魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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物語は混沌へと向かい、戦士たちは新たなる敵と相見える。


それはそれとして今回はやてがヒロインだよ!!!(雰囲気台無し)

あと文字数少なめ!!!


第61話  混沌への前奏曲(プレリュード)

「…………どういうこと………想定より早すぎる………!!」

 

時間を少し巻き戻し、はやてが本物のガジェットだけを砲撃魔法『フレースヴェルグ』で殲滅を行なっていた頃、廃棄都市区画を一望できるビルの屋上で癇癪を起こしている人物がいた。

その人物は肩より少し伸びた茶色の髪を下の方で二股に分け、特徴的な大きめのメガネをかけていた。

そして、対照的に彼女の足元でじっと獲物を待ち、いつでも撃てるようにその構えたライフルのトリガーに指をかけているスナイパー。

彼女らは揃って、濃い青を基調とした体に張り付いているような、体形が如実に出てくるスーツを着込んでいた。

 

それぞれの名は、『クアットロ』そして『ディエチ』

 

名前に4と10の番号がつけられているのは、彼女らが元々人ではないーーいや、人に似た存在である『戦闘機人』のことの現れである。その証拠にスナイパー、ディエチの瞳孔はまるでスコープの倍率を変えているように蠢いていた。

 

「…………高町なのはとフェイト・テスタロッサは!?」

「ヘリに全力で向かってる。こっちの目当ても見抜かれてるかも。」

「えぇい!!忌々しい二人ですわね!!」

 

そして、そもそもとしてなぜクアットロが癇癪を起こしているのか、というと彼女が持つ能力に原因がある。

 

戦闘機人にはそれぞれIS、先天固有技能と呼ばれる特殊な能力が備わっている。

 

彼女らが戦闘機人として生まれてくる時にスカリエッティによって備え付けられた特殊な技能。その技能を戦闘機人達は何かしら一つ、持っている。

そして、クアットロがもつ技能は銀色の外套(シルバーカーテン)。一言で言えば、ティアナが使用する幻惑魔法のようなものである。しかし、その規模は段違いであり、こうしてクアットロから遠く離れたなのは達の元へ幻影を作り出せるほどであった。

 

そんな強力な能力を持っていると自負している彼女だが、決して六課の解析能力を舐めていた訳でなかった。いくら精巧に作った幻影とはいえ、本物とは必ず差異が存在する。そこを解析されるとは彼女自身、計算には入れていた。

 

だが、その本物との見分けがつけられるのが、彼女の想定を圧倒的に上回っていた。

 

「ディエチちゃん!!予定を前倒しですわ!!ヘリを撃墜なさい!!」

「了解。だけどあのヘリに乗ってるケースやマテリアルとかは大丈夫なの?」

「仮にあれが本当に聖王の器なのであれば、砲撃程度で死なない………らしいわ。ドクターとウーノ姉様曰く。」

「…………まぁ、いいけどね。」

 

クアットロの言葉にそう淡白に返すとディエチはライフルを構え直し、廃棄都市区画を飛行している六課のヘリに照準を合わせる。

そして、徐々にディエチがもつ巨大なライフル銃、『イノーメスカノン』にエネルギーがチャージされ始め、その銃口から光が溢れ始める。

 

「…………クアットロ、ヘリの後部ハッチが開いた。誰か出てくるみたい。」

「そうみたいですねぇ〜…………そしてあれは………」

 

ディエチの報告にクアットロは空間ディスプレイからヘリの周囲の光景を映し出す。その画面にはウイングゼロの純白の翼を羽ばたかせたヒイロがヘリから出撃している様子が映し出されていた。

 

「確か、六課に民間協力者として所属しているヒイロ・ユイ でしたっけ?」

「ドゥーエからの中途報告からだと、そう聞いてる。」

「リンカーコアもろくにないのに、よくやりますねー。以前のホテルアグスタの時も素手でガジェットをぶっ壊していらっしゃいましたけど。」

 

クアットロが現れたヒイロに対してそんな感想を述べていると、画面の中のヒイロは両手にバスターライフルを携え、その片方を自分達に向けている様子が映し出される。さながらヘリへ向けられる砲撃を迎え撃つように。

 

「そんなほっそいライフルでディエチちゃんのイノーメスカノンを迎え撃てると思っているのでしたら、冗談も甚だいいところですわね。」

 

ヒイロが構えたバスターライフルのその見立て上から予想できる出力にクアットロはディエチのイノーメスカノンに勝てるはずがないと嘲笑的な笑みを浮かべ、その内面にある加虐性を垣間見せる。

ディエチはそのクアットロに気にかける様子すら見せず、ただ淡々と標的を見据える。

そしてイノーメスカノンのエネルギーチャージが完了し、あとはトリガーを引くだけ。

 

「発射。」

 

呟かれた言葉と共にトリガーを引き、銃口から膨大なエネルギーがヘリに向かって一直線に飛んでいく。狙撃手としてのディエチの経験が、そのエネルギー弾は確実に着弾すると直感する。

 

しかしーーー

 

〈ーーーーーー〉

 

ふと、彼女の視界の中に写っていたヒイロが何かを呟いた。たまたまそのことが頭に引っ掛かったディエチは自然とヒイロが口にしたことを読唇術的な方法で彼が口にしたことを読み取った。

 

『…………う、ん、の、い、い、や、つ、だ…………?運のいいやつだ?』

 

運のいいやつ。一見するとなんでもない単語。しかし、この状況下で読み取れるのは余裕のそれだ。まるで、彼自身にはまだまだ加減が存在しているかのようにーーー

 

「えっ……………?」

「ディエチちゃん?」

 

思わずディエチからこぼれた言葉にクアットロが声をかけた瞬間、耳をつんざくような衝撃音と視界を覆い潰すような爆発的な光が彼女らを襲う。

反射的に顔を顰め、身構えたクアットロが目を開くと、爆発のようなものがあったにもかかわらず、ターゲットにした六課のヘリは機体を衝撃から大きく揺らされながらも五体満足の状態で飛行している様子が視界に入り込んだ。

 

 

 

「な、なんなんだよ、さっきの衝撃はよ!?」

「ヴァイス君、ヘリの状態は?」

 

ところ変わって六課のヘリでは突然機体を襲った衝撃に悪態を吐きながらも卓越した操縦センスで見事、ヴァイスが揺れる機体を制御していた。

揺れが収まり、安定を取り戻したところで、シャマルが操縦席に顔を覗かせた。

 

「機体には特にこれといった損害はないですね。それよりもさっきの衝撃はいったい………まさか!?」

「まぁ、十中八九、ヒイロ君でしょうね。もう、あれを使うならもう少し離れたところで使って欲しい所だったけど…………しのごのいっていられる暇はなかったわね。」

「あれ…………とは?」

 

困った顔で先ほどの衝撃はヒイロがやったことと言うシャマルにヴァイスはその詳細を尋ねる。

 

「うーん…………これあまりヒイロ君から広言するなって口止めされているのよね………。ごめんなさい、私の口からはあまり話せないわ。」

「そ、そうですかい………。まぁシャマル先生がそう言うならこっちもあまりネチネチ聞くつもりはありませんが………。ですけど、さっきの砲撃はオーバーSランク、それを迎撃できるってことは…………。」

「そうね、ヒイロ君が使っているのはそれくらいは容易いでしょうね。あれでも加減はされてる方だったと思うけど。」

「オ、オーバーSランクの攻撃を加減したまま迎撃できるんですかい!?」

「多分、最大出力(ツインバスターライフル)だとオーバーSS…………もしかしたらSSSもありえない話では無いと思うわ。」

「と、とんでもない化け物じゃないですか、アイツ!!」

 

ヒイロ、というよりウイングガンダムゼロのとんでもな破壊力に思わずヴァイスも驚きに満ち溢れた表情を浮かべることしかできない。

 

(…………まぁ、ウイングゼロもそうだけど、本当に恐ろしいのはヒイロ君の人間離れしたような桁外れの身体能力だと思うけど………)

 

そのヴァイスの表情にシャマルは苦笑いを禁じえなかった。一般的な人より強いはずの自身の腕を彼は片手で粉砕骨折に至らしめたのだから。

 

 

 

「……………敵エネルギー弾の撃墜を確認。同時にヘリへの損害も確認されず。アインス、なのはとフェイトはどこまで来ている?」

「まだ少し猶予はありそうだが…………。」

「…………俺が奴らの足場を崩す。その後の確保は任せると奴らに伝えておけ。」

「わかった、二人にそう伝えておく。」

 

アインスからの言葉を聞いたヒイロは右手に構えたバスターライフルを下ろすと左手のもう片方の一丁を今度は放たれたエネルギー弾ではなく、放った元凶であるディエチの方に向ける。

 

「ターゲット・ロックオン。まずは敵の足場を崩す。」

 

 

 

 

「クアットロ、ここ狙われてる!!」

「え、ちょ、ちょっと待ってください、わたくし、あまり状況が掴めないんですけど………!?」

「あのヒイロって人間、同じ形状のライフルを二丁持っていた。私の弾丸を相殺したのと同じやつの第二射がすぐに来るよ!!」

「ま、マジで言ってます!?ディエチちゃんの砲撃を相殺したのと同じ威力をあの人間は連続で、しかもノーチャージで放てるんですかぁ!?」

 

ディエチの言葉にクアットロは信じられない面持ちの状態で空間ディスプレイに視線を落とす。そこには変わらず、憮然とした様子のヒイロが映っていたが、先程とは違い、左手に持っているバスターライフルを自身のいる方角に向けていた。

 

「ええい、ここに来てまた面倒な戦力が…………!!」

 

(いえ、前々からあの人間自体の存在は認識していた。となるとここまで情報を隠し通していた六課、いや、あの人間個人の勝利、ということですかーーー)

 

「どちらにせよ、気に食わない人間ですね!!」

 

バスターライフルの存在をこの状況までひた隠しにしていたヒイロにクアットロは悪態を言い放つと、ディエチを抱え、ビルを飛び降りる。戦闘機人のもつ耐久性を持って地面に着陸すると、自身の先天固有技能、銀色の外套(シルバーカーテン)を作動させ、姿を眩ませる。

 

その直後、先程までいたビルに山吹色の奔流が突っ込むと、建物自体に大きな空洞を作り、程なくして、そのビルは周りの倒壊した建物と同じように瓦礫の山と化した。

 

「ビルが倒壊する前に逃走したか。」

「そのようだな。だが、高町なのはとフェイト・テスタロッサが送りつけた幻影を写す特殊能力の解析データを反映させて、二人組の追跡を行なっている。」

「そうか。妙な新手でも現れない限り、アイツらなら問題ないだろう。」

「ならもう一つ報告…………と言いたかったが、お前のその様子だと確認済みか。」

 

アインスが何かヒイロに言いかけたが、ウイングゼロの翼を羽ばたかせる様子を見かけると、それ以上は何も言うことはなかった。

ヒイロがウイングゼロの翼を羽ばたかせ、向かった先は先程倒壊したビルの瓦礫の山だった。

倒壊したばかりなのもあって、土煙がまだうっすらと立ち込めていたが、ウイングゼロの翼が羽ばたくと、その風圧で土煙は晴れていく。

そして瓦礫の山の上に転がっている物体があった。

 

「…………やはり奴らが放棄したライフルか。」

 

ヒイロの目線の先にはディエチたちが使用した砲撃用のライフルが放棄されてあった。ヒイロの身の丈以上もある巨大なライフルを肩にかけながら持つと、ヒイロに通信が入る。

 

『あ、ヒイロ君?聞こえるかしら?』

「……………何かあったのか?」

 

通信を寄越してきたのは、ヘリに乗っているシャマルからだった。ヒイロが通信をしてきた理由を尋ねるとシャマルは特に緊急の何かが起こったわけではないのか、そうじゃないの、と否定の言葉を前置きとして言ってくる。

 

『実は、ガジェットの殲滅をやっていたはやてちゃんなんだけど、限定解除もしてないまま砲撃魔法を何発も撃ったからかガス欠に近い状態なの。せっかくヒイロ君が外にいるならはやてちゃんも連れてきてくれないかしら?』

「…………………………………。」

 

シャマルのはやてを拾ってきて欲しいというお願いにヒイロは少しの間沈黙の空間を作ると、わずかにため息を吐いた。

 

「……………手のかかる奴だ。」

 

一言だけそう呟くと再びウイングゼロの翼を羽ばたかせ、空へと舞い上がった。

 

 

 

「ハァ…………ハァ…………しんどっ…………!!」

 

件のはやては顔を流れる汗を拭いながら空を滞空していた。呼吸も荒く、肩で息をしている様子も相まって、かなり疲れているようにも感じられる。

 

『実体を持ったガジェットの全滅を確認。それと同じくして幻影の反応も消えていきます。お疲れさまでした、八神部隊長。』

「んー…………限定解除しとった方が幾分楽やっただろうけど………まぁいっか。なんとかなったんやし。」

 

シャーリーからの敵機の全滅を知らせる報告を耳にしながらも息を整えるべく、一度はやては大きく深呼吸をする。あがった息を整えていると、ふと視界に何か飛んでいるように翼のようなものを羽ばたかせている物体が入る。

はやてがそれに意識を向けると、その翼を羽ばたかせている物体はどんどん彼女に近づいていく。

 

「……………戦場の真ん中で魔力切れを起こすなど、死ぬ気か?」

「ヒ、ヒイロさん……………。」

 

その翼を羽ばたかせた物体というのはウイングゼロの翼で飛翔していたヒイロであったが、はやての目の前で滞空すると、開口一番に辛辣な言葉をはやてに浴びせる。

 

「ど、どうしてここに…………?それにそのでっかいライフルは………バスターライフルじゃないよね?」

 

はやてはヒイロの辛辣な物言いに苦笑いを浮かべるも、すぐに表情を切り替え、彼が自身の元にやってきた理由と持っている巨大なライフルについて尋ねる。

 

「砲撃してきた奴らが放棄したのを確保してきた。それとシャマルからお前が魔力切れを起こしたと聞いたから拾いに来た。」

「そ、そうなんやな。()()()()ありがとうな、ヒイロさん。」

 

理由も述べるヒイロの口調に呆れのようなものが含まれていたのをはやてが過敏に察して、気が引けがちにヒイロにお礼を述べるはやて。

 

「お前が魔力切れの間にスカリエッティの増援などにやられればその時点で組織としての六課は終わりだ。それだけだ。」

「うっ……………前にも似たようなことを言われた気がする…………。」

 

ヒイロの言葉にはやては以前海鳴市でヒイロに言われたことを思い出したのか、気まずそうな表情を浮かべながら頰を軽くかいた。

 

「それで、手はいるのか?」

「じゃあ…………お願いしようかな。」

 

そういうとはやては手に持っていたシュベルトクロイツを消すと、両手を大きく広げて、何かをねだるようにヒイロにその腕を向ける。

 

「……………………お前は俺に一体何をさせようとしている?」

 

ヒイロからすればちょっと手を貸すだけにしようと思っていたところだったのだが、何かねだっていることを察せたが、それ以上のことはわからないはやての挙動に疑問を呈した。

 

「へ……………?あ………………。」

 

ヒイロから疑問を呈されたはやては一瞬呆けた表情を浮かべると自分が何をしているのかようやく認識したのか、徐々に顔を赤く染め上げ始める。その反応を見るに先程の挙動は無意識によるものだったらしい。

 

「ち、違うんや。これは……………その、別に邪な………いや変な思いっちゅう訳じゃないし…………ある意味純粋なーというか、何というか…………。」

 

顔を沸騰しそうな勢いで赤くしたはやては完全にしどろもどろになってしまい、先程の挙動に対して、ヒイロが納得するような答えを出すことができない。

しばらくヒイロははやての答えを待ったが、一向にそれらしき言葉が出てこないはやてにヒイロは遂に痺れを切らし、追求することを諦めることにした。

 

「待っているのも時間の無駄だ。」

 

そう断じるとヒイロははやての腰に腕を回すと彼女の体を抱えるように持ち上げた。ヒイロとしてはウイングゼロの翼が稼働する時に干渉しないように一番動きやすい持ち方のつもりだった。

しかし、それはいわゆる抱っこであり、奇しくもはやてが無意識下に求めたものと同じであった。

突然持ち上げられたことにより、はやては思わずヒイロの首に腕を回してしまう。

 

「あ、あわわわわわわ、ひ、ヒイロさんの顔が近い……………」

「………………?」

 

何か耳元でボソボソと呟くはやての声が気にかかったヒイロではあったが、状況が状況なのもあったため、無慈悲にもヒイロはそのままウイングゼロの翼を羽ばたかせて、ヘリへと向かっていった。

 

(…………………これ、ヘリに戻ったら戻ったでキャパオーバーになって放心状態になっていそうだな。)

 

ウイングゼロの中にいたアインスはこの後の展開について軽く感想を述べたが、その声は誰にも届くことはなく、ただ消え去るのみだった。

 

 

 

 

『こちらヒイロ・ユイ 。ヴァイス・グランセニック、ヘリの後部ハッチの開放を求める。』

「あいよ。部隊長はきっかり連れてきてくれたんだろうな?」

『問題ない。ついでに敵が放棄した砲撃用のライフル銃も確保した。』

「マジか!?あとはティアナの嬢ちゃんたちがレリック確保すりゃあ万々歳だな!!」

 

ヒイロからの通信を聞いたヴァイスはハッチの開閉ボタンを操作し、後部ハッチを開放させる。あとははやてを連れたヒイロが入ってきたら閉じればいいだけの話だったのだが…………

 

 

「……………おい、さっさと離れろ。」

「あらあら〜♪」

 

アインスの予想通り、完全に思考がキャパオーバーしたはやてはしばらくの間ヒイロから離れることが出来ずに鬱陶しそうな面持ちを浮かべたヒイロに体を揺らされまくるのだった。

その間、シャマルにはとても良い笑顔で見守られた。()

 




さてと、次回はようやくあの子が登場、するかも。

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