魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜 作:わんたんめん
それはそれとしてやらかした感が半端ではないです(白目)
あったかい目で見てくれるとありがたいです・・・。
「・・・・高町なのはの怪我のことはとやかく聞かないのだな。」
ヒイロの廊下を歩く音だけが周囲に響き渡る中、肩に乗ったアインスが不意にそのようなことを呟いた。
「・・・・聞いたところでなんになる。俺に過去でも変えろとでも言うのか?」
「・・・・いや、そこまでは言わないのだが。もう少し彼女に声をかけてやってもいいのではないか?」
そういいながらアインスは首を回し、自身の後方を見た。部屋に入っていったなのはのことを見ていたのだろう。
そんな彼女にヒイロは一瞬だけ視線を向けるが、すぐさま前方に戻した。
「俺が何かなのはに言ったところで、最終的に決めるのはなのは自身だ。だがーー」
ヒイロはそこで一度言葉を区切ると、はっきりとした口調で言葉を放つ。
「奴が道を誤るのであれば、止めるなりの対応はするつもりだ。」
それだけ言うとヒイロはそれ以上言葉を放つことはなく、お互い無言で六課隊舎を回り始める。
「ふぅ・・・・。レイジングハート、今何時?」
『11時を回ったところです。流石に寝ないと明日の訓練に寝坊してしまいますよ、マスター。』
「あはは・・・・そうだね。」
明日の教導プランを一通り組み終わると、腕を真上にして腕を伸ばす。ついでにレイジングハートに時刻を聞いてみると日を跨ぐまで一時間もない時間を示しながら睡眠を取るように促してくる。
「ねぇ、レイジングハート。ヒイロさん、怒っているかな?」
不意にレイジングハートにそんなことを聞いてみる。さきほどヒイロと鉢合わせた時、ヒイロはなのはの怪我についてわかっているような口ぶりを彼女に見せた。
その時は労ってくれているような口調だったが、いつも感情をあまり表には見せないヒイロのことだ。その無表情の先に怒りがないとは限らない。
『・・・・どうでしょうか。私もヒイロ殿の心情はわかりませんが、約束を違えられたことに度合いこそはあれど怒りを抱かない人間はいないのでは?』
「・・・・・やっぱりそうだよね・・・。でも、私が頑張らないとみんなを守れないし・・・。何より、またヒイロさんみたいに誰かとあんな急な別れ方はするのはもう、嫌だ・・・。」
『マスター・・・・・。』
「あっ・・。ご、ごめんね、そんな悲しくするために言ったわけじゃないから・・・!!」
そう言って悲痛な表情を浮かべるなのはにレイジングハートは何も言えなくなってしまう。
自身の相棒が沈黙してしまったことに気づいたのか、なのははハッとした表情へ変えるとパタパタと手を横に振りながら焦った口調でそう言った。
「・・・・とりあえず、今日はもう寝るね。おやすみ、レイジングハート。」
『・・・良い夜を、マスター。』
机から立ち上がり、薄いオレンジ色の寝巻きに着替えたなのははベッドで横になると程なくして整った寝息を立て、眠りについた。
「・・・・一通りは回ったか。」
「そのようだな。時刻はそろそろ日を跨ぎそうだが、戻るか?」
「・・・・・戻るか。休める時には休んでおかなければならないからな。」
最終的に食堂で部屋への帰路につくことにしたヒイロは特にどこかへ寄り道することもなく部屋へたどり着く。
空気が抜けた音と同時に開かれたドアを潜るとベッドの上にできた山が目に入るが、それをなのはだと判断したヒイロはソファに腰掛ける。
「ベッドで寝ないのか?大きさ自体はかなり大きいからお前が寝ても差し支えはないと思うが・・・。」
「この体勢で寝た方が有事の際には早く行動が出来る。」
ヒイロの答えにアインスは苦笑いを禁じ得なかった。それなりにヒイロの記憶を覗いてしまっているため、ヒイロの行動になんとなく理解を示している自分がいるのも相まって、その苦い表情を一層深めてしまった。
「ああ……うん。お前ならそうするだろうなぁ・・・・。」
そのまま眠りについてしまったヒイロにアインスはそれしか言うことがなかった。
話し相手がいなくなったアインスもしょうがないというようにウイングゼロの中に引っ込み、自身も睡眠を取ることにした。
「シャーリー、ごめんね。こんな時間まで付き合わせちゃって。」
時刻はなのはもヒイロも寝付いた頃、機動六課の隊舎に一台のスポーツカーのような車が停車する。その車の運転手が申し訳なさげに謝罪の言葉を述べているのは管理局員として濃い茶色の制服に身を包んだフェイトであった。
「気にしないでください、フェイトさん。解析やら調べ物が私達ロングアーチの本領のようなものですからー。」
フェイトの謝罪の言葉はシャリオ・フィニーノ一等陸士(愛称 シャーリー)は一切気にしていない様子で彼女の代名詞でもある人懐っこい笑顔を浮かべる。
そのシャーリーの笑顔にフェイトもつられるように軽い笑顔を浮かべる。
今回連れ回してしまった彼女とはそこで別れ、指定の駐車場に自身の車を止めたフェイトは隊舎の敷地内を歩きながら、今回の調査の整理を頭の中でざっくりと行う。
レリックの解析に立ち会っていたフェイトだったが、ついでに写していたガジェットの内部機械に見覚えのある宝石、そして名前があった。
前者は『ジュエルシード』後者は『ジェイル・スカリエッティ』という名前であった。
ジュエルシードはフェイトがヒイロと出会う前にひょんなことから魔法を扱うことになったなのはとその宝石を巡って、争いあう原因となった代物であった。
そのジュエルシードは本来であれば、管理局によって厳重に保管されているはずなのだが、どういう訳かガジェットの中に埋め込まれていた。
その入手経路は専門の知り合いに任せるとして、問題はジェイル・スカリエッティの方だ。
ジェイル・スカリエッティ。一言で言ってしまえば、マッドサイエンティストだ。数々もの事件に関わり、未だ逮捕までに至っていない広域次元犯罪者に指名手配されている危険な人物。フェイトが執務官として長年追っている男でもある。
その科学者の名前がこの間のリニアレールで倒したガジェットⅢ型の動力部にプレートとして名前が刻まれていたのだ。
本人なら挑発、模倣犯ならミスリード。ただどちらであれ、その名前が刻まれていることがフェイト達に対する挑戦状であると思っても良かった。
思案に耽りながらフェイトは自室へと戻っていく。ベッドには既になのはが寝息をたてて寝ていることがわかる。
本当はもう少し整理やらをしたかったが時刻は12時、日が変わってしまった頃合いを時計は指し示していた。
「明日は明日で別の用事があるからもう寝ないと・・・。」
そういいながらフェイトは管理局員の制服を
「・・・・あれ?」
ふと気になった点を見つけたフェイトはベッドに伸ばしかけた手を止めると視線をベッド全体に向ける。
今そこで寝ているのはなのは一人だ。完全に私情が入っていたが、部屋にいるはずのヒイロの姿はベッドの上にはなかった。
(・・・・・ヒイロさん、まだ部屋に戻ってきてない・・・?)
そう思った瞬間、自身の格好を再確認する。今、自分が着ているものは上下共々下着しか着ていない。
つまり、とても男性に見せられるような格好ではないということだ。しかもヒイロのような一応は年下の人にはもっと見せられない。
そこまでの思考に至った時、フェイトの思考速度が加速度的に上昇する。
(仮に、仮にだよ?ヒイロさんが運悪く、運悪く(ここ重要)このタイミングで部屋に入ってきて、私のこの状態を見たら、どう思うかな・・・?)
1、顔を僅かに赤くしたヒイロが咄嗟に視線を逸らし、自分に服を着るように促す。
「・・・・絶対ない。あのヒイロさんにしては流石に都合が良すぎる。」
混濁した頭のシミュレートでもヒイロがそんな青少年みたいな反応をするはずがないと結論づけ次のシミュレートを始める。
2、ヒイロは特に気にしない様子でいつも通り、無表情な顔で接してくれる。
「それはそれで傷つく・・・・。私、そんなに魅力ないかなぁ・・・・。」
自己嫌悪に陥りそうなフェイトだったが、その考えを即座に振り払い、次の脳内に浮かんだ未来をイメージする。
3、気持ち悪がられ、痴女判定を受ける。現実は非情である。
「・・・・一番ありえるのは2番かな・・・・。」
即座に思考を中断して、心的ダメージを最小限にしたフェイトはひとまず服を着ることにした。
しかし、いつも下着姿で寝ているため、なのはのようにパジャマといった寝間着の服がないフェイトは一度脱いだ管理局員の制服を着ようとする。
仕事に疲れてろくに服も着替えずに寝てしまったことを装うためだ。
(とりあえず、これで乗り切ろう・・・・。)
そう思いながら制服に手を伸ばそうとするとーーー
「・・・・さっきから制服を脱いだり着たりしているが、何をしているんだ?」
現段階で一番聞きたくない声が耳に入ってしまう。その声を確認したフェイトは制服に伸ばした手を石化されたようにビシリッと音でもなりそうな雰囲気を出しながら固まってしまう。
(え・・・・ウソ、だよね・・・?)
震える手をなんとか抑えながら、フェイトは声のした方向に少しずつ顔を向ける。さながら錆びついた機械のような音がしそうな程の遅さであったが、彼女の視界にはしっかりと写ってしまった。
ソファに背をもたれかけながらも顔だけを回して自身をしっかりと見ているヒイロの姿が写り込んでしまう。
「え………あ………なん………で………?」
「お前自身がここに指定したからだが?」
いや、それは分かっている。分かってはいるんだけど。
フェイトは声を出したかったが、ほぼ裸同然の姿を見られたことと自分でもわかるくらい顔が真っ赤になっているのも相まってあまりの恥ずかしさに声を出せないでいた。
「あ、あの………一体どこから……聞いてました?」
よりによって開いた口から飛び出たのが、それか。これではヒイロの答え方によっては余計にダメージを負うだけじゃないか。
フェイトは心の中ではそう分かっていてもおもわず尋ねてしまった。それを聞いたヒイロは特にオブラートに包むことなくーー
「先ほどまで睡眠を取ってはいたが、お前が入ってきた時に目が覚めたからな。最初から聞いていた。」
ど真ん中ストレートを貫通する勢いで放たれたヒイロの言葉にフェイトは完全にノックアウトされた。
さらに先ほどまでの珍事を見られた挙句、思わず零してしまった言葉の一言一言、その全てを聞かれてしまっていると考えてもいいだろう。
「ふぇぇぇ…………////」
完全に面目丸つぶれになったフェイトは顔を深紅に染め上げ、涙目になりながらその場にへたり込んでしまった。
「・・・・・・。」
その様子をヒイロは疑問気に見ていたが突然立ち上がるとフェイトが取ろうとした管理局の制服を彼女に被せるように肩にかけた。
「あ…………。」
「お前の睡眠の取り方に何か言いがかりをつける気は無いが見られたくないのなら、最初から脱ぐな。」
ヒイロはへたり込んでいるフェイトにそれだけ伝えると再びソファに腰を下ろした。特にフェイトの下着を見て恥ずかしがっている様子は少なくとも見られなかった。
フェイトはヒイロに被せられた制服を握りしめると徐に立ち上がった。
そしてそのままベッドに戻っていくかと思いきや、彼女が向かった先はーーー
「・・・・・なぜ俺の方へ来た?」
ヒイロが座ったソファであった。薄く瞳を開けてジトっとした視線をフェイトに送るヒイロだったが、フェイトは顔を赤らめながらもむすっとした表情で無視し、ヒイロの隣に座った。
「・・・・私、なんだか周りに人がいないと寝られないんです。」
「ベッドにはなのはがいるだろう。その理論でいくと付き合いが長い奴の隣の方がお前も安心して寝やすいはずだが。」
「うぐっ・・・・。」
完全に出任せからの言葉をヒイロに正論で返され、思わず言葉を詰まらせるフェイト。しかし、恥も外聞もなくなり、失うものがなくなった彼女は簡単には引き下がらなかった。
「じーーーー。」
「・・・・・・・。」
フェイトは涙目になった目でヒイロの顔を睨みつける。どうやら徹底抗戦の構えをとったようだ。そのフェイトの視線にヒイロは特に反応を示さなかったがーーー
「じーーーー。」
「・・・・・・。」
フェイトは変わらずヒイロに視線を送り続けている。しかし、ヒイロは面倒に思っている雰囲気を出しながらも無反応を貫く。
「じーーーーー。」
「・・・・・・。」
フェイトが睨みつけ、ヒイロがそれに反応を一切示さない。そんなやりとりが三回ほど行われたのち、ヒイロが不意に肩をすくめる。
「・・・・・・・好きにしろ。付き合うのも馬鹿馬鹿しくなってくる。」
言葉の通り、心底から面倒に思っている口ぶりだったが、ヒイロが先に折れた。不承不承ながらもヒイロから承諾を得たフェイトは涙目から嬉しそうな表情に変えるとヒイロの座っている太ももに自身の頭を乗せた。
要するに膝枕状態である。
フェイトの行動に顰めっ面になるヒイロだったが、好きにしろと言った手前、その言葉を反故にする訳にはいかなかったため、ヒイロはそのまま寝ることにした。
その途中、軽く自身の膝の上で寝ているフェイトに視線を向けるとスヤスヤと寝ている姿が目に入った。
「・・・・バルディッシュ。お前はまだ起きているか?」
『・・・・どうかしましたか?ヒイロ殿。』
彼女のデバイスの名前を呼んでみるとフェイトの制服のポケットから機械的な音声が響く。
「フェイトにバリアジャケットを着させられるか。このまま調子を崩されては目もあてられんからな。」
『なるほど、サーはいつも下着姿で寝ているのでそこまで頭が回りませんでした。』
バルディッシュからなかなか悩ましい暴露があった後に一瞬、バルディッシュが輝くとフェイトに薄い防御フィールドが展開される。バリアジャケットの温度調節機能を用いて、ろくに服を着ていないフェイトが風邪を引かないようにするためだ。
もっとも魔力を持っていないヒイロはその無色透明な防御フィールドを感知することはできないが、バルディッシュがとりあえず展開してくれたと判断して寝を決め込んだ。
時間は流れ、暗かった空が徐々に明るくなり、光が部屋に差し込んでくる。それなりに部屋が明るくなると同時にベッドの上でもぞもぞしていたなのはがムクリと起き上がる。若干寝ぼけた意識を腕を真上に上げ、伸びをする事ではっきりさせる。
「あれ・・・?フェイトちゃん、もう起きてるのかな・・・。」
視線を隣に向けるもいつもいるはずのフェイトの姿がそこにはなかった。疑問に思いながらも顔を洗うために洗面台に向かおうとすると、ソファで座っているヒイロの姿が目に入った。
「ヒイロさん。おはよう。」
「・・・・・・ああ。」
長い沈黙のあとたった一言だけ帰ってくるが、むしろそれがヒイロらしいと思いながら再度洗面台に向かう。
「あ、ヒイロさん。フェイトちゃんのこと知りませんか?昨日帰ってくる前に寝ちゃって朝起きてもいなかったんだけど・・・。」
「ちょうどいい。お前の方から起こせるか?このままではろくに動けん。」
頭に疑問符が浮かびながらもなのはがヒイロの座るソファに近づくと驚きと意外に満ち溢れた表情を浮かべる。
そこにはヒイロに膝枕をされているフェイトの姿があった。
スヤスヤと寝息を立ててはいるが、服は羽織っているだけでとても着ているとは思えないほぼ裸同然の姿のフェイトになのはは若干赤くなった顔をヒイロに向ける。
「えっと、これは、その、え?」
「フェイトに強要された。それだけだ。」
特に引け目を感じている様子のないヒイロの口ぶりになのははそう言ったことはなかったと判断する。
なのははフェイトの肩を揺すり、彼女を起こそうと試みる。
しばらく揺らしているとフェイトの閉じられていた瞳が徐々に開かれた。
「ん、んんー・・・・?」
起きた直後のフェイトはまだ意識が朧げなのか目もはっきりと開かず完全に寝ぼけている様子であった。
「えっと・・・とりあえず、おはよう。フェイトちゃん。その、寝られた?」
その朧げなフェイトの視線がなのはに注がれると彼女は言葉を選びながら状況を尋ねた。
最初こそ、質問の意味が理解できなかったのか、疑問気な表情を浮かべるフェイトだったがしばらくすると昨夜のことを思い出したのか、急に顔を真っ赤にしながら顔を天井に向けると自身を見下ろすヒイロの顔があった。
「・・・・・・その、ごめんなさい。」
「・・・・全くだ。」
口を手で覆い、くぐもった声で謝るフェイトにヒイロは淡々とした口調で言い放つ。
「さっさと起きろ。午前中は新人達四人への教導、今日の午後から海鳴市に赴くのではなかったのか?」
続けざまにヒイロがそういうとフェイトはガバッと起き上がりながら焦った様子でバタバタと身支度を整え始める。彼女自身、忘れかけていたのだろう。
「手間をかけさせたな。」
「えっ!?あ、ううん!!そんなことないよっ!?」
ヒイロに突然声をかけられたことにびっくりしたのか声を裏返しながらなのはは気にしていないことを露わにする。
「お前も早く身支度を済ませておけ。教導官が遅刻しているようでは面目がまるでないぞ。」
「あ・・・は、はいっ!!」
ヒイロの言葉になのはもフェイトに続くように身支度を整え始める。ヒイロは視線を外し、無関心を貫くつもりだったがーーー
「んにゃーーーっ!?!?」
「な、なのはっ!?こんなところでこけないで・・!!手が当たってるから・・・!!」
焦りからか何かに躓いたのかなのはの悲鳴が部屋に響き渡った。同時にフェイトの恥ずかし気な声も聞こえる。多分、こけた先にフェイトがいて、巻き込まれたのだろう。
朝から一切休める気がない慌ただしい様子に流石のヒイロも僅かにため息をついた。
「・・・・・朝からまるで落ち着きがないな・・・。」
ウイングゼロからアインスが飛び出てくると開口一番に呆れた口調で肩を竦める。
それにはヒイロも全くの同意見であった。
んー・・・・どうしてこうなった(白目)