魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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うーん、これでよかったのかすっごい悩むぜ…………主に前半

あ、あとレジアス中将に関して自己解釈が含まれています


第70話 次章の幕は開かれた

内装は一つの長テーブルを挟んで、二つのソファが向かい合って置かれ、窓こそはあるもののオフィスビルであればどこででもありそうな一般的な窓が備え付けられている。

そんなひどく簡素、言ってしまえば急ごしらえ感丸出しの部屋でヒイロとレジアスは対峙していた。

 

「…………改めて確認させてもらうが、貴様はこの機動六課にガジェットに襲撃された貨物用リニアモーターにおける戦闘の際にデバイスを所有しているところを、発見された、六課に保護される名目で民間協力者となり、在籍している。これで貴様がこの隊舎にいるあらすじはあっているのか?」

 

「ああ。条件は付けさせてもらったがな。」

 

「それでそのデバイスだが、魔力が一切使われていない純正の科学によって作られたと調査結果が出ている。どこでそのような代物を作った?次元世界では科学兵器は禁忌とされている。」

 

「これは貰い物だ。どこで作られたなど俺が知る由もない上に興味もない。」

 

ウイングゼロの出所に関して問い詰めてくるレジアスにヒイロは変わらずに腕を組んだ状態のまま目線だけを彼に向けて貰い物だと言い張る。

 

それは決して間違いではない。ウイングゼロは元々はガンダムを作り上げた五人の設計だったが、スペック的に設計図が作成された当初の年代では実現不可能とされていた。しかし、時代が流れてAC195年、残っていた設計図からサンドロックのパイロットであり、自暴自棄のような精神状態になっていたカトルが作り上げてしまったものだ。

 

そこから紆余曲折を得て、最終的にゼクス・マーキス(ミリアルド・ピースクラフト)からエピオンと交換するような形で入手した。

 

つまり、ヒイロの言葉に嘘偽りはなく、完全に貰い物である。

 

「それにそもそもとして、俺はお前たち管理局に協力しているのではなく、個人的な意志で機動六課に手を貸している。だからお前たちの質問に答える道理がないというのを理解しているのか?」

 

「だが、捜査をする義務は我々にはある。できれば素直に言ってもらえる方がこちらとしても強行な手段を取る必要がないのだがな。もっとも今回の査察も元を辿れば貴様の持つデバイスのオーバーSランク級の出力が問題になっている。」

 

六課に民間協力者としていさせてもらう時に提示した条件を挙げながらヒイロはそもそもとしてこのような形式の対談をしたこと自体だいぶ譲歩した方だと遠回しに言うもレジアスは険しい顔つきながらも交渉のカードを切っていく。

レジアスのいう強行手段とはいくつか考えられるが、一番考えられるのはヒイロが名義上所属している機動六課に対するなんらかの制限だ。

 

ただでさえ魔力にリミッターをかけて魔力ランクを下げるという裏技を使って、一部隊が保有できる魔力ランクの合計数値がギリギリだったところに威力調整のしづらいウイングゼロのバスターライフルの火力が明るみになってしまえば、それを名目として制限を押し付けてくる可能性は高いだろう。

それこそ度合いこそによるが、スカリエッティとの戦闘の際に障害となるようなことだけは避けたかった。

 

「……………そこまでが理由か。で、内容はなんだ?」

 

「……………既に件のエース・オブ・エースやテスタロッサ・ハラオウン執務官は魔力制限を受けている。よって追加でリミッターをかける必要性はあるまい。遺憾だが、あの忌々しい奴らもな。よって貴様にはそのデバイスを管理局に預けてもらおう。無論、本局の奴らではなく、我々本部の管轄でな。」

 

レジアスの突きつけてきた条件ははっきり言ってヒイロには想定できた内容であった。なのはたちが機動六課を設立させる際に自身のリンカーコアにかけられた制限。その制限の解除の鍵は主に部隊長であるはやて、本局執務官のクロノ、そして聖王教会の騎士であるカリム。つまるところ本局、もしくは本局よりの人間にその鍵を渡している。

 

そこに本局と啀み合っている本部のレジアスがウイングゼロの使用許可を下す立場になってしまえば、いざというときに足並みを揃えることは極めて難しくなるだろう。

 

さらにはスカリエッティと繋がっているであろうレジアスがウイングゼロを手にすれば、科学兵器による本部の戦力増強を図っている彼は確実にスカリエッティに解析、および量産を依頼する可能性がある。

 

そうなってしまえば次元世界そのものの破滅を有り得ない話ではなくなってくる。本気でそれほど恐ろしいモビルスーツなのだ。ウイングガンダムゼロというガンダムは。

 

(やはり、ゼロの引き渡しを要求してきたか………それにこの男、はやてたちを嫌っているようだ…………)

 

レジアスの吐き捨てるように言った『忌々しい』という言葉にヒイロは瞬時にはやてや守護騎士たちの闇の書もとい夜天の書の関連人物を目の敵にしていることを察する。

 

「ゼロをお前たちで管理して、どうするつもりだ?お前は地上を守るために長らく禁忌とされてきた兵器に手をつけている。この後、控えている公開意見陳述会で説明を行う予定である『アインヘリアル』などその最たる例だろう。」

 

「ッ…………き、貴様…………どこでそれを…………!!」

 

「俺はお前のいう科学兵器が製造された世界の出身だ。当然ハッキング技術も得ている。あの程度のセキュリティを突破できないとでも思ったか?」

 

険しい顔つきだったレジアスの表情がさらに度合いを増し、眉間にシワを寄せながらヒイロに問い詰める。彼の元々の人相とその巨体も相まって生の人間なら威圧感に気圧されているであろうソレに、ヒイロは平然としたままいつも通りの抑揚で応対する。

 

「ゼロをそちらの管轄に置いてどうするかはさておき、その科学兵器を製造した世界にいる人間の目線として一つ忠告しておく。アインヘリアルはどう見ても的だ。あれはあくまで使うことを前提としない一般市民に対する抑止力が主な使い道だ。それ故に実戦で使い物にはなることはないだろう。ガジェットから集団で襲撃されれば、瞬く間に制圧されるのが関の山だ。」

 

「それを言ったところでどうなる!?貴様は今この私の目の前で犯罪行為を自白したのだぞ!?」

 

自身の進めている兵器のことをまるで置きもの呼ばわりされたことに癪に触ったのか、レジアスは額に青筋を浮かべながらソファから勢いよく立ち上がると管理局へのハッキング行為を罪状として、ヒイロを逮捕するしようとする。

 

「…………………むしろ逮捕されるべきなのはお前の方だ。レジアス・ゲイズ。」

 

しかし、その苛烈なレジアスの言葉すら、ヒイロは眉ひとつ動かさず、逆に肩をわずかに竦め、呆れた様子で振る舞いながら、鋭く冷え切った兵士の目でレジアスを睨みつける。

 

「お前の理念に関して、理解ができないわけではない。平和を望む心は誰もが持っている。それに魔力の有無などは関係ない。そのために尽力を尽くすことになんら間違いはない。」

 

「だが、そのための手段を貴様は盛大に履き違えている。レジアス・ゲイズ。お前は戦闘機人計画と人造魔導士計画を秘密裏に進め、あろうことか広域次元犯罪者であるジェイル・スカリエッティに依頼しているな?司法の柱として管理局の重鎮が犯罪者の手を借りるなど、本末転倒だろう。」

 

「ッ……………一体どこまで…………!!」

 

ヒイロの眼光に気圧される気味になりつつあるレジアスは歯がみする表情を見せながら、ヒイロにそう問い詰める。

 

「戦闘機人や人造魔導士、お前の後ろに最高評議会の存在があること。そしてスカリエッティの目的、それが次元世界そのものの支配であることだ。」

 

「なっ…………………!?」

 

ヒイロがスカリエッティやレジアスのことに関してどこまで知っているかと語ったとき、レジアスの表情が驚愕に染まる。その表情はどちらかと言えば、スカリエッティが世界征服を目的としていることに対して驚きを示したように感じられた。

 

「……………その反応では、奴の目的は知らなかったようだな。」

 

「馬鹿な!!一介の科学者にそんな大それたことができるわけがない!!」

 

ヒイロの指摘にレジアスはありえないというように荒げた声を大にする。そのレジアスの様子にヒイロは肩を竦ませる。

 

「お前がいつからスカリエッティと繋がっていたかは既に些細な問題だが、少なくとも10年近くも有れば悠々と様々な兵器が発展を遂げることは可能だ。それに何より、兵器製造は人材より遥かに早いスピードでなおかつ短時間で数を増やす。お前が手を出している科学兵器はそういうものだ。」

 

「そういう認識を持っておかねば、兵器はテロリストの手にわたり、すぐにその銃口をお前に向けるぞ。」

 

「ッ………………」

 

レジアスはやるせない顔を浮かべると、握り拳を作り、震えるほどにその力を強めていた。

 

「余談だが、俺に対する取り調べは既にお前に対する尋問に変わっていることを理解しておくんだな。」

 

「……………貴様は、儂を断罪するつもりなのか?」

 

(……………もう少し見苦しい言い訳でもしてくると思ったが、想定より認めるのが早いな…………)

 

先ほどとは苛烈さを極めた様子から打って変わり、見るからに落ち込んでいるのか痩せ細ったように思えるレジアスの様子にヒイロは少々面食らった印象を覚える。

 

「……………いや、今この場で全てを詳らかにするつもりはない。それは俺を含めた六課全員の総意だ。」

 

「それはなぜだ?今の今まで、私は貴様たち機動六課を目の敵に腫れ物のように扱ってきた。それこそ、部隊長である八神はやてとその守護騎士であるあやつらを犯罪者と罵っていた。」

 

「……………それはお前が曲がりなりにも一般市民の安心を守ろうとしていたからだ。お前がこの状況で逮捕されると、お前自身の権威で押さえていた燻り全てが一斉に発起するだろう。そうなれば管理局は自然とその対応に追われなければならない上に、そこにスカリエッティの大規模な攻撃が加われば、管理局は崩落するだろう。」

 

ヒイロは首から下げている待機状態のウイングゼロを片手で覆うように握りながら、語りかける。そうしたのもちゃんとした理由があり、ウイングゼロの中には何よりはやてのことを慮っていたアインスがいる。そのアインスが彼女のことを犯罪者と揶揄されて黙っているとは思えなかったからだ。実際、握ったアクセサリーからしばらく動かそうとしている感触がヒイロに伝わったが、少しすると熱くなった頭が冷えてきたのか、再び引っ込んでいった。

 

「…………スカリエッティに集中するためにも儂が必要ということか。」

 

「そういうことだ。それと管理局の本局と本部、いわゆる海と陸がいがみ合っているのも、主だっては両者の慢性的な戦力の格差、そしてお前の本局の罪人でさえ戦力として受け入れる姿勢が受け入れられないことだな?」

 

「…………確かに犯罪者共には魔導士として優秀な人材はおる。それは認めよう。だが、そんな奴らまで受け入れる必要性はどこにある。」

 

「お前の言葉ももっともだが、そうではない奴もいる。計らずも、もしくはそれしか生き方が見つけられなかった人間などがな。結局のところ、正義などはさじ加減だ。少なくとも行き過ぎた正義や大義を掲げた人間を俺は信用しない。」

 

「…………………正義のために、悪を成す、といってもか?」

 

「そんなものは所詮は詭弁だ。正義を成すために悪を成すというのは間接的に悪のために一時的に正義を演じているのと同義だ。」

 

「フン……………悪を成すために正義を演じるか…………犯罪者に加担し、信じる志を同じくとした友すらを殺めた儂にはうってつけの言葉か。」

 

捲し立てるヒイロにレジアスはほんのわずかに自虐的な笑みを浮かべる。

 

「レジアス・ゲイズ……………お前は……………」

 

「引くに引けなくなってしまった。それだけのことよ。儂は自分の発言を撤回するつもりはない。」

 

そのことにヒイロはレジアスは誰かに止めて欲しかったのではないかと推論を立て、そのことを尋ねようとするも途中で彼に答えのようでそうでもないような返答で遮られてしまう。

 

 

コンコンッ

 

「……………なんだ?」

 

そんな時、ヒイロたちがいる部屋に扉をノックの音が響くとレジアスは重い声色でそれに応える。そして扉が開かれるとそこには部屋の門番を任されていた本部の局員が立っていた。

 

「レジアス中将、申し訳ありません。本部より連絡があり、至急お伝えしたいことがございまして。」

 

「……………わかった。それで何用だ?」

 

その局員の言葉にレジアスは徐に立ち上がりながらその用件を尋ねる。ヒイロがそれに訝しげな表情を見せていると、ウイングゼロから身を乗り出してアインスが姿を表す。

 

『ヒイロ!!仮面は剥がされた!!その素顔を白日の元に引き摺り出せ!!』

 

一見するとこの場にそぐわない根も葉もない単語のように見えるアインスの言葉だが、ゼロシステムの警告が出ていたヒイロは待っていたと言わんばかりに立ち上がる。それと同時にーーーー

 

「ーーーーーーアンタはもう、用済みってことだよ。」

 

番人の体がスライムのように溶けると、そこから霞んだ金色の髪を持った女が現れ、右手の親指、人差し指、中指の三つにつけられた爪をレジアスに突きつける。

 

「ッ…………まさか、戦闘機人か!?」

 

「あははは!!そうだよ!!でももう遅いッ!!!」

 

狼狽るレジアスに嘲笑うかのように獰猛な笑みを浮かべると突き詰めた爪をレジアスに向けて伸ばした。迫りくる爪のスピードに動くことも叶わないレジアス。ヒイロも何かの準備に追われているらしく、対応するのが難しい中、爪はレジアスの首に突き刺さるーーーーーー

 

「ハァァァァァァ!!!」

 

より先に、レジアスと戦闘機人の間に突然現れた雷光を纏わせた金色の戦斧が戦闘機人の横っ腹に振るわれる。その突然の襲撃に戦闘機人は反応することすら出来ず部屋の壁に体を打ち付ける。

 

 

「レジアス中将、ご無事ですか?」

 

突然乱入してきた人物ーーーーフェイトはレジアスの安否を確かめる。その目まぐるしく変わる状況にレジアスは呆気に取られた顔しか浮かべることができないでいた。

 

 

 

 

「……………え、ヒイロさんが?」

 

時刻は地上本部により査察が入れられる前日、フェイトが査察のための準備をしていた時、そのヒイロから頼みを聞かされる。

 

「そうなんよ。どうやらヒイロさん、この査察の時に潜入しているスパイがレジアス中将の暗殺に動くんやないかと推測してるらしいんよ。それでフェイトちゃん、次元魔法持っとったよね?」

 

その頼みを聞かせにきたはやてからの言葉にフェイトは驚いた表情を見せつつ、自身が次元魔法………要するに瞬間移動の類が必要とされていることを認識する。

 

「多分、ヒイロさんは一番スピードがあるのがフェイトちゃんだから頼んだのだろうけど、ちょうどいいの持ってること思い出してな。」

 

「確かに…………私はそういうのが使えるけど……………」

 

「合図が出たら、それ使ってレジアス中将の前に割り込んでな。そんで、合図は仮面は剥がされた、や。」

 

「…………わかったよ。」

 

「そんじゃあ私は他の人にも回しとく連絡あるから、それじゃあ。」

 

フェイトに伝えることは伝えたと軽快に手をヒラヒラさせながらはやてはその場から離れていった。

 

「ヒイロさんからの頼み、か……………うん、汚名挽回……………あれ、汚名返上だっけ……………ともかく頑張ろう。」

 

首を傾げながらもフェイトは湧き出た疑問を棚に上げて、大きく頷いた。

 

 

 

 

「目標を目の前にして呑気に会話など…………所詮は潜入捜査に向いていない三流だったか。」

 

時刻を現在に戻して、バルディッシュを大剣であるザンバーフォームにしていたフェイトに野球のボールのようにかっ飛ばされた戦闘機人を見据えながらヒイロはそう吐き捨てる。そのかっ飛ばされた戦闘機人は壁に打ち付けられた時の衝撃で土煙が舞い上げられ、その仕留めた姿を確認できないでいた。それ故にヒイロは目を離さないようにしていたのだが、それが功を奏したらしい。

 

(ーーーーーー来るッ!!)

 

舞い上げられた埃で鮮明には見えなかったがその隙間から漏れ出ている青白い光を攻撃する意志の現れと感じたヒイロはすぐに行動に移す。

 

「まだ動くッ!?」

 

その青白く発光しているのに気付いたのか、フェイトも応戦すべくバルディッシュを構える。次の瞬間、姿を見えなくしていた煙を振り払うほどの爆発的なスピードで戦闘機人が接近する。

 

(しまったーーーーこれザンバーフォームじゃ捉えられない!?)

 

そのスピードはフェイトを持ってしても目を見張るほどの速さであり、大剣という大振りな剣な故、攻撃するまでにどうしてもタイムラグのあるザンバーフォームでは反応はできても妨害に回ることは厳しかった。

 

その青白く発光した爪が凶刃となってレジアスに再び迫りくる。普通であれば、反応することすら許されない領域。鍛えているとはいえ、魔力もないただの人間であるレジアスは避けることすら叶わない。

 

ただしそれは普通の人間の話だ。

 

「確かに速いが、狙いは単調、必要最低限のルートを選んで行動している。」

 

比較的早いうちに攻撃を仕掛けてくることを察したヒイロはさっきまでレジアスと対談している時に挟んでいた長テーブルの縁を掴むと、そのまま片手で持ち上げる。そしてヒイロは向かい側にあるレジアスの座っていたソファに足をかけると、大きく跳躍、落下するタイミングに合わせて、沿った上半身を反動に加えつつ、テーブルを掴んでいる腕を大きくしならせ、大剣の如く振り下ろした。

 

その即席の大剣はヒイロの人外的な筋力をふんだんに使ったことにより、不安定な空中でも正確に高速移動をする戦闘機人を捉えーーーー

 

 

ガギィィィン!!!!

 

 

思わず耳を塞ぎたくなるような金属と金属がぶつかり合う、けたたましい音をまき散らしながら地面にはたき落とした。

 

「フェイト、レジアスをこの部屋から退避させろ。それと部屋の外に局員が二人倒れている筈だ。物音は聞こえなかったからおそらくは眠らされていると思うが…………」

 

「わかりました!!レジアス中将、こちらへ!!」

 

「あ、ああ…………」

 

未だ状況をよくつかめていないのか、フェイトに急かされたレジアスは彼女に連れられてこの部屋を後にする。それを見届けながらヒイロは戦闘機人の爪をウイングゼロのビームサーベルで切り落とした。

 

「…………………」

 

長テーブルで叩きつけられた戦闘機人を無言で見下ろすヒイロ。何か変な動きを見せないための監視だったが、その戦闘機人を全体を俯瞰していた目が一瞬だけピクリと動いた腕を見逃さなかった。

 

「まだ動くか………!」

 

同じ戦闘機人であるスバルから人より耐久性はあるというのを聞かされてはいたため、警戒を厳にしていたヒイロはその僅かな挙動を見逃さず即座に距離を取った。

些か及び腰とは思えるが、戦闘機人という作られた人間であるということは中身は機械でできていることである。

であれば、体にいくらでも仕込んでいてもおかしくはない。

 

「くそ………………くそくそくそくそくそ!!!!」

 

勢いよく叩きつけられた障害なのか、体のところどころからスパークを走らせながら血走った目でヒイロの睨みつける戦闘機人。その吐き出される呪詛のような言葉に、ヒイロは歯牙にも掛けず、冷静に澄ました顔でその挙動を見つめる。

 

「ッ……………くそったれがぁぁぁ!!!!」

 

苛烈極まる表情をさらに歪に歪めながら戦闘機人はヒイロへ仕掛けることはせずに部屋の窓を突き破り、この場から逃走をした。

 

「…………逃げたか。すんでのところで仕掛けるのを諦めたようだな。」

 

 

逃げた戦闘機人をヒイロは追うようなことはせずにただその行先を見据えるだけだった。それもそのはず、逃げる敵を撃ち落とすのであれば、加減の聞かないヒイロより適役がいるからだ。

 

 

 

「こちらスターズ01。戦闘機人の逃走を確認。これより追撃行動に移ります。」

 

落下隊舎の屋上で逃走している戦闘機人を見据えるなのは。予め追撃をヒイロを通じてはやてから頼まれていたため、既に彼女の周囲には桜色の魔法陣が展開され、いつでも砲撃を放つ準備が整っていた。

 

なのははレイジングハートを構えると、その切っ先を未だ逃走を続けている戦闘機人へと向ける。

 

「ターゲット・ロック………………」

 

レイジングハートから送られる映像に映る戦闘機人にサイトが固定される。その切っ先に魔力が集中し始め、トリガーを引こうとする。

 

『|Master!Confirm the approach of high energy body!《マスター!!高エネルギー体の接近を確認!!》』

 

「えっ!?」

 

突然のレイジングハートの警告に思わず引き金を引こうとした指を止めてしまうなのは。自身の相棒が警告を発している方角に目を向けると、膨大なエネルギーの奔流と化した太いビームが水平線の向こうの外洋から一直線に六課隊舎に襲来する。

 

「ッ………レイジングハート!!砲撃に使おうとしていた魔力、全部防御に回して!!」

 

『Yes.Master』

 

迫りくるビームの前に身を踊り出させるとなのはは砲撃用の魔力全てを防御に回し、魔法陣で受け止める。

 

「ッ…………なんて、威力…………なの………!!」

 

ビームと魔法陣がぶつかり合い、周囲に稲光を撒き散らす。その中心でなのははビームの出力に苦しい表情を浮かべていた。今のなのはは自身にリミッターをかけられており、万全の状態ではない。そのリミッターが外されればなんとかなることはわかっていたが、そう願う余裕もなかった。

 

「なのはちゃん!!」

『援護するッ!!』

 

もしかしたら押し切られるという最悪の予想も頭の中を過っていたところにシャマルと狼形態のザフィーラが駆けつけ、それぞれの防御魔法である『風の護盾』と『鋼の軛』でなのはの援助を行う。

 

しばらく三人が踏ん張るとやがてビームは細く、減衰していき、辺りにビームの熱気で陽炎と紫電が漂っていたがなんとかビームを押しとどめた、五体満足のなのはたちの姿があった。

 

「ハァハァ…………シャマルさん、戦闘機人は…………?」

 

息を整えながらなのはは隣に立っていたシャマルに目配せすると彼女は無言で首を横に振った。

 

「ロングアーチが追ってはいると思うけど…………私自身は見失ったわ。」

 

シャマルの返答になのははそうですか、と割り切りながらザフィーラに向き直るも彼も同じように首を横に振るだけだった。

 

 

 

「………………今のビーム、ビルゴのものではないな。正確にいえば、ビルゴのものをより強力にした荷電粒子砲ではあるが……………まさかヴァイエイトか?となると、メリクリウスがいることも想定すべきか。」

 

隊舎の中で先ほど撃ち込まれたビームに訝しげな表情を見せるヒイロ。これまでとは一線を画しそうな存在の出現にこの戦争はより苛烈さを増しそうなのは、先ほどの光景を目の当たりにした者であれば、誰の目にも明らかであった。

 

 

 




個人的に今回のヒイロによる叩きつけはヒイロにしかできないと思ってる。

ドモンとかはわりと不意をつかれやすいと思っているし、アムロ大尉とかのニュータイプは察せられるけど突然すぎて間に合わせられない。
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