魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜 作:わんたんめん
ウイングガンダムは決して乗り捨てないです。多分。
5/7 描写に抜けがあったため、追加をしました。
夢の世界から脱出したせいで原型が保てなくなったウイングガンダムから脱出(決して乗り捨てた訳ではない。決して)したヒイロはフェイトを抱きかかえながら闇の書の管制人格と対峙する。
「ヒ…イロ…さん……?」
「お前はこのまま少し休んでいろ。」
ウイングガンダムの加速力とヒイロの操縦に軽いグロッキー状態になっているフェイトにヒイロは一瞬だけ視線を彼女に向け、休んでいるように伝えるとすぐさま視線を闇の書の管制人格に戻した。
ヒイロの目の前にいる女性は全体的に黒いインナーに銀髪に輝き、銀白の白い雪の世界を連想させるような髪を有し、その真紅の瞳をヒイロに向けていた。
ヒイロがクロノから教えられた管制人格となんら変わりはなかった。
「・・・・お前はあの世界で永遠の夢に堕ちることはないのだな・・・。」
ふと管制人格がそんなことを口漏らした。彼女の言う『あの世界』というのは十中八九、フェイトとヒイロを閉じ込めていた夢の世界のことを指しているのだろう。
ヒイロは管制人格の神妙な面持ちに少々眉を顰めながら警戒を緩めないでいた。
「・・・・あの夢の世界は閉じ込めた人間の記憶を元に、その人物が幸せだと思う空間を作り上げる。そこの、お前が抱えている少女が見ていた家族との和やかな団欒のように。」
「・・・・やはりあのコロニーや見知った奴は俺の記憶から再現されたものだったか。」
ヒイロがそういうと管制人格はその美麗な顔を弱々しく頷かせた。
「・・・・・?」
ヒイロは管制人格のその反応に少なからず疑念を抱く。先ほどから管制人格の表情が妙に悲しんでいるように見える。その哀しみを孕んだその視線をヒイロに向け、さながら同情でもしているかのように。
「私は、あのコロニーと呼ばれる巨大な建造物を作り上げる過程でお前のこれまで辿ってきた記憶を見た。」
管制人格は表情は沈んだもののままだったが、その目はしっかりとヒイロに見据えられていた。
「お前の人生は、はっきり言って、戦争の二文字でしか表現ができないほど凄惨なものだった。私が、お前の記憶を見たとき、初めに見せられたのはお前が人間を殺している様子だった・・・・。」
「・・・・ウソ・・・!?」
管制人格の言葉にフェイトは驚きの声をあげながら自身を抱きかかえているヒイロを見上げた。
当のヒイロは静かに目を閉じながら押し黙っていた。
おそらく管制人格が見たのはあの病院の看護師のことだろう。忘れもしない、まだ幼かったヒイロが初めて殺したあの男だ。
「その光景を見せられた時、私は言いようのない感覚を覚えた。だが、それだけに飽き足らず、そこからのお前の記憶は目を、背けたくなるようなものばかりだった・・・!!」
初老の科学者に拾われたヒイロはその男の元で訓練を積んでいった。その訓練の内容は一般の人間が行える量ではなかった。その結果、ヒイロの精神は破綻の一途を辿ることになったが、まだ彼の心には僅かにだが、元来の性格が残っていた。
その僅かに残ったモノさえ奪い取るきっかけとなったのが、ヒイロの中で色濃く残る少女と子犬を自分のミスで死なせてしまったことである。
その任務を契機に、ヒイロへの訓練の濃密さは人智を超えるものと化していき、彼の精神は破綻した。
そのあんまりなヒイロの経歴にフェイトは口元を手で覆い、言葉を失うしかなかった。
「お前は、あのような人生を歩んできて、一度も、ただの一度でも辛いと思ったことは、ないのか・・・・!?」
そうヒイロに向けて言い放った管制人格の目には涙が浮かんでいた。元々プログラムでしかないはずの管制人格が涙を浮かべざるを得ないほどのヒイロの過去。
「ない。思ったところで何かが変わるわけではないからな。」
ヒイロはその管制人格の言葉を真正面から叩き斬った。考えるいとまも与えないヒイロの否定は管制人格の言葉を僅かにだが詰まらせる。
「・・・・あの世界はお前が望んだものが広がっている。それこそ、戦争など存在しない平和な世界が広がっていてもか?」
「あそこに俺のような兵士が一人でもいる時点でリリーナの掲げた完全平和主義は成り立たん。」
それに、とヒイロは付け加えて管制人格に向けて言い放つ。
「平和とは自分たちの手で物にするものだ。与えられた平和は所詮、まやかしでしかない。またいずれ、世界は戦火に包まれ、俺たちのような兵士が必要となってくる。誰も、誰一人として、そんな時代は望んでいない。」
「・・・・平和、か・・・・。」
管制人格がポツリと言葉を漏らした。その言葉はシグナム達含めたヴォルケンリッター達には一度たりとも手にすることが叶わなかったものである。
「道理で夢の世界の人物達が好き勝手に動く訳だ・・・。あの者たちはお前達があの世界を望んでいないことがわかっていたのだな・・・・。」
管制人格はそういうと乾いた笑みを浮かべる。さながら敵わないと察してしまったようにも感じられる。
「お前に暴走に対して諦めていると言われた時、私は少なからず何も知らないお前に何がわかると思っていた。だが、その言葉はそっくりそのまま私に帰ってきてしまったな。」
「何も知らないのは私の方だった。お前の言う通り、私は闇の書の暴走に対して何も行動を起こしていなかった。一度暴走してしまえば、もはや止める術はないと見限り、諦観してしまっていた。」
管制人格はそう言葉を漏らすとヒイロにバツの悪い表情を向ける。
「・・・・私達にもその平和は得られるだろうか?」
「・・・・現にお前たちははやてからその平和を与えられてしまっている。だが、その平和を長続きさせるかはお前の行動次第だ。」
ヒイロが管制人格に向けてそう言うと彼女は意を決した表情を浮かべながら車椅子で眠っているはやての元へ向かった。
そして、管制人格がはやてに向けて手をかざすと先ほどまで開く気配のなかったはやての瞼がぱっちりと開いた。
「あ、あれ?ここは………?」
目を覚ましたはやては辺りを見回す仕草をする。突然訳の分からない空間の中にいれば、困惑した様子を見せてしまうのが山々だろう。
「主はやて。」
管制人格はそんなはやての目の前で片膝、そして片方の手を握りこぶしの形で地面につき、頭を垂れた。その様子はまるで王に傅く騎士のようであった。
「え、あ・・・だ、誰・・・?いや、どこかで見たことがあるような……?」
「闇の書の暴走、貴方に取って家族に他ならなかった守護騎士達の消滅、これら全て、私めの怠惰が引き起こしたことです。」
管制人格ははやてに向けて淡々と自身の罪の告白をする。
「主からの如何なる罰も、私は甘んじて受けましょう。それだけの罪を私は積み重ねてきたのですから。」
「ちょ、ちょっと待ってやっ!!とりあえず、顔を上げてくれへんか?」
はやては管制人格に待ったを掛けると一度大きく深呼吸し、咳払いをすると再び管制人格と向き合った。
「えっと、まず確認なんやけど、貴方は闇の書の管制人格さんであっとる?」
「はい、その通りです。」
顔を上げ、はやての顔が見えるようになった管制人格は彼女の質問に対して頷いた。
それを見たはやては少しばかり困った表情に変える。
「急に罰とかなんや言われても、私にはさっぱりや。闇の書が何遍もの世界を渡ったっていうのはシグナム達から聞いとったけど、それを踏まえても全然頭の中で整理できておらんもん。」
はやてからそう言われ、表情を僅かに沈んだものに変える管制人格。しかし、はやてが『でも』と付け加えながら彼女の前で笑顔を浮かべる。
「でも、これだけははっきりと言える。貴方は絶対に悪い人やない。私が貴方を信じられるだけの理由はある。」
「な、何故ですか・・・!?私は貴方をずっと苦しめてきたも同然の行いをーー」
「本気で悪い人やったらそもそも謝ったりせぇへんもん。理由としてはこれ以上ないもんやと思うけど?」
「たった、それだけの理由で・・・・ですか?」
心底から驚いた表情を浮かべる管制人格、そして対照的に笑みを浮かべるはやて。その笑顔に裏は一切見られず、心からの笑顔であった。
「ヒイロさん、私なんかのためにここまで来てくれて、ありがとうな。」
「・・・・闇の書を内側から停止させられる可能性があると踏んで、俺は内部構造へ突入した。お前の救出はそのついでだ。」
はやてはその優しげな笑顔をヒイロへと向ける。そのヒイロはぶっきらぼうに答える。はやてはそんなヒイロの反応に苦い反応を微塵も見せずに嬉しそうな表情を浮かべる。
「それはそれとして。そこの君、名前を聞いてもええか?」
しかし、そんなはやての視線が別の人物に注がれる。その人物とはーー
「私・・・?えっと、フェイト・テスタロッサ・・・だけど?」
ヒイロに抱えられているフェイトであった。突然話を振られたフェイトは疑問に思いながらもはやてに自身の名前を伝える。
「フェイトちゃんかーー。なるほどなるほどーー。」
フェイトの名前を聞いたはやてはそのフェイトにも変わらずの笑みを向ける。変わらずの笑みなのだが、その表情にはどこか腹黒さが垣間見えているようにも感じられる。
「結構羨ましげなことされてるんやな〜・・・・。」
「ち、違っ・・・!!こ、これはあくまでヒイロさんから休めって言われたから・・・・!!」
「へぇ〜・・・・そうなん?ヒイロさん?」
「・・・・確かに言ったが・・・。フェイト、喋れるぐらいまで回復したのであれば下ろすぞ。」
「あ・・・・。」
はやてにお姫様抱っこされているのを茶化されたフェイトは顔を真っ赤に染め上げながら言い訳をする。
そんな元気なフェイトを見たヒイロは彼女を自身の腕から降ろした。その時、彼女がもの寂しげな表情を浮かべたのを、
すぐさましたり顔をフェイトへ向ける。その表情を向けられたフェイトはしてやられた顔を浮かべるが時既に遅し。
「へぇ〜。へぇ〜?」
「っ・・・・!!」
ニヤニヤと口角をあげるはやてにフェイトは恥ずかしさのあまり、顔を赤らめながらそっぽを向く。
そんな女のやりとりが繰り広げられている中、ヒイロはーー
「確認する。お前やはやての方面からナハトヴァールを止めることは不可能か?」
「・・・・・えっ?あ、あぁ・・・。いや、いい、のか?」
完全にスルーして管制人格に闇の書の停止ができるかどうかの確認を取っていた。
準備していなかったのか管制人格は遅れてヒイロの言葉に反応する。
「何がだ?今は闇の書の暴走を止めるのが最優先だ。いつまでもなのはに前線を張らせておく訳にいかないからな。それにお前に直接聞いておきたいこともあるからな。」
「私にか・・・・?」
訝し気な表情をする管制人格にゼクスとの通信でヒイロが聞いた『ナハトヴァールの停止』に関しての疑問を伝える。
「・・・・そうか。そのゼクスという男はそのようなことを言っていたのか。」
管制人格はそういうと少々考え込む仕草をする。その途中、その視線を僅かにはやてに送った。
「その男の言う通り、ナハトを機能停止にさせたところで、無限回復によりいずれ復活するのは事実だ。だが意味がないという訳ではない。消滅の作業中に邪魔されることがなくなるからな。」
「むしろナハトヴァールを一時的とはいえ停止させなければ不可能ということか。」
ヒイロの言葉にナハトヴァールは頷く仕草を交えながら話を続ける。
「それと烈火の将や鉄槌の騎士といった守護騎士の者達は主はやてがシステムの復旧を行えば、問題はない。闇の書本体を消滅させることになってもプログラム自体を切り離せば巻き込まれることはない。」
「・・・お前はどうなんだ?」
「・・・・・・・・・・。」
「お前はシグナム達とは違う。プログラム的な機械工学の観点から見てもそれは明らかだ。」
ヒイロの質問に管制人格は押し黙ってしまう。その管制人格にヒイロは追及を行った。
管制人格はちらりとはやての方を見やり、彼女がこちらの会話を聞いていないことを確認した。
その反応だけで管制人格がはやてに何か聞かれたくないことを言わなければならないことをヒイロは察した。
「・・・・今はまだ自分でもどうなのかは、わからない・・・。」
「・・・・了解した。今はナハトヴァールの停止が最優先だからな。」
ヒイロがそう言うと管制人格は僅かにだが、笑みを浮かべた。
「ありがとう。だが結論から言えば、止めるのは無理だ。ナハトの暴走を止めることは私や主の権限でも難しい。だが切り離すことはできる。」
「・・・守護騎士達と同じように、ナハトヴァールと闇の書を分離させるのか?」
ヒイロがそういうと管制人格は大きく頷く。しかし、その表情はどこか難しそうであった。
「分離するためにはナハトに強烈な魔力ダメージを与える必要がある。それこそ、高町なのはが放つようなスターライトブレイカーといった砲撃魔法クラスのだ。」
「・・・・作戦プランは決まったな。だが、なのはの砲撃にはチャージが必須だ。その時間はどう稼ぐ?」
「そこがネックなのはわかってはいるのだが・・・・」
管制人格が困ったような表情を浮かべる。現状、夢の世界の外にいるのはなのはしかいない。アルフも外にはいるが、アリサとすずかの護衛に就いているため、彼女の援護を求めるのも無理だ。
ヒイロが闇の書内部に突入するまでリンディ達の乗っているアースラが来る様子もなかった。
最悪、はやてがいる空間をウイングゼロのツインバスターライフルで無理やり破壊するという考えもあったが、やった後がどうなるか不明瞭なため、手段としては最後に選択するものとなってしまう。
はやてとフェイトが痴話喧嘩を繰り広げている傍、ヒイロと管制人格が手をこまねいているとーーー
『なら、そのナハトヴァールの足止めは私がやるわ。』
突如として頭に直接語りかけるような声が響く。明らかに念話による突然の連絡にヒイロはわずかに驚いた表情を浮かべる。
だが、その声に誰よりも驚いている人物がいた。その人物は先ほどまでの会話をわざわざ止めるほどの驚愕を持っていた。
「か・・・かあ・・・さん・・・!?」
フェイトはその声の主に心底驚いた表情を浮かべながら目を見開いていた。
そして、彼女がこぼした『母さん』という単語。これが該当する人物は一人しかいない。
「・・・・プレシア・テスタロッサか。」
『フェイトが世話になっているわね。何やらあの子に訓練を施してくれたらしいわね。』
「・・・それはフェイトが自ら強くなりたいと望んだだけだ。俺は大したことはしていない。」
念話から、というより待機状態のウイングゼロから届くプレシアの声にヒイロが返答する。
およそ、その間にフェイトがかつてなのはと出会うきっかけとなった事件、『P.T事件』の時のような苛烈さはなかった。むしろ和やかなものであり、フェイトはその様子に動揺を隠せないでいた。
「どうして・・・母さんが・・・!?」
『アリシアに貴方のことを守ってほしいってお願いされたのよ。もっともお願いがなくても貴方に手を貸すつもりではいたけど。』
プレシアの言葉にフェイトは僅かに嬉しそうな表情を浮かべる。しかし、その表情にはどこか暗い影のようなものが同時に含まれているようにも感じられる。
フェイトにとって、プレシアは紛れもなく母親だ。だが、プレシアにとってフェイトはアリシアの生き写しである側面が強い。アリシアのクローンとして生まれたフェイトは元となったアリシアとは様々な部分で差異があったのだ。
利き手や性格、挙げ句の果てにはフェイトには高い魔力の素質があるが、アリシアにはそれがないと、もはやアリシアによく似た『誰か』として生まれたフェイト。愛娘を亡くした悲しみやその原因となった事件の責任を押し付けられたことから精神がかなり摩耗していたプレシアにとって、そのことは到底認められることではなかった。
『フェイト、貴方にはとても酷い仕打ちをしてきたわ。どう取り繕ったところで貴方にしてきたことが消えることはないわ。』
「母さん・・・・。」
『・・・・・まだ、こんな私を母さんって呼んでくれるのね。貴方のことを大嫌いって言ったのに。』
「・・・・私は貴方の娘ですから。」
フェイトがそういうとプレシアはクスリと笑ったような声を上げる。声色的に苦笑いを浮かべているようにも感じられる。
『でも、いつまでも私やアリシアのことに引き摺られてはダメよ。過去を振り返るな、なんてことは言わないわ。だけど貴方には貴方の未来がある。』
『フェイト、行きなさい。私の娘ではなく、アリシアのクローンでもなく、フェイト・テスタロッサ、一人の人間として今を、明日を、そして未来を生きるのよ。』
「っ・・・・・・はいっ・・・・!!」
プレシアの言葉にフェイトは涙ぐみ、そして上ずった声で返事をする。それにプレシアは苦笑しているような声をする。
『それじゃあ、私は向こうに喧嘩でもけしかけてくるわね。そこの闇の書の主さんは脱出の準備でも整えてなさい。』
それを最後にプレシアからの念話は聞こえなくなった。
「・・・プレシア・テスタロッサにできるのか?」
「・・・できます。母さんなら。だって母さんはーー」
「次元すらも越えられる、とっても強い魔導師なんですから。」
その言葉にかつてフェイトが母親であるプレシアに対して抱いていた恐怖は微塵もなかった。
その証拠に彼女の表情はすごく晴れやかなものであった。
「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・。」
一人でナハトヴァールの相手をしていたなのは。なんとか対峙できるほどの力は残ってはいるが、バリアジャケットは所々が破けたり、煤で黒ずんでいたりとボロボロ、なのは自身も肩で息をしていたりと既に満身創痍だ。
それでも彼女はレイジングハートを構え続ける。闇の書の中に入ったヒイロとフェイトのためにーー
(正直言って、カートリッジは残りわずかだし、私自身体力はもう限界・・・。だけど、こんなところで諦める訳には、いかない。)
結界内部の光景はかなり酷いことになっていた。空は魔力がこもったドス黒い雲が雷をゴロゴロと鳴らし、地面からマグマのような火が吹き出し、海上では地面がせり上がり、それらが奇妙なオブジェクトと化していた。
もはや地球崩壊まで猶予はない。だが、それで諦めるなのはではない。
彼女は硬い意志のこもった視線を未だダメージらしきものが見当たらないナハトヴァールに向ける。
『そこの貴方、聞こえるかしら?聞こえるなら念話で返してちょうだい。』
『ふぇ?ど、どちら様ですか?』
そんななのはの元に突然念話が入る。なのははわずかに困惑した様子を見せるもナハトヴァールに悟られないように視線を向けたままその謎の人物に返答を行う。
『そうねぇ・・・。強いて言うなら、哀れな母親、と言ったところかしらね。然程重要なことじゃないから、私のことは気にしちゃダメよ。』
『・・・・・もしかしてフェ『気にしちゃダメよ?』アッ、ハイ。』
その謎の母親は一つ咳払いをするとなのはに手短に作戦の概要を伝える。
『ひとまず、あの闇の書の自動防衛プログラム、ナハトヴァールを切り離すために貴方の砲撃魔法が必要なの。援護はこっちでやるからお願いできる?』
『・・・わかりました!!援護、感謝します!!』
なのはは念話の相手に感謝の言葉を述べるとレイジングハートをアクセル、バスターとは違う、3つ目の形態へ変化させる。
レイジングハート内部から機械が動いているような音が響くと杖状から先端が尖った槍のような形態へと変貌を遂げ、レイジングハートはコアの赤い宝石から桜色の翼を広げる。
その名もエクセリオンモード。正真正銘、なのはの全力全開を叩き出すための最終形態である。
「レイジングハート、行くよっ!!」
なのははレイジングハートの切っ先をナハトヴァールへと向け、環状魔法陣を展開し、砲撃態勢を取る。
その切っ先から桜色の魔力光が球体となって生成を始める。
明らかに隙だらけなその姿にナハトヴァールはなのはに攻撃を仕掛けようとするがーー
「っ!?」
咄嗟に身を翻すナハトヴァール。その瞬間、強烈な魔力を伴った雷がナハトヴァールがいた場所を貫いた。
「何・・・!?」
ナハトヴァールが辺りを見回せばいつのまにか轟音が響き渡る雷の海が広がっていた。当然止まっているなのはの周囲にも雷が落ちるが、むしろその雷が彼女を取り囲み、さながら守っているようにも感じられる。
「これほどの規模の魔法・・・一体誰が・・・!?」
ナハトヴァールは出所がわからない攻撃に歯噛みをしながら空を飛ぶ。
わからないのも無理もないだろう。なぜならその攻撃が闇の書の空間に広がっている夢の世界からの介入であるからだ。
ナハトヴァールは困惑した顔を浮かべながら降り注ぐ雷の嵐を突き進む。
しかし、その回避運動も途中でピタリと体が固まったかのように空で止まってしまう。
「うっ……っ!?ぐっ、アアアアアアアアアアっ!!?」
突然苦しみだしたナハトヴァール。それに呼応するかのように左腕の籠手から黒い蛇が侵食するように広がっていく。
なのはは突然のナハトヴァールの変貌に少しばかり心配そうな視線を向けるが、
苦しみ悶えているナハトヴァールにプレシアはいくつもの雷を束ねた、もはや光の柱とでも見違えるような巨大な雷をナハトヴァールに向けて、叩き落とす。
まともな対応が取れなかったナハトヴァールはその雷に呑み込まれた。程なくしてその降り注いだ時の轟音がなりを潜めると共にナハトヴァールの姿が露わになるが、各所が黒ずみ、ときおり体に電気が残っているのか、スパークを発する程であった。
『今よ!!闇の書の主が止めている間に手早くやりなさい!!』
「は、はいっ!!」
謎の母親に急かされるようになのははレイジングハートを構える。
「レイジングハート!!フォースバースト!!」
そういうとレイジングハートを中心とした周囲に4つの環状魔法陣が展開され、カートリッジが4つほど装填される。
「全力全開!!エクセリオンバスター、シューーートっ!!!!」
なのはの叫びと共にレイジングハートから4つの光線が発射される。その光線は複雑に絡み合うと一筋の光と変わり、ナハトヴァールを呑み込んでいく。
「・・・・空間が振動している・・・?」
「主!!これなら行けます!!」
「わかったで!!あ、そういえば管制人格さん、1つええか?」
はやての言葉に管制人格は疑問気に軽く首をかしげる。
「いつまでも呼び方が管制人格やと味気ないから名前、つけてもええかな?」
「・・・・それ、今決めることなんですか?」
「名前は大事やで!!名は体を現すなんていう便利な言葉もあるんや!!」
フェイトの疑問にはやては鬼気迫った表情を浮かべながらビシっと人差し指をフェイトに向ける。
「ええっと、そうやなぁ・・・。」
「早くしろ。さもなくばツインバスターライフルでこの空間を破壊する。」
「わぁ〜!!ヒイロさん待って待ってー!!よくわかんないけど明らかな脅しはやめてやー!!ええっと、ええっと……!!」
はやては頭をうんうん唸らせながら管制人格の名前を思案する。するといい案が浮かんだのか頭の上に豆電球がついたようなリアクションをした。
「せや!!もはやこれしかないで!!祝福の風、闇なんちゅう負のイメージをなくすんや!!その名もーー」
リインフォース
その名は祝福の風を意味し、幸運を運び込む、幸せの象徴ーーーー
「個体名、リインフォース。確かに受け取りました。我が主よ。」
その名前を管制人格、否、リインフォースは嬉しそうに受け取るのであった。
その次の瞬間、ヒイロ達がいた空間を光が包み込んだ。
いよいよ最終決戦ですかな〜。
多分、次回の推奨BGMは「Rhythm Emotion」辺りだと思います。