魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜 作:わんたんめん
突如としてヒイロの体から現れた漆黒の魔力光。それを衣のように身にまとったヒイロはウイングスラスターを吹かし、本来のウイングゼロの機動力を発揮させる。
「ティアナが放った弾丸に内包されている魔力はかなりの物だ。近距離で爆発させればお前もただでは済まないぞ!!」
「了解した。弾丸の破壊が無理ならばーーー」
アインスからの報告を聞いたヒイロはさらにスラスターを蒸しながら迫る弾丸に気づく気配が一切ないスバルに向かって一直線に飛翔する。
「それより先に救出するまでだ!!」
ヒイロはスバルに手が届きそうなほどまで近づいたところでスピードを落とし、突然ヒイロがやってきたことに驚いているスバルを有無も言わさず片腕で抱きかかえるとすぐさまその場から離脱する。
次の瞬間、スバルのすぐそばまで来ていたティアナの弾丸が先ほどまでスバルが滑っていたウイングロードに直撃し、爆発を起こした。
(アインス、もう魔力の行使の必要はない。)
「え………あ………ヒイロ………さん………?」
ひとまず間に合ったことを確認し、ヒイロがアインスにそういうとヒイロの身を包んでいた漆黒の魔力光が消失する。
ヒイロに抱きかかえられたスバルはどこか困惑した様子で視線を右往左往させていた。
「…………お前の先ほどまでの行動。あれはお前が先陣を切ることによりターゲットを自身に集中させる囮の役割だな?」
「は、はい………。」
ヒイロは質問に僅かに声をうわずらせながら答えたスバルから視線を地上に移した。
ヒイロの視界にはティアナが外したと思われる一機のガジェットがまだ行動しているのが確認できた。
「・・・・・今は安全性の確保を最優先にする。」
ヒイロはスバルを抱えたまま高度を落とすとビームサーベルを構えながら残った一機へ向かっていく。
「わわわっ!?ヒ、ヒイロさん………!?」
「黙っていろ。舌を噛んでも知らんぞ。」
ヒイロの腕の中で喚くスバルを無視してヒイロは高度を下げた勢いそのままビームサーベルを振るい、最後のガジェットを両断した。
両断したガジェットの爆発を背にしながらヒイロは地上に着地する。そして、ヒイロが降り立った地点の付近には銃を構えたまま呆然とした様子でいるティアナもいた。
「ヒイロっ!!大丈夫か!?」
ひとまず抱えていたスバルを下ろし、ヒイロはティアナに状況の説明を求めようとしたタイミングでヴィータが不安気な表情を浮かべながら現れ、ヒイロの容体を確かめる。
「問題ない。」
ヒイロがそう答えるとヴィータは安心したような表情を浮かべるが、すぐさまそれは怒りに塗れたものにすり替わってしまう。
「ティアナッ!!!何やってんだよ!!」
「っ…………あ…………。」
その怒りの表情と共に怒声を向けられたティアナは体を強張らせ、表情を暗いものに変えてしまう。
「ま、待ってください!!さっきのは私が悪いんです!!私が……!!」
「はぁっ!?バカ言ってんじゃねぇ!!」
「ティアは悪くないんです!!」
怒るヴィータに自分に責任があると言い張るスバルの二人の言い争いが続いている中、ティアナが何か、ハッとしたような表情をすると、一転して悔しげに表情を歪ませた。どちらかと言えばその表情はヴィータの怒声より、スバルが彼女自身を庇う発言をしている時に一層深まっているのをヒイロは見逃さなかったが、指摘するのはひとまず後回しにすることにした。
理由としては至極簡単、今はまだ、戦闘中だ。一応ある程度の制圧をしたヒイロの方はまだしもヴィータの方は戦闘中の前線にいたにも関わらずスバル達の援護に来てくれたのだ。
シグナムやザフィーラが手練れだとはいえ、ガジェットに突破されているという万に一つがあったからだ。
「ヴィータ、そこら辺にしておけ。シグナム達の方ではまだ戦闘が継続している。ここは俺が防衛に加わる。お前はさっさとシグナム達の方へ戻れ。」
「っ………だけどよ、ティアナのさっきのミスショットは隊長として………」
「説教ならあとでいくらでもやっていればいい。だが優先順位を履き違えるな。少しは頭を冷やして冷静に状況を鑑みろ。お前がこの場にいればいるほどガジェットが前線を突破する可能性が上がっていることを自覚しているか?お前もお前で感情的になりすぎだ。さながら子供の癇癪だぞ。」
「て、テメェ…………!!」
ヒイロの言い草にヴィータは声を荒げそうになるが、すんでで湧き上がる怒りを押し留めて一度大きく息を吐いた。
「…………お前の言う通りでもある、か。…………悪い。少し、大人げなかった。」
「ヴィータ副隊長………。」
スバルが困惑気味に声をかけるもヴィータはグラーフアイゼンを肩に担ぐとスバル達に背を向け、シグナム達の元へ戻ろうとする。
「………あとはアタシ達がやる。二人は下がって、ホテルの入り口でエリオ達と一緒に防衛をしてくれ。ヒイロ、二人のこと、頼んだ。」
ヴィータの言葉にヒイロは軽く肩をすくめるが、拒否をするような反応を見せなかった。さながら仕方がないからやってやると言っているようであった。
それを見たヴィータは空へ舞い上がり、前線へと戻っていった。
「行ったか…………。」
ヴィータが前線に向かったことを確認したヒイロはティアナに視線を向ける。彼女の表情は沈みきっていて、とてもではないが、大丈夫な様子には見えなかった。
「・・・・ティアナ。お前はガジェットに攻撃を行う時、四発のカートリッジを使っていたそうだな。」
「っ………。」
ヒイロの言葉にティアナは苦い表情を浮かべるが、ヒイロは構わず彼女を問い詰める。
「アインス曰く、四発はかなり無理のある使用数とのことだ。」
「あ、あれはコンビネーションの一環で………!!」
「フレンドリーファイアを前提にした代物など、コンビネーションと言えるはずがない。明らかにあれはミスショットと言えるものだ。」
「う…………でも………ティアは悪くないんです!!」
スバルの言葉にティアナは一層苦いものに表情を深める。視界の端でそれを見ていたヒイロは僅かに呆れた様子で肩をすくめる。
「お前の優しさ、それが時折他人を傷つけていることを知っておいた方がいい。人によっては他人に優しくされる方が傷つく奴もいる。」
そう言ってヒイロは僅かにティアナに視線を送る。ヒイロの視線を追ってティアナの様子を目の当たりにしたスバルは思わず言葉を詰まらせる。
「アインス、周囲にガジェットの反応は?」
「・・・・・周囲に金属反応はない。シグナム達が頑張っているんだろう。」
ひとまず、アインスから周囲にガジェット反応がないことを聞いたヒイロは憔悴したような表情をしているスバルとティアナを連れて、ホテルのエントランスに戻った。
『ヒイロ君、その・・・ティアナ、大丈夫?』
「・・・・表情から察せられるが相当堪えているようだ。前線からは一度下げさせたが・・・そこから先はお前の指示に従う。」
エントランスに差し掛かったところに屋上にいるシャマルから念話が届く。
ヒイロはティアナ達から少しばかり距離を取ると二人に念話の内容が聞こえないように小さな声で返答する。
『・・・・ティアナとスバルはヒイロ君が抜けた裏口の警備をお願い。一応、攻めてきたガジェットはヒイロ君が倒してくれたけど、また襲来がないとは限らないから、よろしくね。』
「了解・・・・。」
シャマルからの指示に答える二人だったが、その声にいつもの声色はなかった。
「・・・・今の二人に任せて問題はないのか?」
『今のところ、裏手の搬入口にそれらしい反応はないわ。それにオークションも時間的にそろそろ終わるはずだから。』
「・・・・わかった。」
スバルとティアナを裏手搬入口に向かわせ、ヒイロはエリオとキャロと共にエントランスでガジェットの襲来に備えた。
しかし、前線のシグナム達守護騎士が奮闘してくれたのか、ホテル近辺にガジェットの姿が現れることは一度もなかった。
一応、ウイングゼロのレーダーを任せていたアインスが反応が引っかからなかったことを見ても、全体としては上々の結果と言えるだろう。
「ヒイロさん、お疲れ様でした。」
「お疲れ様でした。」
シャマルからガジェットの反応消失が告げられるとエリオとキャロがヒイロに労いの言葉を言ってくる。
ヒイロはその言葉に何か返すわけではなく、おもむろに二人の様子を見る。
「・・・・・今回のティアナの行動、お前たちはどのように感じた?」
不意に二人にそう問いかけるとエリオとキャロは困惑気味に表情を俯かせる。
「………僕たち自身、ティアナさんがなんで急な行動をとったのかはわかりません。ガジェットに手を焼いてしまっていた僕の力不足で、状況を打開するためにあのような無茶をしたんでしょうか………?」
エリオが悲しげに言った言葉にキャロも彼と気持ちが一緒なのか、言葉には出さなかったが、悲しげに表情を俯かせる。
「………人一人の力で戦況を打開するなど、かなり難しいことだ。もし、ティアナがそう感じてあの行動をしたのであれば、思い上がるなと一蹴するところだ。だがーーーー」
ヒイロはそこまでいったところで一度思案の海に入る。スバルを伴っていたとはいえ実質的なスタンドプレーの行動をとったティアナ。
もし状況を打開するためにあのような無理をしたのであれば、無茶をあまりせず、もっと周りと協力しろの言葉で済むがーーーー
(仮にティアナの兄であるティーダ・ランスターの死が関わっているともなれば、少々面倒だな………。火に油を注ぐ行為かもしれんが、一度ティアナ自身の口から聞く必要がある。)
「ヒイロさん………?」
ヒイロが突然だんまりになってしまったことが気になったのか、キャロが首を傾げながらヒイロに声をかける。
「………俺は裏手搬入口に戻る。お前たちはこの場で待機しろ。そのうちだがフェイトあたりが実況見分に来るだろう。」
「あ……………。」
エリオの制止の声にヒイロは一度振り返るが、エリオはその伸ばした手を引っ込めてしまう。
大方ティアナのところへ向かうと踏み、自分もついていくと言おうとしたのだろうが、ティアナになんと声をかければ良いのかわからなくなってしまったのだろう。
「………ティアナのことは任せろ、などと大仰なことは言えんがお前がそこまで気を負う必要はない。それこそ余計な迷惑になることもある。お前達はティアナにいつも通りに接してやれ。」
ヒイロはエリオにそれだけ伝えるとスバルとティアナがいるはずの裏手搬入口に向かった。
「戦闘………終わったみたいだよ……。」
「そう………。」
スバルが僅かに気が引けているような感じを声色に含めながら壁に寄りかかって立っているティアナに声をかける。
しかし、ティアナはぶっきらぼうに反応するだけでスバルの言葉にあまり耳を傾けているとは感じられなかった。
「ティア………。」
「先に戻ってて、私もすぐに行くから。」
心配そうなスバルの声にもティアナは顔を俯かせたままろくにスバルと顔を合わせようとしない。
「…………わかった。また、後でね。」
スバルは長年の付き合いだからかティアナがなんとなく一人になりたいのを察してしまったのか、足早に裏手搬入口から走り去っていった。
スバルの駆け足の音が遠ざかると同時に壁に寄りかかっていたティアナは力が抜けたようにしゃがみ込む。
今回の戦闘でガジェットを普段の自分では破壊できないこと。
さらに弾丸の制御ができなかった挙句に味方であるはずのスバルの撃墜未遂。
兄の力を証明するどころか、自身の力不足を痛感したティアナは一人声を押し殺して涙を流すのであった。
「兄さん………私は………!!」
その涙の真意を知る者は一人もいなかった。そう、今までは。
「…………そんなところで何をやっている。」
「っ!?」
突然、声をかけられたティアナは思わず涙で潤んだ目をそのままあげ、声をかけてきた相手を凝視する。
彼女の潤んだ視界には憮然とした様子でヒイロが立っていた。
「ヒイロ、さん………。」
ティアナがどうしてといった風にヒイロの名前を呼ぶも、何も答えずにヒイロは彼女の隣で壁に寄りかかった。
一人にして欲しかったティアナは嫌そうに表情を浮かべながらもヒイロにそれが悟られないように自身の体を抱え込むことでそれを隠した。
「………一人にさせてくれませんか?」
「そのような決定権がお前にあるのか?」
「………それはヒイロさんだって同じですよね。」
ティアナの指摘にヒイロは何も答えなかったが、彼はティアナのそばに居続ける。
それに若干の鬱陶しさを感じながらもヒイロを振り払うようなことはしなかった。
「…………さっきはヴィータに邪魔をされたから聞けなかったが、何故あのような無茶をした?」
「………それ、は…………。」
ティアナは答えようとするも言葉を詰まらせてしまう。何故ならその理由が単なる周りへの嫉妬というとてつもなく醜いものだったからだ。
ティアナははっきり言ってなのはの教導に意義を感じられなくなっていた。確かに基礎を重点的にするのはいいことだが、なのはの教導はいつまで経っても同じことの繰り返しばかりで段階が一向に次のステップに進んでいなかったのだ。
そのことが自分に力がないからだと思い始めた上に、スバルやエリオ達の成長が如実に現れていた。
そのことがティアナの強さに対する渇望の気持ちを強め、結果的に自身の制御できる弾丸の量を超えた攻撃を行い、後一歩遅ければフレンドリーファイアをしてしまうことになった。
「………お前の訓練風景を覗いていた。画面越しだが、時折お前からは焦りのようなものが見られた。」
「っ………!?」
ヒイロの言葉にティアナは思わず表情を強張らせた。まさか、ヒイロが見ていた上に焦りが見透かされていたとは思わなかったからだ。
「お前が焦る理由も分からんわけではない。なのはの教導は基本的に基礎に忠実の上、応用段階にまだ入っていないのも確認済みだ。だが、基礎がしっかりとできていなければ応用など持ってのほかだ。そんなことがわからないお前ではないだろう。」
ヒイロはティアナを軽く見やるが、ティアナは抱え込んでいる自身の足に体を埋めたまま何も反応を示さない。
そんなティアナを見ながらもヒイロは話し続ける。
「だが、それを差し引いても今回のお前の単独行動は眉を顰めざるを得ない。何か、理由があるのだろう。お前をそこまで駆り立てた何かが。」
ここまでヒイロが言ってもティアナは一向に口を開こうとはしなかった。あくまでだんまりを貫くティアナにヒイロは呆れた様子で肩をすくめる。
そしてーーー
「お前の兄、ティーダ・ランスターの無念を晴らすためか?」
「・・・・・知っているんですか?」
「・・・・一応、な。」
ティアナはヒイロが自身の亡くなった兄であるティーダ・ランスターを知っていることに驚きの表情を浮かばせながら顔を上げるが、すぐさま沈んだものにして再び塞ぎ込んでしまう。
「私の兄さんは本当に優しかったんです。」
塞ぎ込みながらもティアナはポツリポツリと大好きだった兄のことを話し始めた。
両親を早くに亡くした彼女にとって兄であるティーダは唯一の肉親であった。
本来金銭を稼ぐはずの両親が既にいなかったティーダとティアナは兄であるティーダが文字通り身を粉にして働くしかなかった。
そのためにティーダは時空管理局に入り、その下で魔力の研鑽に励んだ。
その努力が実ったのか、数年するとティーダは管理局の地上部隊でもエリートの部類に入る首都航空隊の一員になった。さらにティーダは執務官を志望しており、まさにエリート街道を邁進している、はずだった。
事の発端はある犯罪者の追跡任務を遂行している時だった。その任務に従事していたティーダは逃走している魔導師と交戦したのだが、その結果彼は殉職してしまったのだ。さらには犯罪者を取り逃がしてしまうという失態まで重ねていた。
そこからはヒイロが事務室で覗き見た管理局の会見と相違はなかった。
「私は証明したいんです。兄の弾丸は、ランスターの弾丸に貫けないものなんかないって。だから少しでも力をつけたいんです。兄さんの夢だった、執務官になること・・・それを叶えれば見返せるんじゃないかって。」
ティアナの独白をヒイロは瞳を閉じて静かに聞いていた。ティアナが話し終わったのを頃合いに再度瞳を開けると視線をティアナに向ける。
「・・・・・お前はティーダ・ランスターになりたいのか?」
「え………?」
唐突なヒイロの質問にティアナは思わず素っ頓狂な顔を浮かべる。なぜなら突然兄になりたいのかと尋ねられたのだ。意味がわからないといった顔をするのも無理もないだろう。
「どうなんだ?」
「そ、それは………兄さんのようにはなりたいですけど………。」
「だったら、その気持ちは捨てておけ。その心持ちで強くなったところで現実に打ちのめされるだけだ。」
「ど、どういうことなんですか!!兄さんのようになりたいって思って何が悪いんですか!!」
ヒイロの言い草が癇に障ったのか、ティアナはガバッと立ち上がるとヒイロに向けて険しい視線を向けながら睨みつける。
「お前がティーダ・ランスターが無能であるという評価を撤回させるために動いても変わるのはお前に対する管理局の評価だけだ。一度貼られたレッテルを剥がすことは極めて難しい。ましてやその人物が死んでいるのであれば、なおさらのことだ。」
要は死人に口なし。ヒイロが言っていることはそういうことであった。ティアナにとってそれは到底受け入れられないことであった。まだ隊長であるなのはやヴィータ、もしくはスバルやエリオであれば彼女は平静を保てたかもしれない。
しかし、ヒイロはまだティアナと顔合わせを行ってから数週間経っただけの知り合いだ。
そんな人物に自身が死にものぐるいで頑張っている理由を否定されてしまえばーーー
「アンタに………あたしの何がわかるっていうんですかっ!!!」
怒り、そして悲しみに染まった表情をしながらティアナはヒイロの胸ぐらに掴みかかり、怒りの声をヒイロにぶつける。
「父さんと母さんを亡くして、肉親と呼べる人が、兄さんしか居なくなって………亡くして、言われもないことを言われて、それを晴らそうとするために強さを求めて、何が、何が悪いんですかぁ!!!!」
「何も知らないアンタにそんなこと、言われたくないっ!!!」
ティアナがそこまで感情をぶちまけたところで、嗚咽をこぼし、ヒイロの胸ぐらから手を離し、その手で顔を覆うとその場でへたり込んだ。
しばらくの間、搬入口の側ではティアナの嗚咽だけが響いた。
「そうだな。確かにお前の言う通りだ。俺には家族と呼べる人間はいなかったからな。家族を亡くした悲しみなど、到底知るはずもない。」
「え…………?」
正確に言えばいないわけではなかったが、現状話すことでもないため、ヒイロはそのまま話を続ける。
「俺は両親とともに過ごした記憶などない。物心ついた時にはこの手には銃を握っていて、人を殺していた。」
「ウソ………ですよね………!?」
ヒイロの言葉にティアナは信じられないといった様子で驚愕の表情をヒイロに向ける。
「俺は既に何人もの人間を自らの意志で殺している。もっともその中には、望まぬものもあったがな………。」
そういいながら自らの手を見つめるヒイロの表情はどこか憂いに満ちていた。
さながら後悔しているようにも思えたし、決して忘れてはいけないものであるようにも思えた。
「…………死んだ人間を思うなとは言わん。だが、他人をお前の戦う理由の土台にするのはやめておけ。その内潰されるぞ。その他人自身に。」
「お前のための、戦いをしろ。」
ヒイロは座り込んでいるティアナにそう伝えると荷物の搬入口を通じてホテルへと戻っていった。
「あたしのための、戦い………?」
ヒイロの去っていく後ろ姿を見つめながらティアナはそう呟くしかなかった。
「…………珍しいな。お前が自身の素性をあそこまで曝け出すとは。」
「必要だと感じただけだ。」
ウイングゼロからひょっこり出てきたアインスにヒイロは視線を合わせることなくそう言い放つ。
たったそれだけの理由で必要あらば自身の身上さえ明かすヒイロにアインスは彼らしいと思いながらもそれ以上何も言うことはなかった。
「しかし、まさかあそこまで突っ込んだ話をするとはな・・・・。お前の言い草によっては余計に悪化する可能性を考えてなかったわけではないだろう?」
「・・・・否定はしない。」
搬入口にヒイロが建物の床を踏み鳴らす音だけが響くなか、ホテルの一階へ続く階段を登ろうとした時、ふと、在るものが視界に映った。
それは荷台部分が明らかに外部から人為的な力によりこじ開けられたトラックだった。
ヒイロはそのトラックの近くに警備員が数人いることから異常だと判断し、そのトラックの近くに向かう。
「………これは何があった?」
「ん?ああ、アンタか。いや、このトラックの荷台から何か盗まれたみたいなんだ。
「何……?」
ヒイロは訝しげな表情をしながら荷台のトラックを見つめる。荷台のなかは散乱こそしていたが、何か盗まれたとは見えなかった。
「このトラックに乗せられていた荷物のリストから盗まれたものを特定できたのか?」
「い、一応見つけはしたんだけどさ………」
ヒイロの言葉に微妙な表情を浮かべる警備員。ヒイロはその警備員に怪訝な顔をしながら言葉を待った。
「何故だか知らんけど、オークションとは関係のない品物みたいなんだよな。」
「オークションと関係がない・・・?」
警備員の言葉にヒイロが怪訝な顔を浮かべた。
ヒイロはその警備員から詳しい話を聞いたのちに、はやて達の元へと向かう。
時間的にもそろそろオークションが終わってもいい時間だったからだ。
ヒイロは搬入口からホテル内に戻るとはやて達を探すべく、まだ人だかりの多いパーティ会場を練り歩いた。
最近感じたこと
嘘………話をぶっつけ本番で書く人って異質なの………!?
↑基本ストックなどしないでその場のテンションで書いちゃう人