魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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エアリーズってデンドロビウムみたいに旋回性は然程良くないと思うの。
そんなイメージを持ちながら書いてます。


第55話 夜空の中のMS

ヒイロ達が搭乗するヘリコプターにエアリーズから放たれたミサイルが迫る。そのスピードはヘリでは振り切れないことはおろか、まだハッチの開放まで済んでいない。このままではミサイルはヘリに直撃し、ヒイロ達ごと撃墜されるだろう。

 

「ヒイロさん!!」

 

そんな最中、自身を呼ぶ声が聞こえる。視線だけその方角に向けてみれば、フェイトが己のデバイスであるバルディッシュを杖の形態でなんらかの魔法を発動しようとしていた。

 

「飛びます!!幾つですか!?」

 

たった一言だけだったが、ヒイロは状況とフェイトの様子を見て、全てを察する。

彼女はミサイルの迎撃に向かうつもりなのだ。ヒイロはすぐさま自身の先ほど窓枠から見たミサイルの記憶を思い起こす。

 

「8つだ。」

 

記憶からはじき出した飛んでくるミサイルの数を手短に伝えると、その瞬間、フェイトの体はさながら瞬間移動したかのように掻き消えた。

 

 

 

 

(時間がない………!!でも外すわけにもいかない………!!)

 

フェイトの体は今、ヘリの外にあった。自身の使用する魔法の一つである転移魔法で一足先に移動したのだ。一見すると仲間を見捨てたようなその行動だが、彼女はむしろその逆、仲間を助けるために転移したのだ。

フェイトはバリアジャケットも展開せずに自由落下している状態でバルディッシュを構えると自身の周囲に魔力スフィアをミサイルの数と同じ八つ出現させる。

 

(ここでどちらか失敗したら、ヘリは落とされる………!!シグナムやヴィータ、何よりヒイロさんが、いなくなっちゃう…………!!!)

 

もしここで自身が迎撃に失敗してしまえば、仲間たちが、何より自身が恋い焦がれているヒイロが、今度こそましてや今度は自身の目の前で死んでしまう。

そのことにフェイトは無意識にバルディッシュを持つ手を握りしめる。

 

(そんなこと…………そんなこと……………!!)

 

 

「そんなこと…………させるもんかぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

振り上げたバルディッシュを勢いよく振り下ろすと魔力スフィアは槍の形状に変化し、『プラズマランサー・マルチシフト』として射出される。

10年前とは比べものにならないほどの精度と威力となったフェイトのプラズマランサーはまるで彼女の絶対に守り通すという意志が表れているようにミサイルと遜色ないスピードで夜空を縦横無尽に駆け巡る。

 

「今度こそ、大切な人全てを、守ってみせる!!!」

 

プラズマランサーはフェイトの言葉に呼応するように金色の軌跡を夜空に残しながらミサイルに飛んでいく。

ただ標的を自動的に狙い、向かっていくミサイルに対して、フェイトの放ったプラズマランサーは彼女自身の意志によってその軌道や動きを変幻自在に変えることが可能だ。

フェイトはヘリを追い回すように飛ぶミサイルの軌道を予測し、プラズマランサーを最短距離で飛ばす。

 

 

「ヴァイス・グランセニック。ヘリのハッチは開いているのか?」

 

少し時間を巻き戻して、フェイトが転移魔法でヘリの外へ移動した直後、ヒイロはパイロットのヴァイスがいるコックピットに向かって声をかける。

 

「あぁっ!?ハッチだぁ!?開けようとしたけどミサイルに追われている状況で開けられるわけねぇだろうが!!少しは常識ってもんをーーー」

「そうか。ならさっさと開けろ。」

「人の話聞いてんのかぁっ!?」

 

ヒイロの無茶な要求にヴァイスは声を思い切り荒げながらも迫りくるミサイルから逃れるために懸命に操縦桿を操作する。

 

「…………ならこちらのやり方でやらせてもらう。」

 

ヴァイスが開けてくれないと判断するとヒイロはウイングゼロを展開し、ビームサーベルを抜刀すると閉ざされているハッチにその緑色の剣先を向ける。

 

「ああもう、お前生粋のバカかよ!?ヴァイス!!頼むからハッチを開けてくれ!!ヒイロならマジでハッチを叩き斬るぞ!!」

「マ、マジですかい!?ったく冗談じゃねぇぞ、あのガキ!!」

 

ヒイロがやろうとしていることを瞬時に察したヴィータは青ざめた顔をしながら咄嗟にヴァイスに命令を下す。そのことにヴァイスは目を見開くとヒイロに向けて悪態を吐きながら苛立ちを隠せない様子のままハッチの開閉ボタンを押す。

 

「……………。」

 

ハッチの開放が始まったことにヒイロはひとまずビームサーベルを元に戻し、ウイングゼロを解除する。しかし、ウイングゼロを解除するやいなや、ヒイロはまだろくに開いていないハッチに向かって駆け出した。

 

「お、おいヒイロッ!?まだハッチは開ききってーーー」

 

そのことに一番最初に気づいたシグナムが驚いた様子でヒイロに静止の声をかけるが、僅かに人が一人通れるかどうかギリギリの開いた隙間にヒイロは体をねじ込ませるように入れると、そのままヘリから降りていった。

 

「い、行ってしまった………………。凄いな、彼は。私であれば胸の辺りでつっかえていたぞ………。」

「んなこと言ってる場合かよっ!?」

 

シグナムがヒイロがそのままヘリから降りてしまったことにまるで場違いなことを述べていることにヴィータがツッコミを入れる。

その直後、ヘリの近くで爆発音と衝撃音が鳴り響き、その振動でヘリが大きく揺さぶられる。

音自体は近かったようだが、幸いヘリの胴体に穴が開いたようには見られなかった。

おそらく先に向かったフェイトがうまいこと迎撃に成功したのだろうと、ヴィータは推測を立てた。

 

 

 

「ミサイルの迎撃………完了!!」

 

ミサイルの全撃墜を視認したフェイトは即座にバリアジャケットを装着し、一気に急上昇を始める。その最中、フェイトは空中を飛ぶ二機のエアリーズを視界に見据える。

 

(あのエアリーズっていう機体………ミサイルはもう全部使い切ったみたいね。)

 

フェイトはエアリーズの翼に懸架されてあったミサイルポッドに視線を向ける。エアリーズの主翼にあるミサイルポッド。それは左右の翼に懸架されていたが、その数は一つにつき二発。つまり一機に搭載されているのは四発だ。

であれば、二機から合計八発のミサイルが発射されることになる。それらを全て撃墜したのであれば、もうミサイル攻撃は飛んでこない。

 

(でも、まだあの機体には銃が握られている………ビームか実弾かはわからないけど、どっちにしたってヘリに当たれば撃墜は免れない…………!!)

 

フェイトがエアリーズたちに立ちはだかるように飛んでいるヘリの側まで移動するとエアリーズたちは一度態勢を整えるつもりなのか、ミサイルを撃ち落とした時に生じた爆炎をそれぞれ右と左に避けるように旋回しようとする。

 

(一機ずつに分かれた………。それぞれが陽動役をやって、残ったもう片方がヘリに攻撃を仕掛けるつもりね………。)

 

フェイトはバルディッシュから鎌状の刃を構えると左に旋回した、フェイトから見て右に見えるエアリーズに視線を移す。

まずは片方に集中して、撃墜した後にもう片方を墜とす。

自分とバルディッシュの力とスピードなら十分やれるはず、と意気込んだ瞬間、フェイトの視界に気になる光景が映り込む。

 

それはフェイトの目の前にあったミサイルの爆煙だった。ミサイルの破片が落ちているのか、所々爆煙がついていくようにいくつか下に伸びていたが少なくとも爆煙は球体のような形だった。

その爆煙の一箇所が突然不自然に膨らみ始めたのだ。その箇所はフェイトが後回しにしようとしていたもう一機のエアリーズに程近かった。

 

その不自然な爆煙の膨らみはみるみる大きくなっていく。その爆煙の中に何かがいる。フェイトは直感的にそう思った。

 

そしてエアリーズがその膨らみの近辺を通った瞬間、その膨らみから緑色の光刃が突き出される。突然の爆煙からの攻撃にエアリーズは反応することすら出来ずにその胴体に刃が突き立てられた。その身を覆う装甲をまるで紙切れのように溶かされたエアリーズは頭部のカメラアイから光を失った。

 

「…………………一機撃破。フェイト、もう一機はお前に任せる。」

 

煙が晴れてくると姿を現したのはヒイロだった。エアリーズに突き刺したビームサーベルを引き抜きながら、フェイトを一瞥するとすぐに別の方角に視線を向ける。

 

「え、あ、はい。わかり、ました…………。」

「…………エアリーズはスピードこそは早いが、旋回性はそこまで良くはない。お前の技術ならやり方次第で楽に倒せるだろう。」

 

それだけ伝えるとヒイロはウイングゼロのバインダーを羽ばたかせて飛び去っていった。フェイトがヒイロが向かった先を見つめると、ガジェットⅡ型の群勢がこちらに向かってきていた。

十中八九、エアリーズの加速スピードについて来られなかったのが今になって追いついてきたのだろう。

 

「って、あれ?ヴィータやシグナムは…………?」

「おーい、フェイト!!ヒイロの馬鹿はどこいった!?」

 

てっきりヒイロは普通にヘリから出てきたのだと思っていたが、ヘリにいたヴィータとシグナムの姿が見えないことが不思議に思ったフェイトだったが、ガジェットⅡ型と同じように遅ればせながらヴィータとシグナムが姿を現した。

 

「あ………よかった、二人とも無事だったんだ…………。」

「ヘリも今のところは無事だ。それでヒイロはどこに行ったのだ?まだあのエアリーズとかいうのは一機残っているようだが………。」

 

二人とヘリがひとまず無事だったことに安堵感から胸を撫で下ろすが、すぐさま表情を引き締めた顔に変え、二人にヒイロの行先を伝える。

 

「ヒイロさんは遅れてきたガジェットⅡ型の迎撃に向かっているよ。私はあと残っているエアリーズを倒しに行きます。」

 

フェイトが指を指した方角を見ると二人の視界にも夜空の暗闇に光るウイングゼロの白い翼を見つけることができた。

 

「…………わかった!!ったく、ヒイロの奴、いちいち行動が早すぎるんだよ…………!!」

「とはいえ、彼のその単独行動には我々も救われていたのも事実だがな。」

「それはそれ、これはこれだ!!」

 

ヒイロの行動の速さにシグナムは軽く笑みを溢すが、ヴィータは怒っているかのように表情を険しくする。

 

「…………ヴィータってもしかしてヒイロさんのことが心配なの?」

「あぁん!?アタシはなのはの二の舞になってほしくねぇだけだからな!!お前みたいなぞっこんとはちげえから!!」

 

不意にフェイトがそう聞いてみたが、ヴィータはそれだけはないと言うように声を荒げながらヒイロのあとを追うようにガジェット群に向かっていった。

シグナムも少しばかり苦笑いのような表情を浮かべながら彼女のあとを追う。

 

「ま、またぞっこんって言われた………。」

 

ヴィータの言葉にフェイトは僅かに項垂れるような表情を浮かべるが、気持ちを切り替えて、バルディッシュを構え直す。

視線の先には残ったエアリーズが一機。右手に握っているチェーンガンを構えながらフェイトに向かってくる。

 

(相手は早いけど、一機だけ………それにこのモビルスーツは、多分量産型なんだと思う。)

 

フェイトの脳裏によぎっているのは10年前、闇の書に取り込まれ、ヒイロが操縦するウイングガンダムに乗せてもらい、脱出を図った時に遭遇した可変型モビルスーツ、トーラスだ。

 

(この程度の相手に、遅れを取るわけにはいかない!!)

 

先に仕掛けたのはエアリーズだった。ミサイルがなくなった今、手持ちの武器はチェーンガンしかない。照準をフェイトに合わせると銃口から実弾の弾がマシンガンのように連続して吐き出され、フェイトを蜂の巣にせんと迫りくる。

 

 

「この程度だったら………!!」

 

フェイトはエアリーズのチェーンガンの銃口の向きから実弾の通過経路を予測すると身を翻すことで回避しながら反撃の魔力スフィアを二個発生させると、そのままプラズマランサーとして射出する。

反撃の2振りの槍は標的に向かっていくが、エアリーズはそれをバレルロールをしながら軌道を変えることで一時は射線から逃れる。

 

「そう簡単に………逃がさない!!」

 

しかし、たかが軌道から外れただけで避けられるような安直なフェイトの魔法ではない。フェイトから指示をするように手を振り下ろすと標的を見失っていたプラズマランサーにつけられていた環状魔法陣が起動し、再度エアリーズに向かってドッグチェイスを始める。

 

「もう一度………行けッ!!プラズマランサー!!」

 

逃げるエアリーズにそれを追うフェイトのプラズマランサー。

繰り広げられる逃走劇。しかし、フェイトのプラズマランサーより速度が速いのか、エアリーズがどんどん引き離すが、誘導性に優れているプラズマランサーが旋回性の悪いエアリーズを最短距離で追い詰めるため、振り切れないが、追いつかれもしない均衡状態のようなものに陥る。そして、エアリーズが方向転換のために旋回しようとスピードを僅かに落としながら機体を傾けた瞬間ーー

 

「クレッセントセイバー!!」

 

フェイトがこの瞬間を待っていたと言わんばかりにバルディッシュを振り抜き、その鎌状の光刃から三日月状の斬撃を飛ばす。

三日月状の斬撃は回転を始めると円形状になっていき、ブーメランのようにエアリーズに迫りくる。

フェイトに圧倒的に有利であった手数での攻撃にエアリーズは避けようとするが、機械故に突然の奇襲に反応が遅れ、右翼部分が切断される。

 

エアリーズに直撃を確認したフェイトは瞬時に自身の十八番でもある高速移動魔法のソニックムーブを発動させると主翼を切られ、姿勢制御が不安定になったエアリーズの背後に移動。

肩に担ぐようにバルディッシュを大きく振りかぶるとそのまま横になぎ払った。

 

さながら死神による処刑のようなそのバルディッシュの大振りはエアリーズを真っ二つにした。

 

さらに死体打ちと言わんばかりに先程までドッグチェイスを繰り広げていたプラズマランサーを両断させ、二つに分かれたエアリーズにそれぞれぶつけ、二つの花火を作った。

 

「ふぅ…………ヒイロさんの言う通り、旋回性はそこまで良くなかったのが救いだった………。軌道もまだ読みやすかったし………。」

 

エアリーズを撃破したフェイトだったが、小さくため息を吐くと苦々しい表情を浮かべる。速さにはそれなりの自信があったフェイトだったが、エアリーズの速さは一般的な魔導師の速度を優に超えていた。

ましてや自身の魔法でもあるプラズマランサーが速度で追いつけないというのは、フェイトに抗えようのない危機感を覚えさせる。

 

「量産型みたいな見た目であんな性能なんて、一機ならまだしも数で来られたら…………。」

 

フェイトの中で嫌な予感が蔓延するが、現状考えてもどうしようもないことである以上、思考をそこで打ち止めにするほかなかった。

 

 

 

 

「このガジェットⅡ型だが、戦闘ヘリが良いところだな。」

 

ガジェットⅡ型の群勢と戦闘を開始したヒイロだったが、ガジェットの性能がお察し過ぎて呆れるほどに一方的な展開だった。

ヒイロに向けてミサイルを放つが、ウイングゼロであればそのミサイルを余裕で振り切れる。

武装を撃ち切り、ただ空を飛んでいるだけの機械となったガジェットⅡ型はもはや障害でもなく、ビームサーベルの餌食になるか、ヒイロの人外的な筋力の前に殴り壊されるか、蹴り壊されるだけだった。

 

「これで魔力的な筋力ブーストの類を一切やっていないと言うのだから末恐ろしいのだよなぁ…………。ウイングゼロと同じ装甲でできているツインバスターライフルとかで殴り倒すのならまだ分かるのだが。」

「仮にジェイル・スカリエッティがこの戦闘を見ているとすれば、出来る限りの情報の流出は避けておくべきだ。」

 

ヒイロの戦いぶりにアインスは呆れたような口調でそういうのだったが、ヒイロの言うこともわからない訳ではなかったため、アインスはそれもそうかと、ひとまず納得するのだった。

 

 

「ん…………後方から魔力反応…………ヴィータのものか。」

「ヒイロ!!そこどいとけ!!」

 

アインスから後方からヴィータの魔力が迫っているとの報告と同時にヴィータが声を荒げながらヒイロに声をかける。その声に反応するとヒイロは翼を羽ばたかせ、急上昇することで、一気にガジェット群との距離を取った。

 

その瞬間、ガジェット群に紅色に包まれた鉄球が降り注ぐ。雨霰のように落とされた鉄球はガジェットを粉々に破壊していく。

 

「まとめて仕留める!!レヴァンティン!!」

『Jawohl!!』

 

続けてシグナムがレヴァンティンにそう告げるとカートリッジから薬莢が一つ吐き出される。すると、レヴァンティンの刀身が分裂し、それらをワイヤーのような紐で繋がれた鞭のような連結刃となった。

 

「蛇よ、その牙を持って敵を噛み砕け!!シュランゲバイセン!!」

 

シグナムがダランとしたレヴァンティンを振り下ろすと鞭のようなしなりを生み出しながら、どんどんその連結刃が蛇のようにその身を伸ばしながら残り僅かとなったガジェット群へ伸びていく。

 

伸ばされたレヴァンティンの先端部分は一機のガジェットを捉えるとその機械の体を貫通しながら次々と同じようにガジェットを貫いていく。

ガジェットも当然回避行動のようなものも取るが、その伸ばされた蛇は一機たりともガジェットを逃すことなく喰らい尽くした。

 

「…………終わりだ。」

 

ガジェットを全て貫いたと見たシグナムはレヴァンティンを元の刀剣の姿を戻すと、見栄を切るようにレヴァンティンを振る。

次の瞬間、貫かれたガジェットが爆発し、海上の夜空を一瞬だけ彩った。

 

 

「ガジェットの反応は消滅…………お疲れだったな、みんな。」

 

アインスがウイングゼロのレーダーを確認して、これ以上の反応がないことを見ると、迎撃に出たメンバーに労いの言葉をかける。

 

「ああ、お疲れ、と言いたいところだが、ヒイロ、あのエアリーズとか言う機体、アフターコロニーにあるものらしいな。」

「…………サイズは縮められてあったがな。本来であれば、16メートルほどの大きさを持っている機体だからな。」

 

アインスの言葉に笑顔で返すシグナムだったが、それも長くは続かず、鋭いものに変わるとその視線がヒイロを貫いた。

彼女からの質問に無言で頷くと、エアリーズのサイズがかなり縮められてあると言うことだけを伝えた。

 

「あの機械、かなり速かったぞ。フェイトほどじゃねぇが、少なくともガジェットのⅡ型よりは倍近く速かった。普通の魔導師にあんなん対応できねぇぞ。」

「ちなみに言っておくが、エアリーズは一般兵士が乗る量産型、とだけは補足をさせてほしい。」

 

ヴィータが険しい表情を上げながらエアリーズの速さに危機感を告げるが、アインスからあれでも量産型だと言うことを伝えられるとその険しい表情に驚愕が入り混じったようなものを浮かべる。

 

「…………シグナム、お前に頼みたいことがある。」

「ん…………なんだ?」

 

そんな中、ヒイロは難しい表情を浮かべていたシグナムに声をかけた。まさかヒイロから頼みたいことがある、などという珍しいことにシグナムはびっくりしたような顔しながらヒイロに向き直る。

 

「エアリーズを一機、仕留めたついでに海中に落としたのだが、それのサルベージだ。」

「猿………なんだ?」

「あぁ…………お前が何を頼みたいのかわかった…………。」

 

ヒイロの頼みだが、サルベージの単語がわからなかったのか動物の方の猿を思い描きながら首を傾げるシグナム。

そのヒイロの頼みの具体的な内容を察したのか、半笑いの表情を浮かべたアインスがウイングゼロの中から現れる。

 

「まぁ………要するにだな、レヴァンティンの連結刃状態で海中に沈めたエアリーズを引き揚げて欲しいということだ。」

「ああ、そういうことか。だが、海中に沈んでいるのだろう?どうやって探すのだ?」

「ウイングゼロのレーダーで金属反応を探知している。既に座標の割り出しも済んでいる。」

「速っ…………!?予め探していたのか?」

「まぁ………ヒイロが意味もなく撃破したエアリーズを放置する訳ないと思っていたのもあったが…………。」

 

アインスの行動の速さにヴィータも驚いた様子で彼女を見つめていたが、ヴィータの脳内にはこんなことを思い浮かべていた。

 

(……………釣りか?これ。)

 

 

 

「えっとだな、もう少し左にずれてくれ。」

「む、むぅ…………一応レヴァンティンの連結刃の状態は自在に動かせるが………。」

「自在とはいえ、お前の視界から海中は見えないだろう?それならばなるべくぴったりの地点から始めた方が色々と楽だと思うが?あぁ、そこだな。ちょうどそこから30メートルの海底に沈んでる。」

「わ、わかった。しかし、こんな経験初めてだぞ………。」

「いい経験だと思ってくれ。それにこちらでできる限りサポートはするさ。」

 

少々慣れないことをしているためか小難しそうな顔を浮かべ、口を尖らせて四苦八苦しているシグナムにアインスが笑みを向けながらそう声をかける。

 

「よ、よし。レヴァンティン、いつもとは違う使い方だが、よろしく頼むぞ。」

『Jawohl』

 

シグナムの声に応えるようにレヴァンティンはその身を先程の連結刃に変える。

そのレヴァンティンをシグナムは真下の海中に伸ばし始める。

 

「先端部分、10メートルに到達。別にそれほど焦らなくても大丈夫だからな?」

「あ、ああ。い、意外と繊細な作業を要求されるのだな………!!」

 

アインスの言葉にそう返すとシグナムのレヴァンティンを持つ手はプルプルと震えていた。

その様子に側で見ていたフェイトとヴィータは心配するような視線を向けていた。

 

「シグナムの奴、ついズバッとやっちゃあしないよな?貴重な調査資料なんだぞー。」

「わ、わかっているから集中させてくれ!!手元が狂ったら、ど、どうするのだ!!」

「た、多分、大丈夫だと思うよ………?」

 

茶化すヴィータに緊張しているのか声を荒げるシグナム。そんな二人の様子に苦笑いを浮かべながらフェイトは見つめていた。

 

「ん…………剣先になにか当たってるような感覚が…………。これか?」

「座標からも場所は一致している。それと判断してもいいだろう。」

「そ、それじゃあ後は引き揚げるだけか?」

「引き揚げる直前に軽く引いて、ちゃんと重さを感じるのであれば引き揚げてくれ。」

 

シグナムのいかにも不安ですと言うような顔にアインスは笑いを堪えているのか表情をひくつかせながら言葉を返す。

シグナムが言われた通りに軽くレヴァンティンを引っ張り、重さがあることを確認するとレヴァンティンを元の長さに戻し始める。

 

「お、重さはしっかりと感じるのだが………どうだ?」

「…………反応がしっかりと上昇していることを捉えている。そのまま続けてくれ。」

 

安心してほしいという意味合いでいったアインスの言葉だったが、シグナムはひどく肩肘が張ったような状態で目を見開き、僅かな異常さえ見逃さないというような

様子にヒイロを除いた一同は乾いた笑いを避けられないでいた。

 

しばらくすると、ウイングゼロのビームサーベルによって胸部の辺りにぽっかりと穴が空いたエアリーズが海中から姿を現した。

 

「な、なんとかなった…………。しかし、剣を振るしか能がないと思っていたが、やってみれば意外となんとかなるものだな。」

 

慣れないことながらもやり切ったことに達成感でも感じていたのか、シグナムはふんすと胸を張るような仕草をする。そんな最中、ヒイロは一人アインスの方に視線を向ける。

 

「アインス、このエアリーズに自爆装置の類は付いていないのか?」

「ん………自爆装置か?いや、その類のようなものは確認していない。」

「…………まぁいい。後で俺が見ておく。」

「あぁ。そうしてもらえると助かる。何事も目視による検査に敵うものはないからな。」

「じ、自爆装置…………!?」

 

何気なくヒイロとアインスの会話の中にあった自爆装置という単語にフェイトは心底から驚いたような表情を浮かべていた。

 

「仮にジェイル・スカリエッティが性能テストのためにこの海域にガジェットと共に出していたとしたら、こちらへの情報漏洩を防ぐためにそのような装置が仕込まれていてもおかしくはない。」

「お、おう…………。それにしても自爆装置か…………。」

「自爆する危険性がないのであれば、ヘリに積んで六科の隊舎で解析作業に入りたい。」

 

驚きのあまり声が出ないという様子のヴィータを完全スルーするとヒイロはエアリーズを持ち上げ、ウイングゼロの羽を羽ばたかせて上空で待機しているヘリに戻っていった。

 

「…………ま、まぁ、いろいろと調べなきゃいけないことができたのは事実だし、私達も戻る?」

「というか、どう見たってまたヒイロ主体で説明会だよな。」

「ああ、そうだな。あのエアリーズがアフターコロニーの機体なのであれば、ヒイロ以上の専門家はいないだろう。」

 

シグナムの言葉にフェイトとヴィータが頷くとヒイロの後に続いてヘリへと戻っていった。

 

 

 




うーん、初めてのMS戦なのにどこかコメディチックになってしまった………(白目)
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