魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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第39話 帰らなければならない理由

フェイトからのメールを受け取ったヒイロははやてを伴って、なのはの実家である翠屋へと向かう。

ヒイロもなのはの誘いで10年前に赴いたが、その時は彼女の兄である高町 恭也からの視線に気づき、自分がいると雰囲気が悪くなると踏み、何も口にせずに翠屋を後にした。

 

もっともそのおかげでまだ車椅子を引いていたはやてと接触できたのだから、災い転じて福となる、といったところだが。

 

「・・・・・ここも然程変わっていないようだ。」

 

一度しか来たことはなかったが、記憶の中にある光景となんら変わらない店舗が翠屋へと訪れたヒイロ達の視界に映っていた。

 

「あれ、ヒイロさん来たことあるんか?」

「・・・・一度だけな。」

 

はやてが意外そうな顔をしながら翠屋のドアを開ける。ドアに備え付けられた鈴が来客を告げる音を店内に響かせると翠屋のエプロンに身を包んだ快活な印象を感じさせる女性ーー高町 美由希がヒイロとはやてに近寄る。

 

「いらっしゃいませー・・・って、はやてちゃんか。なのはからここを集合場所にしていることは聞いているから、奥の方の広い席を使ってね。」

「ありがとうございます。美由希さん。」

 

彼女は来客がはやてだと認識するとあらかじめなのはから聞いていたのか奥の方の席に進むように誘導する。はやてはお礼を言いながら充てがわれた席に向かい、ヒイロもテーブルを挟んだはやての対面に座った。

 

「・・・・もしかして、君がヒイロ君かな?」

 

カウンターの方から男性の声がヒイロの名前を呼ぶ。ヒイロはなのはの家族に名前を名乗った覚えはなかったが、ひとまず僅かに警戒をしながら声のした方を振り向く。

 

「・・・・・・なのはの父親か?」

「ああ、そうだ。私は高町 士郎。君の言う通り、なのはの父親だ。それとそんなに警戒をすることはない。なのはから君のことと名前を教えてもらったくらいだ。」

「む・・・・。」

 

ヒイロは警戒心を機敏に察知されたことに僅かにだが表情を強張らせる。自分の名前をなぜ知っているかに関してはなのはが教えたのだろうと勝手に推察させてもらった。

 

「・・・・・前々から出来る人物だとは薄々と感じてはいたが・・・。」

「それをいうなら私の方もだよ。よもや、このようなところで君のような強い人間と出くわすとは。」

 

ヒイロと士郎、二人の間で何故か緊迫感が生まれる。およそ和やかな翠屋の雰囲気とは場違いすぎる空間ができてしまったことにはやてはおろか美由希でさえ表情をひくつかせている。

 

「あなた?そんなに殺気立たせて何をしているんですか?せっかくのお店の雰囲気が台無しよ?」

 

ただならぬ雰囲気を感じ取ったのかカウンターの奥、構造的に調理場から女性が顔を出す。

その女性を見た士郎はやってしまったというように表情を先ほどまでヒイロに向けていた見る人が見ると恐怖を感じさせるような薄い笑みから申し訳なさげなものに変える。

 

「・・・・ごめん、桃子。少し年甲斐もなく血が騒いだみたいだ。」

「あら、あなたがそこまで言うほどの人なのね、この子は。」

 

謝罪の言葉を述べる士郎にその妻である高町 桃子はヒイロに微笑みを浮かべた顔を向ける。

ひとまず翠屋を覆っていた緊迫感が解かれたことにはやてと美由希は胸をなでおろした。

 

「なのは達が来るまで美由希が案内してくれた奥の方の席についていてくれ。はやてちゃんやヒイロ君は何か飲み物でも飲むかい?」

「私はコーヒーで。ヒイロさんは?」

「・・・・・・コーヒーでいい。」

 

士郎の質問にはやては答えながらもヒイロの方に視線を向ける。翠屋のメニューを知らないヒイロははやてと同じコーヒーを頼んだ。

 

席に着いたヒイロ達に程なくしてコーヒーが差し出される。熱いコーヒーをしばらく口に含みながらなのは達を待つ。途中、はやてはコーヒーを飲み干すと何か理解したような顔を浮かべると席を立った。

 

「・・・・どうかしたのか?」

「ん?いや、ヴィータとシグナムの二人に食材の買い出しを頼んどったのやけど、ちょうど終わったっていう念話があったから先にコテージに戻っとるな。」

「・・・・俺も着いていくか?」

「それはダメ。ヒイロさんには会っとかなあかん人がおるんや。だから翠屋でそのまま待っててな。」

「・・・・了解した。」

 

ヒイロからの返答に笑みを浮かべたはやては士郎にコーヒーの代金を出すと翠屋を後にした。

しばらく一人で静かに座席に座っているヒイロだったがヒイロが翠屋に入店した際になった鈴が鳴り響くと同時にドアが開かれる。

視線をそちらの方に向けてみれば、なのは達スターズ小隊にサイズが一般的な人の身長まで大きくなったツヴァイが翠屋に入ってきた。

 

「なのは、いらっしゃい。」

「ただいま、お父さん、お母さん。」

 

入ってきたなのはに士郎は喜んでいる声色と表情でなのはを出迎え、桃子も同じような笑みを浮かべながら自身の愛娘を出迎える。

 

「先に来ている人がいるからそこの席に座るといい。」

 

そういいながら士郎はヒイロの座っている席の方に視線を向ける。釣られるようにヒイロの方に視線を向けたなのは達は驚きの表情を浮かべる。

 

「ヒイロさん、早いね。まだ連絡してからそんなに時間は経ってなかったと思うけど・・・。」

「たまたま近くまで来ていたからな。」

「・・・・あれ、八神部隊長は・・・?」

「はやてちゃんなら、先にコテージに戻って夕ご飯を作っているのですよ。とっても美味しいですよ、はやてちゃんの手作りは。」

 

スバルの疑問にヒイロの代わりにツヴァイが答える。そのツヴァイが嬉しそうな笑みを浮かべながらはやての手料理が美味しいことを察したスバルは自然とそちらの方に意識が持っていかれる。

 

なのは達がヒイロが座っている席の周囲に座る。ヒイロはちょうど隣に座ったなのはにカウンターにいる士郎に聞こえないような声量でなのはに声をかける。

 

「・・・首尾はどうなんだ?」

「一応、センサーのようなものは張り巡らせたけど。多分掛かるのは夜じゃないかな。」

「・・・・了解した。」

 

軽いやりとりだけを行い、まだやってこないフェイト達ライトニング小隊を待つ。ヒイロの周囲ではなのはの家族に関する会話があったが、ヒイロには特に言うことはなかったため、話題に混ざることはなかった。

 

そして、会話の最中に鳴り響く鈴の音。

 

ヒイロ達が入り口に視線を向けるとフェイトがエリオとキャロを伴って翠屋に入ってくる。そして、三人に続くように翠のように輝く緑色の髪を持った女性が現れる。

 

現在はフェイトの義母であり、アースラの艦長であったリンディ・ハラオウンその人だ。

10年経ってもヒイロの記憶と然程どこか変わった様子は見られなかった。

 

「こんばんは、士郎さん、桃子さん。」

「いらっしゃいませ。」

「こんばんは、リンディさん。」

 

リンディはカウンターにいる士郎と桃子に挨拶をする。どうやらなのはの両親とリンディはかなり仲が深まっているようだ。

ヒイロが三人の様子を見ているとリンディの視線が席に座っているヒイロに向けられる。

 

「・・・・・本当に、生きていたのね。」

「・・・・・ああ。」

 

ヒイロがリンディの言葉にそう答えると彼女は僅かに目を潤ませるも、すぐにその涙を自身の指で拭う。

 

「・・・少し、外で話さない?」

 

リンディの提案にヒイロはわずかに隣のなのはやまだ席に座っていないフェイトに軽く視線を向ける。

それを見て僅かに笑みを浮かばせながらなのはとフェイトは揃って頷く。

 

「・・・わかった。」

 

リンディの提案を承諾したヒイロは席を立ち上がり、先に外へ出たリンディを追うように翠屋の外へ出る。

 

「・・・・お前達の時間で10年振りのようだな。アリサ・バニングスもそうだったが、お前もお前で全く変わらないな。」

「あら、それは褒めているのかしら?」

「見たままを言ったまでだ。」

 

ヒイロの言葉にリンディは僅かに表情を綻ばせる。

人間10年経っていれば、容姿もかなり変わってしまうものだが、リンディはそれこそ10年前から全く変わらないと言っていいほどヒイロの記憶そのままであった。

 

「・・・・貴方が次元震に巻き込まれて行方不明になってから、なのはさん達はもちろんのこと、私含めたアースラの皆もかなり意気消沈していたわ。」

 

リンディの言葉にヒイロは何も返すことはせずに黙って聞き入る。

 

「特にフェイトは・・・あの子はそれが如実に出てきていたわ。貴方があの子にあげた手製のテディベア。あれをあの子はいつも抱いて寝ていたわ。」

「・・・・そうか。」

「あの子にとって、ヒイロ君。貴方は兄のような、もしくはもっと別な、大切な人になっているのよ。」

「・・・・兄はクロノがいるだろう。フェイトはお前の養子になっているのではないのか?」

「あくまで『ような』ものよ。あの子にとっては貴方は初めての男性の友人みたいなものだから。」

「友人、か。俺にそんな役割が務まるとは思ってはいないが・・・。」

「役割じゃなくて、自然と出来上がる関係よ。私からはできればあの子のそばにいてほしい。それだけよ。」

「・・・・それは保証しかねるな。」

 

フェイトのそばにいてほしい。そのリンディの願いをヒイロは軽く首を横に振ることで否定する。僅かに表情を沈めたものに変えるリンディにヒイロは続けざまに言葉を放つ。

 

「・・・・俺が冷凍睡眠されていたカプセル。あれはどこにある?」

「・・・・あれはクロノの管轄で一応保管はしてはあるけど・・・。もしかして元の世界に帰りたいの?」

「そもそもとしてなぜ俺が冷凍睡眠されていたのか、そこに理由がある。正確な記憶はないが、少なくともバートンの反乱が終結した後、アフターコロニーは平和へと進んでいたはずだ。ならば、平和な世の中に俺のような兵士は必要ない。だが、こうして俺のような兵士が冷凍睡眠される、ということはいずれ必要になるという証拠に他ならない。俺のような兵士が必要とされる場所、それはーーー」

「戦争・・・・!?」

 

リンディの思わず溢れた言葉にヒイロは静かに、それでいて確かに頷いた。

 

「俺の元いた世界、アフターコロニーではまだ戦いが終わっていない。平和を脅かす奴がいる。ならば俺は元の世界に帰らなければならない。」

「・・・・戻りたいだけなら、カプセルを使う必要はないんじゃないのかしら?」

 

ヒイロはリンディのその言葉を首を僅かに横に振ることで否定する。

 

「・・・・アフターコロニーに魔法技術など存在しない。もし、俺がこちらに来た時の状況のそのままで帰らなければ、プリベンターは確実にそこから疑問を抱き、俺が次元世界のことや魔法技術のことを話さなければならないことになる。」

「プリベンター・・・・?」

「俺が所属していた組織の名だ。平和となった世の中で戦争の火種を搔き消すために存在する統合政府直属の武装組織、といったところだ。」

「・・・・そのプリベンダーって貴方から見て信用できないの?」

「そういうわけではない。お前が覚えているかどうかは定かではないが、俺のウイングゼロと同じようなことだ。」

 

そのヒイロの言葉にリンディは考え込む仕草を見せる。しばらくリンディが記憶を振り絞っている様子を眺めるヒイロ。

 

「・・・・10年も過ぎ去っている。クロノが子供を成した今、お前も既に世間一般的には祖母と呼ばれる年齢だろう。思い出せなくとも無理はない。」

「ちょっと黙っててくれない!?私だって歳を取っているのは自覚しているけど、まざまざと指摘されるのは精神的ダメージが大きいのよ!!まだよ、まだ終わらない!!私の記憶力は、伊達じゃないっ!!」

 

ヒイロの言い草にくるものがあったのか眉間に手を当て、自身の記憶を振り絞るリンディ。

見かねたヒイロが何か言おうとするもリンディから言わないでとでも言うような静止の手が伸びてきてしまい、ヒイロは心底から面倒に思っているような表情を浮かべる。

 

「・・・・・もういいか?」

「ええ、大丈夫。つまり、この世界で貴方のウイングゼロがオーパーツなように、アフターコロニーでも私たちの魔法技術は完全に未知の技術。戦争の火種になりかねない。」

 

少々時間がかかったが、リンディが意地で過去のヒイロの発言を思い出したことにヒイロはひとまず息を軽くついた。

 

「でも、冷凍睡眠された貴方を解凍した時、記憶は全部なくなっていたのよ?また冷凍睡眠を行えばーー」

「記憶が吹き飛ぶ可能性は否めないだろうな。もっともそちらの方が都合が良いと感じるがな。」

 

ヒイロの言葉にリンディは僅かに悲痛に歪めた顔を浮かべる。ヒイロの言っていることはもっともだ。ヒイロがアフターコロニーに戻ったとして記憶がなくなっていた方がヒイロの今後の行動に支障は少ない。

だがそれは、彼が海鳴市やミッドチルダで過ごした日々、そして何よりフェイトやはやてたちのことも何もかもを忘れ去ってしまうことだ。

 

「・・・・そんな悲しいこと、言っちゃダメよ。人は誰かに忘れられるというのが、一番悲しいんだから・・・。」

「・・・・そうなるかどうかは俺が冷凍睡眠されている時間にもよるかもしれないがな。」

 

その言葉を交わした後はヒイロとリンディの間では長い沈黙が走った。ヒイロは特に話すことがない、リンディはヒイロが自分たちのことを忘れてまで、また戦場に行かなければならないというもどかしさから。

 

「・・・・長話しすぎたな。一度翠屋に戻った方がいい。」

「それも、そう、ね。」

 

ヒイロはリンディにそういいながら翠屋のドアに手をかける。

 

「ヒイロ君。」

 

取っ手を握り、今まさに扉を開け放とうとした時、リンディから声がかかった。ヒイロは扉の取っ手から手を離し、リンディの方に顔を向ける。

 

「貴方が戻りたいっていう意向はわかったわ。だけど、どのみち探すにしても時間がかかるのは目に見えているわ。その間になのはさんやフェイト達には必ず伝えてあげて。また急な別れ方をするのは、あの子達はもう嫌だって思っているだろうから。」

「・・・・・了解した。」

 

その言葉に僅かにだが笑みを浮かべるリンディ。ヒイロは彼女のその顔から話は終わったと判断し、手にしかけた扉の取っ手を引き、翠屋の店内に戻っていった。

 

「・・・・貴方がそういうことにならない様にあの子達なりに強くはなっているだろうから。」

 

扉の先にいるヒイロに向けて、届くことのない言葉を零しながら、リンディもヒイロに続くように翠屋に戻っていく。

 

ヒイロとリンディが戻ってきたのを見たなのは達は思い思いのケーキを注文する。

席に戻ったヒイロもなのはに何を頼むか聞かれてしまい、仕方なくメニューに書いてあった適当なものを注文する。

程なくして、ヒイロの前にとりあえずメニューを見ていた時に目に付いた真っ赤なイチゴが乗っかったショートケーキが出される。

なのは達が士郎の作ったケーキに舌鼓を打っている様子を見て、ヒイロもフォークで切り分けて、その一部を口に運ぶ。

 

「・・・・・うまいな。」

 

翠屋で出されるケーキの出来は菓子作りに関しては素人のヒイロにとっても純粋に美味だと思えるほどの出来栄えであった。

 

しばらくヒイロの周囲でなのは達が談笑をし、ヒイロは黙々とケーキを食べるという中々奇妙な光景が繰り広げられているところに、ふとスバルが視線を向ける。

 

「そういえば、ヒイロさんってなのは隊長とフェイト隊長の師匠なんですよね?」

「ああ。前にも聴取会や食堂でも既に話しているがな。」

「・・・・実際どれくらい強かったんですか?身体検査でも測定不能を叩き出すって言われてもあまりピンとは来ないんですけど・・・・。」

 

スバルに問われたヒイロだったが、フォークに刺していたケーキの一部を口に入れ、飲み込むとなのはとフェイトに視線を向ける。

 

「俺が話すより、実際に体感しているお前達の隊長陣に聞いた方が早い。自己評価などあまりあてにはならないからな。」

 

ヒイロからそう言われ、スバルはもとより、ティアナやエリオといった新人達の視線が二人に集中する。それらを感じ取ったなのはとフェイトは少しばかり苦い顔をしながらヒイロの異常な身体能力の片鱗を思い返す。

 

「私はあくまで接近戦の時の防御を念頭に置いていたからそれほどでもなかったよ。それでも当時の私にはかなりきつかったけど。まぁ、聴取会でシャマルさんも言ってたけど、腕の骨を粉砕しているのを目の当たりにしたくらいかな?」

「・・・・・え、あれ嘘じゃないんですか?」

「・・・・・・しかもバリアジャケット越しにやったんだよ。」

 

スバルの乾いた笑顔になのははその笑みを視界に入れないように顔を逸らしながらボソッと呟く。

その反応にスバルは直感的にマジの話であることを察し、さらに引きつった笑みに変える。

 

「それじゃあ・・・フェイト隊長は?」

「私は・・・・・その・・・・どちらかと言うとクロスレンジが主体だったから普通に、ううん、あれを普通っていうのはどうなのかな・・・。とりあえず、模擬戦方式でやっていたんだよ。」

 

なのはからフェイトの方に視線を動かしながら彼女に質問をするティアナ。

その視線にフェイトは視線を右往左往させながら言葉をこぼすように当時の訓練の内容を思い返す。

 

「・・・・ヒイロさんにリンカーコアがないのはちゃんとわかっているよね?」

 

フェイトの言葉に新人四人は疑問気な様子を露わにしながらも首を縦に振った。

突如として思いつめたような表情をしながら顔の前で両手の指を絡ませ、どっかの汎用人型決戦兵器をつかっている組織の司令のようなポーズを取ったフェイトに新人達は思わず気圧されそうになる。

 

「普通のジャンプで10メートルくらいの高さまで飛んだの。魔法とかそういうのはいっさい使わないで、自分の脚力だけで。」

「10メートル、ですか?」

「・・・・あ、あれ?」

 

エリオの微妙な言葉にフェイトは困惑した様子を見せる。エリオはもちろんのこと、スバルもどこか拍子抜けといったような顔を浮かべていた。

 

「フェイト隊長、多分みんな普段からそれ以上の高度を飛んでいるから感覚が違うのかと・・・・。あたし自身それほど驚いてませんし・・・・。」

「え、もしかして、キャロも?」

 

ティアナの言葉にフェイトはキャロに視線を向けるもどこか微妙な顔を浮かべていた。

 

「じゃ、じゃあこっちはどうかな。エリオ、私の高速移動の魔法、知ってるよね?」

「え、は、はい。ブリッツアクションとかソニックムーブですよね。」

 

微妙な空気になりかけたところをフェイトは咄嗟に話題転換するついでにエリオに自身の使える魔法について尋ねる。

突然質問され、驚いた様子を見せながらもちゃんと答えてくれたエリオにフェイトは笑みを浮かべる。

 

「フェイト隊長のブリッツアクション、ホントに速いですよね。隊長戦でとったって思っても次の瞬間にはもうどこかに移動されていて、全然目で追えませんもん。」

「ありがとう、スバル。でも、そのブリッツアクションなんだけど・・・・ヒイロさん、初見で付いてきたんだよね。」

「はい・・・・?」

 

スバルが笑顔のまま表情を驚きのあまり硬直させるが、それに構わずフェイトは話しを続ける。

 

「訓練中、ヒイロさんのあまりの防御の硬さに思わず使って、背後に回り込んだの。その時はまだ幼かったし、私の魔法の精度が拙かったっていうのもあるのかもしれない。それでも結構自信はある方だったんだよ?後で謝るつもりだったんだけど、ヒイロさん、背後に飛んだ私のことを目で捉えてて、カウンターを叩き込まれました・・・・。」

 

新人四人達の苦い顔からの視線がケーキを黙々と食べているヒイロに注がれる。

それにヒイロは特に気にする様子を見せる素ぶりすらせずに淡々とした様子を貫いていた。

 

「ちなみに、フェイトちゃん、この前のリニアレールでヒイロさんと会った時、ゴンっておっきな音が響いたのはスバルとティアナは聞いているよね?」

「え、あ、はい。」

「一応聞こえたので、振り向いては見たんですけど、その時にはフェイトさんがヒイロさんに飛びついて泣いていたので、なんの音だったかは詳しくは聞かなかったんですけど・・・。」

「あれ、フェイトちゃんが至近距離でブリッツアクションしちゃってヒイロさんに突撃したんだけど、それを普通に躱されて列車の外壁に額をぶつけた音なんだよ。」

「ちょ、なのは!!それは言わないでよ!!」

 

そんななのはとフェイトのワイワイとした会話が繰り広げられる中、新人四人の表情はもはや苦いとかそんなレベルではなく、完全に引きつった表情をヒイロに向けていた。

 

「な、なんでフェイト隊長のブリッツアクションを目で追えるんですか・・・?」

「・・・・普通に目で追えるからだが。」

「・・・・あたしもそれくらい強くなれるのかな・・・・・。」

 

 

スバルの質問に平然とそう答えるヒイロにティアナはどこか渇望するような視線をヒイロに向ける。

その視線に気づけないヒイロではなかったが、一体どこからそのような言葉が出てくるのかが見当がつかないため、深く言及することはやめておくことにした。

 




ティアナの強さへの思いってこんな感じでいいのかなぁ・・・・。
と、結構不安に思っているわんたんめんです。
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