魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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前回と比べてだいぶ文字数少ないけど、許して・・・・。
あれは書けるだけ書いてしまった結果なんじゃあ・・・・。


第19話 すれ違う運命

『ええっ!?ヒイロさんが守護騎士と繋がっているかもしれないってっ!?』

 

なのはは学校で授業を受けながら届いてきた念話の内容に驚きの表情を隠さないでいた。

 

『あの子に限ってそんなことはないって思いたいんだけど・・・!!闇の書の詳細を聞いたら突然ヒイロ君が飛び出していっちゃって・・・!!』

 

なのはの念話の相手であるエイミィが困惑気味ながらもなのはとの念話を続け、ヒイロが聞いた闇の書の詳細をなのはとフェイトに伝える。

 

『クロノ君とリンディ提督はまだ動けないし、君たちしかヒイロ君を探せるのはいないのよー・・・。』

『・・・・わかりました。ですが、今日は流石に難しいかと・・・。』

『うん・・・。今日はちょっと予定があって・・・。』

 

なのはとフェイトは苦い顔を浮かべながらエイミィにその予定を話した。すずかが図書館で知り合った友人が突然倒れてしまい、その連絡を受けたすずかがなのは、フェイト、アリサの四人で放課後見舞いに行かないかと誘われてしまったのだ。

 

『うわっちゃー・・・。それは断れない・・・・。わかった。なのはちゃんたちはそっちを優先して。ヒイロ君は・・・こっちで頑張って探してみる。』

 

顔を覆うような仕草をしながらしょうがないと割り切るエイミィを節目になのはたちの念話は終了した。

 

 

 

 

(・・・・・・妙だ。人の気配が感じられない。)

 

ヒイロは闇の書の詳細、主にナハトヴァールについてクロノから聞いた時、ヒイロの中で最悪の未来を思い描いていた。

それは魔力の蒐集を怠った結果、ナハトヴァールが勝手に起動し、魔力を所構わず蒐集することだった。

それを警戒して、ヒイロはできる限りの全速力ではやての家へと赴いたが、はやての家からは人の気配は感じられなかった。

それどころか守護騎士の面々もいないように感じられる。

 

(はやてが出かけたなら最低限、ザフィーラはいるはずだ。奴は基本、犬の形態でいるようだからな。だが、ソイツすらいないとなればーー)

 

ヒイロははやての家の前で思案に耽る。これまで見聞きした情報を整理し、はやての身に起こった事を考え出す。

 

『実をいうとな。ここ最近心臓辺りが突然激痛に襲われることがあるんよ。心筋梗塞とかそのあたりかと思っとったんやけど、あながち間違いじゃあらへんやな。』

『闇の書の浸食がそこまで進んでいるということか。』

 

 

「・・・・・海鳴大学病院か。」

 

 

ヒイロは頭の中に叩き込んでおいた地図から海鳴大学病院へのルートを導き出すと颯爽と踵を返して()()()()()()()()()()その病院へと向かう。

 

(はやてが家に居ないのは、闇の書の浸食が進んだ影響で倒れ、シグナム達が病院へ送ったからか・・・。)

 

闇の書の情報をもらったときこそ、動揺はしたが、移動している途中で冷やした頭で冷静さを取り戻す。

ヒイロがしばらく海鳴市を駆け抜けていくと、それなりに時間はかかったが、ヒイロは息一つ乱した様子すら見せずに海鳴大学病院へとたどり着く。

 

「ここか・・・・。」

 

病院の自動ドアをくぐり抜けるとヒイロは病院の受付に近づく。

 

「この病院に八神はやてという少女が担ぎ込まれていないか?」

 

ヒイロがそう尋ねると受付の女性は「少々お待ちください」と言って確認の作業に移った。

程なくして受付の女性がヒイロに視線を戻すとはやてが担ぎ込まれているという旨を話した。

 

「ご確認しますが、関係性をお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 

おそらくそのように対応マニュアルに書いてあったのだろう、受付の女性はヒイロにはやてとの関係性を聞いてきた。

それにヒイロは少しばかり理由を考える。

 

「・・・・知り合いだ。親戚から倒れたという連絡を聞いた。」

「わかりました。八神様の部屋番号はーー」

 

受付からはやてのいる病室の部屋番号を聞いたヒイロはすぐさま病室へと向かった。

エレベーターで階層に着き、はやての名前が入った名札がつけられた扉を開けはなつ。

 

その扉の先には病院のベッドの上で静かに眠っているはやての姿があった。だが、その表情はどこか苦しそうだ。ヒイロは咄嗟にはやての口元に手をかざす。

 

「・・・・生きてはいるか。だが、かなり危険な状態になったのは事実のようだ。」

 

はやてがしっかり息をしていることを確認するとヒイロは心なしか安心したように軽く息を吐いた。

だが、いくら病室を見回してもいつもはやての側についていたはずの守護騎士達の姿が見当たらなかった。

そのことがヒイロに少なからず違和感を覚えさせる。

その違和感の正体を探るべくくまなく病室を探してみるとヒイロはあることに気づいた。

 

「・・・・・・闇の書も見当たらない・・・・?」

 

闇の書も見当たらないのだ。普通であれば緊急だったため、家に置いてきたで考えを打ち止めることもできるが、はやて曰く闇の書にはある程度の自律機能が入っている以上、闇の書が主から離れているとは考えにくい。

 

それにも関わらずはやての手元に無いということはーーー

 

「・・・・・・。」

 

ヒイロは無言で背中に背負っていたナップザックを弄ると、在るものを取り出し、寝ているはやての側にそっと置いた。

そして、その手をそのままはやての頭に持っていくと柔らかい手つきで彼女の頭を軽く撫でた。頭部にかけられた心地よさからか、寝ているはずのはやての表情は心なしか柔んだように見える。

 

「・・・・お前の代わりに奴らを止めてくる。俺のミスもあったが、やはりアレは完成させてはならないものだからな。」

 

優しげな口調ではやてに語りかける。その時のヒイロの表情はいつもの無表情ではなく、彼の元来の性格である優しさが現れていた。

 

ヒイロは寝ているはやてを一目すると、病室を後にする。

音も立てないように扉を閉めるとなるべく看護師や医師に怪しまれない、なおかつ迅速なスピードで廊下を進んでいく。

そして、エレベーターを使い、パネルが示している病院の最上階へと向かう。エレベーターがその階層に到着したことを知らせる音がエレベーターの狭い空間で響き、横開きのドアが開く。

 

それと同時にヒイロの身体が振動を感じ取った。歩きながらもその振動の正体を探るとその正体はリンディから押し付けられた携帯電話であった。

 

その携帯は何者からかの通話を知らせるようにバイブ音を響かせながらその画面にある人物の名前を映し出していた。

 

その人物はフェイトであった。

 

ヒイロはフェイトからの突然の通話に眉ひとつさえ動かさずに携帯を操作すると通話する部分を耳にあてる。

 

『ヒイロさん?よかった・・・・。出てくれて。今どこに居るんですか?』

 

携帯からフェイトの安堵したような声が聞こえてくる。ホッとしている表情が目に浮かぶ中、ヒイロは歩みを止めることはなく、病院の非常階段へと進んでいく。

 

「・・・・海鳴大学病院だ。要件は俺が突然飛び出した理由を聞き出すためか?」

『それも、ない訳ではないですけど。ただ、心配で・・・・。』

 

ヒイロが電話をかけてきた理由を尋ねるとフェイトは少しばかり感情のこもった声でそういった。

 

「まぁいい。それで、理由だったな。」

『・・・はい。やっぱり教えてくれませんか?』

「・・・・・どのみちお前達も知ることになる。それが早くなるか遅くなるかの些細な差異だ。」

 

フェイトからそう聞かれ、ヒイロは少しばかり逡巡するとフェイトに返答する。

少しばかり回りくどいが、ヒイロはフェイトに自分が拠点を飛び出した理由を話すつもりなのだ。

 

『えっと・・・教えてくれるんですよね?』

「ああ。確認するが、クロノかエイミィから闇の書、いや、夜天の書のことは聞いているな?」

『はい。少し前に念話でエイミィから・・・。掻い摘んで言うと元々は健全な魔導書だった夜天の書はいくつもの悪意ある改造を受けて、あのような危険なロストロギアに成り果てた、と。』

 

ヒイロはフェイトとの通話を続けながら病院の非常階段を登っていく。あまり周囲に人が寄り付かない区画なのか、ヒイロの階段を踏み鳴らす音だけが響く。

 

「俺が拠点を飛び出した理由はその改造された部分、クロノがナハトヴァールと呼んでいた部分だ。」

 

ヒイロはフェイトにナハトヴァールが魔力の蒐集を怠ると主を差し置いて勝手に暴走を始める危険性を孕んでいることを伝える。

しかし、ヒイロがそれで病院に赴いた理由には足り得ないため、フェイトは怪訝な表情を浮かべる。

 

『それだと、ヒイロさんが病院へ向かった理由にはーー』

「俺は闇の書の主を知っている。名前は八神 はやて。すずかが言っていた図書館で会ったという車椅子の少女だ。そいつが今病院に入院しているから俺はここにいる。」

 

フェイトの言葉を遮ってまで言ったヒイロの言葉は彼女を数瞬押し黙らせる。立て続けに重大な情報を明らかにしてきたため、フェイトの脳内で処理をするのに時間がかかっているのだ。

 

『・・・・いつの間に・・・・一体、いつから、ですか?』

「グレアムの使い魔を捕らえた時には既に知っていた。」

 

落ち着きを取り戻したフェイトがそう聞くとフェイトの中である言葉が思い浮かぶ。それはエイミィが念話を通して言っていた、ヒイロが守護騎士と繋がっているかもしれないと言う言葉だった。

 

『私達を・・・騙して・・・いいえ、利用していたんですね・・・?』

「有り体に言えばそうなるな。」

『どうして・・・・!?なんで教えてくれなかったんですかっ!?』

 

携帯からフェイトの荒くなった声が響いてくる。無理もないだろう、いくらそれなりに信頼を寄せていたとは言え、自分だけ重大な情報を掴んでおきながら、それを伝えないという一種の裏切り行為を働かれれば、怒るのも無理はないだろう。

 

「はっきり言う。お前達ではターゲットに勘付かれる可能性が高かったからだ。」

『・・・・ターゲットって言うのは、グレアムの提督の使い魔ですね・・・・?』

「ああ。お前達にその情報を伝えれば、どこかで必ず甘えが出てくる。戦う理由なんてない仮にお前達がそんなことを思っていれば、場数を踏んでいる奴らはそれを機敏に感じ取ってくる。お前達ではどうやっても足らん、経験の部分だったからな。」

『そ、それはーー』

 

フェイトがヒイロの言葉に言い淀んだ。その隙をついてヒイロは追撃を行う。

 

「守護騎士はいくつもの転生を重ねている。経験も豊富だ。腹芸も容易いだろう。そう言った面では奴らの方が信頼はできる。」

『・・・・・・ヒイロさんは』

 

フェイトの言葉がヒイロの名前を呼んだところで一度途切れる。ヒイロはそのことに少しばかり疑問を抱く。

 

『ヒイロさんは・・・・私達を信頼してないんですか・・・・?』

 

どこか悲しげな声色でフェイトはヒイロにそう尋ねた。そのタイミングでヒイロは非常階段を登りきり、病院の屋上へと続く扉の前で佇む。

 

「・・・・・お前達は純粋すぎる。良くも悪くもな。」

 

ただそれだけをフェイトに伝え、ヒイロは屋上の扉を開けはなつ。

屋上ではシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラがヒイロに背を向けて立っていた。

 

「やはり来たか。しかし、存外に早かったな。主が倒れたとは伝えてなかったのだが。」

 

シグナムが背を向けたまま言葉を紡ぐ。それはまるでヒイロが来ることを予見していたようであった。

 

「情報を仕入れたタイミングが良かったからな。」

『ヒイロさん・・・・?』

 

シグナムの言葉にヒイロがそう答えるとフェイトは状況を掴めていないため怪訝な声を上げる。ヒイロはそれを通話状態を維持しながらも無視し、シグナムの背中に視線を集中させる。

 

「なら、我々のこの行為を見逃してはくれないだろうか?主はもう限界だ。一度は魔力の蒐集を止めたが、それがこのザマだ。」

「・・・・魔力の蒐集を止めさせた要因は俺だ。はやてが倒れた一因でもある。だが、やはり完成させてはならんことは明白だからな。」

 

ヒイロはシグナムに鋭い視線を向けながら静かに告げる。

 

「今回もお前達の邪魔をさせてもらう。お前達の行為は無意味に他ならんからな。」

「無意味だとっ!?貴様は無意味と断じるのかっ!?」

 

それまでヒイロに背中を向けていたシグナムが声を荒げながらヒイロに振り向いた。その表情は険しく、そして憤怒にまみれていた。

 

「主はただ我々と静かに過ごしたいだけだった!!これはその主の願いを叶えるためのものだ!!その尊い願いを叶え、そして明日へ繋いでいきたい!!ただそれだけだ!!」

 

シグナムは己のデバイスであるレヴァンティンをヒイロにその切っ先を向ける。

さながらそれは最終通告であり、ヒイロの返答によってはすぐさま攻撃に移行するという意思表示でもあった。

 

「お前達がやろうとしていることはただ現実から目を背け、問題を先延ばししているにすぎん。そして、その行為が行き着く先は破滅だけだ。お前達のやっている行為は無意味だっ!!」

 

シグナムの言葉にヒイロは感情のこもった声で答える。シグナムはそれに歯噛みする表情を浮かべる。もはや対話は不可能であろう。お互いのトリガーは既に指が添えられている。戦闘に移行するのは秒読み段階に入っている。それをヒイロは既にわかりきっていた。だが、それでも、ヒイロは敢えてこの言葉を口にする。

 

「お前達が戦えば戦う程、はやての願いは無駄になっていく!!それはお前達も気づいているはずだ!!」

 

「今ここにある世界を信じてみろっ!!」

 

「っ・・・・・わかったようなことを、言うなぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

その言葉を皮切りにシグナムは怒りを露わにしながらヒイロに向かって突進し、レヴァンティンの刃を振るう。

それをヒイロは片腕で己の体を支えながらバク転することでシグナムの攻撃を躱すと同時に距離を取る。

 

「フェイト!!」

『ヒイロさん!!さっきから何が起こっているんですかっ!?』

「来るなら早く来い。守護騎士の四人相手では流石に加減が効かんからな。」

『ヒ、ヒイロさん!!待ってくださーー』

 

フェイトとの通話を切るとヒイロはウイングゼロをその身に纏い、自身も戦闘態勢へ移行する。

ヒイロはウイングスラスターの根元のラックからビームサーベルの柄を引き抜くと、その先端部分から緑色の光刃を出した。

 

「もう我々には時間がないんだ・・・!!お前が立ちふさがると言うのであれば、押し通るっ!!」

 

剣を構えたシグナムを筆頭にヴィータとザフィーラが接近戦を仕掛けてくる。

シャマルは何か言葉を紡ぐと病院の屋上とその周囲を取り囲むかのように結界が施される。

ヒイロはウイングゼロの翼を羽ばたかせ、上空へ飛び上がるとその結界が想像より狭く展開されていることに気づく。

 

「っ・・・!!こちらの機動力を満足に発揮できないようにしたか・・・!!」

 

結界自体を破壊することはヒイロにとって容易い。しかし、それをシグナム達もわかっているのか、ヒイロにバスターライフルを握らせないように同じように上空へ飛び上がり、接近戦を仕掛けてくる。

 

「てぇああああっ!!」

「ちっ!!」

 

シグナムが振るったレヴァンティンをヒイロはビームサーベルで受け止める。

お互いの剣がぶつかりあった部分から紫電が発生し、二人の顔を照らした。

 

 

 

 

『なのはちゃん、フェイトちゃん!!結界の反応を検知したよ!直ぐに迎える!?』

『場所はっ!?』

 

念話を通して、なのはとフェイトにエイミィの焦る声が響く。フェイトが咄嗟に場所を尋ねるとエイミィは海鳴大学病院だと答えた。

 

「っ・・・・!!」

「フェ、フェイトちゃんっ!?待って!!」

 

フェイトは険しい表情を浮かべると途中まではやてのお見舞いに行くとして同行していたすずかとアリサを置いて駆け出した。なのはも呼び止めながらもフェイトの後を追う。

 

「ど、どうしちゃったのよ・・・。二人とも。」

「何か、あったのかな・・・・?」

 

置いていかれた二人はなのはとフェイトの動向を疑問視するしかなかった。

 

「フェイトちゃん!!突然どうしたのっ!?さっきの電話もそうだったけど、何かあったのっ!?」

 

なのはは海鳴市を疾走するフェイトの後を追いながら、突然走り出した理由を聞く。フェイトは苦い表情を浮かべながらなのはにこう告げる。

 

「あの病院には・・・ヒイロさんがいる・・・。ヒイロさんは今、守護騎士のみんなと戦っている・・・!!」

「み、みんなって・・・シグナムさんやヴィータちゃんとっ!?」

「多分、映像で見た四人みんなと・・・。」

「は、早く行かなきゃっ!!どうしてそうなったのか、わからないけど!!」

 

なのはとフェイトはヒイロと同じように海鳴大学病院へと向かう。

なのはは守護騎士達が、フェイトはヒイロが、それぞれの気がかりとなっていた。

 




ヒイロが割と過酷なミッションに取り組んでいく・・・・・。

・守護騎士四人の完全な無力化
・もちろん殺しちゃダメ
・それに伴いツインバスターライフルの使用も不可能

実質ビームサーベルとバルカンだけでどうにかしろ。ナニコレェ・・・・?


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