魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜 作:わんたんめん
機動六課の隊舎は首都区画においては湾岸地帯の地点に建てられている。
そのため、海上からの風が強く吹く時もあり、その時の風はひどく冷たく感じるときも多々ある。しかも今の時刻は日が完全に沈んでいる夜の時間帯。その寒さはより顕著に現れる。
「…………いつもはバリアジャケットを着ているからあんまり感じないけど、思ってたより寒い………。」
「あはは…………。それで、なのはさん、話ってなんですか?」
そんな六課隊舎の海が一望でいる場所になのはとティアナが腰を下ろしていた。なのはが想定外の気温の低さに唸っている様子にティアナが苦笑いを浮かべていた。
「………色々とこの涼しさだとさっさと話すべきだよね。ティアナ、クロスミラージュ、貸してくれる?」
「クロスミラージュをですか………?」
なのはの自身のデバイスを貸して欲しいという言葉にティアナは首を傾げながらも起動させたクロスミラージュをなのはに手渡した。
「システムリミッター、テストモードリリース。」
なのはがクロスミラージュにそう告げるとクロスミラージュの宝石部分が明滅を繰り返し、その声に反応したように応答の電子音を響かせる。
「クロスミラージュにモード2って言ってみて。」
「あ、はい…………モード、2………。」
ティアナがそうクロスミラージュに命令した瞬間、電子音が響き、クロスミラージュの形状が変わっていく。俗に言うモードチェンジを行ったクロスミラージュの銃口からティアナの魔力色である橙色の魔力刃を伸ばした。
それはまさに、ティアナがこの前の模擬戦でなのはに向けて放ったダガー状の魔力刃とほとんど違いはなかった。
「こ、これって…………!?」
ティアナが驚いた様子でクロスミラージュからなのはの方に顔を向ける。その様子になのははどこか申し訳なさを含んだような苦笑いを浮かべる。
「ティアナは…………執務官志望だよね?だから、医務室でティアナ自身が言っていたヒイロさんの言葉通り、いろんなレンジで戦わなきゃいけない時がある。あるんだけどぉ…………。」
なのははそこまで言うとどこか遠い目をしながら続きを述べる。
「ヒイロさんに先に言われてたし、あんなことがあったせいで私が言っても説得力が皆無な上に二度手間なんだよねー…………。」
「クロスもロングもちゃんと教える予定はあったんだよ?でも六課ってその所属柄緊急性がすっごく高いからまだモノにしていないことをやるより、使いこなせていることをさらに確実にした方がいいって思って教導をしていたんだけど………結果、今までみたいな地味ーな訓練になっていたんだよね…………。」
「……………どうしよ、私の教導思い返せば思い返すほど代わり映えがないことばっかしてる………。これじゃあティアナが飽きるのも当然だよ………。」
「なのはさんストップ。一回思考を止めましょう。こっちも申し訳なさに押しつぶされそうですから。」
なんだかモヤモヤと黒いオーラ的なのが出てきたなのはをティアナが肩を揺さぶることで気を紛らわせようとする。
「うん………まぁ、起きちゃったことは事実なんだし、改めて、ティアナには謝らないとね。本当にごめんね。」
「…………そんなことありませんよ。なのはさんが怒る理由もわからないわけではありませんでしたから。むしろ、色々考えてくれていたのに、我先にと自分で勝手に次の段階に行こうとしていたことを謝りたいくらいです。」
「…………それじゃあおあいこってことにしようか。私から言い出すのは問題ある気がするけど………。」
そう言うとにゃははと彼女独特の笑い声と共に苦い表情を浮かべるなのはに続くようにティアナも表情を緩め、朗らかな物にする。
「そういえば、なのはさんが起きる前にヒイロさんがなのはさんを撃墜していたみたいなんですけど………あの人、一体どんな手法で撃墜したんですか?」
「……………そうだね。一言で言えば、常人には真似できないようなこと、なんだけど………その度合いが常識とはあまりにもかけ離れてた。」
「そう、なんですか?」
(ヒイロさんの戦い方、なんだかんだあんまり見たことないから参考ぐらいにはさせて欲しいな…………。)
と何気なくそう思っていたティアナだったが、なのはの少し微妙な表情が目につくと、そちらに意識を移した。
「………あの、どうかしましたか?」
「………もしかして、ヒイロさんの戦い方を参考にしたいって思ってる?」
「え………?そんなに顔に出てましたか?」
自分の心中がなのはに見透かされていたことにティアナは驚いた表情に少し混ざった恥ずかしそうな声でなのはにそう尋ねる。
「うん。そうなんだけど、一つだけ忠告。ヒイロさんの真似は絶対にしちゃダメ。」
「え、どうしてですか?」
「さっき言ったでしょ?常識とかけ離れてるって。前にも言っていたけど、シャマルさんの腕を粉砕したこともあるんだから。」
「確か………筋力値とかが計測不能、でしたっけ?」
ティアナが思い出を振り返るように言った言葉になのははうんうんと頷きながら険しい表情をする。
「計測不能ってなんだかモヤモヤした言い方ですね。他に何かないんですか?」
「えっと…………これは聞いたことなんだけど、四重にかけられたバインドを力だけで一息で粉砕したとか。」
「四重にかけられたバインドをですか…………?」
「あと、防御用の魔法陣を脚で貫通させたのに、本人から加減をしたって言われたり。」
「…………ちょっと待ってください。計測不能で済ませていいんですかそれ。」
「ちなみにこの被害にあった人(?)は管理局でも指折りの実力者だったらしいよ?」
「す、すみません、もうお腹いっぱいになってきたんで………。」
ティアナが引き気味の笑みを浮かべてなのはにこれ以上は結構という意思表示をするも、なのはは気にせず話を続ける。
「そして、そんなヒイロさんが取った私への行動はーーーー」
「私が撃ったディバインバスターをビームサーベルで中心軸を突くことで枝分かれさせた上にその中を突っ切ってきた、でした。」
「……………ヒイロさんって、本当に同じ人間なんですか?」
「………そうだと思う、よ?まだ幼い頃はそんなに気にしなかったけど、いろんな人から聞いていく内にどんどんあの人が手の届かないところにいるんだなって認識するようになったかな。」
なのはがティアナから視線を逸らすように夜空を見上げる。その表情にはどこか渇望するようなものが入っているのをティアナは感じ取った。
そのヒイロの強さに惹かれたなのはは少しでも近づこうとより一層の魔力の研鑽に励んだ。しかし、その先にあったのは自分自身の肉体に重大な損傷を与えてしまうと言う極めて皮肉な結果になった。
「…………でも、人それぞれだもんね、強さの形って言うのは。」
そんななのはだったが、不意に笑みを浮かべると、ティアナに向き直った。
「ヒイロさんにはヒイロさんの強さの形が、ティアナにはティアナの強さの形がある。同じように私にも私の強さの形があるんだよね。」
「それをこれから見つけて行こうかな。」
「…………なのはさんなら絶対見つけられますよ。元々お強いんですから。」
「ティアナ………。」
「言っておきますけど、これは嫉妬とかじゃなくて、確信ですからね?」
ティアナの言葉に少し気まずい表情を思わず浮かべるなのはだったが、すぐさまティアナがわずかに表情を緩めながらそれを否定する。
そんな時、二人の耳にヘリのローターの音が響いてくる。先ほどまで話題に上がっていたヒイロを乗せたヘリがガジェット郡の迎撃から戻ってきたのだろう。
その証拠に夜空にヘリの存在を示す赤色灯が明滅を繰り返しながら徐々に近づいてきているのが目に見えていた。
「ヒイロさん達戻ってきたみたいだね。私達も戻ろうか。」
「そうですね。」
そう言うと二人はお互い笑みを見せ合いながら隊舎へと戻っていった。
「ヒイロさん、お疲れ様やな。」
「…………はやて。解析などが行える部屋は隊舎内に存在するか?」
「ん?突然どうしたん?」
「かなり面倒なことになった。」
ヘリが隊舎のヘリポートに無事着陸し、出迎えにきたはやてにヒイロはそう言いながらハッチが開いたヘリの中に指を向ける。はやてがその指の先を見つめると、そこには機能を停止したエアリーズが鎮座していた。
「これ…………もしかして、ロングアーチから知らされていたアンノウンか?」
「ああ、そしてその正体だが。アフターコロニーのモビルスーツの一つであるエアリーズだった。」
「も、モビルスーツ!?確か、ヒイロさんの説明で15mくらいの機動兵器だったよな!?」
はやてがモビルスーツの存在がミッドチルダにあるという事実に驚きの表情を隠せないでいた。ヒイロはそのはやてにエアリーズについての説明を始める。
「マッハ2での飛行が可能…………。そんな性能持っていて量産機なんか、あの機体は………。」
「一刻も早い解析が必要だ。だが、この中でモビルスーツについての知識があるのは俺だけだ。そのためにも解析用の部屋を用意して欲しい。」
「……………わかった。すぐに準備させる。どれくらいあればおおよその作業は終わりそう?」
「六時間もあれば十分だ。」
「つまりは夜明けにはおおよそできるってことやな。誰かそっち方面に強そうな人でも借そうか?」
「必要ない。仮に自爆装置でも作動した時に面倒なことになる。」
「じ……自爆、か。確かにそれは怖いな………。ヒイロさん自身はどうするん?大丈夫なんか?」
「自爆には慣れている。死ぬほど痛いがな。」
「……………ちょっと待って、ヒイロさん、まさか自爆の経験がおありで………?」
「そうだが。」
まさかのヒイロのカミングアウトにはやては表情を引き気味にプルプルと震えさせながら頭を抱えた。そんな時ヘリポートに先ほどまで外に出ていたなのはとティアナが現れる。その二人が目についたはやては何か思いついたように目を見開いた。
「なのはちゃーん…………ヒイロさんにもしものことがあったら困るから側にいてあげてー…………。」
「え、ええっ!?べ、別に構わないけど……………。明日の教導、どうするの?」
突然のはやてのお願いになのはは明日の教導を理由にヒイロの一夜漬けに付き合うことに対して渋い表情を浮かべる。
「明日一日くらいFWのみんな休ませても大丈夫だと思うで?根つめるのはあんまよろしくないし。」
「うーん……………それもそうかな…………。」
なのはが渋々といった感じでその役目を引き受けてくれると踏んだはやては再びヒイロに視線を向ける。
「ヒイロさんもそれでええか?一応爆発を防ぐ役くらいはいるやろ?」
「……………いいだろう。なのは、エアリーズを運べるか?」
「これくらいだったら浮遊魔法でいくらでも。」
「わかった。」
「解析用の部屋はなのはちゃんに追って伝えるから、待っといてな。それとヒイロさん。最後に一つええか?」
「…………なんだ?」
「エアリーズってどう言う意味なんや?」
「………………牡羊座だ。ガンダム以外のモビルスーツには大体が星座の名前が付けられている。獅子座や山羊座などもある。」
「っ…………わかった。ありがとう。」
「何か理由がありそうだな。」
「そう、やな…………うん、今度カリムのとこに行く時、ヒイロさんにも同行を頼もうかな。日時はまだ決まっておらんけど………話さなきゃならないことを話すつもりや。」
「………了解した。」
はやての表情に何か相当なものを感じたヒイロはそのはやての要望を承諾するのだった。
「これがモビルスーツ…………さっき見せてもらった映像の中にはモスグリーンの人型と戦車の形をした機体しか映ってなかったけど、こんな形のもいるんだね。」
「……………エアリーズは人型に戦闘機の機能を付け加えたような機体だ。お前の言うモスグリーンの人型というのはリーオーのことだろう。リーオーは代わり映えのしない機体だが、その分汎用性が極めて高い。オプションこそ必要だが、どのような環境、それこそ宇宙での活動も可能だ。」
「へぇ…………。」
ヒイロのリーオーの説明に感心しているような声を上げながら鎮座しているエアリーズに視線を向けている。
当のヒイロは端末を操作しながらエアリーズの内部構造の解析を行っていた。
まず一番最初に調べるのは、先ほどからヒイロが警戒している自爆装置の有無だ。
「…………自爆装置の類は確認されず、か。ジェイル・スカリエッティはよほど警戒感のない人間か、もしくは自己顕示欲の強い人間、といったところか。」
ヒイロは一度そこで解析の手を止めるとなのはの方に視線を移す。
「自爆の危険性がない以上、お前がいる必要はなくなった。部屋に戻っていろ。」
なのはがいるのはもしもの時にエアリーズが自爆した時のためになのはの防御魔法で守ってもらうことだったのだが、自爆装置が確認されなかった以上、なのはがヒイロの解析作業に付き合う理由もなくなった。
そんなことでなのはにこれ以上徹夜させないためにもヒイロはなのはに部屋に戻るように伝えたのだが、肝心のなのはの表情はどこか微妙なものであった。
「えっとね、確かに戻ってもいいんだけど………今日気絶していたとはいえいっぱい寝てたから、あんまり眠たくないんだよね…………。」
そういうわけで、このまま作業を見させて欲しいと頼むなのはにヒイロはわずかにため息のような息を吐くと視線を解析の様子を映し出しているモニターに戻した。
「……………好きにしろ。」
それだけの言葉であったが、一応、ヒイロからの許可が降りたことに変わりはない。なのはは嬉しそうに表情を緩めるとエアリーズをマジマジと観察を始める
「ヒイロさん、エアリーズって武装とかどんなのを持ち合わせてるの?」
「………翼に懸架されてあるミサイルが八発。あとは手持ちのチェーンガンという実弾のマシンガンだ。たまに手持ち型のミサイルポッドを持っているタイプもいる。」
なのはの質問にヒイロは作業のスピードを落とすことなく答える。
(……………内部構造の電子基盤はガジェットに使われているものと相違はない。装甲部もチタニュウム合金ではなく、ガジェットのものと一致………。要はモビルスーツの皮をかぶったガジェットということか。厄介さはI型などとは比べ物にならないがな。)
これまで確認されてきたガジェットのデータと今回のエアリーズを比べてみて、中身はⅠ型らとそれほど違いがないことを確認する。しかし、何より重要なのは、一体誰がエアリーズのデータをジェイル・スカリエッティに流したかだ。
ヒイロはその手がかりを得るべく、エアリーズの電子基盤のデータを洗いざらい精査していく。
そんな最中、解析中の画面が突然エラーを表示する。その時に警告音のようなものが響いたため、自然となのはもそのエラーが表示されている画面に注目する。
「エラー………?もしかして壊れちゃってたんですか?」
「…………その可能性もないわけではない。海に沈めたわけだからな。もう少し詳しく調べてみる。」
困惑気味に表情を不安なものにするなのはにヒイロはさらに詳しく調査するとだけ言うとさらに端末を操作していく。
様々なディスプレイが表示されていく中、ヒイロは何か引っかかるような感覚を覚える。
(これは本当にデータの破損か…………?破損の表示が現れるにしては妙なところで出てくる………。)
データが破損しているのであれば、ヒイロが調べ始めた時点で出てくるのが普通だが、このエラーの表示はそれなりに調べてきたところで突然表示されたものだ。
タイミングも相まってヒイロの目線からはかなり怪しく見えた。
(………………何か、隠したいものがあるのか?)
そこまで思考が行き着くとヒイロはさらに端末を操作する速度を上げる。突然ヒイロがスピードを上げたことになのははびっくりしているような様子で見つめていた。
「ヒ、ヒイロさん?何かわかったの?」
「このエラー、暗号電文の可能性がある。それの解析作業をしているのだが……………ッ!?」
解析作業をしていたヒイロだったが、その手が一度固まったように止まる。突然手が止まったような様子になのはが訝しげな表情を浮かべていると、ヒイロは苦いものに表情を歪めると、止まった手を再度動かし始める。しかし、そのスピードは速いというより、どこか慣れている様子で操作していくその作業になのはは困惑した様子でヒイロの横顔を見つめる。
「あ、あの………なんだかすごく慣れている様子なんだけど………?」
「これが暗号電文であることは確かだ。だが、その使われている暗号、俺が使ったことのあるタイプのものだった。」
「え!?それって…………つまり………!?」
「エアリーズと接敵した時からジェイル・スカリエッティのもとにこちら側の人間が存在する可能性もないわけではなかった。だが、よりによってーーー」
ヒイロがそこまで言ったところでエラーを表示していた画面が一転して途切れた様子の黒い画面を表示する。
程なくしてその画面が色を取り戻すとそこには、両目がゴーグルのような義眼になっている老いた男の姿が映し出されていた。
「お前か。ドクターJ。」
『久しぶりじゃのう、ヒイロ。この映像が見えているということは、無事にスカリエッティの奴めが作ったエアリーズはお主ら機動六課によって回収されたようじゃな。』
「こ、このおじいさんは一体………!?」
「ドクターJ。ウイングゼロを設計した開発者の一人だ。」
「こ、このおじいさんが!?」
ヒイロの言葉に開いた口が塞がらないといった様子のなのは。しかし、映像の中のドクターJはそんなことをまるで気にも留めない様子で話を続ける。
『して、今回この映像をお前さんに送ったのは、一種の警告の様なものじゃ。いずれ自然と明るみ出ることであろうが、予め知らせておいた方が後のためじゃろうと思ってのことじゃ。』
『……………2番目の娘には気を付けろ。奴は既に管理局に侵入している上に、その役目も終えている。場合によっては用済みの奴を消す可能性もある。もっとも其奴は聖王教会にも入り込んでいたらしいがの。」
「2番目の、娘…………?それに聖王教会と管理局に………!?」
ドクターJの言葉に疑問気に首をかしげるなのは。考える暇もなく、ドクターJの言葉は続けられていくため、考えることはあとにする。
『それとスカリエッティの奴めは既にかなりの戦力を保有しておる。その中には当然、モビルスーツを模したものも含まれておる。』
『はっきり言って奴の知識欲を侮っておった。奴は流れ込んだ《北斗七星》と《うみへび座》からガジェットを素体にしながらもエアリーズをはじめとしたモビルスーツもどきを作り上げおった。とてもワシが言えることではないが、そのレベルは人間のものとは思えん。ワシの予感では奴も作られた存在なのかもしれん。』
『ヒイロ、ジェイル・スカリエッティの企みを止めるんじゃ。あやつの目的は世界征服、そのためにも障害となり得る管理局は奴にとって邪魔でしかない。そして仮にでも管理局が斃れるような時代になればその先に待っているのはすべての次元世界をまきこんだ戦争しかない。アフターコロニーのように戦争という終わらないワルツが続くような世界にしてはならん。』
最後に語気を強めた口調でそう言ったところで映像は途切れ、別のものが映し出される。
それはエアリーズをはじめとし、トラゴス、トーラス、ビルゴ、といったアフターコロニーのモビルスーツの設計図面だった。
おそらくジェイル・スカリエッティはこれらの兵器を既に作っているというドクターJなりのメッセージとヒイロは受け取った。
そしてドクターJから告げられたジェイル・スカリエッティの企みを阻止しろという言葉。
「……………任務了解。」
それを任務と受け取ったヒイロは静かに、それでいて確かに答えるのだった。
「世界征服…………そんなこと、できるの………?」
「できるはずがないな。一つの星ならまだしも、次元世界が無数にも存在するミットチルダを征服など、到底できることではない。しかし、管理局が斃れることになれば、体制は崩壊し、血で血を洗うような凄惨な戦争が続くだろうな。その戦火が及ぶのは管理外世界も例外ではない。」
「そ、そんなの絶対ダメ………!!」
ヒイロの推察になのはは悲痛な表情を浮かべる。管理外世界にはなのはたちの家族がおり、故郷でもある地球も含まれているからだ。
「そのためにもジェイル・スカリエッティを必ず止めなければならない。」
「うん、絶対に止めないと………。」
なのはは自身の手をぎゅっと握りしめ、その不屈の心をより一層強いものへと変える。その瞳にも確かな決意が満ち溢れていた。
そんな時、二人がいる部屋に電子音が鳴り響く。その音のした方向を見てみれば、先ほどまで設計図面を表示していた画面が文章を表示していた。
『13番目の娘がまもなく動き出す。彼女は聖王のゆりかごの鍵になる。なんとしてでも保護して欲しい。』
「13番目の、娘…………?」
「………………どのみち一度、聖王教会に足を運んだ方がいいようだな。」
ヒイロのその言葉になのはは疑問気に思いながらも『聖王』というあからさまなキーワードにヒイロと同じ考えに至ったのか、頷くしかなかった。
13番目の娘は割とこじつけに近いです。まぁ、誰のことを指しているかはわかるとは思いますけど