魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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一週間ぶりやなー・・・・
時間が流れるのは早いっす。


第46話 管理局の闇

荷物の搬入口からホテルの屋内に戻ったヒイロはオークションが終わり、帰路につきはじめているのか、まばらになりつつあったパーティーの人だかりをくぐり抜ける。

 

しばらく屋内を歩き回っていると、前線から戻ってきていたのかヴィータやシグナムを含めた機動六課の隊長陣が揃い踏みになっているのを見かける。

なお、パーティーが終わったため着替えたのか、はやて達は既に六課の濃い茶色の制服姿になっていた。

 

「あ、ヒイロさん。お疲れ様。」

 

近づいてきたヒイロに気づいたのか、フェイトがヒイロを視界に収めると労いの言葉を送る。

それにヒイロは視線を合わせるだけの反応にとどめるとすぐさま視線をはやてに向ける。

 

「はやて、お前に伝えておかなければならないことがある。搬入口でだが、どうやら俺が離れた後に何者かが荷台から物品を強奪したようだ。」

「なんやて………その盗まれた物品は?リストぐらいはあるんやろ?」

 

ヒイロの報告にはやては驚愕した表情を浮かべながらヒイロに盗まれたものの詳細を尋ねる。

 

「………その物品についてなのだが、どうやらリストには存在しない物品らしい。その場にいた警備員から物品のリストを見せてもらったが、そのリストから盗まれたものはなかった。」

「どういうことだ………?盗まれた形跡はあるのに、それがリストにないんだろ?」

「………大方、密輸品など、表には出せないようなものなのだろう。裏取引でもする腹づもりだったのだろうな。」

 

訝しげな表情を浮かべるヴィータだったが、ヒイロの説明でそれは納得した表情へと変わる。

 

「………密輸品ならば、持ち主がそう簡単に被害を俺たちに伝えるような馬鹿な真似はしないはずだ。」

「うん、わかった。わざわざ報告に来てくれてありがとな。」

「…………こちらとしては然程気にすることはないが、被害は被害だ。最低限、お前には伝える必要があっただけだ。それとだがーーティアナのことはなのはに伝えたのか?ヴィータ。」

 

ヒイロははやてからヴィータに視線を移すとティアナの名前を口にする。ヴィータはヒイロがティアナのミスショットのことを言っていることを察するとわずかに表情を曇らせながら頷いた。

 

「そうか、ならば話は早い。俺からは以上だが、これから破壊したガジェットの見分を行うのか?」

「そうやな。今回の戦闘で急にガジェットの動きが良くなったとか気になる点が新たに出たから、その調査がメインやな。ヒイロさんも参加する?」

「………俺は管理局員ではないが、問題はないのか?」

「どのみちやることないんちゃうか?」

 

はやての言葉にヒイロは少しばかり考え込む仕草をする。はっきり言ってはやての言う通り、物品に関する被害を伝えてしまえば、ヒイロにやることはほとんどない。強いて言えばユーノに管理局の内部についてのことを尋ねるくらいのものだ。

さらに言えば、管理局の組織に属してはいるが、あくまで協力者であり、正式な人間ではない。そんなヒイロが実況見分に参加すれば、周りからの目は良くないものになる可能性もあり得る。

 

「あ、見分に参加する人は六課の人やからあまり気にしなくても問題あらへんよ。」

「…………そうか。だが、悪いが断る。少しユーノに聞きたいことがあるからな。」

「ユーノに?確かにこのホテルにロストロギアの説明のために来ているけど………会ったの?」

「偶然にもな。警備の任務が済んだ後にアイツと会うことになっている。」

 

首をかしげるフェイトにヒイロはユーノとたまたま鉢合わせたことを伝える。

 

「でしたら、一緒に行きますか?私もユーノに少し聞いておきたいことがあるので。そのあとに現場検証に参加する形ではどうですか?」

「…………いいだろう。」

 

フェイトの提案にヒイロは静かに頷いた。

 

 

 

「ヒイロさん。」

 

先を行くはやて達の後ろを歩いていたヒイロになのはが声をかけた。

後ろを振り向き、なのはの方に顔を向けると柔らかな笑みを浮かべている様子が目に入った。

 

「スバルのこと、助けてくれてありがとう。」

「………礼はいらん。それよりもティアナに目を向けておけ。仮にもお前が隊長なのであればな。」

 

スバルを助けてくれたことに対しての礼を述べるなのはにぶっきらぼうに言葉を返すヒイロ。

振り向いていた顔を前に向けると先行くはやて達の後を追うようにホテルの外へ歩いて行った。

 

 

 

ホテルの外でフェイトを伴って歩くヒイロ。しばらく外を見回すが、ヒイロが一度ホテル内で見た濃緑のスーツを身に纏い、度が低そうに見える薄いメガネのレンズを光らせているユーノの姿があった。

 

「ユーノ。」

「あ、ヒイロさん。それとフェイトも、久しぶりだね。」

「ヒイロさんほど時間が空いているわけじゃないだけど……久しぶり。ユーノ。」

 

ヒイロが声をかけるとユーノはヒイロと側にいたフェイトに声を返す。

フェイトは僅かに笑みを浮かべながら、ユーノに挨拶を返した。

 

「それで、用件は何だい………なんていうまどろっこしいのはやめて、本題に入ろうか。ジュエルシードのことだね?」

「話が早くて助かる。それで、どうなんだ?」

「それについてはまずはフェイトが行った調査の結果から行こうか。僕はそれに補足する感じで。」

「え、ええ…………?」

 

突然話題を振られたことにフェイトは困惑気味ながらもガジェットから発見されたジュエルシードについて自身が調べた内容を述べ始める。

 

「まず、盗み出されたと思われるジュエルシードなんだけど、調べたところ、地方に貸し出されている時に襲撃にあって奪われたものだった。」

「…………スカリエッティのことについて聞いた時、お前は基本的に持ち出されることはないと言ってなかったか?」

「うん、そのはずなんだけど、あのジュエルシードに限って地方に貸し出されていたことがわかったの。封印処理は施されているとはいえ、危険なロストロギアであることは変わりないのに。」

 

フェイトの調査報告を聞いて、ヒイロは思案の海に入る。本来であれば、厳重に保管されているはずのジュエルシードが知らぬ間に外に持ち運ばれ、そして盗まれた。

ヒイロはこの一連の流れに違和感を覚えた。些か、できすぎている、と。

 

「普通なら持ち出されることはないからありえないって言いたいところなんだけど………この前ヒイロさんが言っていた組織についての持論を聞いているとどうしても違和感を覚えちゃって………実際のところ管理局自体、空と地上で結構割れているから………。局員が持ち出していないとはあながち言い切れないのが私の正直なところかな。」

 

フェイトが困り果てたような表情をしながら調査してみた結果の感想を述べる。

彼女もあまり身内を疑うようなことはしたくないのだろう。だが、ガジェットの内部機構からジュエルシードが発見されたことをきっかけに少しずつ管理局に疑いの視線を向けているようだ。

 

「本局と地上の方で内部対立が起こっているのか?」

「結構、ね。本局の基本スタイルが使える人材ならなんでも使うっていうものなんだよね。例え、過去に犯罪を犯したとしても更生の意志ありと判断すれば大抵保護観察処分で済むし、嘱託魔導師の試験を合格してしまえば、かなり早い段階で日常に戻ることができる。」

「私とか、はやてがそれに当てはまるんだよ。私も過去に、なのはやユーノとジュエルシードを巡って戦ったことがあるから。それでその罪を償うために本当だったら、一、二年は普通にかかるところを嘱託魔導師の試験を合格したら、半年くらいで戻ってこれたから。」

 

ユーノの説明にフェイトが自分自身を例に挙げながら補足を行う。ヒイロはひとまずそのことに納得した表情をしながらユーノに説明の続きを求める。

 

「でも地上本部ーー特にその上層部の一部の人間はさほどよくは思っていないみたいなんだよね。」

「………当然だな。犯罪者などを抱え込んで戦力にするなど、自分自身の体に爆弾を埋め込むようなものだろう。あまり周りからの目もよくはないだろう。」

「さらに鍵になってくるのが、空と地上の保有する魔力ランクの差なんだ。ざっと見積もってみたところ、戦力的な比率は良くて7対3がいいところだね。これはしょうがないっていう言葉で済ませていいのかはわからないけど、空の方は色んな次元世界を飛び交うから自然と人材がそっちに持っていかれがちだ。」

「………地上本部はミッドチルダにあるのか?」

 

ヒイロの質問にユーノは申し訳無さげな表情をしながら重く頷いた。

 

「…………本拠地の戦力を手薄にしてどうする。強襲とか受ければひとたまりもないだろう。」

「やっぱりそういうよねー・・・君なら。」

 

ヒイロの発言が予測できていたのか乾いた笑みを浮かべながらもすぐさま疲れたようなため息をつく。

 

「一応、君とおんなじことを言う人がいないわけじゃないんだよね。だけどねー・・・。」

「…………まさかとは思うが、ソイツが内通者の可能性が高い人物か?」

 

苦い表情を浮かべるユーノは空間パネルを投影し、その画面に一人の男性の顔が映った写真を出した。

いかつい面持ちの50代の男性、青い管理局の制服の上からでもわかるその筋肉質な体つきにヒイロは一目で魔法を多用しない人物であることを察する。

 

「この人………レジアス・ゲイズ中将?」

「………中将か。俺が考えている内通者の条件には合致するな。」

「事件をもみ消せるほどの権力のある人物………確かにできそうだけど………うん、可能性としてはあるね。」

「実際、この人は結構黒い噂が絶えない人物ではあるんだ。クロノ曰く、レジアス中将は黒い噂は絶えないが、優秀なのは間違いはなく、武装強化によって地上の犯罪率を抑え込んでいる。よって人望も地上本部では結構ある方だ。一部では彼を英雄視している人もいる。」

 

ユーノからのレジアス・ゲイズについての説明を聞きながら、ヒイロは空間パネルに映った彼の画像を見つめる。

 

「………面倒なタイプだ。ただの私欲で管理局を牛耳っているならともかく、曲がりなりにも正義のために動いている奴は己の心情のままに動くからな。例え、それが悪だとわかっていてもな。」

「なんだか、そういう人がいたような言い方ですけど………。」

「…………否定はしない。」

 

フェイトの言葉にヒイロは瞳を閉じ、かつて、倒したはずの敵との決着に納得がいかず、その道すがらヒイロと矛を交えた仲間の姿を思い浮かべる。

 

「ユーノ、レジアス・ゲイズのその黒い噂とやらの詳細はつかめているのか?」

「はっきり言って、まだだね。無限書庫、と言っても実際はとりあえず書物を敷き詰められた整理整頓されていない馬鹿にならないほど巨大な本棚のようなものだから、探すのにも一苦労だよ。」

「…………わかった。ならば、はやてにレジアス・ゲイズのことを伝えた上でハッキングの許可を取るか。」

「ハッキング………?えっと、どこに?」

「管理局だ。魔法技術が発展して科学力も上がっているようには見えるが、結局は魔法が絡んでいる。純粋な技術面的のセキュリティではまだ疎かなところはあるはずだ。そこを徹底的に攻める。」

「ほ、本当にするんですか………!?管理局にハッキングなんて、明るみになったら、なんて言われるか……!!」

「………これからの戦い、向こうにこちらの作戦が筒抜けになったおかげで容易く背後から刺されるのと、多少危険を冒してでも安全を取る。どちらを取るかは目に見えているだろう。」

「そ、それもそうなんですけど………!!」

 

ヒイロのハッキングを行うという宣言に思わずフェイトが狼狽する様子を見せる。

ハッキングを行ったとしてもしそれが明るみに出てしまえば、機動六課の評価はガタ落ちどころか解散させられることは間違いないからだ。

それとフェイトの執務官の矜持として公共機関への不正アクセスという目の前の犯罪行為を見逃すのはどうにも気がひけるというのもあった。

 

「無限書庫だといつ見つかるかわからないから、正直なところ、ヒイロさんがハッキングできるっていうなら、彼に任せた方が早いかなっていうのはあるかな。」

「ゆ、ユーノまで何言ってるのっ!?ヒイロさんがやろうとしていること、普通なら止めないとまずいことだよ!?」

「だって………仕事が楽に済むならそれに越したことは無いと思うよ、うん。」

「ユーノユーノ。ヒイロさんがやろうとしていること、一般的には犯罪、犯罪だから。」

 

光のない虚ろな目でそういうユーノにフェイトは彼の肩を掴んでゆさゆさと揺らしながらなんとか正気に戻そうとする。

 

 

「…………レジアス・ゲイズ。お前が敵かどうか、見定めさせてもらう。」

 

 

ユーノとフェイトのやりとりを見ながらもヒイロは空間パネルに映っているレジアスの写真に視線を向けながら、言葉を零した。

 

そのあと、ユーノと話すことは話したため、彼とはそこで別れたヒイロはフェイトと共にガジェットの現場検証に戻った。

結局のところ、破壊したガジェットからは大した情報を得ることはできなかったが、キャロがガジェットの動きが急激に良くなった少し前に召喚魔法の反応を感じ取ったという証言からガジェットに召喚獣が取り付いたことで動きが格段に良くなったということになった。

 

はっきり言ってヒイロには俄かに信じられないが、魔法ならばそういうことも可能なのだろうと自身の中で結論づけ、ヒイロ達、機動六課は隊舎へと帰還した。

 

 

 

「…………どうやら、馬鹿は見つかったようだな。」

 

隊舎に戻ったヒイロ達だったが、その時にホテルアグスタから被害届が提出された。内容は、積荷を盗まれたことに関してものだった。

ここまではまだ普通の被害届として受理することは可能だが、今回は訳が違った。

その盗まれたという報告はヒイロが警備員から聞いたリストにない品物以外なかった。

つまり、被害届を提出した人物は、そのリストにない品物、ヒイロの予測では密輸品かそこら辺の表立っては言えないものと踏んでいた。

そのため、簡単に、というよりそもそも被害届を出すはずがないと踏んでいたが、何を血迷ったのか、ノコノコと被害届を提出してきたのだ。

呆れたように肩をすくめるヒイロだったが、はやての指示によりすぐさま被害届を出した人物の調査を開始。

あえなく密輸品を取り扱っていた人物は取り押さえられた。

 

 

「うんうん、本当にやで。まさか被害届出すとは思わなかったわ。」

 

そういう部隊長室の椅子に腰掛け、頷きながらも乾いた笑みを浮かべるはやてに苦笑いを浮かべるのはフェイトとなのは。

現在、ヒイロを含めたスターズとライトニングの両隊長と副隊長が部隊長室に揃い踏みになっていた。

 

「さて、余談はここまでにして、本題に移ろか。今回たまたま密輸品だから良かったものの、積荷が盗まれたことには変わりはない。それについての原因究明をせなあかんけど、ヒイロさん、どう思う?」

「…………俺か?」

 

壁に寄りかかっていたヒイロが意外性を含んだ視線をはやてに向けるとにこやかな笑みを浮かべながら頷いた。

 

「一応こっちでも調べたけど、あの現場を良く知っとるのはヒイロさんや。そういうのを鑑みて一番初めにヒイロさんに聞いたんやけど、なんか思うことはある?」

 

はやてからこの言葉を受けて、ヒイロは腕を組んだまま少し考え込む仕草を取った。

程なくして、閉じていた瞳を開けると、はやてに自身の考察を述べ始める。

 

「どのみち魔法が絡んでいる以上、机上の空論を超えないが、一般的な視点から見て、今回の積荷の強奪に関与している人物はおよそ三人だ。」

「三人………それだけですか?」

「むしろそれ以上は人目につく可能性が高くなる。盗みを働くにあたって人に見られては本末転倒だからな。必要最低限の人数で十分だ。」

 

はやての側で疑問気に首をかしげるツヴァイにそういうとヒイロは自論の説明を続ける。

 

「まずはガジェット群を召喚していた召喚士で一人。それとその召喚士をキャロと同じように魔法の詠唱中に行動ができないタイプなのであれば、それを護衛する奴で二人。そして強奪の実行犯で三人だ。」

「うーんとよ、ガジェット出してた召喚士の連中と盗んだ奴が同じ一味とは限らねぇんじゃないのか?」

「その可能性もないとは言い切れんが、都合良く戦闘中に盗みを働いたというより、ガジェット群を囮とし、俺達がそれの対応に追われている間に犯行をしたと考えた方が辻褄はまだ合うはずだ。」

 

ヴィータがヒイロの犯行グループが三人であるという推測に訝し気な顔を浮かべるが、ヒイロは状況を鑑みて、同じグループに属している集団による犯行の方が可能性が高いことを伝える。

ヒイロの説明に納得したのか、ヴィータは少し会話を整理した後にそれ以上意見を述べることはなかった。

 

「ふむ、そうなってくると密輸品の中身が気になります。主、密輸品の中身はスカリエッティにとってそこまで価値のあるものだったのですか?」

「それはまだなんともやな。一応、事情聴取とかはやっておるけど、それがスカリエッティと繋がるかどうかと言われたら、はっきり言って微妙なところや。」

 

シグナムが手に顎を乗せながらはやてに密輸品の中身を尋ねるも微妙な顔をしながらまだはっきりとしていないと言った様子で肩をすくめる。

 

「…………物の考え方だが、密輸品自体に意味はないのかもしれんな。」

「え………それってどういうことですか?」

 

不意に放たれたヒイロからの言葉にフェイトが驚いた様子でヒイロに視線を向ける。

 

「重要なのは、俺達から盗みを働いたという事実そのものにある、ということだ。」

 

ヒイロの言葉にシグナムやヴィータはピンと来ていないのか首をかしげ、疑問気な表情を浮かべるだけだった。

なのはとフェイトもシグナム達二人と似たような反応を見せるだけだったがーーー

 

「ーーーーー舐めた真似しよるなー。」

 

ただ一人、はやてだけはヒイロが言わんとしていることを察したのか、口元はニンマリと笑みを浮かべながらも目元から完全に怒りを露わにしていた。

いわゆる、目が笑っていない、という奴である。

 

「えっと………つまり、どういうこと?」

 

はやての様子に困惑気味ながらもなのはが尋ねた。

 

「んー?これは一種のメッセージなんや。スカリエッティからのな。で、その内容なんやけどーーー」

 

 

「例え、私達が立ちはだかろうともそんなん関係なく、いつでも欲しいもん取っていけるっていう事実上の宣戦布告や。」

 

 

はやてがそう言った瞬間、部隊長室の空気が氷点下を下回り、冷え固まった。

共通してこの場にいる全員がコケにされたことに怒りを覚えたのだろう。

 

シグナムからは静かに、それでいてふつふつと、迂闊に近づけば斬られそうな雰囲気をーー

ヴィータから燃えるような怒りが視覚化されそうなほど明らかな怒気を醸し出しーー

フェイトは体からパリパリと稲光が見え隠れしていた。確実にキレているのは明白だ。

そして、なのはに至っては何故か彼女の特徴的なツインテールが溢れ出る魔力のオーラにより重力に逆らって上に向かって逆巻いていた。

 

「……………うわっ……ツヴァイ、こっちに来い。」

 

思わずウイングゼロから顔を覗かせたアインスがはやてや守護騎士達の様子を引いているような目で見ながら居場所がなさ気に視線をオロオロと困惑気味に右往左往させているツヴァイを呼び寄せる。

圧迫感が凄まじかったのか、ツヴァイは救世主でも見かけたかのような明るい表情を浮かべると一目散にヒイロの元へ駆け寄った。

 

「ヒイロ、どうするのだ?この様子だとしばらく時間がかかりそうだが………。」

 

駆け寄ってきたツヴァイの手を優しく包みながら視線をヒイロに向けてアインスはそう尋ねる。

ヒイロはそのアインスの問いに最初こそ、瞳を閉じて我関せずと言った様子だったが、薄く瞳を開け、未だ困惑気味なツヴァイを視界に捉えるとなのは達に気づかれないよう、物音一つ立てずに混沌と化した部隊長室から無言で出て行った。

 

「こ、怖かったですー………。」

 

緊張から解き放たれたのか、部隊長室から出るとツヴァイはヘナヘナと脱力しながらアインスにもたれかかった。

 

「………あの様子だとしばらくはあのままか?」

「………知らん。」

 

ツヴァイの背中を優しくさすりながらのアインスの言葉にヒイロは呆れた様子で振り向き、部隊長室の扉を視界に収めた。その扉は何故だかは知らないがミシミシと悲鳴を上げているように見えたのは幻覚ではないだろう。

 

「…………………。」

 

今にも壊れそうな扉を数秒見つめたのち、ヒイロは怯える二人の妖精を連れて、部隊長室を後にした。

 




刻一刻と近づく魔王降臨の時………。

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