魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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ようやく個人的に一番書いてみたいと思っていたシーンまで漕ぎ着けそうです・・・・。


第23話 夢惑う戦士たち

「紫電よ!!疾れ!!!」

 

ナハトヴァールが腕を振り下ろすとその動きに呼応するように赤紫色に光る槍がヒイロ達に雨霰のごとく降り注ぐ。

あっという間にヒイロ達の周囲を爆煙が包み込むが、ヒイロは超人的な反応速度、フェイトは持ち前のスピードでそれぞれ槍の雨から抜け出した。

しかし、それはヒイロとフェイトのように速さで勝負するタイプだからできることであった。スピードで二人に劣るなのははその雨から抜け出すことが出来ずに魔法陣を展開することで防御する。

 

なのはの視界が爆煙に包まれ、視界不良に陥っている中、ナハトヴァールが左腕のパイルバンカーのように形が変化した籠手を構えた。

次の瞬間、爆発的な加速を持ってなのはが取り残されている爆煙の中へと突撃を開始する。

 

「・・・・!!」

 

ヒイロが歯噛みしている間にナハトヴァールは左腕を後ろに引き、力を込める。

狙いはもちろん、爆煙に一人取り残されたなのはだ。

 

「っ……くっ!!」

 

爆煙による視界不良の中、ナハトヴァールの影を視認したなのはは咄嗟に防御用の魔法陣を展開する。なのはの防御力はフェイトの実力を持ってしても破ることは難しい。まさに要塞のような硬い防御を有していた。

 

「はぁぁぁっ!!」

「ーーーっああっ!?」

 

しかし、ナハトヴァールはそのなのはの魔法陣を紙切れのように打ち砕く。それだけでも眼を見張るものだったが、ナハトヴァールはパイルバンカーの先端から闇に染まった光線を撃ちだした。密接した状態からの闇の光線はなのはの体を貫き、衝撃とともになのはは吹っ飛ばされ、その身を道路に打ち付ける。

 

「なのはっ!!」

「フェイト、待てっ!!」

 

親友の危機にフェイトはバルディッシュをサイズフォームへと変形させ、ナハトヴァールへと肉薄する。ヒイロの静止の声は届かずフェイトはその道すがらカートリッジを装填し、鎌状の金色の刃を発生させながらナハトヴァールにバルディッシュを振り下ろす。

 

ナハトヴァールは自身に振り下ろされるバルディッシュの刃に向けて手をかざし、魔法陣で刃を押しとどめる。

フェイトは防御されたにも関わらずそのまま押し切るようなことはせずに一度距離を取り魔法陣に防がれない別角度から攻撃を仕掛ける。

ナハトヴァールもフェイトのスピードに順応し、またそれを防ぐ。

何回か同じようなやりとりが続いていく。いつしか二人の軌道は複雑に絡み合うものとなっていった。

そうなってしまった以上ヒイロでもフェイトのカバーに入ることは難しい。

接近戦のカバーに入るにはする側、される側の両者にある程度の信頼関係が築かれていなければ難しい。

さらに言えば今のフェイトは親友の危機にやや思考回路が狭まっている。

そんな状態の彼女にヒイロが援護に向かってもあらぬ危険を引き起こしてしまう可能性も否定はできない。最悪、二人同時にかたをつけられてしまうことだってある。

 

「ちっ・・・・。」

 

援護は難しい。そう判断したヒイロはナハトヴァールの攻撃で吹き飛ばされたなのはの安否を確認する方向に思考の舵を切った。

幸い、さほど離れていない位置になのはが横たわっていた。

それを確認したヒイロはすぐさまなのはのバックアップに向かい、彼女の側へ駆け寄る。

 

「無事か?」

 

ヒイロがそう確認すると痛みからかうめき声をあげながらだったが、なのははしっかりと頷いた。

 

「意識がはっきりしているならそのまま耳を傾けていろ。ナハトヴァールの防御力はヴォルケンリッターのものとは段違いに硬い。奴の防御を抜くのは至難の業だろう。」

 

ヒイロは軽く視線をナハトヴァールへ向ける。フェイトとのドッグファイトは苛烈さを増しており、海鳴市の空で何遍もぶつかり合い、その度に魔力と魔力のぶつかり合いからなるスパークが生まれ、空を彩っていた。

 

「突破するには文字通りに奴に防御を貫くほどの火力をぶつけるのが常套手段だ。俺がやってもいいが、ゼロに非殺傷設定が存在しない以上、はやてが死にかねん。」

 

ヒイロはウイングゼロのバインダーに収納されてある二丁の大型銃、『ツインバスターライフル』の使用を考えていた。

ヒイロがかつていたアフターコロニーの宇宙に存在していた居住用コロニー。それをたった一度の照射で破壊せしめるほどの火力を持つ代物であったがそれの使用はできずにいた。

 

第1にはやて自身への被害の度合いが未知数であったことだった。はやてが光の柱に包まれていく様子を目の前で見ていたヒイロは彼女がナハトヴァールへと変貌していく様子を垣間見ることができた。

光の柱に包まれたはやては徐々にその体を膨張、というより成長させていったのだ。そしてある程度体が成長したところを見計らい、はやての整った茶髪は銀髪へと変貌していくなどの変身をはさみ、ナハトヴァールへと姿を変えた。

つまるところ、ナハトヴァールの肉体ははやてを媒介にしている可能性が高いのだ。そんなところにコロニーを破壊せしめる火力を撃ち込んでしまえば、闇の書の暴走は止められてもはやての死は避けられなくなるだろう。

 

「魔力攻撃で火力が高いのはお前しかいない。俺とフェイトで奴の気を逸らしておく。その間に立てるようになれば戦闘には復帰せず砲撃の機会を伺っていろ。」

 

ヒイロはそういうとなのはに背を向けながらビームサーベルを抜き放つ。

 

「最後にこれだけ言っておく。俺とフェイトに何が起こっても動揺はするな。」

 

ヒイロは翼を羽ばたかさせ、ナハトヴァールへと接近する。

なのはは苦しげな表情を浮かべ、荒い息を零しながらもなんとか立ち上がるとレイジングハートを支えにしながら静かに砲撃の機会を伺う。

 

「やぁぁぁぁぁっ!!」

「はぁっ!!」

 

フェイトのバルディッシュとナハトヴァールの左腕のパイルバンカーがぶつかり合う。スパークが生じながらもフェイトはバルディッシュでいなしながらナハトヴァールを加速のまま斬り抜けようとし、力を込める。

 

「っ!?」

 

しかし、フェイトがいくら力を込めてもバルディッシュは硬く固定されたように微塵も動かなかった。

不具合か何かが生じたのだろうか?フェイトはすぐさま原因を洗い出す。

目に留まったのはバルディッシュの刃を受け止めている左腕のパイルバンカーであった。

さながら生き物の口のような意匠が施されたナハトヴァールのパイルバンカーはその口をバルディッシュの刃に突き刺し、フェイトが逃げられないようにしていた。

フェイトがそれに気づいた時には遅く、ナハトヴァールが力任せに左腕を振り回し、それに持っていかれるように空中に放り出される。

体勢を整えようにも既にナハトヴァールがフェイトに向けて光弾を撃ちだしていた。魔法陣を展開したり、避ける余裕もないフェイトはバルディッシュの棒の部分を突き出した。

光弾がフェイトに一直線に向かって進んでいく。その光弾がフェイトに直撃する直前、一陣の風がフェイトの前を駆け抜ける。

その風はナハトヴァールが放った光弾を真っ二つに斬り裂いた。純白の白い翼を伴った風の正体はウイングゼロを身にまとったヒイロに他ならなかった。光弾を真っ二つに斬り裂いたのは手にビームサーベルが握られているため、それを振るったのだろう。

 

「ヒイロさん!!」

 

フェイトが感謝を伝えるように表情を明るいものに変えながら旋回し、方向転換を行なっているヒイロを見つめる。

 

「お前は突出しすぎだ。 わざわざ数の利を捨てて戦うのはただの馬鹿がやることだ。」

「あの…なのはは!?」

「アイツには砲撃に専念するように伝えた。」

 

フェイトの側に近づいたところでスピードを落としたヒイロは彼女の隣で相対するナハトヴァールを見据える。

 

「現状、なのはの砲撃魔法が奴に刺さる可能性のある唯一の攻撃だ。俺とお前で奴に近接戦闘を仕掛け、なのはが砲撃を撃てるだけの隙を作り出す。いいな?」

「はい。わかりました。」

 

ヒイロが先頭、その背後から追うようにフェイトが続いていく。ナハトヴァールがヒイロの間合いに入ると手にしていたビームサーベルを上段から振り下ろす。スピードがヒイロより劣るナハトヴァールは変わらず袈裟斬りの軌道を描いていたビームサーベルを展開した魔法陣で防ぐ。

ヒイロが使える武装がビームサーベルかマシンキャノンしかないのもあるが、対処法が変わらないことに関してヒイロは少しばかり疑問を浮かべる。

 

(・・・・まさかとは思うが、コイツ。無意識に主であるはやてを護ろうしているのか?)

 

ウイングゼロの武装を無意識に非殺傷設定が施されていないことを察しているのか、フェイトの攻撃はある程度受け止めてもヒイロの攻撃はほとんど魔法陣で防御している。

 

「・・・・主を守る気概があるのであれば暴走を止めようとは思わないのか?」

「もはや暴走は止められん!!ならばせめて管制人格としての自意識がある内に主に永遠に醒めぬ夢の中でいてもらうだけだ!!」

 

ナハトヴァールはその瞳から涙を流しながらなおもヒイロに魔法陣越しながらも敵意を露わにした鋭い視線を向ける。

 

「・・・・貴様の考えは破綻している。どれほどの改造を受けたかは知らんが同情する気もないし、聞く気もない。」

 

ヒイロはウイングゼロのフェイス越しにナハトヴァールに向けて鋭い視線で睨み返す。ビームサーベルを持つ手とブースターの出力を上げ、ナハトヴァールが展開する魔法陣にその刀身をめり込ませる。

 

「狂った奴を俺は殺す。それがお前とはやてにしてやれる唯一のことだ。」

「っ・・・・!!烈火の将からの記憶でわかってはいたが・・・なんという腕力だ・・・!!」

 

ヒイロは力任せにナハトヴァールの魔法陣を破壊しにかかる。

もっとも勢いあまってナハトヴァール本体に攻撃が入らないように細心の注意を払いながらだ。

故にナハトヴァール自身に攻撃を仕掛けるのはーーー

 

「ハァァァァっ!!!」

 

ナハトヴァールの背後にフェイトがブリッツアクションによる高速移動で現れる。既にバルディッシュからは新たなカートリッジが装填されたのか眩い金色の雷光を纏った鎌状の刃がナハトヴァールへと振り下ろされる。

 

「っ・・・やらせはしないっ!!」

 

ナハトヴァールはバルディッシュの刃が自身に届く前に自身の周囲に何かを展開した。それを視認したヒイロは苦い表情を浮かべる。それは一度見たことのある血のように赤黒い短剣に桜色に輝く光弾であった。

 

(ちっ・・・さっきの血にまみれたような色合いの短剣になのはのアクセルシューターか・・・。二つの異なる魔法の同時併用・・・器用な奴だ。)

 

ヒイロは内心で舌打ちをすると、ナハトヴァールの展開していた防御用の魔法陣を踏み台にしながらブースターを蒸し加速、一気に距離をとった。

フェイトもナハトヴァールのカウンターに気がついたのかバルディッシュを振り下ろしかけた腕を済んでのところで停止させる。その瞬間、ナハトヴァールから『ブラッディダガー』となのはの魔法である『アクセルシューター』がヒイロとフェイトの二人に向かって稼働する。

ヒイロはその迫り来る両方をマシンキャノンで破壊するが、フェイトは避けることは叶わずに爆煙がフェイトの全身を包み込む。

 

程なくして素早く爆煙から離脱するフェイトだったが、そこに左腕のパイルバンカーを構えたナハトヴァールが急接近する。

 

(左腕の打突武器による攻撃ーー当たれば無事では済まないけどーー!!)

『SONIC FORM』

 

フェイトはバルディッシュを構えながら先ほどまで風にはためかせていたマントを消失させ、より速さを追求した『ソニックフォーム』へとバリアジャケットを変化させる。

速さを求めたことにより、防御力は据え置きだが、速度は通常フォームより上昇している。

 

(これでナハトヴァールの攻撃に合わせてーー)

「フェイト!!待てっ!!」

 

自身に迫り来るパイルバンカーの針を紙一重で避けたフェイトはバルディッシュをナハトヴァールへ振るおうとする。

しかし、それを静止する声が同時に響く。それは他でもないヒイロであった。

ヒイロの目はナハトヴァールのこれまでとは違う対応をしっかりと捉えていた。

それはナハトヴァールが手にしていた闇の書がそのページを開いていたことだ。

 

だが、ヒイロの静止の声は一歩遅かった。

 

バルディッシュの刃がナハトヴァールに届かんとしたタイミングでページを開いた闇の書が割り込み、魔法陣を展開しながら防御した。

その瞬間、フェイトの身に異変が起こった。

 

「あ、あれ・・・・?」

 

フェイトは突然脱力したように空中でふらついた。その直後、フェイトの身体が薄く光に包まれると足元から徐々に光の粉となって消え始めた。

 

「何っ・・・・!?」

『フェイトちゃんっ!!!?』

 

フェイトの異常をどこかで見ていたのだろうか、なのはの悲痛な声が念話として響く。

ヒイロも突然の状況に対応が遅れてしまい、フェイトはそのままその身を光の粉にして消えていった。

 

(どういうことだ・・・?フェイトが突然消滅した・・・?)

 

ヒイロはフェイトが消滅した事実に驚愕しながらも原因を探る。魔法による何かなのは確かだ。事実として三角形の形をした魔法陣が展開されていた。

その魔法陣は何者かが接触することで発動する、一種のトラップだったのだろう。

ナハトヴァールは最初からそれを狙ってフェイトに接近戦を挑んだのだろう。

 

(何か仕掛けがあるはずだ。ゼロ、フェイトの行方を追えるか?)

 

ヒイロは僅かな可能性にかけてゼロシステムから送られる情報を確認する。

フェイトが消滅した時に生まれた光の粉はよく見てみると闇の書本体に吸い込まれているように見えた。

仮に光の粉がフェイトだとすればーーー

 

(・・・フェイトは闇の書の中に囚われたのか?待て、中に囚われたということはーー)

 

人間が本に囚われるなど耳を疑うようなものだが、魔法とは元々そういうものだ。人に人智を超えたような働きをすることだって可能性としてはないわけではないだろう。

だが、ヒイロはふとある考えが頭の中をよぎった。

 

(・・・・分の悪い賭けだが、やってみる価値はあるか。)

 

ヒイロはそう結論づけるとなのはに向けて通信を送る。

 

『なのは、聞こえるか?』

『ヒイロさん!!フェイトちゃんが……!!』

『わかっている。だが、推測でしかないがアレのタネは割れた。フェイトは闇の書本体に囚われている。今から救出に向かう。』

『そ、それってつまり闇の書の中に入り込むってことですよねっ!?だ、大丈夫なんですかっ!?』

『可能性は低いが、運が良ければそのまま闇の書の停止まで漕ぎ着けられるかもしれん。』

 

ヒイロの言葉の信憑性はゼロに等しい。無理もないだろう。確信もない言葉である以上、説得としての体面はほとんど存在はしないだろう。

だが、それでもーー

 

『ーーーわかりました。でも、絶対に戻ってきてください!!』

『無論だ。もはや時間は残されていない以上、虎穴に入らねば虎子を得られることはないだろう。』

 

ヒイロはなのはにそう伝えるとナハトヴァールへビームサーベルを構えながら突撃する。

対するナハトヴァールは闇に染まった太刀を出現させる。それはシグナムが持っていたデバイス、『レヴァンティン』に他ならなかった。

 

(・・・シグナムのデバイス・・・。使えないわけではないだろうとは思っていたがーー)

 

なんら問題はない。ヒイロはスピードを落とすことなくナハトヴァールに向けてその翼を羽ばたかせる。

 

「はぁっ!!」

 

ヒイロがビームサーベルをナハトヴァールへ向けて振り払う。左下段から迫り来る光の刃をナハトヴァールはシグナムのレヴァンティンで防ぐ。

ヒイロはウイングゼロの翼の根元からもう一振りのビームサーベルをラックから取り出すとそれを振り下ろした。

しかし、それは先ほどの攻撃とは違う点があった。その攻撃の狙いはナハトヴァールではなく闇の書の本体である、ということであった。

 

「っ!!貴様っ!!」

 

それを理解したナハトヴァールは闇の書の前面に()()()()()()()()()()()()()()()()()()を展開する。

それはつまりーー

 

「っ・・・・!!」

 

ヒイロの身体がフェイトと同じように薄く光を放つ。そして、ヒイロの身体が光となって崩れ始める。

 

「・・・・闇の書本体を狙ったつもりだろうが、あいにくそうはいかん。お前も夢の世界で眠ってもらう。」

「・・・・なるほど、夢の世界か。フェイトはそこに囚われているんだな?」

 

身体が光となり崩れ始めている中、ヒイロはナハトヴァールに不敵な笑みを浮かべる。既にヒイロの身体は半分以上が消失していた。感覚も徐々におぼろげになっている。しかし、ヒイロはそれでもナハトヴァールに向けて軽く口角を上げる。

さながらこの状況を待っていたかのようにーーー

 

「ま、まさか、貴様、始めからこれを狙って・・・!!」

「そうだ、と言えばお前はどうする?」

「っ!!」

 

ヒイロの目論見に気づいたナハトヴァールは咄嗟にヒイロにレヴァンティンを振るう。しかし、ヒイロが闇の書本体に完全に取り込まれるのが若干早く、ナハトヴァールの振るったレヴァンティンは目標を見失い、空を切る羽目となった。

 

「くっ・・・!!おのれ・・・!!」

 

ナハトヴァールは出し抜かれた悔しさからか表情を苦悶のそれに変えながら拳を握りしめる。

その様子を遠目からなのはが眺めていた。

 

(ヒイロさん、フェイトちゃんをお願いします。)

 

闇の書の内部に潜入したヒイロの安全を願いながらなのははレイジングハートをナハトヴァールへ向けて構える。

 

(私は、私に出来ることをやります!!)

 

 

 

 

「こ・・・ここは・・・?」

 

 

朧げな意識を無理やり叩き起こし、周囲の確認をする。先ほどまで暗い海鳴市の空だったはずの場所はいつのまにか空気の澄んだ広い空間へと変貌していた。

その空間はよく見てみると部屋のようであった。だが部屋としてはかなり巨大でさながら宮殿に設けられた一室であると錯覚してしまうものであった。

 

「私は・・・さっきまで・・・。ナハトヴァールと戦っていて、それでーー」

「う、ううん・・・?あれ・・・フェイトォ・・・?」

 

先ほどまでの自分の行動を思い出そうとしている中、フェイトは自身のそばから聞こえた声に思考を中断される。

ふとその方向を見てみると自身が寝ていたと思われるベッドの上に不自然な膨らみがあった。その膨らみがモゾモゾと動き始め、羽織っていたシーツがはだけるとその正体が明らかになる。

眠たげに目をこすりながら現れたのはフェイトと同じような金髪に、これまたフェイトと同じような赤い瞳を有している人物だった。

唯一違うと言えば、その人物がフェイトより身長が小さいことであろうか。

本当にそれくらいしか差異が見当たらないフェイトの現し身と言っても過言ではない人物であった。

だが、それはむしろ当然だ。逆にフェイトはその少女の現し身として生み出された、クローンであったからだ。

そのフェイトの元になった少女の名前はアリシア・テスタロッサ。なのはとフェイトが出会うきっかけとなった『P.T事件』を引き起こした犯罪者、プレシア・テスタロッサの死んだはずの実の娘であったからだ。

 

「アリ・・・シア・・・・?」

「うん?どうかした?フェイト。」

 

死んだはずの人間が目の前にいる。その受け入れがたい事実にフェイトはポツリとアリシアの名前をこぼすことしかできなかった。

対してアリシアはフェイトのまるでありえないものを見るかのような反応に不思議そうに首を傾げる。

 

「ここは・・・一体・・・・?」

 

フェイトが思わずそう尋ねるとアリシアは軽く口元に手を当てながら笑い始めた。

 

「もう、フェイトったら何を言ってるの?ここはコロニーの私達の家だよ。」

「い、家・・・?私、たちの?いや、それよりもコロニー?」

 

フェイトはどこかで聞いたことのある言葉に訝しげな表情を浮かべる。

それに気づいたアリシアはフェイトに説明をする。

 

「うん。コロニーだよ。人が宇宙に住むために作った箱みたいなものだよ。もうー、フェイトったらそんなことまで忘れちゃったの?」

 

若干呆れたような口調でフェイトに語りかけるアリシア。少なくともフェイトの記憶の中にコロニーと呼ばれる場所で過ごした覚えはない。だが、コロニーがなんらかの場所を示していることは理解することができた。

 

「も、もう少しここのコロニーについて教えてもらっていいかな?」

 

フェイトはたどたどしい口調ながらアリシアからコロニーについての情報を聞き出そうとする。アリシアはフェイトの様子に疑問を抱きながらも説明を続ける。

 

「えっと、このコロニーはまだ出来てから7年くらいしか経っていない新しいコロニーなんだよ。確か名前はーーL3 X18999コロニーだったっけ?」

 

 





闇の書が生み出した夢の中に囚われてしまったフェイト。彼女を救出ためにわざと闇の書の中へと潜入したヒイロだったが、その中で予想だにしない人物と出会ってしまう。
ヒイロはその人物と何を語り、思うのか。そして、フェイトの元へ駆けつけることはできるのか。

次回、魔法少女リリカルなのは 『過ぎ去りし流星』

任務・・・了解・・・・!!!


というW風次回予告を書いてみた。

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