魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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まだ続いちゃう日常回

ウイングゼロ「・・・・・・」←5話以降出番が一切ない

(これからも日常回が)まだ続いちゃうんだなぁ!!これが!!

ウイングゼロ「自爆するしかねぇ。」←ボディから溢れ出る閃光

あー!!おやめくださいお客様ー!!あー!!


第14話 新たなる力

「・・・・10分経ったか。今回はここまでだ。後は戻ってマッサージでもしておけ。筋肉痛になっても知らんからな。」

 

10分経ったことを自身の体内時計でなんとなく察したヒイロはなのはとの模擬戦を切り上げ、片付けの準備をする。

その後ろではなのはが息が上がっている状態で棒を支えにして立っていた。

 

「ハァ・・・ハァ・・・・おかしい・・・ヒイロさんはずっと動いていたはずなのに私の方が息上がってる・・・。」

「元々の体力の差もある。それに相手の攻撃を防御するということはしばらく自分の思うようにできないもどかしさからくる精神的な疲労もある。」

 

ヒイロが用具の入った袋を担ぎながらなのはに近づく。

 

「そこにベンチがある。休みたければそこで休んでいろ。」

「はーい・・・・。」

 

ヒイロに棒を預けたなのははベンチに座ると疲れ果てたように背もたれにもたれかかった。

用具を片付け終わり、それらの入った袋を肩に担ぎながらヒイロはフェイトに視線を向ける。

 

「フェイト。」

「は・・・はい。」

 

突然声をかけられたフェイトは一瞬、肩を震わせながらヒイロに顔を向ける。

フェイトの挙動に若干の疑問を抱きながらもヒイロはフェイトに顔を向けた。

 

「先に戻っていろ。俺は少しなのはの様子を見てから戻る。」

「・・・・いえ、私もなのはのことを待ちます。」

「・・・わかった。お前がそうしたいのなら構わん。」

 

フェイトの言葉にヒイロは特にこれといった反応は見せなかった。

 

「うう・・・ごめんね。世話かけちゃって・・・。」

「そんなことない。なのはの必死さは見ている私にも伝わっていたから。」

 

休んでいるなのはの隣に座りながら柔らかい笑みを浮かべるフェイト。

ヒイロはそんな彼女たちを置いてその場を後にしようとする。

それに気づいたフェイトがヒイロに向けて声をかける。

 

「ヒイロさん・・・?」

「お前がなのはのそばにいるのであれば問題ないだろう。先に帰らせてもらう。」

「そう、ですか。・・・・今日はありがとうございました。」

「あ、私もありがとうございました!」

 

ヒイロはお礼の述べるなのはとフェイトを一瞥しただけで、何も言わずに広場を後にした。

 

 

 

 

フェイトはなのはとしばらく話し込んだ後、彼女と別れ、拠点であるアパートの一室へと戻った。

 

「ただいま・・・です。」

「あら、おかえりなさい。」

「おかえり〜。」

 

ぎこちない挨拶をしながら中に入るとそこにいたのはリンディとエイミィだけで、先に帰っているはずのヒイロの姿はなかった。

 

「あれ?ヒイロさんは?」

「ヒイロ君なら、荷物を置いたあとまたすぐに出かけていったわよ。本人は散策って言っていたけど。」

 

疑問を浮かべるフェイトに声をかけたのはリンディであった。抹茶にミルクを混ぜた飲み物が入ったコップを口につけた後、そう呟いた。

 

(・・・・どこに行ったんだろう・・・。)

 

そんなフェイトの疑問の渦中であるヒイロは風芽丘図書館へと赴いていた。目的はある人物と接触するためだ。

適当に図書館内をふらつくと目的の人物の後ろ姿が見えた。

 

「八神 はやて。」

「うっひゃあっ!?」

 

その人物であるはやてに近づき、声をかける。突然声をかけられたはやてはびっくりした表情を浮かべながらヒイロの方を向いた。

 

「な、なんやヒイロさんか・・・。足音とかしなかったし、急に背後から声かけられたからめっちゃびっくりしたわ・・・。」

 

はやては一つ息を吐いて自身の胸を撫で下ろした。ヒイロはそんなはやての様子を悪びれる様子を見せることもなく、話を続ける。

 

「魔力の蒐集はどうなっている?」

「え、まさかの謝罪も無しに私の発言スルーされた・・・?ま、まぁ、ええわ。私は魔力とかよう分からないからみんなの言っていたことをそのまま言うけど、周りの次元世界っちゅう奴に向かって魔力を持った生き物からもらっているそうやな。」

「そうか。」

「ヒイロさんの方はどうなんや?」

「しばらく時間がかかる。膨大な記録の中から調べなければならないようだからな。」

「そっか・・・。まぁ、仕方ないか。それで、私に何か用なんか?ヒイロさんが目的もなしにここに来るとは思えないのやけど。」

「話が早くて助かる。」

 

ヒイロはそう言うとはやてにやってほしいことを話した。

ヒイロの要求を聞いたはやては少々悪い顔をしながら口角をあげる。

 

「オッケーやで。ふふっ、なんかスパイをやっているようで楽しくなってきたわ。けど、その作戦やとシャマルがちょっとばかし不安やな・・・。」

「こちらにも話のわかる奴がいる。俺がお前たちと繋がっていることは伏せるが、頼めば向かうはずだ。シャマルが協力をする姿勢を付け加えれば問題はないだろう。」

 

ヒイロがそう言うとはやては頷き、納得した様子を見せる。

 

「りょーかい。シャマルやみんなにはそう伝えておく。あ、ヒイロさん、もひとつ質問ええか?」

「なんだ?」

「その作戦ができたあとはみんなはどうすればええんか?そのまま時空管理局とかについていった方がええか?」

 

はやての質問にヒイロは考え込む仕草を見せる。確かにその作戦が完遂されたあとははやて達は時空管理局、というよりリンディ達と合流させれば、後のことは考えやすい。闇の書に関する対策も立てやすくなるし、情報の共有もしやすくなる。

 

「・・・・少し話題から逸れるが、はやて。闇の書について、お前が知り得ることを教えられるか?」

「え?闇の書についてか?いや、私は機能とか全然知らんよ。」

「機能については聞いていないが、闇の書と一番年数を過ごしているのはお前だ。」

 

ヒイロから問い詰められるがはやては悩ましげな表情を浮かべるだけだった。

そのまま困った表情にしながらヒイロと話しを続ける。

 

「とは言うてもなー・・・・。私が精々分かるのは割と勝手に動くことだけやしなぁ〜・・・・。」

「・・・・勝手に動くのか?」

「私は散歩モードとか言うとるけど、時折ふよふよ浮いとるんよ。」

(勝手に動くということは闇の書本体にも自立駆動プログラムでもインプットされているのか・・・?だとすればかなり面倒だ。こちらの事情を顧みず行動される恐れが高い・・・。)

 

ヒイロはその情報を聞いて、内心歯噛みをした。守護騎士たち、ヴォルケンリッターは闇の書のプログラムであるが、各々にちゃんとした性格があり、対話も可能だったためなんとか繋がりを持つことはできた。しかし、闇の書は完全に本であり、無機物である。いわばただ自身のシステムに従う、ロボットのようなものと対話が成り立つとは思えない。

ヒイロは考え込む仕草をやめるとはやてに向き直った。

 

「・・・事が済んだら撤退しろ。闇の書が勝手に動くのであれば、不確定要素になりかねん。こちらの懐で何か行動を起こされればそれこそ事態が悪化してしまうからな。」

「でも、そんな害になるようなことはしておらへんよ?」

「今はそうだが、将来的に害にならないとは限らん。闇の書に関しての情報も出揃っていない以上、不用意に受け入れることはできない。」

 

ヒイロが頑なに言うとはやては残念そうな表情を浮かべる。

 

「そっかー・・・。それはしゃあないな。ヒイロさんの言うことももっともやし・・・。」

 

そう呟くはやてだったが、首を横に振るとすぐさま表情を朗らかなものに変え、ヒイロに向き直った。

 

「うん。シグナム達にもそう伝えておく。」

「頼んだ。」

 

ヒイロははやてにそれだけ伝えるとはやての元から去っていった。

 

「・・・・なぁ、闇の書さん。アンタは本当に悪い本なんか?私にはどうしても信じられへんよ。」

 

上を向き、悲しげな表情をしながらポツリと呟く。その言葉を聞き届ける者はいなかった。

 

 

その日はしばらくフェイトとなのはは特訓の日々が続いた。平日は学校に行かなければならないため、どうしても突貫でやらなければならない日もあった。

そんな特訓を続けてきた彼女たちだったが、今回は少々用事があるようでヒイロとの特訓は行わなかった。

その用事というのが彼女らのデバイスである『レイジングハート』と『バルディッシュ』の修復が終わったという通達が入ったため、それの受領に向かうということであった。

これにはヒイロも二人のデバイスの試運転に付き合わされる形で同行させられていた。

時空管理局の本局における訓練施設のスペースでフェイトとなのはが新しく新調された自身の相棒を手にし、何かを待つように佇んでいた。

そして、彼女らの周囲に無数のマーカーが展開される。魔導士が訓練の際に使われるターゲットだ。

 

「・・・久しぶり。レイジングハート。」

『お久しぶりです。マスター。』

「バルディッシュ。おかえり。」

『ただいま戻りました。サー。』

 

優しい声色でそう呼びかけるなのはとフェイトにそれぞれの相棒は機械音声で答える。

 

『・・・時にマスター、どうやら筋力量が以前と比べて増加しているようですが。』

「えへへ、レイジングハートやバルディッシュが強くなりたいって言う気持ち、私とフェイトちゃんも同じだから。これから使い方が荒くなるかもしれないけど、大丈夫だよね?」

 

レイジングハートにそう問われたなのはは少々恥ずかしげな表情を浮かべながら答える。

そう主人の言葉にレイジングハートはーー

 

『もちろんです。マスター。貴方の新たな全力全開、見させてください。』

「うん!!よーし、行くよ!レイジングハート!」

 

なのはが嬉しそうな声を上げながらデバイスの名前を呼ぶと白を基調した制服のようなバリアジャケットを展開する。

レイジングハートも赤い宝玉から形態が杖へと変化する。

 

「バルディッシュ・・・行くよ。」

 

フェイトも続けざまに自身のデバイスの名前を呼ぶ。バルディッシュは待機状態である金色の台座のつけられた宝石が外れ、それを基盤にして、杖というより、斧のような形態へと変わった。

フェイト自身もなのはと比べると比較的薄く、黒いバリアジャケットにマントを翻らせる。

それぞれのデバイスを構えた二人はターゲットに向かって飛翔する。

 

 

 

「・・・・デバイスに守護騎士達が使っていたシステムを搭載したのか。」

「カードリッジシステム・・・。予め魔力を込めた薬莢をリロードすることで瞬間的に爆発的な火力を発揮させる。」

 

訓練の様子を一望できる場所でヒイロが言葉を零す。リンディはヒイロの方を見やることはなく、レイジングハート達に新たに搭載されたシステムの概要を難しい顔をしながら話す。

 

「だけど、ミッドチルダ式はおろかレイジングハート達インテリジェントデバイスとは相性は良くないはずだが・・・大丈夫なのか?」

「それは・・・あの子達次第ね。」

 

クロノの言葉にエイミィがなのは達の様子を見守りながら答える。その視線はなのは達というよりレイジングハートやバルディッシュといった彼女たちの持つデバイスに注がれているようだった。

 

「あの子達が自分の意思で強くなりたいって言ったんだもん。」

 

 

 

「レイジングハート!カードリッジロード!!」

 

レイジングハートから薬莢が吐き出され、新しいカードリッジが装填される。

なのははレイジングハートを振りかざすと、自身の周囲に桜色の光弾を8つ作り出す。

 

「アクセルシューター!シュート!!」

 

なのはの声と共に桜色の光弾はそれぞれマーカーめがけて飛んでいき、貫いた。

貫いた光弾はそのまま真っ直ぐに飛んでいくかと思われたがなのはが少し念じると急転換し、またそれぞれの光弾が別のマーカーへと向かう。

それを繰り返し行うとなのはは少々物足りなさそうな表情を浮かべる。

 

「・・・もう少し増やそうかな。」

 

そういうとさらに4つ増やし、合計12個の光弾を操り始める。光弾はなのはの指示で縦横無尽に駆け巡り、凄まじい勢いでマーカーを破砕していく。

その桜色の光弾が生み出す嵐の中で一際目立つ金色の輝きがあった。

その輝きはなのはの操るアクセルシューターの光弾を上回るスピードで動き回り、マーカーを両断していく。

 

(・・・ブリッツアクションの連続使用。前まではそんなに乱発できなかったけど、ヒイロさんに鍛えてもらったのが効いているのか、連続使用してもそんなに負荷がかからなくなった。)

 

バルディッシュの先端から金色の光刃を出しながら、フェイトは目まぐるしいスピードでマーカーを切り裂いていく。

 

(強くなった自覚はある、。だけど、ヒイロさんは確実にブリッツアクションのスピードを視認できている。)

 

今まで特訓を続けてきたうちでフェイトはヒイロを出し抜けたことは一度もない。ブリッツアクションを使った奇襲を様々な角度、状況で試してみたが、一度たりとて、ヒイロの視線から逃れることはできなかった。

 

(なら、もっと根本的な魔法を使わない状態でのスピードを上げるしかない。もっと、もっと速く……!!)

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

 

 

「おおう・・・フェイトちゃんすっごい動き方をするね・・・。早すぎて全然目で追えないよ・・・。」

「フェイトの動きも目を見張るものがあるが、なのはの方も負けてはいないな。」

 

エイミィとクロノがなのは達の様子を見て、驚きの表情を浮かべる。

マーカーの数も残り少なくなっていることと二人の気合の入り様を見て、程なくしないうちにマーカーを全滅されることは明らかだ。

 

「君のおかげだ。ありがとう。」

「・・・俺は大したことはしていない。フェイトはともかくだが、なのはの方は元々の魔力関係のセンスの高さもあった。それだけだ。」

 

クロノのお礼にヒイロは彼に視線を向けることもなくぶっきらぼうに答える。

 

「つまり、できて当然というわけか。中々手厳しい評価を下すんだな。」

「俺はありのままを言っただけだ。評価を飾ったところで二人が強くなる訳ではないからな。」

 

ヒイロがそういうとリンディは微笑ましげな笑みを浮かべる。その様子にヒイロは不思議に思い、リンディに尋ねる。

 

「・・・なんだ?」

「ふふっ、やっぱり貴方は優しい子なのね。」

 

リンディがそういうとヒイロは少々不機嫌気味に顔を逸らした。ヒイロのその様子すらも微笑ましげに思っていたリンディは唐突に思い出したようにヒイロに話しかける。

 

「あ、そうだ、ヒイロ君。明日、また付き合ってくれないかしら?」

「・・・・まだ何かあるのか?」

「ええ、そうね。今日は用事があったから行けなかったけど。明日は異常が見られなければ何もない日だからね。」

「・・・・了解した。」

 

リンディのそのお願いにヒイロは渋々だが承諾する。

それと同時に訓練プログラムが終了したことを告げるアナウンスが流れた。

記録は管理局の中でもトップクラスの成績だったようだ。

訓練を終えたなのはとフェイトを迎えに行く。ヒイロはリンディ達から少しばかり離れた場所で壁に背をつけながら腕を組んで様子を見ていた。

程なくしてなのはとフェイトが訓練場から出てくるとリンディ達が笑顔を浮かべながらデバイスの感想などの質問をする。

しかし、肝心の二人は質問には答えながらも視線をあっちこっちに向けて誰かを探しているようだった。

その誰かを察したリンディ達は一同に同じ方向を指差した。

指し示された指の先にはヒイロの姿があった。

ヒイロを見つけるとなのはとフェイトは一目散にヒイロの元へと駆けつける。

その様子は何かアドバイスを待っているかのようだった。

 

「・・・・なのはは光弾を操っている時も動けるように善処しろ。あれでは状況によっては的になりかねん。フェイトはスピードを気にかけるのは構わんが、デバイスの振り方が大振りになっている。それで複数の相手を同時に切り裂けるならいいが、一つのターゲットに絞っているならコンパクトに振ることを意識しろ。以上だ。」

『はいっ!!』

 

ヒイロの指摘になのはとフェイトは嬉しそうな笑顔を浮かべながら大きく頷いた。

 




日常回はもちっとだけ続くんじゃ。多分あと一回、だと思います・・・。

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