魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜 作:わんたんめん
ただひたすらその一言に尽きます…………あと自分が本当にガンダムキャラしか書けないことを痛感した………ヒイロが絡まないだけで全然かけなくなった………。
それとなんかティアナがニュータイプみたいになったお………(白目)
最後に………遅れて申し訳ないです…………(ヨボヨボ顔)
「………………。」
医務室から退室したヒイロは事務室で電子機器のキーボードを操作していた。
机には無造作に待機状態のウイングゼロが置かれているが、そこから配線のように光の線が伸び、電子機器に繋げられていた。
そしてディスプレイにはミッドチルダでは見られない画像が投影されていた。
宇宙に作られたコロニーや地球の画像。そしてモビルスーツ群の画像。つまるところヒイロが元いた世界、形式上、
そのAC世界の映像をヒイロは電子機器で画像の編集をしていた。
なぜそのようなことをしているかと言うと、この後のはやてたちに向けた説明のためだ。
「進捗はどのような感じだ?」
「…………幸か不幸か、ウイングゼロの戦闘記録がほとんど残っていた。そのため編集作業自体はさほど時間をかけずに済ませられるだろう。」
待機状態のウイングゼロからアインスが顔を覗かせる。ヒイロが編集作業の進捗に問題はないことを伝えてもアインスの顔はなぜか不安気な表情を浮かべる。
「…………何か懸念でもあるのか?」
「………いや、ゼロシステムの真実を知って、高町がどう思うか、気になってしまってな。奴はシステムの危険性を知らなかったとはいえ、ある種の禁忌に手を伸ばそうとした。それがどんなに間違っていたのかを目の当たりにされると思うと些か気分が悪くなりそうだ。」
「…………お前があまり気にする必要性はない。これは俺が奴らにその危険性を伝えなかったことが原因だ。」
ヒイロがアインスにそれだけ伝えると再び編集作業に意識を切り替え、ウイングゼロから説明に使えそうな画像データのピックアップを行う。
中に入っているアインスも使えそうな画像データの取捨選択の手伝いを行い、作業自体は30分ほどで終えることができた。
「…………こんなものか。」
「しかし、見ていて思ったのだが、モビルスーツの性能には舌を巻かざるを得ないな。一般的な兵士が乗るこのエアリーズという量産型のモビルスーツでさえマッハ2の速度を出せるのだろう?並の魔導師では追いつけないぞ。」
「武装自体にそれほど面倒なものはない。防ぐだけなら普通の魔導師でも障壁を張れば対応は不可能ではない。」
アインスの言葉にそう返すとヒイロはディスプレイを閉じるとウイングゼロを端末から外して事務室を後にする。
「どこかに行くのか?」
「……………はやてに準備が整ったことを報告しに行く。ついでになのは達の方にも向かう。」
「…………わざわざシャマルまで下がらせたのに意外と心配性なんだな。」
「…………呼びに行くだけだ。」
今度はアインスの言葉に特にこれといった返答はせずにヒイロは隊舎の廊下を歩き始める。
ヒイロとシャマルが退室した医務室に残されたスバル、ティアナ、そしてなのは。
三人の間ではどうしようもない沈黙が流れ、重苦しい雰囲気に包まれていた。
「えっと、まずは、何から話せばいいのかな…………。」
場の風景を和ませるためかなのはは軽く頰をかく仕草をしながら乾いた笑みを浮かべる。しかし、ティアナとスバルはそれにどう反応すればいいのかわからなかったのか微妙な表情を浮かべることしかできなかった。
そのことになのはは自分は場を和ませることさえできないのかと自己嫌悪に苛まれながら視線をわずかに下に向ける。
「………そうだね、やっぱりこういうのはちゃんと順を追って話した方がいいよね。」
独り言だったのか、不意になのはがそう呟くとレイジングハートから映像が映し出される。その映し出された映像には杖を構えた、まだあどけなさが残っている少女の姿があった。
しかしその少女にティアナとスバルにはどこか既視感を覚えた。
似ているのだ。杖のデバイスの形状や制服のような白いバリアジャケット。
そして何より、茶髪のサイドテールにどんな障害が立ちふさがろうと決してめげることがないと感じさせる不屈の心が宿ったその瞳はまさにティアナとスバルの目の前にいる高町なのはを彷彿とさせる。
「これ………なのはさんですか?」
ティアナがそう尋ねるとなのはは無言で頷き、映像の中の少女が自分自身であることを示す。最初こそ妙なオーラを纏った獣のような化け物や巨大化した樹木と戦っている画像が多かったがなのはが映像を切り替えていくとその映像にようやく別の魔導師と思しき人物が映り込む。
艶やかな金髪をツインテールにまとめた少女。夜の闇に紛れるためか黒いマントを羽織ったその姿に似つかわしくない巨大な鎌のようなデバイス。
「あれっ!?この人、フェイト隊長ですよね!?」
「………フェイトちゃんとは最初こそは互いに譲れない事情を持っていて、何回も戦っていたりしていたんだけど、そこら辺は今回は割愛させてもらうね。これに至ってはフェイトちゃんにも立ち会ってもらわないとダメだし………。」
スバルの驚きから発せられた言葉にそう言いながら、なのははレイジングハートを操作し、画像をどんどん切り替えていく。
「うーん…………ちゃんと整理してないし、ヒイロさんから唐突に話せって言われたのも相まって全然見せたい画像が見つからない………。」
なのはが苦い表情を浮かべながら切り替えられる様子をスバルとティアナは見ていた。
その画像は最初こそ、まだ幼い頃のなのはとフェイトが写っているものが中心であったが、徐々にシグナムやヴィータといった闇の書事件の関係者の姿が映り込むようになった。その中には無論ヒイロ、もといウイングガンダムゼロの姿もあった。
「…………こうして見させてもらっていると、ヒイロさんは本当に時間を飛び越してきたんですね。」
「そう、だね。それどころか、ヒイロさんは世界を飛び越しているけどね。」
零すように出たティアナの言葉だったが、なのはが何気なく言葉を返す。何の変哲もない、普通に行われたやりとりだったが、ティアナとなのはにとっては初めて、というのは過言だが、それでも訓練以外では滅多に行われない、日常的なやりとりであった。
(…………そういえば、ヒイロさんが元々いた世界ってどんな感じなんだろう。)
ふとスバルはそんな疑問が浮かんだが、それを口に出すことはしなかった。そのことはなのはがフェイトのことに関して、本人の同席が必要と言っていた以上にデリケートなことなのがわかりきっていたからだ。
「あ、あった。えっと、ちょっとショッキングなのは目を瞑ってほしい、かな?」
目的の画像を見つけたのかなのはがそんな言葉を出した。スバルがヒイロに対する興味から一転なのはが見せたいと言っていた画像に視線を移す。
そこには雪原になのはが横たわっている画像があった。それだけであれば何ら特に言うことのない画像だったのだが、明らかに異常な点があった。
管理局のエースオブエース、高町なのは。その象徴とも呼ぶべき白い純白の制服のようなバリアジャケット。
その白いバリアジャケットを染め上げるような紅が彼女の横脇腹からあふれ出ていた。
「こ、これ、なのはさん………!?」
「嘘…………!?」
ティアナとスバルはそのなのはが血を流している画像をみて、絶句していた。
彼女の左脇腹から流れ落ちている血は場所が雪原なのも相まって、より一層に紅が際立っていた。
その流れ出ている血の量から鑑みても適切な処置を施さなければ危険な状態に陥ってしまうのは明白だった。
「だいたい………8年くらい前だったかな………。私はとある任務で出向していた時に近づいてきていた敵に気づかなくて、撃墜されたの。これはその直後の画像。私はこの時の怪我でしばらくは安静を余儀なくされたの。」
「なのはさん、撃墜されたことあったんですか………。」
「意外だった?」
スバルの言葉になのはがそう尋ねると、スバルは一瞬答えるべきかどうかを悩んでいるかのように顔を俯かせたのち、申し訳なさそうにコクリと顔を僅かに縦に振った。
「私がこうなっちゃったのは、はっきり言って、私自身にかしていた無茶が原因だったの。」
「無茶…………ですか?」
ティアナの言葉になのはが頷くと話を続け、自身の無茶をしていた過去を話し始める。
「ヒイロさんがいなくなった後は私はみんなを守るためにより一層、魔法の訓練に励んだの。その、戦闘とかだとヒイロさんに頼りきりの面もあったから。」
「……………なのはさんも最終的には戻ってきたとはいえ、いなくなったヒイロさんのために努力してきたんですね。」
「うん。そう、そうなんだけど…………その努力がこの結果を招いたの。」
「え…………?」
なのはがみんなが守りたいがためにやってきた努力、それが自身の撃墜を引き起こしたという皮肉をしているような言い方にスバルは言葉を失ったかのように目を見開くしかなかった。
「まだ体が出来上がっていないにもかかわらず、過度な訓練をやって、さらにそこに負荷の高い砲撃魔法を何十回も撃ってきた。いくら目を逸らしていたとしても、やっぱりその無理は無視できないものだった。」
「そして、最終的には疲労がどんどん蓄積していって、その時にはもう体は限界だったんだと思う。敵の攻撃に対する反応が遅れて、画像の通りだよ。」
「…………だから、なのはさんはこと無茶をする、ということに関してはあんなに過敏になっていたんですね。」
なのはの吐露にティアナがそういうと彼女は表情に影を差し込みながら重く頷いた。
「私の教導の意義、それはしっかりと体と基礎的な部分を完成させて、私みたいな無茶をすることで自分を壊しちゃうような人を増やしたくなかったことなんだ。」
「でも私自身、今回のことはだいぶ反省、してる。頭冷やそうか、なんて言っていたけど、むしろ私の方が冷やさないといけなかった。ティアナやスバルだってちゃんと考えてやっているはずなのに………ダメだよね、隊長がこんなんじゃ…………。」
そう言って俯いたなのはの表情はティアナたちの方からは伺えない。しかし、両方の手のひらがギュッと握り締められ、皺が寄っている様子からなのはが自身への情けなさに悔しさを滲ませているのは察せられた。
「なのはさん………。」
「……………。」
高町なのはという管理局における絶対的なエース。二人にとって、特にスバルにはかつて爆発炎上している空港から自身を救い出してくれたその背中とはかけ離れたそのあまりにも弱々しい姿に困惑を隠しきれずにいた。
しかし、ティアナはそのなのはの姿をじっと見つめていた。
「なのはさん、一つ、失礼を承知で聞かせてください。」
ティアナの突然の真面目な雰囲気を含んだ声にスバルは呆けた様子で彼女の横顔を見つめ、なのはもそれに吊られるように頷いた。
「なのはさんは一人で全部何もかもできるって、思ってますか?」
「そ、そんなの、思っているわけないよ………!?でも、ヒイロさんがいなくなっちゃったし………フェイトちゃんは執務官の試験とか、はやてちゃんは部隊長としてのノウハウとかを学ばないといけなかったから、私が、私がヒイロさんの代わりに頑張らないとって………。」
「…………あぁ、そっか。」
なのはのまくし立てるような口調にティアナはどこか達観したような表情をしながら自身の橙色の髪をかき乱した。そのことにスバルとなのはは何をしているのかと疑っていると言っているような視線をティアナに向ける。
「…………似ているんです。あたしとなのはさん。口で言うと凄くおこがましいですけど。」
ティアナの言葉に今度は疑問符を浮かべる二人を流しつつ、ティアナは一度、深呼吸をした。
「あたしは、兄さんの夢である執務官を目指すことで兄さんの無能を覆したかったんです。まぁ、要は兄さんみたいな管理局員になりたかったんです。」
「でも、魔導師ランクの昇格試験を受けて、
「それは、ヒイロさんからさっき聞かされた………。ティアナがそんなに思い悩んでいたなんて、全然分からなかった。」
「伊達に幻惑魔法を使っていないから、ですかね。あんまり演技とかの腹芸には自信はありませんけど………。でも、そんな嫉妬からくる焦りでホテルアグスタではスバルを、一歩間違えれば撃墜してしまうであろうミスショットをしでかしました。」
「ティア、それはーーー」
「ちょっとスバル。アンタ、ヒイロさんに優しさは時に他人を傷つけるって言われたばかりでしょうが。アンタはただあたしがミスショットをしたっていう事実を認めていればいいの。」
スバルがティアナに慰めの言葉をかけようとするが、長年連れ添っているティアナが先にスバルに目を細めたジトッとした目線を向けることでその言葉の先を言わせないようにする。
スバルが無言で首を縦に振っているのをみて、ひとまず優しすぎる友人を黙らせたと判断したティアナは再びなのはに視線を戻す。
「その、似ているって言うことですが、あたしが兄さんの後ろ姿を追っていたように、なのはさんは、ヒイロさんの後ろ姿を追っているんです。」
「私が、ヒイロさんの…………?」
「正直言って、当時のヒイロさんがどんなことをしていたのかはわかりません。だけど、なのはさんが会話の内容の節々にヒイロさんの名前を出していることから、あの人を頼りにしていたと同時に、強さの象徴のように見ている。」
ティアナの言葉になのははしばらく自分自身と対談するかのように顔を下に向け、これまでの自分を振り返ってみる。
その神妙な面持ちのなのはにティアナとスバルも何も語りかけるようなことはしなかった。
「…………ティアナの言う通り、確かに私はヒイロさんを目標みたいにしているんだと思う。10年くらい前、偶然の出会いから魔法の存在を知った私は大切な人を守るためにその力を使ってきた。だけど、ヒイロさんはいつも私の前に立って、その背中で守ってくれていた。だから気づけば私は、その背中に憧れていたのかもしれない。」
「そう、ですか。でも、実はヒイロさん、こんなことを言っていたんです。他人を戦う理由にするのは辞めろ、いずれその人自身に押し潰されるって、言っていたんです。」
「それって………なのはさんの場合だと、ヒイロさんになるよね?」
「………確かに今回、私はヒイロさんに叩き潰されたようなものだけど…………。」
「多分、そう言うことではないんだと思います。どちらかといえば精神的に押しつぶされるんでしょうか。確証は全然ありませんけど。ただこれだけはわかるんです。何より始めに自分の意志でどうしたいかを考えること、他人を戦う理由にしているといつまでもその人に引きずられて、前に進むことができないんだと思います。」
「…………ティアナはお兄さんのことをもう考えないようにするの?」
「いえ、決して考えないようにするわけじゃありません。ただ、あたしは兄さんじゃないし、兄さんも同じようにあたしじゃない。人は決して他の誰かになることはできない。だから、あたしが兄さんに思うことは一つだけ。今の自分とこれからの自分を見守っていてほしい。これだけです。」
「今の自分とこれからの自分を見守ってほしい…………か。」
ティアナの言葉を反芻するように呟いたなのはは天井を何気なく見上げる。その様子にはどこか苦手と思っているかのような雰囲気が見て取れた。
もっと正確に言えば、あまりそういうことをされたくないと感じている、そんな感じの雰囲気であった。
「……………ごめんなさい、最初に謝っておくんですけど、なのはさんって、周りを頼るのって嫌いなんですか?」
「……………………え?」
ティアナの発した言葉。その内容をなのははうまく飲み込めないで素っ頓狂な声を上げながら首をかしげる。
「いや、その………フェイトさんやヴィータ副隊長、さらにはシグナム副隊長、この際ヒイロさんでもいいんですけど、実力がある人が決していない訳ではないのに、ずっとなのはさんがあたし達の教導についてそんな夜遅くまで一人で考えているとなると、ある意味その、周りを頼っていないように見えるというか………。」
「そ、そんなことないよッ!?フェイトちゃんは執務官の仕事があるし、ほかのみんなにもやるべきことがあるから………どちらかと言うと………お願い、できない…………。」
「みんながそれぞれ頑張っているのに、私だけ誰かに頼っているようだと凄く、申し訳なくなってくるんだよ………。ヒイロさんだって基本、一人でなんでもやってのけるし………。」
「……………ヒイロさんは案外周りに任せたりはしていますよ?」
「…………そう、なの?」
ヒイロも意外と周りを頼ってはいる。そのことになのはは信じられないと言っているかのような顔をティアナに向ける。
「この前の海鳴市での任務の時、ヒイロさんが捕獲対象を見つけてはくれましたが、そこから先は私達に一任してくれました。」
「それは………ヒイロさんにはリンカーコアがないから、封印魔法とかの行使ができないからじゃないの?」
「そう言われてしまえばそれまでですけど………少なくともヒイロさんはできないことをやろうとするような考え無しな人じゃありません。」
「その、今回の模擬戦で使ったクロスシフト、あったじゃないですか。あれにも一応、ヒイロさんも一枚噛んでいるんです。と言っても、基本的にはクロスシフトの構成は私達にやらせて、必要な部分だけアドバイス的な言葉をもらった程度ですけど………。」
「そう、なんだ…………それは全然知らなかった………。ヒイロさんにも言われてた通り、私は結構部屋でみんなの教導中の映像ばかり見ていたから…………。」
なのははそういうと表情を暗いものに変える。ヒイロに言われることで初めてきづいた自身の至らなさ。本来隊長として人の上に立つものであれば必須であろう部下との会話。それを怠り、部下のことを何も知らない、知ろうとしなかった自分になのはは自分自身のことが心底情けなく感じるようになった。
「……………こうして話してみると、本当にお互い知らないことばかりだね、これじゃあヒイロさんに会話が足りないって言われても仕方ないね。」
「…………元々の階級の違いもありましたし、あたし自身隊長陣の人たちにはどこか近寄りがたいって壁を作っていたのもあると思います。」
なのはの言葉にティアナは頷きながらも自身にもそれなりの非があったことを反省する。
「…………その、模擬戦中にあたしが言いかけた言葉、覚えてます?途中でなのはさんに遮られましたけど。」
「え…………?えーと………えーと………その、ごめん………全然、覚えてない………。」
ティアナの質問になのはは必死に思い出そうとするが、自身の記憶に残っているのは砲撃魔法でティアナを吹っ飛ばそうとした記憶しか残っていないことに、なのはは軽い絶望を感じながら顔面を真っ青に染め上げる。
そのなのはの様子にティアナは苦笑いを禁じ得なかった。
「突然ごめんなさい。でも、どうしても知ってもらいたいんです。あたしが考えていることを。」
ティアナの引き締めた表情になのはも自然と彼女の気持ちに応えるように真っ青にしていた顔の色を戻し、神妙な面持ちでティアナと対峙する。
「あたしが言いかけた言葉は、『背中を預けられる仲間がいるから』です。」
ティアナが模擬戦で言いかけた言葉をなのはに伝える。その言葉を伝えられたなのはの言葉を待たずにティアナは自身の思いをなのはにぶつける。
「あたしはこれからもまた同じような無理や無茶をやっていくと思います。それは決してなのはさんの教導が間違っているからじゃなくて、そうしなければならない状況が必ず来るからだと考えています。それが、戦場だってものなのだとヒイロさんに教えられたから。」
「で、でも私はティアナやみんながおんなじ無茶を繰り返して欲しくないからーー」
「戦場に身を置く以上、不本意な距離、つまるところ近距離戦闘とか、なのはさんの言う無理をしなければならない状況は必ずあります。でも例えどんな無理でも、どんな無茶なことでも、周りにみんなが、『仲間』がいるなら、乗り越えていける、今はそう思っています。」
「仲間……………。」
「でも、少し話してみて、今のなのはさんは何というか、周りに誰もいないんです。」
「え…………?」
ティアナの言葉になのはは思わず、不思議そうな声を上げる。
周りに誰もいない、その言葉の真意を探るべくなのはの思考が動くが思うようにしっくり来る答えが閃くことはなく、余計に彼女の心に疑問の雲が渦巻く。
「なのはさんの視界の前方にはヒイロさんの後ろ姿、でもそれだけ。周りには誰もいない空虚な空間が広がっている。多分そこにあたし達は見えてもとっても後ろにある。それは貴方にとって、私達は自分が守らなければならない存在なんですか?」
「ティア…………?」
「そ、それ………は…………。」
ティアナの様子にスバルは見たこともないようなものをみたかのような表情を浮かべ、なのはは何かを言い返そうとした口を詰まらせる。
なのは自身、心のどこかでフェイト達を自身が守らなければならない存在と思っていたからだろうか。
「なのはさんだってちゃんといます。八神部隊長はもちろん、フェイト隊長を始めとした隊長陣、そしてヒイロさん。何より、あたし達フォワード陣も。」
まぁ、それは流石に今のあたし達の実力だとおこがましいのもいいところなんですけどね、と言いながら僅かに苦笑いを浮かべるティアナ。
なのははそのティアナの言葉が妙に自身の心のうちに引っかかった。
(そんなことない。ティアナ達だってちゃんとした仲間だよ。でもちょっと無理をするところがあるから、わたしが頑張らないとーーーー)
「あ……………。」
「なのはさん…………?」
なのはが挙げた、思わず息が漏れたような声にスバルが気づき、視線を向ける。そのスバルの視界には目を見開き、その直後視線を下に向けているなのはの顔があった。
「…………ティアナの、言う通りかも。フェイトちゃんとかみんな強いことはわかりきっている。なのに私、ずっと、守らなきゃって思ってた………。」
「…………本当に強いヒイロさんでさえ、任せるべきことは他の人に任せています。それはつまり、人一人でできることなど所詮はたかが知れている、そう言うことなのかも知れません。」
「私…………フェイトちゃんとか、はやてちゃんを心配させないためにやっていたのに、もしかして、逆に心配させてた……………!?」
「なのはさん…………。」
ティアナの神妙な面持ちから放たれた言葉が届いたかどうかは定かではない。
しかし、なのははこれまでの自身の行いが守りたい者達を逆に心配させていたのではないかと考えると、思わず口元を手で覆い、悲痛な表情を浮かべる。
そのなのはの様子に彼女を慕っているスバルでさえ、声を掛けられずに同じように悲痛な表情を浮かべる。
「…………ようやく気づいたか。」
「うぇっ!?」
その重たい空気の中、響いた扉の開く音と同時に発せられた男性の声にスバルは驚いた表情をしながら扉の方へ振り向く。
そこには一度部屋を退室したヒイロが立っていた。
「ヒ、ヒイロ………さん………!?」
「そろそろ頃合いかと思っていたが、想像以上に時間がかかっているようだな。」
まさか戻ってくるとは思っていなかった人物にティアナは声に出さずとも目を見開くことで驚きを露わにする。
ヒイロはスバルのおどろいた声に何か返すわけでもなく、その鋭い視線を悲痛な面持ちをしているなのはに向ける。なのははヒイロが視界に入ると瞳を潤ませる。
今のなのはの様子はさながら居場所を求める小さな少女のようであった。
「この際だからはっきりと言う。フェイトもはやてもいつまでも一人で何事も熟そうとしているお前のことが気がかりになっていた。その様子だとお前の行為は無意味どころか逆効果であったことは自覚できているようだがな。」
「私、フェイトちゃんやみんなを心配させるためにやってたわけじゃーーー」
「そんなことはお前の性格を鑑みれば明白だ。だが、フェイト達がお前のことを気にかけていたのはまぎれもない事実だ。」
ヒイロの言葉になのはは向けていた視線を外し、表情を俯かせる。故にその表情を伺うことはできなかったが、ヒイロの目は見逃さなかった。
なのはの頰に一筋の涙が伝っているのをーーーー
「わたし………本当にバカだ…………!!全然、周りが見えていなかった…………!!」
「ごめんなさい…………ごめんなさい…………!!」
ただひたすらに懺悔するように声を絞り出しながら嗚咽を零すなのはにどう声をかけたらいいのか分からずに困惑気味な雰囲気を出すティアナとスバル。
ヒイロもその様子を静観していた。スバルとティアナが助けを求めるような視線を向けても放っておけと言わんばかりの憮然とした様子でなのはが泣き止むまで待った。
「…………少しは落ち着いたか。」
「…………うん。」
ヒイロの確認に、僅かに顔を縦に振り肯定を表すなのは。しかし、泣き止んだ後でも気が晴れた様子はなく、どこか虚ろな表情を浮かべていた。
「ティアナとの会話でお前自身について何がわかった。」
「…………ティアナの今の気持ち、自分自身の勘違い、何よりみんなを心配させていたこと………。」
「それが自覚できているのなら特に問題はないようだな。」
「そんな………問題だらけだよ………。」
「…………お前がやるべきことは何よりお前自身がわかっている筈だ。」
「でも、これからどうしたらいいの?私、今まで通りにみんなと顔を合わせられる気がしないよ………!!」
「…………お前にとってフェイト達との関係はその程度のものなのか?」
「え…………?」
なのはの俯いていた顔が上がり、再びその視線がヒイロに向けられる。なのはが呆けた表情と視線を向けたとほぼ同タイミングでウイングゼロからアインスが身を出した。
『さて、ここでティアナとスバルに質問だ。君たちの知っている管理局有数の空戦魔導士、エースオブエース、高町なのは。その正体は普通の少女と変わらない悩み、挫け、涙を流すどこにでもいる人間だ。そんな栄光とはかけ離れた姿を見せた彼女を君たちはこれまで通り隊長として、同じ戦場に身を置く人間として接していけるか?』
アインスに突然質問を振られた二人はその質問の意図が計り知れなかったため、お互いの顔を見合わせる。最初こそ、疑問気だった二人の顔だったが、少しするとその質問の意図がわかったのか、表情を緩ませ、今度はお互いに大きく頷いた。
「もちろんです!!例えどんな姿だったとしても、なのはさんは私が憧れたなのはさんです!!」
「同じく。むしろ今回でわかりました。なのはさんもあたしと同じように苦労に苦労を重ねてきた人間なんだってことが。」
『…………だそうだ。君の部下である彼女らでこの返答だ。ならば主やテスタロッサ達の答えは言うまでもあるまいさ。』
二人の返答に満足したのか綻んだ表情を見せながらなのはにそう語りかけるアインス。
そのことになのはは信じられないと言わんばかりの表情を見せる。
「……………人との関係は常に妙なところで作用があるのがほとんどだ。俺自身では何故こんな奴をと否定的に思っていても、気づけばいつも隣にいる。そんなこともザラにあるのだろう。」
「ならば、始めから好意的に接していたお前とフェイト達であれば、その程度で関係が悪くなるなどありはしないだろう。」
「…………仲間、というのは決してお前に守られるための存在ではない。人は一人では生きられない。一人でできることなど数えられる程度のことだ。生きるためには他人が不可欠だ。そのために存在するのが、同じ志や心を持つ仲間というものではないのか?」
ヒイロは一度、言葉を切り、僅かに考え込むような様子を見せるとなのはに自身の仲間に関しての持論を伝える。
「フェイトもはやてもお前に請われれば、それに応える用意はできている。後はお前の心の在り方次第だ。」
「わたしは……………。」
ヒイロの言葉になのはは瞳を閉じ、思案の海に耽る。その瞳の裏に映るのは10年ほど前、彼女自身がまだ魔法と出会う前、一人寂しくブランコを漕いでいる情景。
当時のまだ幼かった彼女は母親である高町桃子や兄と姉である恭也と美由紀から目をかけてもらえず、一人ぼっちであった。
決して、なのはが家族から村八分のような扱いをされていたわけではない。
ただ、父親である高町士郎が仕事中に生死を彷徨うほどの大怪我を負った。家族らはその士郎の見舞いのために病院に向かわざるを得なかった。
しかし、その見舞いの一行の中になのはが含まれることはなかった。
やれまだ幼い子供だから、酷い怪我を負った父親の姿を見せたくなかった家族の計らいもあったのだろう。
だが、なのははどうしようもなく、自分だけ取り残されたという感覚を、味わい続けた。
その結果、彼女は『いい子』であろうとした。
ここでいう彼女の『いい子』とは家族に心配をさせない。そのようなものであった。
しかし、10年の月日が経つにつれて、彼女は家族を、他者を心配させないばかりか頼ることさえいい顔をしなくなっていった。なまじ魔力に関して超人的な才能を持ち合わせていたのも彼女をある意味増長させてしまう要因でもあったのだろう。
「ねぇ、ヒイロさん………。」
不意につぶやかれたなのはの言葉にヒイロは声を返すことはしなかったが、ジッとなのはの横顔を見つめている。
「わたし、『いい子』じゃなくて、いいのかな………?みんなに迷惑かけても、いいのかな………?」
それを聞いていてくれていると判断したなのははヒイロに答えを求めるかのような口調で尋ねる。
さながら、なのはが乗っているブランコを一人でも動かせるはずのソレをわざわざ後ろから押してくれとお願いされているようでもあった。
「…………むしろ、その方がフェイト達も安心するだろう。それはお前の方がよく知っているはずだ。」
「…………うん!!」
その背中をヒイロは後ろから押し出した。力を得たブランコは前へと進み出し、なのはは勢いよく眼前に広がる空に飛び上がった。
その時の彼女の表情は年相応の、心底から晴れやかなものであった。
あ、そうだ(唐突)
割と今更ですが、お気に入り登録1000人越えました!!
ありがとうございます!!
まさか二作続いて1000人越すとはおもってなかったので、皆さまには感謝の極みです^_^
それと懲りずに新作出しちゃったんでそっちの方もよろしくです。
内容はここでいうのはアレなので、一言だけ。
俺がガンダムだ(迫真)