な顔をした高垣さんがいた。
「貴方、泣いていますよ……?」
「…………え?」
いや、そんな筈ない。涙が出たなら直ぐに気づく筈だし、第一手作りの料理食って、泣くだなんて、そんな漫画みたいな事、あるわけ、ない。確認する為に、目元を拭う。拭った手の甲は、濡れていた。
「あ、れ……?おかしいな?泣い、てる……?」
拭っても、拭っても、涙は、止まらなかった。
「大丈夫。泣いても、いいんですよ。」
それだけ言うと、高垣さんはそっと俺を抱いて、溢れる涙を、拭いてくれた。その抱擁は、とても優しく、暖かかった。
抱き締められた俺は、思いっきり、泣いた。みっともなく、子供の様に、大声で。さっきまで茶化して誤魔化していた感情はあっさりと表に引きずり出された。止めようとしても、とめどなく溢れてくる感情の波に呑まれ、止めることが、出来なかった。
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どれ程の時間、泣いただろうか……?何分?何十分?何時間?時間を忘れて泣いた為、どれ程泣いたかが分からない。
「もう、大丈夫ですか?」
高垣さんは俺が泣いている間、ずっと抱きしめてくれていた。その優しい温もりは、とても名残惜しいが、仕方がない。
「はい。ありがとう、ございます。」
ゆっくりと、丁寧にお礼を言う。
「それと、すいません。抱きしめて貰ってたから、服、汚してしまって。」
今、高垣さんの服は、俺の涙や鼻水やらでぐしょぐしょの筈だ。流石に申し訳ないし、そこは謝らないといけない。
俺が謝ると、高垣さんは少しムッとした表情を見せたが、直ぐににっこりと微笑んだ。
「ふふっ。大丈夫ですよ。汚れは洗えば直ぐに落ちます。むしろ、比企谷君の役に立ててよかった。」
「それと、お礼は大丈夫ですよ。これは、貴方への恩返しなんですから。」
「恩、返し……?」
全く心当たりがない。
「そう。私の初めてのファンに、応援してくれてありがとう、見守ってくれてありがとう、ファンになって支えてくれて、ありがとうって。私なりの、恩返しです。」
「……ぇ?」
さっきまで泣いていた為か、驚きの為か、出た声は、少し掠れた。
「俺が貴女の、高垣楓の、始めての、ファン……?」
「えぇ。比企谷君。貴方が私の、始めてのファン、です。」
「覚えててくれてたんですか……?」
「覚えてますよ。忘れる筈ないじゃないですか。私は、今でもはっきりとあの時のこと、覚えてますよ。」
「誰も見てくれなくて、アイドルを諦めかけてた私にアイドルの楽しさと喜びを教えてくれたのは比企谷君です。」
覚えてて、くれてたのか。
「それはなんというか、ありがとう、ございます?」
「ふふっ。なんで疑問系何ですか?」
「そ、それはなんというか、その、」
「「……」」
「「くくっ‼︎」」
なんだか可笑しくて、2人同時に噴き出す。少しの間、346プロダクションの一室では、男女2人の笑い声が響い–––––
「2人共、お熱いトコ悪いんだが……」
「盗み聞きするつもりは無かったのですが、すみません……。」
「「えっ」」
声のした方をみると、そこには、凄く、凄ぉーく申し訳なさそうな顔をした、ロックなイケメンと人を何人も殺してそうな目付きの悪い男がいた……。
えっ
あれっこの終わり方、なんか
最後に出てきた2人は一体誰なんでしょうね!