魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜 作:わんたんめん
ヒイロがティアナの自主的なトレーニングを見に行った次の日。ヒイロはいつものようにまだ時刻は四時を回ったばかりで日が昇ったばかりだったため、所々にしか光が差し込んでいない隊舎の中を歩いていた。
やることがそれほどないため、割と朝の散歩もどきが日課になり掛けているのは本人とアインスだけの内緒である。
「………もはやあの二人を起こさずに部屋から出て行くのも手馴れたものだな。初めから二人は起きてなかったが。」
「………任務と比べれば難易度は高くない。」
ヒイロが寝ている部屋=なのはとフェイトの部屋のため、いつも部屋から出て行く時には二人を起こさないように細心の注意を払って抜け出している。
もっともヒイロはいつもソファで、部屋の主であるなのはとフェイトはベッドで寝ているため、ヒイロが過剰な物音さえ立てなければそれほどバレる要素はないのだが。
「ところで、結局なのはのことはどうするのだ?」
アインスが不安気な表情をしながら、ヒイロになのはのことについて尋ねた。
ヒイロは特に言葉を返すことはしなかったがその雰囲気にはどこか難し気に考えているようにも思えた。
「……現状では、なのはの真意はよくわからない。直接聞くのも手の一つだが、教導中に奴のところに赴くのは、ティアナに余計な気を使わす可能性も否定はできん。だから今ははやてからハッキングの許可を取り、レジアス・ゲイズを嗅ぎまわることを最優先にするつもりだ。」
「………それもそうか。お前も言っていたが、後ろ盾をしっかりとせずに楽に後ろから敵や味方に刺されたなどとなれば笑える話ではないからな。」
「あぁ。その後の憂いをなくすためにもはやてから許可をもらいたいのが正直なところなのだがーーーー」
そこまで話したところで不意にヒイロが足を止めた。疑問気に思ったアインスが彼の顔を見ると、その視線はどうやら隊舎の外へ向けられているようだった。
そのヒイロの視線につられるように同じようにアインスも外を見ると、森の上、具体的に言えば、昨夜ティアナが隠れて自主練をしていた辺りの上空に水色の、人が乗れるほどの幅がある帯が広げられていた。
そして、その上を滑るように走っているのは、マッハキャリバーを展開しているスバルだ。彼女がいるということは、あの青い帯はスバルの魔法である『ウイングロード』で間違いないだろう。
そのウイングロードの上でスバルは下に向かって何かを話しているようだ。
大方、誰と話しているかは想像に難くはない。
しばらく、スバルの様子を眺めていると、不意にスバルがヒイロのいる隊舎に視線を向け、そして、目線がかちあった。
彼女と視線が合ったと判断したヒイロはそのタイミングでわかりやすく肩をすくめるような仕草をする。
それを見たスバルは表情をひくつかせながら顔の色を真っ青に染め上げていた。
「あー・・・・いわゆる朝練、という奴か。」
「・・・・そのようだな。」
「行くか?」
「・・・・向こうも俺たちを視認している以上、この状況で見て見ぬ振りはいらん誤解を与える可能性がある。あいつらにも悪いことをしているという自覚はあるのだろう。でなければ顔を青くしたりはしないはずだからな。」
アインスの確認にそれとなりの理由を述べたヒイロは隊舎のエントランスから再び外へ向かう。
途中、スバルの方に視線を向けたが、当の本人はウイングロードから降りたのか、上空にその姿が見えず、同じようにウイングロードの青い帯状の足場も消失していた。
「別段、隠すようなことでもないと思うが………。」
アインスの軽い笑みと言葉を聞きながらヒイロはスバルの元へ向かって行く。
もっとも、スバルの側にはもう一人いるだろうと、ヒイロにはある種の確信もあったがーーー
「あー、ヒイロさん。おはようございます。その、どうかしましたか?」
ヒイロの予想通り、昨夜と同じ場所にティアナがいた。彼女の表情こそ申し訳無さげなものではあったが、そこまで深刻なものではなかった。
そんな彼女の後ろに隠れているスバルは顔だけを覗かせて、ヒイロの表情を伺っていた。
「…………俺自身、お前たちの鍛錬に口を出すつもりはなかったが、そこの後ろで隠れている奴が妙な反応を見せたせいであらぬ誤解を受ける可能性があった。お前たちには一度妙な噂を広められた前科があったからな。」
ヒイロがそういうとティアナは軽くため息をついた。そして、自身の後ろに隠れているスバルに細めた視線を向ける。
「あ、あはは………その節は、申し訳ないです、はい。」
二人の鋭い視線にスバルは苦笑いをしながらしょぼくれた目をしてしまう。
「そういえば、せっかく来てしまったんだし、お前達が一体なんの鍛錬をしているのか聞いてもいいか?」
「えっと、スバルとの新しいクロスシフトの練習、ですね。」
「クロスシフト・・・・?」
「要はコンビネーション技って奴です。」
アインスの質問に答えたティアナの言葉の中の聞きなれない単語に疑問気な表情を浮かべるヒイロにティアナがすぐに簡単な説明を入れた後、その新しく編みだそうとしているクロスシフトの概要を説明していく。
その二人が考えたクロスシフトはスバルがウイングロードを使った三次元機動で敵を翻弄。
その間にティアナが目標に向けて砲撃魔法を発射する。これだけ聞けば普通のスバルを囮にしたコンビネーションなのだが、この攻撃の本命は、ティアナの砲撃魔法ではなかった。
それは、ティアナ自身による目標への直接攻撃であった。砲撃魔法を撃とうとしているティアナはあくまで彼女の十八番である幻影魔法によるもの。
本物のティアナはスバルが展開したウイングロードを駆け上り、相手の頭上を取り、落下の勢いを組み込んだ近接攻撃、というのが彼女らの考えているクロスシフトCというものであった。
最初こそ、司令官ポジションであるティアナが目標に近接攻撃を仕掛けるなど、耳を疑うようなことであったが、ティアナがクロスミラージュの銃口から魔力刃を展開し、銃剣のように固定化させる。
「・・・・・どう、ですか?」
説明を終えたティアナからヒイロにそのクロスシフトについての評価を尋ねられる。
「・・・・・一つ聞いておく。なぜ俺に評価を求める?」
「えっと………その、ヒイロさんはなのはさんより慣れると聞きに行きやすいというか、何というか………。それに、やっぱりこういうのは俯瞰的に見てくれる人がいないと意味がないと思うので。」
「普通であれば、お前達スターズ分隊の隊長であるなのはに尋ねるのが筋だと言うべきだが………同時に時間を持て余し気味の俺に聞くのも筋が通っていなくは無い。いいだろう。」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
ヒイロが承諾する意志を示すとティアナは表情を明るいものに変える。
「それで本題の評価だが、説明を聞いただけでははっきり言って評価は出来ん。そもそもとして、お前達のそのクロスシフトもまだ実用段階には至っていない。」
「あ、あれ、何でわかったんですか?」
「お前が俺を見つける直前、真下に向かって声をかけていたな?あれは地上にいたティアナにどう動けば良いのか尋ねていた。違うか?」
疑問気な表情を浮かべるスバルに向けられたヒイロの言葉は、そのスバルの表情を驚愕のものへと変えさせる。
「すっご………これはヒイロさんに頼んだのは失敗じゃなかったかも………。」
「………どういうことだ?」
「いや〜、ヒイロさんに見つかった時結構焦りながらティアに駆け寄ったんですけど、ヒイロさんなら大丈夫とか言ってて。周りといつもツンケンしていたティアが私以外に絆されてるところは結構珍しかったんで。それも男の人に。」
「ちょっ///この馬鹿スバル!!なんで余計なことを言うのよ!!ヒイロさんはあくまで見てもらうだけなんだからね!!ま、まぁ、信頼できないって言ったら、嘘に、なるけど………。」
スバルの言葉に最初こそ、怒りの表情を浮かべるティアナだったが、徐々にその声量は小さくなっていき、最後に至ってはヒイロから視線を逸らし、髪の毛をいじりながら細々とした声になってしまった。
(あ〜れれ〜?おっかしいぞ〜?思っていた反応と違うんだけど………。)
ティアナの予想外の反応にドギマギとした表情を隠しきれないスバルであった。
ヒイロは訝し気な顔でスバルの顔を見ていたが、指摘するようなことはしなかったのは不幸中の幸いだった。
「ひとまず、現状はお前達自身で考えろ。俺はお前達が何ができるかをそこまで把握しているわけではない。典型的な例として先ほどティアナが幻惑魔法とやらを使えると言っていたが、あれは俺には初耳だ。そして、ある程度戦術としての形を成してきたら俺を念話で呼べ。かわりにアインスが反応してくれるからな。」
「あ、はい。わかりました。」
スバルがヒイロの言葉にそう返すのを聞き届けるとヒイロは隊舎の方へ戻っていった。
それから二日ほど経ったが、未だティアナもしくはスバルからそのクロスシフトを見てほしいという念話はない。
彼女らは日中は基本、なのはの教導でしごかれている。その上で寝る間を惜しんだり、早朝早い時間に起きて例のクロスシフトの練習をしているのだ。
しかし、それでも時間がかかるのは当然だろうとヒイロはそう判断していた。
「ヒイロさん。ちょっとええか?」
突然、背後から声をかけられたヒイロだったが、一切驚いた様子を見せず、歩いていた足を止め、自身の後ろに振り返る。
そこにはなにやら意を決した表情を浮かべていたはやてがいた。
「…………何か用か?」
はやてと向き合いながらそう尋ねるヒイロにはやては一度深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
「………頼みたいことがある。ついてきてもらってええか。」
「…………いいだろう。」
ヒイロははやての後ろをついていくような形でとある部屋に付き添われる。
その部屋は前回、ヒイロがティアナの個人情報を見ていた時に利用していた事務室だ。
その部屋に案内されるとフェイトを筆頭にライトニングとスターズ両部隊の隊長、副隊長が雁首を揃えていた。その場にはもちろん、なのはの姿もあった。
「ヒイロさん。今回呼んだのは、ヒイロさん自身が前々からお願いしとった管理局へのハッキングや。普通はこういうことはしないのが当たり前なんやけど、フェイトちゃんの報告やヒイロさんの推察からスカリエッティと繋がっている可能性のあるレジアス中将に仕掛けることにしたわ。」
「………ユーノからあの男についてある程度は聞いてはいるが、前々から黒い噂の絶えない男らしいな。」
ヒイロがそう言うとはやては重々しく頷いた。
「しかし……ハッキング、といっても具体的にはどうするのだ?」
シグナムが疑問気にヒイロにハッキングについての詳細を尋ねる。基本前線で剣を振るうことが仕事の彼女にとって、専門的な知識が求められる機械技術に関してはよくわからないのだろう。
「ハッキング、と一言で言うが俺がやろうとしていることは正確に言えばクラッキングに近いものだ。」
「…………全然分からん。」
「…………クラッキングは悪だと覚えておけばそれでいい。」
説明を面倒くさがり、端的にシグナムに言うヒイロ。
しかし、シグナム本人はそれで納得したようでそれ以上の質問はしてこなかった。
「確認する。クラッキングを行うといっても、レジアス・ゲイズに関する情報が確実に見つけられる確証はない。無駄骨になる可能性もあれば、最悪逆に向こうに嗅ぎ付けられることもある。それでも俺に許可を下ろすか?」
「大丈夫。ヒイロさんならどんなことでもやってのけてくれるって信じとるから。」
ヒイロの最終確認にはやては満面の笑みを持って送り返した。それを見たヒイロは用意された端末に視線を向けーーー
「………任務了解。」
と、一言だけ呟いて席に着き、キーボードに指を乗せる。
「これより管理局のデータベースにクラッキングを仕掛ける。まずはセキュリティホールを見つけ出し、そこからデータベース内部に侵入する。」
ヒイロがキーボードを尋常でない速度でタイピングを始めるとデスクトップに次々とブラウザが立ち上げられ、画面を覆い潰していく。
「お、おおっ!?な、なんだぁ!?なにが起こってんだぁ!?」
目まぐるしく変わっていく画面にヴィータは目を輝かせ、子供くさい表情を浮かべながらヒイロの作業を見つめる。
ヒイロはそのヴィータの驚いている声に一切耳を貸していない様子で次々と現れ
、目が回りそうになるほど出てくるブラウザを処理していく。
「やはり、普段魔法などに頼っている奴らが作っているからか、セキュリティ面は脆弱のようだな。さらに管理局ほどの巨大な組織のデータベースとなれば、セキュリティホールの数も無数に存在する。」
「それって、隠すことはできるんか?」
「できないわけではない。もっとも全ては不可能な上に今回の目的とは違う。」
はやての声にそう答えながらもヒイロはキーボードを打ち込む作業のスピードが下がることはなく、むしろ一段階スピードを上げ、クラッキングの作業に勤しむ。
「データベース内部に侵入。これよりレジアス・ゲイズ周辺を洗いざらい精査する作業に移る。」
「え………まだ10分くらいしか経ってないよ?」
フェイトの疑問気な声に反応こそは見せなかったものの、代わりにヒイロは空間パネルにとある画像を映し出す。
その画像はなにかの建物の間取り図のようだが…………
「あ、これ、地上本部の当時の設計図面やないか。」
「こ、これが!?」
はやてがヒイロが出した間取り図が地上本部の建物の設計図面であることを伝えるとなのはは心底から驚いているような声を上げながらその図面を見つめる。
「こういうのを手に入れてしまえば、内部構造を把握し、地上本部に侵入した時に楽に目的のポイントへ向かうことができる。」
「…………そう考えるとおっそろしいなー………。」
「そのほかにもデータベースで偽装のIDやパスワードを作成し、セキュリティに引っかからないようにすることも可能だ。」
「そ、そんなこともできちゃうんですかっ!?クラッキングって!!」
「………その辺りはまだ常套手段だ。…………これは……。」
クラッキング作業を続けていたヒイロが訝しげな視線を見せると、進めていた作業を中断し、その映し出されている画面に視線を集中させる。
「なんか見つかったんか?」
はやてからそう問われたヒイロは視線を移すことはしないも、周囲の人間に見えやすいように拡大したものを表示する。
現れた画面につられるように視線を移すとそこには二つの計画のプランが書かれている用紙があった。
「人造魔導師計画に戦闘機人計画………?」
「字面から察するに、前者はクローン技術を利用し、後天的にリンカーコアを取り付けた人口的な魔導師。後者は、アンドロイドの類かと思われるものだ。さらに言えば、レジアスはこれら二つの計画で生み出された存在を管理局の戦力として徴収する算段だった可能性もある。」
フェイトの呟きに自身の軽い推察を交えながらヒイロはさらに端末を操作し、別の画面を表示する。
「前々からこの戦闘機人と呼ばれる代物を戦力として活用しようとする事例はあったようだ。最高評議会と呼ばれる奴らの主導で行われた研究。そのデータが廃棄されたデータに残っていた。それをサルベージしたのがこれだ。」
ヒイロが表示したデータにその戦闘機人についての研究データを表示する。
そのデータには戦闘機人に関しての実験結果をつらつらと書き記したものが表示されていた。
人工骨格や人工臓器で形成された鋼の肉体は先天的な才能が求められる魔導師より安定した戦力を確保できるとして、それとなり有望な研究だったのだろう。
しかし、最初こそ好意的な研究結果が書かれていたが、研究が進むに連れて、拒絶反応や長期的な使用により機械部分のメンテナンスが定期的に必要というコスト面での問題により、その計画は一度頓挫しかけていた。
しかし、その問題はある材料を使うことによってある程度解決した。いや、
その戦闘機人を作る上での問題を解決したその材料とは、人間であった。
正確に言えば、人間をあらかじめ戦闘機人を構成する機械に適合する生体部品として産み出すという常軌を逸脱したような方法であった。
そして、その馬鹿げた解決方法を持ってきてしまった人物は、そのデータにしっかりと残っていた。
紫色の髪に怪しくきらめく金色の虹彩をもったその瞳。まさしく、ジェイル・スカリエッティその人であった。
「決まりだな。レジアス・ゲイズはジェイル・スカリエッティと繋がりが存在する。少なくとも奴はスカリエッティの存在を認知はしている筈だ。」
「………わかった。ありがとう。ヒイロさん。」
ヒイロの結果報告にはやてはわずかに悲しそうな表情をしながら頷いた。
はやてが管理局に入局した理由。ヒイロは知らないが、それははやて自身と同じようにロストロギアで人生を狂わされるような人間をなくすためであった。
しかし、本来、人々を守らなければならないはずの管理局がこうして裏で人の倫理に外れるようなことをしていたことに少なからずの失望感を抱いているのだろう。
その証拠にはやての瞳はどこか遣る瀬無い思いに満ち溢れていた。
「………証拠まとめたら、クロノ君やカリムの協力でレジアス中将に令状を出す。」
「はやてちゃん…………。」
「大丈夫。そんな顔しなくても私は大丈夫だから。」
なのはが心配そうな顔を浮かべるがはやてはそれをどこか力無い笑顔で返した。
「レジアス・ゲイズの検挙を行うのは別に構わんが、少なくとも今はやめておけ。こちらの仕事を余計に増やすだけだ。」
「え………?」
「ちょっと待てよ。ソイツはスカリエッティと繋がりがあるんだろ?なんですぐに捕まえねぇんだよ。」
ヒイロのレジアスの検挙をやめさせるというニュアンスの言葉にはやては困惑し、ヴィータはヒイロに険しい視線を向けている。シグナムもどことなく目つきを鋭くし、ヒイロの言葉を待っているようだった。
「………私もヒイロさんの言葉に賛成かな。」
「テスタロッサ………お前もか………?」
おずおずと手を挙げ、ヒイロに賛同する声を上げたのはフェイトだった。そのことに、流石のシグナムも鋭い視線を解き、驚いたように目を見開く反応を見せざるを得なかった。
「レジアス中将はたしかに黒い噂こそあるけれど、その高い手腕のおかげで地上の犯罪率が抑えられているのは事実なんだ。いわば、抑止力なんだ、レジアス中将は。そんな中、レジアス中将を検挙してしまえば、その強い抑止力によって行動を起こしていなかった犯罪者集団が一気に行動を増やすことになる。地上にはスラムとかもあるからね。そうなれば、少なくともその事件の担当が私たちに回ってこないとは限らない。ううん、確実に回ってくる。地上の方にはあまり本局ほど人材があるわけじゃないからね。」
「要は俺たちにレジアス・ゲイズの穴埋めをやらされることになる。それはつまり戦力を分配せざるを得ない状況下でスカリエッティとの戦いを繰り広げなければならないことを意味する。そのような戦力を削がれた状態で勝てる相手なのか?スカリエッティは。」
「…………やるにしても事件の熱りが冷めてからっちゅうわけやな。」
はやての言葉にフェイトは無言で頷き、ヒイロはそもそもとしてそれらしい反応すら見せない。しかし、ヒイロの反応を肯定と受け取ったはやては腕を組んで、悩ましげな表情を浮かべながらこれからの方針を考える。
はやての心中ではできれば後の憂いをなくしておきたいため、レジアスを検挙しておきたいというのが本音ではあった。
しかし、そのレジアスという曲がりなりにも犯罪の抑止力となっていたダムをなくした時に溢れ出る犯罪という名前の水の量を鑑みた時、肝心な時にそちらの対処に追われて、本命であるスカリエッティとの戦闘の時に動けないという事案だけは回避はしておきたかった。
「…………わかった。今はやめておく。」
「……ごめんね。はやて。ちょっと我慢を強いることになっちゃって。」
「ううん、そんなことないで。たしかに後の憂いをなくすために動いてもその結果が余計に仕事を増やす結果にしてしまっては本末転倒やからね。」
「事が済んだなら、後は侵入した形跡を削除するが、問題ないな?」
「オッケーやで。何回も同じこというけど、ありがとな。」
はやてのお礼を聞くだけ聞くとヒイロは端末に向き直り、自身がデータベースに侵入した形跡を抹消する作業に入った。
それの作業も数分とかからないうちに終了し、ヒイロ達はそこで解散となった。
そして、時刻は進み、日が沈み、ミッドチルダを照らす二つの月がはっきりと見えるほどの夜になった頃ーーー
「む…………ヒイロ、ティアナから連絡だ。例のクロスシフトがある程度できたから見てほしいとのことだ。」
「わかった。すぐにそちらへ向かうと伝えておけ。」
ティアナからの連絡を受け取ったアインスがヒイロにそう告げると足早に隊舎の外へ向かった。
そんな隊舎の外へ出たヒイロを二階の窓からたまたま見かけた人物が一人ーーー
「あれ、ヒイロさん?こんな時間に外へ出て何をしているんだろう。」
窓に手を当て、外へ出たヒイロを疑問気に見つめていた人物。しばらく見ていると不意に足を止めたヒイロが視線を感じたのか、その人物が見つめている場所にピンポイントで振り向いた。
突然のことにその見つめていた人物は瞬間移動とも取れるようなスピードで咄嗟に移動し、ヒイロの視界に映る前に窓から離れることに成功した。
デバイスも介していない状態でそのようなスピードを行使できる人物は機動六課の中では一人しかいない。咄嗟に移動した場所の壁に背中を預け、荒い息をしているのは、フェイトだった。
「はぁ……はぁ……び、びっくりした。咄嗟にブリッツアクションで逃げちゃったけど、見られてないかな………大丈夫かな………。」
『普通であれば、それはないと言いたいところですが、相手が相手ですので。』
「う、うん。そうだよね………。」
自身の相棒であるバルディッシュの言葉に苦笑いを浮かべながら息を整える。
『行きますか?』
「えっ!?」
『気になるのではないのですか?』
「そ、それはそうだけど!!」
バルディッシュからの突拍子もない言葉にフェイトはわずかに上ずった声で言い返す。
「うう………でもヒイロさんにもプライバシーが………。」
『ヒイロ殿をご自身の部屋に連れ込んでおいて今更何言ってるんですか。プライバシーもへったくれもないでしょう。』
「そ、それは、その………一緒に、居たかったし………。」
『そうしたいのであれば、さっさと行った方が得ですよ?ヒイロ殿も別に拒みはしませんし。』
「そ、そうかな、大丈夫かな……。」
『…………もしかしたら他の女性との逢い引きを「行く。」決断早いですね。』
爆弾を投下したバルディッシュが自身の使い手の残念っぷりに呆れた様子で機械的な音声を流しているのを尻目にフェイトはヒイロの後をつけていった。
書いていて感じたキャラ崩壊ランキングベスト3〜〜〜〜(唐突)
第3位 ティアナ(予定)
なんかツンデレキャラになりそう。本職が海鳴市にいるというのに。
第2位 アインス
管制人格という枷が外れたためなのか、割とはっちゃけ気味。実はヒイロの性格的に言わなそうなことは全部言わせてる。
第1位 フェイトそん
最近ヒイロのためならなんだってしそうな感じになってきた。どうしてこうなった。
>>>愛、ですよ!!(CV大人クロノ)
>>>なぜそこで愛っ!?(CV永遠の17歳、ちなみに娘さんは21。)