魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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60話突破か…………まぁ、幕間という名目を挟んでいるんで実質的には61話な訳ですがこれからもよろしくお願いします^_^

それと最近書いていて気づいたこと、言っていいですか?

フェイトそん、はや………たぬきさん、鉈女(人違い)、そしてライオンを素手で締め落とす女傑。

みんなご両親が既にご臨終なさっているじゃないですか、やだー!!


第60話  少女を巡る戦い

「ヒイロさん!!」

「エリオ!!キャロ!!」

 

なのは達から与えられた休暇を満喫していたのも束の間、ヒイロ達が発見したレリックを保管している箱に繋げられている少女の容態を連絡してから少しして、スバルとティアナが現場に駆けつける。

 

「来たか。レリックなら既にキャロが封印作業を済ませている。」

 

やってきた二人にヒイロは六課にとって最優先事項であろうレリックに関しての説明を簡潔に済ませる。それを聞いた二人はキャロに視線を向けるが、彼女の無言の頷きに特に問題はなかったことを察する。

 

「そこのレリックの箱を見ればわかるだろうが、目標は少なくとも二つあった。」

「そうみたいですね………この子の繋がれている鎖、なんだかちぎれた後がありますし…………。」

「他はそこの地下水路の内部のどこかにあると判断した方がいいだろう。」

 

ヒイロの指摘にスバルはびっくりした顔をしながら少女が這い出てきたと思しき開けられたマンホールの蓋を見る。

 

「既に報告済みだが、はやてからはそれの捜索は命じられるだろう。」

「そうですね。でも現状はその保護した少女の容態を静観した方がいいですね。」

「ああ。レリックの箱に繋げられていたということは大なり小なりはあるだろうが、スカリエッティと関わっているのは明白だろう。」

 

ティアナの言葉にヒイロは頷きながら少女を視界に収める。キャロの回復魔法がそれなりにきいているのか、発見当初の衰弱した様子から幾ばくか顔色が良くなっているように見受けられる。

 

「アインス、何かガジェットのような反応は地下水路に存在するか?」

「……………あるにはあるが、これは反応の広がり具合を見るに少女を探しているとは思えない。おそらく、地下水路内に落としたと思えるレリックを探していると考えた方がいいだろうな。」

 

ウイングゼロから出てきたアインスが訝しげな表情を浮かべながらヒイロの質問に答える。ならば現状はこの少女が危険に晒される可能性は低いと判断したヒイロはそのまま専門であるシャマルを待つことにした。

 

「あの、ヒイロさん。女の子に何か異常はなかったんですか?例えば怪我とか………。」

 

スバルの質問に建物の外壁に寄りかかって腕を組んでいたヒイロは閉じていた瞳を開け、スバルに向ける。

 

「強いて言えば異常がないことが異常だな。」

「それって別に越したことはないんじゃ………?」

 

ヒイロの言葉にスバルを疑問符を浮かべながら首を傾げる。スバルは特になんとも思わなかったようだが、ティアナは考え込んでいた素振りを浮かべていた。

 

「ヒイロさん、この女の子って地下水路を通ってきたんですよね?」

「そこの地下水路へと続くマンホールが空いていたことなどの状況から鑑みるとそう考えるのが妥当だろう。」

「でしたら………綺麗すぎますよね、特に足の裏。素足ならなおさら。」

「…………そうかな………結構衣服とかはボロボロに見えるけど………それがどうかしたの?」

 

少女に対しての指摘にスバルは素っ頓狂な反応を見せたことにティアナは呆れたようなため息を吐く。それにはどこか諦めのようなものも含まれているように感じられた。

 

「あのね………地下水路ってのは業者が点検とかでそれなりに整備してくれていると思うけど、大抵は劣悪な環境なのよ?子供が走り回るなんてことはあってはならないし、ましてやこの子のように素足で走り回るなんて、考えられていないでしょう?普通は足の裏が傷だらけになっていてもおかしくないわ。」

「い、言われてみれば確かに……………。」

「だからヒイロさんは異常がないことが異常って言ったのよ。少しは考えなさい。ただ頭ごなしに突っ込んでいったら解決できるものも出来なくなるわよ?」

「き、肝に命じておきます…………。」

 

相変わらずのスバルとティアナのやりとりにエリオとキャロは苦笑いを浮かべ、ヒイロも相変わらずの関心がなさそうな様子で二人を見ていた。

 

「話を戻すが、お前の言う通り、コイツの身体には地下水路を駆け回ったわりには傷がなさすぎる。」

「それで私が調べてみたのだが、結果は残念ながら芳しくなく、この子の魔力が平均的な魔力保有量しかないことがわかった程度だった。」

「そうなんですか…………。」

 

アインスの検査結果にティアナは難しそうな表情を浮かべる。現状、不明という言葉は不確定要素が大きすぎて、それがどちらに傾くかが想像できないからだ。

 

「俺ができたことはそれが限度だ。それ以上の詳しいことは本職のシャマルが到着してからだろう。」

 

ヒイロの結論にフォワード四人は険しい顔つきのまま頷くのだった。

 

 

 

 

「…………うん、バイタルに問題なし。危険も見られないわ。確かにヒイロ君の言う通り、衣服はボロボロの割に身体に傷がなさすぎるのも気になるところだけど、それはこれから彼女を移送する聖王教会の病院に任せましょう。何か、別のモノが絡んでいる可能性もなきにしもあらずだから。」

 

程なくして本職であるシャマルとなのはとフェイトの隊長陣を乗せたヘリが付近に着陸し、すぐさまシャマルによるバイタルチェック等の綿密な検査が行われた。

 

「ヒイロさん、この子ってもしかして…………。」

「…………例の『13番目の娘』の可能性はあるだろう。はやてに聞けば、昨日(さくじつ)クローンの培養用と思われるカプセルが積まれたトラックが事故を起こしているようだからな。」

 

なのはの険しい表情での耳打ちにヒイロは肯定の言葉を返した。

 

「おそらくだが、ティアナ達は地下水路にあるレリックの確保。お前達にはコイツの確保用の別働隊のガジェットへの迎撃が命じられる可能性が高い。」

「なら、私たちはこの子を移送するヘリの護送をやればいいんですね?」

「典型的なこの後の動きで言えばだがな。」

 

フェイトの言葉にそう返していると各々のデバイスにディスプレイが表示され、そこにはやてが映し出される。

 

『あー、聞こえとる?こちらロングアーチ00から各隊員へ。予めヒイロさんから地下水路でのガジェット反応のことは連絡受けてこっちのレーダーには反映済みなんやけど、その間に今度はちょうど北西方面、聖堂教会へ向かうヘリが廃棄都市区画を通ったの先にガジェットの小グループが展開中や。』

 

そのタイミングでディスプレイは地図を表示するとヘリの進行ルートと思われる矢印がある地点で停止し、そこでバツ印が映し出される。そこがヘリとガジェットの接敵ポイントということだろう。

 

『それで、スターズ01、高町隊長とライトニング01、ハラオウン隊長には別方向から向かっているスターズ02、ヴィータとリィンと合流して、これらのガジェットの迎撃行動を命令します。そしてスターズ03を始めとしたフォワード陣には地下水路に潜入してレリックの確保を。』

 

『了解!!』

 

はやての命令に六課でのコールサインを呼ばれたなのは達は了解の返事を返す。

 

『それとヒイロさんにはそのままシャマル達に同行してヘリに搭乗して。スカリエッティの狙いがその女の子なら、ガジェット以外にもなんらかの攻撃手段を用意しとる可能性があるからな。一応なんかあったら高町隊長とハラオウン隊長を向かわすつもりやけど…………。』

 

はやてはヒイロに対しての任務の内容を説明している途中、一度言葉を切った。

 

『ヒイロさんなら必要かどうかの判断は完璧にしとるから言わないつもりやったけど、私にもメンツってものがあるからな。これだけは言っておくわ。』

 

『おそらく敵が仕掛けてくるのは比較的隠れやすい廃棄都市地区。そこは特に生存者がいる訳やないから、ヒイロさんにはツインバスターライフルの使用許可を下ろします。』

「……………いいだろう。」

『…………その子を守ってあげて。仮にその子がクローンなら、元が存在するはずやけど、その子には実質的に親はおらんはずやろうから。』

「……………任務了解。」

 

はやての消え入るような言葉にヒイロはその任務を必ず完遂すると宣言するように言葉を返した。

 

 

 

 

「…………せっかくみんなに休んでもらいたかったのに、この日に限ってガジェットが出てくるなんて…………。」

「それは仕方ないですよ。向こうはこちらのことなんて微塵も思ってくれませんし。まぁ、些かタイミングが悪いとは思いますけど。」

 

残念そうにため息を吐くなのはにティアナが軽く笑みを浮かべた表情でカードのような形の待機状態のクロスミラージュを構える。

なのはも自身のデバイスであるレイジングハートの真紅の真珠を構えるとふと何かを思い出したような表情を上げる。

 

「…………そういえば、なのはさんのお兄さんってヒイロさんと似ているんですか?」

「ん゛んッ!?!」

 

突然のティアナの質問になのはは火山が噴火するような勢いで平静だった顔を真っ赤に染め上げ、あたふたと狼狽するような様子を見せる。

 

「そ、それは今聞くことじゃないんじゃないかなぁ!!?」

「い、色々噂になっているので、つい…………。」

「……………まぁ、食堂であんなこと言っちゃったらそうなるよねぇ…………。」

 

もはや噂を押しとどめることは不可能と諦めたのか遠い目をしだすなのはにティアナは苦笑いと愛想笑いが入り混じったような顔を浮かべる。

 

「……………で、どうなんですか?」

「け、結構グイグイ来るねティアナ………まぁ似てる、かな。人となりもそうだけど主に声が。」

「ご家族であるはずのなのはさんでさえ間違えるレベルなんですか………。」

 

「…………はい!!じゃあ雑談はここまでにして、後は私達のやるべきことをはじめようか。」

「…………了解です!!」

 

話を切り上げたなのはにティアナは何か追及の声を上げる訳でもなく、クロスミラージュを展開、バリアジャケットを着込むと各々に課された戦場へと向かった。

 

 

「ふふっ………………。」

 

そんななのはとティアナの二人のやりとりをにこやかな笑みを浮かべながら眺めていたシャマル。二人がバリアジャケットを着てそれぞれの領分である戦場へ向かう姿を見送った後、シャマルは自身の後ろでたたずんでいるヒイロに目線を移した。

 

「…………………なんだ?」

「あら、ごめんなさい。なのはちゃんとティアナちゃんが仲良くなってくれたことが嬉しくて。」

「………それでなぜ関係のない俺に視線を向ける。」

 

当然、その目線に気づかないヒイロではないため、シャマルに何か用でもあるのかと尋ねるように言葉を返すと、シャマルはそのにこやかな笑みを崩す様子をなく、二人の仲がよくなったことを嬉しそうにするも、ヒイロにはそれで自身に目線が向けられる理由ではないだろうと訳を尋ねる。

 

「実質的に二人の距離を縮めてくれたのはヒイロ君みたいなものじゃない。」

「俺はなのはのやり方に異を唱えただけだ。そこから先は奴らの勝手だ。」

 

そうシャマルの言葉を一蹴するとヒイロは徐に寝かされた保護対象の少女の元に歩み寄る。寝かされた少女には特に異常とかは見られず呼吸自体も安定している。

それを確認したヒイロは寝かされているシーツで少女自身の体を包むとそのまま抱きかかえるように持ち上げる。

 

「さっさとヘリに乗って聖王教会の医療施設へ向かうぞ。」

 

そう言ってヒイロはさっさと路地裏から出て行ってしまう。そんなヒイロにシャマルは少し慌てた様子を見せながら、医療器具を手早く片付けるとパタパタと先行くヒイロの後を追う。

 

「もう………素直じゃないんだから…………。まぁ、貴方の言う通りなのかもしれないけど………。」

 

そう苦言を溢すシャマルだったが、それをヒイロがまともに応対する気はさらさらなかった。

 

しかしーーー

 

「……………?」

 

一瞬、抱きかかえている少女の眉が動いた気がした。そう思ったヒイロは歩きながらも少女の動向を観察する。

 

「………………マ…………マ…………」

 

さながらうめき声のような、聞き流しかねないほどの小さな声で溢れた言葉は存在すらしない母を呼ぶ声。その呟かれた言葉は続くことなく、少女はまた口を閉ざす。

 

「…………………。」

 

その瞬間、少女を包むシーツにさながら握り締められたようなシワが浮かび上がったのは、少女を抱えているヒイロ自身も気付くことがなかった。

 

 

 

視点を移し、地下水路の調査を行なっているティアナ達はロングアーチから送られてくる保護した少女が通ってきたと思われる推定ルートを優先的に進んでいた。

しかし、少女が通ってきた推定ルートを割り出すには少なくともスタートとゴールの二箇所の位置が割り出されなければルートを弾き出すのは不可能だ。

なぜロングアーチが推定ルートを弾き出せたのかは、ティアナ達フォワード陣に別の案件で地下水路を捜査をしていた人物が合流したからだ。

 

「まさか、ギンガさんも地下水路で調査をしていたなんて……。」

「別件だったはずなのだけど、どうやらティアナ達の事例とは関係がありそうだったからはやてさんに掛け合って同行させてもらうことになったわ。」

 

驚いたような、ありがたいとでも思うような言葉でティアナと話しているのは濃紺の髪を長めに下ろした、どことなく顔つきがスバルを彷彿とさせる。

それは決して嘘ではなく、スバルの姉にして母親代わりにも等しいギンガ・ナカジマがそこにいた。

 

「ギン姉がいるなら百人力だよ!!」

「もう、スバルはそんな調子のいいこと言って……………。」

 

スバルの楽観的な発言に頭を悩ますようなことを口にするも妹に頼られてまんざらでもないのか、彼女自身の表情には笑みが溢れていた。

 

「スバルさん、なんだか楽しそうだね。」

「そうだね。やっぱり家族と会えるのは嬉しいんじゃないかな。」

 

キャロとエリオが二人の様子にそんなことを述べていると狭かった地下水路から一転してかなり開けた空間にたどり着いた。

 

「ここは……………?」

「…………多分、色んな方面に水を行き渡らせる分岐点みたいなところなんだと思う。」

 

スバルが辺りを見回しながら現状の居場所を確認していると、ギンガが冷静に分析し、そこがいわゆるジャンクションのような場所であることを伝える。

 

「あ………!!」

 

そんな時、キャロが何かを見つけたような声を上げると一目散に駆け出した。その先には少女に繋げられていたのであろうレリックが収納されているケースがあった。

 

「ありました!!」

 

ケースを見つけ出したことをティアナ達に伝えるように抱え上げるキャロ。そのことに安心したのも束の間ーーー

 

(何か、来るッ!?)

 

スバルが聞き取ったのは空間にわずかに反響して聞こえる音。それは何かを蹴っているような音を出し、移動していた。その先にはケースを持ったキャロの姿があった。

 

「ティアッ!!何か来る!!キャロを狙っているよ!!」

「ッ……………了解!!」

 

スバルの指摘でティアナも何かが接近している音を聞き取ったのか、瞬時にクロスミラージュを引き抜き、早撃ちの要領でキャロを襲撃しようとしている存在に狙いをつける。

 

(ッ…………暗闇が保護色になって狙いが…………!!)

 

その襲撃者に狙いをつけることはできたものの、襲撃者が身に纏っていると思われる黒が暗闇と重なって狙いを付けづらくなる。それでも撃たない訳にはいかないティアナは大雑把ながらも狙いを定め、トリガーを引いた。

放たれた魔力弾は暗闇に隠れていた襲撃者に直撃した。しかし、その魔力弾は直撃したにも関わらず、さながら装甲に弾かれたように拡散するだけだった。

 

(硬………!?)

 

ティアナが弾丸が弾かれていることに驚いている間に襲撃者はキャロの付近で勢い良く着地し、その衝撃でキャロを吹き飛ばした。

 

「あう………ッ!?」

「キャロ!!」

「ギンガさん、あの襲撃者の迎撃をお願いします!!エリオはギンガさんのサポートを!!スバルはそのままキャロのフォローに!!」

『了解ッ!!』

 

キャロが吹っ飛ばされたことにスバルが声を荒げるも、その後にティアナが迅速に対応策を指示し、即座に行動に移す。

 

 

 

「キャロ、大丈夫?」

「うう………すみません、ケースを…………。」

 

キャロに駆け寄ったスバルは彼女の言葉にハッとすると周囲を見回し、同じように吹っ飛ばされたと思われるケースを探す。運良くそのケースはすぐさま視界に収まり、スバルがとりに行こうとするも、それより先に何者かがケースを拾い上げる。

 

「えっ!?」

 

明らかに第三者と思しき人物の登場にスバルは驚いた表情を浮かべながらそのケースを拾い上げた人物に目線を移す。

 

そこにいたのは濃い紫色の髪を持った、額になんらかの紋様が刻まれた、まだキャロと同年代のような少女だった。

 

 

 

「…………フェイトちゃん、これ…………。」

「うん…………どちらかと言えば私達をここから進ませない、もしくは戻らせないための足止めみたい…………。」

 

ヘリの進行ルート上に出現したガジェットの迎撃に向かったなのはとフェイトは互いに背中合わせの状態で苦い顔を浮かべていた。

二人の目の前には取り囲むように浮遊するガジェットⅡ型の群勢。数だけなら管理局でも有数の実力者である二人にとっては苦労はしない数で収まっていた。

しかし、なのはが不意に視線を動かせば、虚空から現れるようにガジェットⅡ型が出てくる。その突然現れたガジェットⅡ型はレイジングハートの反応上ではきっちりと存在している上になのはの視界にもきっちり見えていた。

だが、フェイトがその現れたガジェットに向けて攻撃を仕掛けると、まるで初めからそこにいなかったように姿が掻き消える。それはさながら幻のようだった。

 

「幻影と実体をもったガジェットの混成部隊?」

「そうだね………ちょつとキリが無さそう………。ロングアーチ、そっちはどう?」

『こちらでもレーダー上では依然確認できます!!今は実機と幻影を見分けるためのパターンを解析中です!!』

 

フェイトがロングアーチに通信を送るとシャーリーのそんな感じの返答が返ってくる。それを聞いたフェイトは一度バルディッシュを持つ手を握りしめると、背中合わせのなのはに目線を向ける。

 

「なのは、ここは私が限定解除を使ってまとめて殲滅するから、先にヘリに戻ってくれる?」

「ええっ!?ここで使うの!?」

 

限定解除、それははやてが六課を結成する際になのはやフェイトを始めとした隊長陣に課せられたリンカーコアへの鎖だ。

これを外せば一時的に彼女らの魔力は全盛期、ないしも上限がそれなりに解放されるが、再度その枷を取り外すための権限が与えられるのはかなりの苦労を必要とする。

その切り札とも呼べるものをここで切ろうとするフェイトの提案になのはは驚いたような顔を浮かべる。

 

『……………その程度の相手に使うほどでもないだろう。』

「えっ…………?」

「ヒイロ………さん?」

 

突如として二人のやりとりに割り込んできたのはヒイロだった。通信越しとは言え、この場にいない人間からの静止の声に二人は一瞬呆けた表情を浮かべる。

 

『今現在はやてがそちらに向かっているそうだが、アイツが部隊長権限でお前の限定解除の申請は却下した。』

「え、じゃあどうするんですか!?それにはやてがこっちに向かっているって………。」

『はいはい、それじゃあ私から説明させてもらいましょか。』

 

フェイトがヒイロの通信に困惑していると件のはやてがディスプレイに表示されて現れる。その姿はバリアジャケットである騎士甲冑姿であったが、突然現れたはやてに二人の目線は自然と彼女に注がれる。

 

『まぁ、ヘリが狙われるのは分かっとったことやし。私は二人よりスピードが速い訳じゃないから広域魔法持ってる私がクロノ君から限定解除もらおうと思ってたんよ。』

「思ってたってことは…………今は違うってこと?」

『うん。ちょうど私がなのはちゃん達の元へ向かっている間、ヒイロさんから通信が入ってな。』

『状況は把握している。幻影と実機の混成部隊と戦闘を行なっているようだな。』

 

はやてがヒイロから通信がきた旨を伝えたタイミングでヒイロから再度通信がかかる。

 

『手短に言えばゼロシステムで幻影と実機のパターンを見分ける。』

「ゼロシステムで………?そんなことできるんですか?」

『ゼロは未来を見れるシステムと豪語しているが、本質は極めて高度な演算システムだ。その情報分析能力で、幻影との区別をつける。』

『そんな訳やから、限定解除するわけやないからちょっと疲れるけど空の掃除は私がする。もし動けそうになかったら後でこの付近通るヘリに回収してもらえばええ話しやから、二人はヒイロさんと一緒にヘリの護衛に戻ってな。』

「…………大丈夫なの?」

 

ゼロシステムによる幻影の判別自体に納得はしたが、はやてが無理をすることに不安気な声を向けるが、はやてはそれに大丈夫と返すように笑みを浮かべる。そこに強がっているようには見えず、むしろ後で回収してくれることを信頼しているようだった。

 

「わかった。はやてちゃんがそういうなら、私はそれを信じてヘリに戻るよ。」

 

なのはの了承の声にフェイトは一瞬驚いたような顔を浮かべるも、なのはが了承したのならそれに乗っかると結論付けたのか、意を決したような表情を浮かべ、現空域から離脱していった。

 

「さて、こっちも気合入れていきますか。ヒイロさん、一応なのはちゃん達が倒した分のデータは送ったはずやけど現状どうなんや?」

『問題ない。お前がなのは達の説得の間に解析作業は完了している。そこにないものをあるように見せかけるのは必ず何かしらの異常が見受けられるはずだからな。それを見つけてしまえば、造作もない。』

 

それど同時にはやての夜天の書にゼロシステムによる解析データが反映され、はやての視界を飛び回るガジェット達の数が幾分か消失する。

 

「えっげつない解析スピードやなぁ………こうも簡単に看破してしまうなんて…………。まだ私達初見やで、幻影なんて見せてくる敵なんちゅうの。」

『データは送った。後はお前自身でなんとかしろ。』

『ああもう、お前はなんでそんなにぶっきらぼうなのだ…………!!あの、主はやて、決して無理はなさらぬように。』

 

ヒイロの言い草に呆れているのか、アインスの声が通信に入るとはやてに励ましの言葉を送り、通信が切れた。

アインスからの励ましにはやては自然と笑みを溢すと、手にしていたシュベルトクロイツを空に掲げる。その瞬間、シュベルトクロイツの先端を中心に白銀の魔法陣が展開される。そのミッドチルダ式の円型の魔法陣は大きいものの周囲に小さい魔法陣が四つほど取り囲むように展開されるとそれぞれの魔法陣から魔力スフィアが生み出され、肥大化を始める。

 

(ありがとな、アインス。でも、ヒイロさんにはもっと感謝せなあかんわ。)

 

『サイティングサポートシステム、準備完了!!シュベルトクロイツとのシンクロ誤差の調整も完了!!というか、まだこっちの準備が終わっていないのに砲撃魔法を使おうとしないでください!!』

「ごめんちょっと早まったわ!!さぁって!!いっちょ派手に行くとしましょうか!!!制限付きとはいえ夜天の主の実力、刮目せぇや!!」

 

シャーリーのお小言にはやては瞬時に謝ると、勢いそのままシュベルトクロイツを振り下ろす。

 

「フレース…………ヴェルグッ!!!!」

 

魔法名と共に打ち出された白銀の曲線はミッドチルダの空に弧を描きながらガジェットの群勢へと飛翔する。

そして、その白銀の輝きは集団の中から迷いない軌道でガジェットを貫いた。その貫かれたガジェットはことごとく爆散ーーつまるところ、全て実体を持つものだけを破壊したのだった。

 

 

 

「ロングアーチから連絡。はやてちゃんはゼロシステムの解析データのおかげで無駄な魔力を浪費せずに必要最低限の魔法でガジェットの撃墜をしているわ。」

「既に看破されていることを向こうが察せれば、勝手に幻影は出さなくなる筈だ。」

 

視点を廃棄都市区画を飛ぶヘリに移すと、シャマルが安堵したような目線をヒイロに向けていた。それははやてを思ってたが故の安堵の言葉であろうが、ヒイロは特に気にかけていない様子のまま、ヘリの座席シートに背中を預けていた。

しかし、ふとしたタイミングで座席から立ち上がるとヒイロは徐に操縦席に向かう。

 

「………ヴァイス・グランセニック。後部ハッチを解放しろ。」

「げ…………お前さん、またかよ。まぁ前回と違ってミサイルに追い回されている訳じゃねぇから開けられるけどよ…………。」

 

ヒイロの言葉にヘリの操縦をしていたヴァイスは前回のこともあったのか露骨に嫌そうな表情を浮かべる。しかし、前よりは幾分落ち着いた様子でヒイロが要求してくるその理由を尋ねようとしたその時ーーーー

 

『ヴァイス陸曹!!廃棄都市区画にエネルギー反応を確認!!距離およそ10000!!ヘリをターゲットにしています!!』

「んだとぉ!?狙撃か!?お前まさか、これのためか!?」

 

ヘリの通信機からロングアーチの悲鳴のような声が響く。ヘリを標的にされたことち驚きながらもヒイロがハッチの解放を求めたのが、この攻撃に対してなのかと問い詰める。

 

「早くしろ。」

 

ヒイロの返答は明確ではなかったが、その言葉の節々には心なしが語尾が強まっているようにも感じられた。

 

「ッ…………ちゃんと守ってくれよな!!」

 

苦し紛れのような顔を浮かべながら、ヴァイスはハッチの開閉ボタンを拳で叩きつけるように押し込んだ。

その瞬間、ヘリの後部ハッチが音を立てながら開き始める。

 

「任務了解。これより迎撃行動に移る。」

 

ヴァイスのその守ってほしいという言葉に答えたのかどうかは定かではないが、後部ハッチが開かれたことを確認したヒイロはウイングゼロの翼を展開しながらヘリから降りる。

 

「アインス、エネルギー反応の解析は?」

「既に発射態勢に入っている。いつ撃たれてもおかしくない。」

 

そういうアインスだったが、その言葉に焦りのようなものは見えず淡々とヒイロに解析結果を伝えていく。

 

「使用しているものが魔力ではないため、正確な数値には誤差が出ると思うが、換算的には魔力ランクはSだ。」

「そうか。」

 

その報告を聞きながらもヒイロは右手に分割したバスターライフルを構える。方角と反応の地点から既に狙撃者の位置は特定済みだ。

 

『ヒイロさん!!バスターライフルを使うつもりなら、ちゃんと加減してあげてぇな!!』

「ふふ、主はやてにもお前の行動はそれなりに予測されているようだな。」

 

はやてから忠告が通信で飛んできたことにアインスはその場に似つかないような笑みを浮かべる。そのことに関して全く意に介す様子すら見せずに視線の向こうにいるターゲットに狙いを定める。

 

「出力は片方のおよそ六割で相殺は可能だ。かましてやってやれ。」

「了解した。」

 

ヒイロの目はしっかりと狙撃手を射抜いていた。廃棄都市区画の一角のビルの屋上に陣取った、ライフルを構えた狙撃手(スナイパー)観測手(マークスマン)と思しき怪しげな笑みを浮かべた女の姿を。

まるで勝ち誇っているように見えるその表情は酷く滑稽に見えた。

 

「……………運のいいやつだ。」

 

その様子に呆れたように言葉をヒイロが溢した瞬間、狙撃手が狙いを定めたのか、そのライフルの銃口から光線のようなエネルギー弾が発射された。

 

「ターゲット・ロックオン………………撃ち落とす!!」

 

その狙撃に対し、ヒイロもお返しと言わんばかりに瞬時に発射されたエネルギー弾に銃口を合わせるとバスターライフルのトリガーを引いた。

 

 




まぁ…………今後の展開が丸わかりな展開ですまんの^_^

どうする?お線香、立てちゃいます?
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