魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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タイトルに深い意味はない。なんとなく思いついただけ。


第36話 Beyond the Chaos 〜勘違いの連鎖を越えて〜

夜にフェイトから膝枕を要求され、朝は慌ただしい時間を過ごしたヒイロはなのはとフェイトの二人を見送ったあと、暇を持て余していた。

やることがただ単純になさすぎるのだ。何か予定を入れるにも午後から海鳴市に赴くことになっている以上、そう易々と予定を入れる訳にはいかない。

そういったもどかしさを抱きながらヒイロはソファに座り込んでいるとーー

 

「・・・・・暇なら二人の教導の様子でも見てきたらどうだ?この前立ち寄った時はヴィータとの話だけでほとんど終わってしまったではないか。」

 

アインスがそのような提案をあげてくる。確かに昨日はヴィータからなのはのオーバーワークについて聞いたくらいでなのはの教導をしっかりとは見ていなかった。

 

「・・・そうしてみるのもいいか。」

 

アインスの提案を受け入れるようにヒイロはソファから立ち上がる。アインスもウイングゼロの中に戻るとそのペンダントを手にしながらヒイロは部屋を後にする。

 

『出たのは良いが、朝食を忘れずにな。』

「・・・・・わかっている。」

 

アインスの言葉に少々顔を顰めながらヒイロは食堂へと向かっていく。

早朝とはいえ夜中と比べて人通りの多くなった廊下を黙々と歩いていき、徐々に食堂特有の人と人が会話する声を背景とした様子がヒイロの視界に入り込んでくる。

 

適当な席を探しているとスバル達新人四人組がテーブルを囲んで朝食を食べている様子が見えた。もっともこれからなのは達の教導があるため、声をかけるつもりはヒイロにはさらさらなかったがーーー

 

「んぐっ?んぐんぐ・・・・ヒイロさーん!!おはようございまーす!!」

 

たまたま座っている位置からヒイロが見えたスバルは口の中で頬張っていた中身を一気に飲み込むと、ヒイロに向かって大きく手を振った。

声をかける気がなかったのに向こうから名指しで声をかけられてしまったヒイロは無視を決め込むことすらできずに面倒な表情を浮かべながら彼女らが座っていたテーブルに視線を向ける。

 

「・・・・俺に構う暇があるのだったらさっさとその量を無くすことを最優先にしろ。」

 

ヒイロはスバルの皿にまだこんもりと乗っかっている料理の山に視線を送りながらスバルに完食を促す。

 

「大丈夫ですよ、これくらいだったら。」

「スバルの言う通り、あまり気にしなくても大丈夫ですよ。元々こういう奴ですし。」

 

スバルがヒイロにサムズアップをしながら笑顔を浮かべ、ティアナが慣れたような表情をしながら淡々と口に料理を運んでいた。

 

「ヒイロさんはなのはさん達より遅くに起きたんですか?」

「・・・・なのは達よりはとっくに早く起きていたが、少しばかり面倒ごとを熟すのに手間取った。」

「面倒ごと・・・・?」

 

エリオの質問に答えたヒイロに今度はキャロが疑問気に首を傾げる。

 

「昨日の夜、フェイトが『ヒイロ、待った。この話はまだ二人のような子供には早いと思う。何よりテスタロッサが精神的に死ぬ。』・・・・・わかった。」

 

昨日の事の顛末を話そうとしたヒイロだったが、アインスからかなり焦ったような表情を浮かべながら止められるとヒイロは不思議に思っているような雰囲気を出しながらも話すことをやめた。

エリオとキャロはアインスが止めさせたことに意味がわからないと言った様子でキョトンとしているが、スバルとティアナは昨日ヒイロとフェイトに何があったのかを想像をしてしまったのか、頰を赤く染めながら食事に集中していた。

 

「・・・・・あのー・・・ヒイロさん。もしかして昨日はお楽しみでした?」

「ちょ、ちょっと、スバル。いくらなんでもそれはヒイロさんとフェイト隊長にプライバシーってものがあるでしょ。」

「・・・・・一体あれのどこに楽しい要素がある。半ばフェイトに強請られる形だった上にろくに睡眠が取れなかった。特にさしたる問題はなかったがな。」

『まぁ、朝起きたらあのような状態になっていたことには流石に驚いたがな・・・・。』

 

その瞬間、食堂の時間が止まった。食堂に居合わせていた機動六課職員全員の視線がヒイロに注がれる。

さも何気なく言ったヒイロと精一杯ぼかしたつもりで言ったアインス、二人の言葉だったが、明らかに思わせぶりな言葉でしかなかったためにスバルとティアナは破顔したような表情をしながら手にしていたフォークやらスプーンをテーブルの上に落とす。

重力に従い、スプーンとフォークがテーブルと接すると金属音が時間の止まった食堂で虚しく響き渡る。

 

「・・・・・・?」

「ティ、ティアー!?私達、開けちゃいけない箱を開けちゃったっ!?」

「わかってる!!あたし達とんでもない地雷を踏んづけたわ!!!ほら行くわよ二人とも!!」

「え・・・えぇっ!?」

「わわ・・ま、待ってくださいー!!」

 

ヒイロが周りの様子に疑問を醸し出している間に顔を真っ赤にしたスバルとティアナは訳がわからないといった様子のエリオとキャロを引き連れ、食器をさっさと片付けて食堂から逃げるように出て行ってしまった。

 

「・・・・・・忙しない奴らだ。」

『そう、だな。一応、ある程度はぼかして言ったつもりだったのだがな・・。』

 

逃げるように立ち去ったスバル達の背中を視線で追っていたヒイロは食堂のカウンターで適当なものを貰った。

なおその時に渡してくれた食堂の女性が妙にいい笑顔だったのがヒイロには余計に疑念を湧かせた。

 

テーブルについて朝食をとったヒイロだったが、周りから視線を送られ続け、ヒイロは表には出さないが中々落ち着かなかった。

そんな食堂の雰囲気の中でコツコツと歩く音が妙に響く。周囲からの視線のせいで気を張っていたヒイロには余計に大きく聞こえ、思わず振り向いた。

 

「む・・・ヒイロか。空いているのであれば朝食を共にしても構わんか?」

「・・・・シグナムか。」

 

艶やかな赤紫色の髪をポニーテールに結んで降ろしているシグナムの姿がそこにはあった。

ヒイロは特に反応はしなかったが、それを承諾と認識したシグナムはヒイロが座っている椅子からテーブルを挟んで対称的な位置にある椅子に腰かけた。

 

「・・・・・朝起きて食堂に赴いてみれば、ここの雰囲気が変だったのだが、何か知らないか?」

「知らん。だが、昨日の事を話したらこの有様だ。おそらく原因はそれだろうな。」

「ふむ、その話を聞いても構わないか?」

『・・・・・まぁ、お前なら大丈夫か・・・』

 

ヒイロが何か言うより先にアインスが許可を下ろした。そのことになんとなく納得がいかないヒイロだったが、シグナムに昨日のことを話した。

そのシグナムは少し考える仕草をするとーーー

 

「・・・・テスタロッサに膝枕をしただけだろう?」

「ああ、そうだな。」

「しかもそれはテスタロッサから頼まれたことでお前が自らした訳ではない。」

「ああ、そうだな。」

「・・・・・何も問題はないではないか?」

「ああ、そうだな。」

『ちょっと待て。え、いや、まともなのは私だけか?違う。よくよく考えてみれば、私のぼかし方もだいぶ失敗しているなこれ。』

 

さもあっけらかんといったシグナムとヒイロの様子に思わずアインスは頭を抱えるような仕草をしながら静止の声を上げる。

一人で漫才のようなものを繰り広げているアインスにヒイロとシグナムは二人揃って疑問気な様子を露わにする。

ただ一人、スバルとティアナが盛大に、しかもかなりまずい勘違いの仕方をしていることを察したアインスは項垂れるように肩を竦める。

 

 

なお、訓練場に向かったエリオとキャロがフェイトに対してこのような質問をした。

 

「フェイトさん。昨日の夜ヒイロさんと何かあったんですか?」

「ふぇっ!?」

「ヒイロさんがさっきフェイトさんに寝かせてくれないことをされたって言っていたんです。スバルさんとティアナさんに聞いても私達には早いって言われて教えてくれないんです・・・・。」

「え、あ、いや、その・・・・なにもやましいことなんて・・・・。」

「やましいことってなんですか?」

 

思わず言った言葉にエリオが純朴な目を持ってフェイトに尋ねる。その目に含みが入っているようには見えなかった。完全に純粋を持って尋ねてきていることは明白であった。故にフェイトにはその質問に中々答えられずにいた。

膝枕してもらったって言えば済むことなのにだ。ただ女心というのは極めて複雑なものでーー

 

「ち、違うの!!あれはその、気が動転したというか、何というか・・・!!」

 

とにかく気を逸らそうと思いつくままの言葉を言うが、エリオとキャロは内容がつかめずに疑問気に首をかしげる。

 

「と、とりあえず!!その話は置いておいて、今日の訓練を始めます!!」

「・・・・・なんか、はぐらかされちゃったね。」

「うーん、フェイトさんにも何か事情があるんじゃないかな・・・・。」

「そっか。なら仕方ないか。」

 

二人のやりとりにフェイトは何か良心が苛まれるような感覚を味わった。実はただ膝枕してもらっただけである。本当にやましいことはしていないのだ。今回は。

 

(うう………ヒイロさんはなんで話しちゃったんですかー!!)

 

涙目になりながらも心の中でヒイロにそう叫ぶフェイトなのであった。

そんなこともつゆ知らず、ヒイロはシグナムと静かに朝食を取っていた。

お互い特に話すこともないのか、一緒のテーブルに座りながらもなにも喋らない時間が続いていた。

 

「そういえば、朝食をとった後、お前は何か予定があるのか?」

「・・・・なのは達の教導の様子を見に行くつもりだが・・・。」

「ならちょうどいいな。私もヴァイス陸曹、お前がここにきた時にヘリパイロットをしていた男だ。その彼と一緒に教導を見に行くつもりだったのだが、共に行くか?」

「・・・・わかった。」

 

唐突なシグナムの提案だったが、断る理由がなかったヒイロはそれを承諾する形で頷いた。

お互い朝食を完食したことを確認した二人は食器を片付けるとそのヘリパイロットのヴァイスと合流すべく廊下を歩いていた。

 

「よもや、こうしてお前と再び足並みを揃えられる日が来るとはな。」

 

シグナムの感慨深いと思っているような口ぶりにヒイロは疑問気に彼女の顔を見つめる。シグナムはそれを見るとわずかに表情を綻ばせる。

 

「いや、お前が主やテスタロッサ達の前から居なくなって10年も経ってしまっている。時間が経つにつれ、お前という存在は記憶の彼方へ消えていくと思っていた矢先にアインスを連れてきた上で時間跳躍をするとは思っても居なかった。」

「それには俺も同意見だ。まさか10年も時間を飛び越すとはな。」

「やはり慣れないか?成長した高町達を見るのは。お前にとってはまだ1日しか経っていないのだろう?」

「慣れる慣れないの問題は特にはない。身体付きは変わったとしても性格まで一変しているわけではないからな。だが、はやてはそのまま身長を物理的に引き延ばしたような成長の仕方をしているな。」

 

ヒイロがそういうとシグナムは軽く吹き出したような声を出すと口元を手で覆って身体を小刻みに震わせる。

 

「・・・・・お前でも、笑うことはあるのだな。」

「・・・・・まぁ、な。色々年月を経て、考え方が広がったと言えばいいかもな。」

 

意外性を含んだヒイロの視線が表情が綻んでいるシグナムの顔を見つめる。

彼女のそんな様子を見て、ヒイロは改めて10年の時間がシグナム達の中で過ぎ去っていることを認識する。

 

「・・・・ヒイロ、お前に一つ頼んでもいいか?」

「・・・・なんだ?」

 

ひとまず落ち着いたシグナムがヒイロに視線を向けながらそう聞いてくる。

ヒイロは顔を向けることはせずとも彼女の声に反応することでその説明の内容を求めた。

 

「今度、私と模擬戦をやらないか?」

「・・・・・無理だな。」

「断るではなく無理とは、な。理由を聞いてもいいか?」

 

ヒイロから模擬戦の申し出が断られることも予測していたシグナムだったが、無理という言葉にわずかに眉をひそめる。

 

「聴取会でウイングゼロ、俺のデバイスは九割程の装甲を喪失しているといったな?」

「ああ。存じている。それであまり過度な加速ができないのだろう?」

「・・・・ウイングゼロの今の状態は、お前たちにわかりやすく言えばバリアジャケットが展開できないデバイスと同意義だ。攻撃を喰らえば一切緩和などされていないそのままの威力が俺の身体を襲うことになる。デバイスには非殺傷設定があるが、それでも衝撃がなくなるわけではない。もっとも剣やハンマーといったベルカ式となれば、言うまでもないだろう。」

 

ヒイロがそう言うとシグナムは険しい表情を浮かべ、先ほどの自分の発言を戒めるように眉をさらに顰めた。

 

「・・・・つまり、模擬戦でも当たりどころが悪いとお前が死にかねんということだな。」

「大げさな言い方をすれば、そういうことになる。」

「・・・・すまない。さっきのは不躾な願い出だった。」

「気にするな。言いふらすようなことでもない。いらない心配をされても迷惑だ。」

「確かにそうかもしれないが・・・ならばわざわざ教える必要はないのではないか?」

「・・・・少し考えればわかることでも誰かに伝えておかねば重大なミスが生じる恐れがある。誤解や齟齬による解釈違いなどもそれに当たる。人間は言わねば理解することがない生き物だからな。俺はそれをお前に伝えておくことで無くすだけだ。」

「・・・・・親しいからと言って、なんでもわかってくれ、察してくれとは都合が良すぎるというものか。」

「そういうことだ。」

「・・・・そういえば、アインスはそのことはしっかり理解しているのか?」

 

シグナムがウイングゼロの中にいるアインスに向けて言うと、アインスがウイングゼロの中から飛び出てくる。その表情はわずかに俯いていた。シグナムにはそれだけで十分、わかってしまうほどのものであった。

 

「私は居候とはいえ、ウイングゼロと共にしているからな。おおよその状態も把握している。だからできれば模擬戦などは控えてほしいのが本音だ。ヒイロにもしものことがあってはいけないからな。」

「・・・・わかった。それだけ聞ければ十分だ。」

 

シグナムの納得した表情を見届けたアインスはウイングゼロの中に戻っていった。

 

「・・・・あまりお前が怪我を負うようなことがないことを祈りたいな。」

「そう戦場は甘くない。いつ、どこで不測の事態が動くかわかったものではない。それはお前だってわかりきっていることだろう。」

「わかっているさ。だが、それでも願うくらいはいいだろう?」

「・・・・・それは好きにしろ。」

 

そのタイミングでちょうど視線の先に濃い緑色の整備服に身を包んだ男が視界に入る。その男はシグナムとヒイロが視界に入ると手を振りながら駆け寄ってくる。

 

「お、シグナム姐さん。っと、お前は確かなのはさん達の知り合いのーー」

「ヒイロ・ユイだ。機動六課に民間協力者という形で世話になる。よろしく頼む。」

「ヴァイス・グランセニック陸曹だ。ヘリパイロットをしているからどこかに任務に行くんだったらいつでも頼ってくれよな。」

「・・・・基本はゼロの方が早いから、俺がヘリに乗り込むことは早々ないと思うがな。」

「おっと、ソイツは言ってくれるねぇ。六課のヘリだって負けちゃいねぇぜ。」

「ヴァイス陸曹。あいにくだが、それは絶対に無理だ。ヒイロのデバイスは単純速度でテスタロッサを抜き去ることができる。」

「・・・・・いやいや、冗談きついっすよ姐さん。あのフェイトさんに速度で勝るやつは見たことがねぇ。」

「・・・・・人に理解してもらうというのは存外に難しいものだな・・・。」

「・・・・それはその人間が持つカリスマというものだろうな。はっきり言って、お前にはサラサラないように見えるがな。」

「・・・・・・所詮私には剣しかない女だよ・・・・。」

(・・・・俺なんかしたかなぁ・・・。ってもフェイトさんが速さで負ける様子ってのもあんまし浮かばないのも事実なんだよなぁ・・・。)

 

ヒイロの言葉にショックを受け、自虐気味に笑みを浮かべるシグナムにヴァイスは少しばかり申し訳なさそうな思いをしながら、心の中でフェイトを執務官足らしめる強さの一つであるスピードに唸っていた。

 

しばらくシグナムとヴァイスとともに訓練場に向かって歩いていくとシミュレーションシステムの上に木々が生い茂った小島が投影されているのが視界に入ってくる。

 

小島を一望できる埠頭のような場所に来るとヒイロが以前、ヴィータからなのはの重傷についての話しを聞いた場所にコンソールが置かれていた。

シグナムがその端末の前に立ち、画面を操作すると空間に現れたディスプレイからシミュレーションシステム内の様子が映し出される。

 

スバルはヴィータの攻撃をひたすらプロテクションなどの防御魔法で防いでいく。時折ヴィータの強烈な攻撃の前に吹っ飛ばされて木に身体を打ち付けられるも彼女は必死に食らいついていく。

 

ティアナはなのはの周囲に飛んでいる色とりどりの魔力スフィアにその場から動かずに様々な変則的な動きをする弾丸を当てて、対応を強化する訓練を行っていた。

 

キャロとエリオはフェイトの主導で小型の機械から放たれる攻撃をその身を翻したり、動き回ったりすることで回避する訓練をしていた。

 

「へぇー、新人達もなかなかいい動きをするようになったもんだ。」

 

映し出されるスバル達の訓練風景の映像を見ながらヴァイスは声を唸らせる。

ヒイロも映像を見ながらスバル達の様子を見ていた。

 

(・・・・スバル・ナカジマが主に味方を守り、敵と先陣を切って戦う前衛、ティアナ・ランスターが状況判断能力がもっとも問われる司令塔の役割、エリオ・モンディアルはスピードで相手を翻弄し、キャロ・ル・ルシエは補助魔法での援護と言ったところか。)

 

ヒイロは彼女らの戦闘における役割をなのは達の教導から見抜いていた。ティアナの指揮下でスバルが相手とのクロスレンジでの戦闘で引きつけ、エリオのいつぞやかのフェイトを彷彿とさせるそのスピードで強襲を行う。そこにキャロの魔力ブーストが組み合わされば、悪くないコンビネーションが可能になってくるだろう。

 

 

「ヒイロ、お前の視点からスバル達の動きはどう思う?」

「・・・・昨日はヴィータからなのはの教導に関して聞かれ、今度はスバル達の出来具合か。よほど奴らに期待しているようだな。」

「俺も新人達にはかなり期待しているんだぜー。アイツら将来、絶対にかなりやるようになるぜ?」

「私も彼と同じ意見だ。まぁ、お前からみれば少々荒削りなところは否めないと思うがな。」

 

ヴァイスとシグナムの目が画面に映っているスバル達に期待の目を寄せている中、ヒイロも同じように視線を向ける。

しばらく見つめていると、ふと気になる点があることに気づいた。

 

「スバル・ナカジマのあのホイールのようなものがついたナックル・・・あれは片方しかないのか?普通ナックルは両方につけてこそだと思うのだが・・・。」

「ん・・・?ああ、リボルバーナックルのことか。あれは、もう片方を彼女の姉が持っているからだな。」

「姉?姉妹なのか?スバル・ナカジマは。」

「陸士108部隊のある女性局員、名前をギンガ・ナカジマ。スバルの姉なのだが・・・おそらく仕事柄共に合同捜査を行うこともあるだろうから、その時に詳しく紹介してもらってくれ。」

「わかった。話は戻すがもう片方はそのスバル・ナカジマの姉が持っているんだな?」

 

ヒイロの言葉にシグナムは答えながら頷いた。スバルに姉がいることに驚きだったが、ヒイロはさして表情を変える様子を見せずに再び訓練風景に視線を集中させる。フェイト主導の下で回避訓練を続けているキャロとエリオにこれと言った問題は見られない。体力的な問題は特に幼い少女であるキャロには顕著だがそれはおいおいつけていけばいい。

 

「・・・・・・?」

 

だが、ヒイロには少し、ほんの少しだけ引っかかるものがあった。どちらかといえばそれは戦場における第六感のようなものに近かった。

 

(・・・・何か、動きが妙だな。動きが機敏、というより激しすぎる。無駄、というわけでもなく、これは・・・全力か?なのはの教導のレベルの度合いを知らないからなんとも言いようがないが・・・・)

 

その視線の先にはティアナの訓練風景の映像があった。なのはの撃ち出す魔力スフィアにもっとも適応する弾丸を選び、撃墜する訓練をやっていたのだが、いかんせんティアナの様子から余裕のようなものが感じられないように思える。

 

「ヒイロ?どうかしたか?」

 

そんなヒイロの様子に気がついたのか、シグナムが疑問気に尋ねてくる。

 

(・・・・確証が持てないな。迂闊にシグナムに話して、いらん厄介ごとを起こすのは避けるべきか。)

「いや、なんでもない。」

「む・・・・そうか。ならいいのだが。」

 

ヒイロはティアナの様子から視線を外し、シグナムと向き直りながらそう答える。

ヒイロの対応にわずかに違和感を覚えたシグナムだったが、ひとまず追及することはせずにそのまま訓練風景を眺めることにした。

 

その後、ヒイロは特に訓練風景に口を挟むこともなく、午前中の時は流れていった。

 




まーたやらかしてるよこの作者。
そして、最近の悩み、実はまだ原作4話からこれっぽちも進んでいない。私びっくり。

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