魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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や、やっと出せた・・・。

一応できる限り端折らずに書いたらいつもより文量が多くなった・・・。

あとそれでもアルフとザフィーラの戦闘書いてねぇ・・・(白目)

追記

シャマルが若干オリジナルになっています(今更)


第16話 海鳴の空を照らす山吹色

「はぁぁっ!!」

「やぁぁっ!!」

 

紫電と雷電が海鳴市に聳え立つビル群の中でいくつも重なり合い、火花を散らす。

いくつかの交錯があったのち、フェイトのバルディッシュとシグナムのレヴァンティンが鍔迫り合う。

しばらく力と力の鬩ぎ合いが続くが、お互い弾かれるように一度距離を取る。

 

「バルディッシュ、カートリッジロード!!」

 

いち早く体勢を整えたフェイトがそういうとバルディッシュに新たに装着されたリボルバー部分から薬莢が吐き出され、新しく装填される。

 

『Plasma Lancer』

 

バルディッシュから機械的な音声が流れるとおよそ八つ、フェイトの周囲に金色に輝く魔力体が生成される。

 

「プラズマランサー、ファイアっ!!」

 

フェイトが合図をするかのように腕を振り下ろすと魔力体が環状魔法陣を纏った鋭く尖った槍へと姿を変え、シグナムへと飛翔する。

対するシグナムは避けるような動きを見せることはなく、レヴァンティンを構えるとフェイトと同じようにカートリッジから空薬莢を吐き出した。

 

「ふっ!!」

 

軽く息を吐き出すような声と共に振るわれたレヴァンティンはフェイトの放ったプラズマランサーを四方八方へと弾き返す。

普通であれば、行き先を狂わされた弾丸は目標にたどり着くことはなく、あらぬ方向へと進んでいくだけだ。

ただそれはプラズマランサーがただの銃弾であればの話だ。

シグナムが弾いたプラズマランサーにフェイトは再び手を振るう。

 

「ターンっ!!」

 

その言葉がトリガーだったのか、プラズマランサーを纏っている環状魔法陣が輝くと突如として方向転換をした。その方角はもちろん、シグナムの方へと向いている。

一瞬の硬直があったのちプラズマランサーは再びシグナムへと襲いかかる。

 

「っ・・・・。」

 

ただ斬りはらうだけではダメだと察したシグナムはプラズマランサーに当たる直前で急上昇した。

対象を見失ったプラズマランサーは互いにぶつかり合うがフェイトが『ターン』という言葉を紡ぐと再度シグナムを目標へと定める。

 

「ちっ・・・。」

 

シグナムは苦い顔をしながらも鞘を取り出すとレヴァンティンを収めながらカートリッジをリロードし、薬莢を装填する。

レヴァンティンを鞘の中に収めると少しばかり体を沈め、さながら居合斬りのような構えを取る。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

気迫こもった声を出しながらシグナムは鞘にしまったレヴァンティンを引き抜く。

その刀身には焔が宿り、シグナムが振るったレヴァンティンの剣先を追うように焔が駆け走る。

その焔はシグナムとフェイトの間に壁を作るように張られ、迫り来るプラズマランサーを全て焼き尽くす。

焔の壁がきえ、シグナムはフェイトを探そうとするが、突然後ろを振り向く。

歴戦の勇士であるシグナムの戦士としての直感が働いたのだろうが、背後から気配を感じたシグナムの直感は当たっていた。シグナムの視界に映ったフェイトはバルディッシュを上段に構え、シグナムに向かって突撃してきていた。

焔でシグナムとフェイトの間に壁ができた瞬間、フェイトはブリッツアクションを用いてシグナムの背後に瞬間移動していたのだ。

 

(遅れは取ったが、向こうは上段に構えている。このまま横薙ぎに振ればーー)

 

フェイトが目前に来ながら対応が間にあうと判断したシグナムは勢いそのままレヴァンティンを横薙ぎに振った。

しかし、レヴァンティンの刃がフェイトに届くことはなかった。

刃がフェイトに触れるか触れないかの、まさに紙一重の瞬間に彼女の姿が掻き消えた。

その結果横薙ぎに振るったレヴァンティンは空を切ることとなった。

 

(しまった。今のはわざとかーー)

 

フェイトは敢えてバルディッシュを上段に構えて接近することによりシグナムに対処させるように心理的に誘導したのだ。

その目論見は見事的中し、シグナムはまんまとレヴァンティンを振るわされてしまう。

だが、シグナムも目を見開きながらもフェイトの行方をすぐさま捜索する。

 

「っ・・・上かっ!?」

 

シグナムの耳にある音が入り込む。それはマントのような布が風に煽られてバサバサとはためくような音であった。

咄嗟に上を向くがフェイトの姿は既にクロスレンジまで迫っていた。

振るったレヴァンティンはもう一度構える隙すら与えられず、せいぜい前に持ってくるのが精一杯であった。

バルディッシュとレヴァンティンがぶつかり合い、火花を散らす。しかし、互角の状況だった時とは違い、シグナムは防御するのが精一杯。さらにシグナムの上を取ったフェイトは高高度から落ちてきたスピードも重ねがけ、一気にバルディッシュに力を込める。

 

その結果、シグナムは下へと弾き飛ばされ、フェイトがシグナムと初めて戦った時と同じようにその身をビルの屋上へと叩きつけた。

 

(・・・フェイントからのブリッツアクション、手応えはあったけど、防御自体は許した。まだその程度で倒れる相手じゃない。)

 

フェイトは改めて気を引き締めるようにバルディッシュを構える。警戒するようにビルの屋上を凝視すると、フェイトの想像通り、土煙を払いながらシグナムが現れる。

 

「ははっ、まさか今度は私がビルの屋上に叩きつけられる羽目になるとはな。強くなったな、テスタロッサ。」

 

シグナムは乾いた笑顔を浮かべながらフェイトを称賛する言葉を述べる。

 

「・・・ありがとう。だけど、次はそう簡単に行くような貴方ではないでしょう?」

 

フェイトがシグナムに向けてそう返すと、シグナムは無言でレヴァンティンを構える。

 

「無論だ。この程度でやられるほど柔な肉体ではない。」

 

シグナムのその言葉を皮切りにフェイトとシグナムが同時に動き出し、第2ラウンドを告げるように両者がぶつかり合った。

 

 

 

 

「シュワルベフリーゲンっ!!」

 

ヴィータが指の間に挟んだ鉄球に魔力を込め、橙色に光る玉となった鉄球を彼女のデバイスであるグラーフアイゼンのハンマー部分で叩くと誘導性を持ちながらなのはへと飛んでいく。

なのははそれを落ち着いて軌道を読みながら避けていく。

 

(あの子が中距離戦で来るならーー)

 

ヴィータの攻撃を掻い潜りながらなのははレイジングハートから空薬莢を吐き出させ、リロードさせる。

 

(こっちもそれで応えるだけ!!)

 

リロードさせ、アクセルモードへと移行させたレイジングハートをヴィータに向ける。

 

「アクセルシューター!!シュート!!」

 

なのはの声に呼応するように桜色の魔力体がヴィータに向けて飛翔していく。

その数はおよそ12個。それぞれが複雑な軌道を描き、放たれた鉄球を破壊しながらヴィータヘ迫り来る。

 

「はっ!!お返しって訳かよ!!上等っ!!」

 

対するヴィータは自身に迫り来る桜色の光弾を避けるなり魔法陣を展開して防御するなどしながら切り抜けていく。

 

「足止まってんぞ!!それじゃあ狙ってくれって言ってるようなもんだ!!」

 

そういうとヴィータは自身の手のひらに再度鉄球を出現させる。しかし、先ほどの指の間に挟めるほどのサイズではなく砲丸ほどの大きさまで大きくしたものだった。

 

「お返しのお返しだ!!遠慮はいらねぇからもらってけっ!!」

 

ヴィータはその砲丸サイズの鉄球を放り投げると、グラーフアイゼンでかっ飛ばす。アクセルシューターの制御に追われてその場から動くことができないなのははーー

 

「レイジングハート、バスターモードへ移行!!」

 

レイジングハートの形態を魔力弾など加速させるアクセルモードからその名の通り砲撃がメインのバスターモードへと切り替える。

 

「カートリッジロード!!」

 

続けざまにレイジングハートに命じ、空薬莢を吐き出させ、新しくカートリッジを装填する。

 

「ディバイン、バスターーー!!!!」

 

レイジングハートから撃ち出される魔力の奔流はヴィータが放った鉄球を呑み込み、勢いそのままにヴィータへと迫る。

ヴィータは自身に向かってくるディバインバスターを避けると近接戦闘を行うべく、なのはに接近する。

 

「コイツで・・・・!!」

 

ヴィータはグラーフアイゼンを高く振り上げ、ディバインバスターを撃った直後の硬直で動けないなのはに振り下ろす。

なのはは右手から魔法陣を展開して、それを防御するも吹っ飛ばされる。

しかし、攻撃を当てたはずのヴィータは苦い表情を浮かべていた。

 

(手応えが少ねえ・・・。コイツ、ギリギリのところで後ろに飛びやがったなっ!?)

 

ヴィータは自分から吹っ飛ばされたなのはを追撃しようとするも、桜色の光弾が突如としてヴィータの目の前をかすめる。

出鼻をくじかれたヴィータは思わずその場で急ブレーキをかけた。

 

(あのヤロー・・・吹っ飛んでいる間にもシューターを動かせるだと・・・!?なんちゅうヤローだ・・・!!)

 

ヴィータが驚いている間になのはが飛ばしていたアクセルシューターはヴィータの周囲を囲むように飛び回る。

 

「ちっ・・・我慢比べって訳か・・・。」

 

まともに動けなくなったヴィータが悔しそうな表情をすると自身の周囲に見るからに硬い多面体のバリアを張った。

 

(・・・パンツァーヒンダネスでどこまで凌げる・・・?割とヤベェなこの状況・・・。)

 

ヴィータの攻撃を敢えて自分から吹っ飛ぶことで距離をとったなのははビルの外壁に着地するように足をつける。

 

「な、なんとかうまく行った・・・。まともに防いだら衝撃で手がやられちゃうから・・。」

 

自分でもかなりギリギリだった自覚はあるのか、ホッとしたような表情を見せる。しかし、それも一瞬ですぐさま気を引き締める表情を見せるとヴィータの方向に視線を向ける。障壁は見るからに硬そうだが、それでめげてしまうなのはではない。

 

「やるよ!!レイジングハート!!」

 

なのははレイジングハートにすぐさま攻撃指令を下した。

 

 

 

 

 

 

(さて、はやてちゃん、というかあの子の言った指定ポイントはこの辺りだったけど・・・。)

 

なのは達が戦っている舞台である管理局員が展開した結界から離れたビルの屋上にシャマルはいた。

その腕には闇の書が抱えられていた。

 

(本当に来るのかしら、その仮面の男という人物・・・。でも事実としてシグナムが正体はわからないけど、誰かにつけられていたって言っていたし・・・。)

 

シャマルは一人、不安気な表情を浮かべながら結界を見つめていた。

ヒイロがはやての自宅に来た時、シャマルははっきり言って、ヒイロのことはあまり信用はできなかった。言葉では自身の命を賭けてまでこちらの信用を取ろうとしたが、行動にそれを起こすのはとても難しい。

ヒイロが管理局に自分達の居場所を話して、管理局員が自分達を拿捕しに来るのではないのかと疑っていた。

しかしーー

 

(・・・でもそんなことは一度もなかった。結構期間はあったはずだけど、結局管理局員が来ることはなかったわ。)

 

管理局員がはやての家の扉を開けることは一度たりともなかった。その事にシャマルはヒイロは本当に伝えていないことを何となくだが察した。

 

(・・・あくまで協力者、というのは本当なのかしらね。魔力もない人間が魔導士にはなれないはずだし。)

(でも、あの筋力量はどうかと思うわ。シグナムを腕の筋肉だけで圧倒する人、それも男の子ってーー)

 

シャマルは以前ヒイロに腕をへし折られたことを思い出しながら苦笑いを浮かべる。

骨折は治癒魔法をかけることで治ったが、へし折られた事実は消えることはなく、シャマルの記憶に色濃く残っていた。

ヒイロの異常な筋力に自然と考察を思い浮かべていると、シャマルの背後から何かを構える音が聞こえた。

 

「捜索指定ロストロギアの所持、および使用の疑いで貴方を逮捕します。」

 

シャマルの背後を取った人物はクロノであった。クロノはシャマルに自身のデバイスである『S2U』を向け、投降を呼びかける。

 

「抵抗しなければ貴方には弁解の機会はある。同意するなら武装の解除を。」

(・・・・しまった。思案に耽っていたとはいえ背後を取られるなんて・・・。でも多分だけど、はやてちゃんから聞いた話のわかる人物って言うのはこの子よね?)

 

シャマルははやてを通してヒイロから言われた人物を後ろにいるクロノであると推測はする。しかし、推測である以上、確信へと繋がることはないためシャマルは何も行動を起こせなかった。

 

(どうしよう。この子でいいのかしら。)

 

その時、思案に耽っていながらもクロノに背後を取られた時から改めて気を張り詰めたシャマルがある音を聞き取った。

それは何者かが、この屋上の地面を踏みしめる音であった。

咄嗟に音源であろう人物を脳内でシミュレートする。

シグナム、ヴィータ、ザフィーラは結界内にいるため自動的に排除。

であれば、消去法で残されるのは、例の仮面の男しかない。

 

「クラールヴィントっ!!」

 

シャマルの両手の人差し指と薬指にはめられた青色と緑色に輝く指輪が光をあげると宝石の部分が外れ、そこから出される魔力で編まれた紐のような線が指輪と繋がり、振り子となったクラールヴィントの四つの光がクロノに奇襲を仕掛けようとした人物、仮面の男に襲いかかる。

 

「何っ!?」

 

およそ気づかれるとは思ってなかったのか、はたまた援護中心であるシャマルが物理的な攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったのかは定かではなかったが、出鼻を挫かれる形となった仮面の男はクロノへの奇襲を辞め、距離を取った。

 

「・・・どういうことだ?」

 

シャマルが自分を庇ったと思われる行動をとったことにクロノはシャマルに懐疑心を露わにする。

ヒイロから予め仮面の男について警告されていたクロノだったが、よもや敵であるシャマルに援護されるとは思ってはいなかった。

 

「・・・詳しくは言えません。ですが、今回行動を起こしたのは、あの正体不明の男をこの場に誘き寄せるためのものです。」

「・・・・貴方達の仲間ではないということなのか?」

「・・・これまで幾度となく転生を繰り返してきましたが、あのような男は一度たりとも。」

 

シャマルがクラールヴィントを周囲に展開しながら仮面の男と対峙する。

クロノはその様子を少しの間見つめていたが、程なくすると軽く息を吐き、先ほどまでシャマルに向けていた『S2U』を仮面の男に向ける。

 

「つまり、今は協力してくれるということでいいんだな!?」

「目的は貴方と同じはずです。騎士として後ろから撃つということはしないことを誓います。」

「・・・・・わかった。貴方の言葉を信じます。」

 

シャマルと一時的な協力関係を持ったクロノは仮面の男に鋭い視線を向ける。

その鋭い視線を向けられ仮面の男は明らかに狼狽したような様子を見せていた。

 

「お前が仮面の男だな?その仮面の下の素顔、曝け出してもらうよ。」

「貴方の目的は分かりませんが、少なくともあの子(はやてちゃん)に取って有益になるとは思えません。最低限、その仮面は外させてもらいます。」

「くっ・・・!!」

 

 

仮面の男が狼狽えているうちにクロノは先手必勝で『S2U』を構えながら突撃し、接近戦を仕掛ける。

 

「やぁぁっ!!」

 

振り下ろされる『S2U』を仮面の男は魔法陣を展開することで防御する。

 

「この程度・・・・っ!!」

 

仮面の男はクロノの攻撃を防御しきると一度距離を取ろうとする。

 

「逃がさないよっ!!ここで捕らえさせてもらうっ!!」

 

クロノがデバイスの高速詠唱機能を用いて、自身の周囲に白銀の魔力刃、『スティンガーブレイド』を展開させると仮面の男に向けて、掃射する。

 

「援護しますっ!!風よっ!!」

 

シャマルの一声がかかるとクロノが射出した刃に緑色の風が付与される。風の力を得た刃はさらに速度を上昇させながら仮面の男に迫り来る。

 

「制御が難しくはなりますが、いけますよね?」

「その程度であれば、なんら問題はない!!ありがとう!!」

 

シャマルの援護魔法により爆発的な加速を得たスティンガーブレイドは逃げようとする仮面の男を捉える。仮面の男は再び魔法陣を張ってその身を守るが、加速を得た刃に魔法陣は徐々にひび割れていく。

 

「やはり2対1では不利か・・・!!」

 

状況を不利だと思ったのか仮面の男は懐からカードを取り出した。ヒイロからある程度仮面の男について聞いていたクロノはそれを転移して逃げるつもりなのだろうと察する。

 

「魔力刃をあの仮面の男へ向けてください!!それと、バインドの準備を!!」

 

シャマルの突然の申し出にクロノは驚いた表情を浮かべるが、反射的に動かしていたスティンガーブレイドを全て仮面の男に向ける。

 

「風よっ!!舞い上がれっ!!」

 

シャマルが魔力を込めるとクロノのスティンガーブレイドに付与されていた風の力が倍増し、ただでさえ爆発的だった加速がさらなる加速を得る。

その速度は仮面の男の魔法陣にぶつかると粉々に粉砕されてしまうほどであった。

しかし、その分威力は凄まじく、刃が粉砕されるものの仮面の男が張っていた魔法陣を打ち砕く。

 

「何っ!?」

「今ですっ!!」

「恩にきる!!」

 

クロノが『S2U』を振るうと仮面の男の足元に魔法陣が展開され、そこから相手を捕らえるためのバインドが出される。しかし、クロノが展開したバインドは少々特殊な形状をしていた。

通常であれば、バインドの形状は空間に対象の四肢や体を固定するタイプや鎖型のチェーンバインドが普通である。

だが、クロノが仮面の男に用いたバインドは先ほど挙げた二つとは違う縄状のバインドであった。

魔法名『ストラグルバインド』 このバインドはただ相手をバインドするだけではない。

 

「う、ぐぅああっ!?」

 

このバインドに縛られた仮面の男は突如として苦しみだす様子を見せる。

突然の出来事にシャマルは思わずそのバインドの発動者であるクロノに視線を向ける。

 

「・・・あまり使い所のない魔法だけど、こういう時には役に立つ。」

 

クロノは静かにそれでいて悲しそうに呟く。

努力(ストラグル)の名が刻まれたこのバインドは父を亡くしながらも努力を続けてきたクロノが自ら編み出した魔法だ。その効果は対象にかかっている強化魔法を軒並み解除させる点にある。それは対象にかかっている変身魔法も例外ではなく、しばらく仮面の男が苦しむ様子を見せていると徐々にその変身魔法が剥げてきているのか、その正体が陽の目を見るかと思ったその時、シャマルとクロノに縛り付けられるような感覚が現れる。

 

「こ、これは・・・っ!?」

 

二人に突如として青いバインドがかけられる。シャマルが動揺している様子を見せている中、拘束されている仮面の男の側に全く同じ姿形を持ったもう一人の仮面の男が降り立った。

現れた男は拘束されている仮面の男のバインドを破壊すると、すぐさまクロノとシャマルから離れていった。

 

「・・・・追わないんですか?」

「・・・逃しはしないさ。だけど、あの二人相手だと僕じゃ少しばかり力不足だ。情けないけど、彼女らは僕の師匠なんだ。」

 

シャマルの問いかけにクロノが乾いた笑顔を浮かべる。正体がおよそ分かっているかのような口ぶりにシャマルは怪訝な表情を浮かべる。

 

 

『・・・・・苦戦しているようだな。』

 

突然結界内にいるはずのヒイロからウイングゼロの通信機能を介して、クロノに念話という形で通信が入る。ヒイロの自分達の現在の状況を把握している口ぶりにクロノは一抹の期待を寄せながら質問する。

 

「・・・君、この状況が見えているのかい?」

『・・・一応な。だが、俺がいるのはお前と正反対のところだ。手を届かせるのは無理だ。』

 

期待をかけたつもりだったが、それは叶わなかった。ヒイロの言葉にクロノは少々残念そうな表情を浮かべる。

 

「そうか・・・ならまたの機会にするよ。正体はわかったからね。」

『・・・俺は手が届かないと言っただけだぞ?』

「え・・・?」

 

 

 

「・・・今から奴らを狙撃する。」

『えっ!?ちょっとまーー』

「防御魔法と回復魔法を用意しておけ。奴らを現行犯で捕らえる必要がある。さらに言えば死んでもらっては困るからな。」

 

それだけ伝えるとヒイロはクロノとの念話を強制的に終了する。

ヒイロはクロノがいるポイントとは正反対の結界の端にいた。できる限り仮面の男を油断させるためだからだ。

ヒイロはその右手に身の丈程ある無骨なライフル銃、『バスターライフル』を手にして、照準をクロノ達がいる方角へと向ける。

その照準に迷いなどは微塵もなかった。

 

「ゼロ、奴らの動きを追え。」

 

ゼロシステムを起動し、仮面の男の動向を見る。ゼロが見せる未来に基づいて、ヒイロはバスターライフルの銃口を僅かにずらす。

 

「俺にははっきり見える。俺の敵が。」

 

ヒイロは少し目を閉じるとすぐさまゆっくりと瞼を開ける。

 

「現空域にいる全ての魔導士に告げる。忠告は一度きりだ。よく聞いておけ。直ちに戦闘を中止し、射線を開けろ。従わないのであれば、命の保証はしない。」

 

結界内にいるなのは達とシグナム達守護騎士にそう告げるとヒイロは静かに視線の遥か先にいる仮面の男に照準を向ける。

 

「ターゲット確認。目標、ギル・グレアムの使い魔、リーゼロッテおよびリーゼアリア。」

 

バスターライフルの銃口から光が輝き始める。その光は徐々に大きくなっていきーー

 

「攻撃開始……!!」

 

ヒイロがバスターライフルのトリガーを引くと銃口から山吹色の閃光がほとばしる。

その光は戦場と化した海鳴市の空を一直線に貫きながら目標へと飛んでいく。

 




最初に言っておきますが、猫姉妹はとりあえず死にません。
死ぬほど痛い思いはしてもらいますが(暗黒微笑)
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