魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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今回少なめ、その上にモビルドールとの模擬戦はダイジェスト。正直言ってすまんかった。


第74話 司法の塔

ヒイロが主導で行われた対モビルスーツ戦を想定したシミュレーション。そのシミュレーションとしての難易度は選りすぐりの魔導士を召集した機動六課でさえかなり手を焼く内容であった。

今回の演習で出てきたモビルスーツはリーオー、エアリーズ、トラゴス、トーラス、ビルゴの5種類。

汎用型のリーオー、空戦型のエアリーズ、戦車型のトラゴスはまだ余裕を持って対応はできた。

しかし、宙域戦闘ではガンダムでさえ手を焼いてしまうこともあるほどのスピードを有するトーラス、なのはのディバインバスターでさえ密集隊列でのプラネイトディフェンサーで防ぎ切ってしまうビルゴが加わってしまうと苦戦は必至であった。

 

それでも回数を重ねていくうちに彼女たちの中で一種のなれが生まれてくるのかトーラスとビルゴへの対応も手際が良くなってくる様子が見られた。

 

もっともヒイロはそこら辺も想定済みだったのか、なのは達の勝利条件である一定時間の防衛とは、別に用意した目標の破壊に関しては設定した目標をウイングゼロの戦闘データから引っ張り出した、かつてヒイロと彼と同じガンダムパイロットであるトロワ・バートンが僅かな期間だけ乗らされていた機体…………メリクリウスとヴァイエイトの二機に設定をした。

 

何度かその風神と雷神と会敵することはあったが、ウイングゼロの戦闘データを基にしているということは実質的にヒイロとトロワを相手にしていることになる。とはいえデータはデータのため劣化バージョンといえばそうなのだが、そこまでいくのにビルゴとトーラスという分厚い壁を超えなければならない上、かたやビルゴ以上の鉄壁を誇るメリクリウス、なのはのディバインバスタークラスの出力を少ないチャージ時間で連発できるヴァイエイトとの連戦。結局最後までその赤と青の装甲に傷がつくことはなかった。

 

『再現したモビルスーツをゼロシステムとリンクさせていたぁっ!?』

 

そういうのは訓練があらかた終わり、ビルゴやトーラスに対して慣れはしたもののやればやるほど二機の動きが良くなっていることに違和感を感じたティアナがそのことをヒイロに尋ねるとゼロシステムを使っていることを明らかにした時のほぼ全員の反応である。

 

 

 

 

 

「ジェイル・スカリエッティの襲撃タイミングが予測されたのか?」

 

対モビルスーツ戦闘シミュレーションを始めてからしばらくの時間が経ったころ、ヒイロの耳にそんな情報が入る。

その情報を持ってきたはやてが険しい表情で頷きながらその詳細を伝える。どうやら聖王教会のカリムの持つレアスキル、預言者の著書(プレフェーティン・シュリフテン)の新たな預言が記されたとのことでそのことではやてが聖王教会に赴いていた。

 

「そのタイミングが、今度地上本部で行われる公開陳述会か。」

 

「内容は、主だったものとしては例の大型陸上兵器、アインヘリアルに対する一般の人々への説明だと思う。」

 

「……………現状としてはどうなっている。レジアス・ゲイズの様子は。」

 

「うーん……………まぁ、私に対する当たりが弱くなったってわけじゃあないんやけど…………心なしかしおらしくはなったんかな。やっぱり思うものがあったんじゃあないかな。他ならぬ、兵器を扱ってきたヒイロさんの言葉だったから。」

 

「……………兵器など、所詮平和な時代には不必要なものだ。特にあのアインヘリアルといった後に象徴として扱うような兵器はな。そんな武器に頼るような仮初の平和はすぐにまた新たな戦火を生む。」

 

「仮初の、ねぇ…………じゃあヒイロさんは仮初じゃない、いわゆる本当の平和ってどうやって手に入れられると思っておるん?やっぱり私たち管理局の人間が頑張るしかないんか?」

 

ヒイロとの会話の中で生まれたふとした疑問をはやてはヒイロに問いかける。その質問にしばらくだんまりと口を噤んでいたヒイロだったが、ふとしたタイミングでと側にいるはやてに顔を向ける。

 

「それは人類一人一人が平和を望む心を持つことだ。兵器や兵士などいない、日常、自由、そういった当たり前の平和をな。」

 

「……………結局のところ、私達の戦いぶりを人々がどう感じてくれているかってことなんやな。」

 

「平和は戦争の結果でしかないからな。知らない奴にはそれほど平和を願う気持ちは出てこないだろう。知っているだけの奴と実際に経験した奴との間には明確な差が生まれるからな。それ故に平和は脆く、儚いモノだ。だが、その脆弱な平和を続けていかなければ、また俺たちのような兵士が必要となってくる上にまた新たな犠牲が生まれてくることになる。」

 

ヒイロのいう一人一人が明確に平和を望む心を持つということに難しい表情を見せるはやて。人の気持ちは移ろいやすい。それ故に難しいと感じる。そんなはやての気持ちを知ってから知らずかヒイロはさらに平和を維持することの厳しさを伝える。

 

「相変わらず……………ヒイロさんは手厳しいなぁ……………」

 

苦笑いのような表情でそういうはやてだが、ヒイロはまるで歯牙にも掛けない様子で無表情で佇む。

 

「……………で、お前が俺のところにやってきた理由はそれだけか?」

 

「あ、そうだった。ヒイロさん、公開陳述会中どっちに着いておきたい?これが本題。」

 

ヒイロの指摘に思い出したかのようにハッとした表情に変えるとはやてはそんなことを尋ねる。しかし、質問の内容が少々大雑把だったのかヒイロはわずかに首をかしげるが、少しするとその大雑把になっていた部分も理解できたのか顔をはやてに向き直した。

 

「公開陳述会が行われている会場とこの六課隊舎のどちらの防衛につく、ということか?」

 

「うん、そういうことになるね。ちなみに私たち機動六課は預言の司法の塔の部分が地上本部のことを指していると予想して陳述会の行われる本部に配備されることになっとる。」

 

「………………六課本部に残る奴は?」

 

「…………守護騎士のみんなに残ってもらうつもりではいる。だけど、本当にヴィヴィオが狙われて隊舎に攻め込んできて防衛しきれるかと言われれば     

 

「奴らがどれほどの勢力をよこしてくるかによるだろうが、例のハイドラのこともある。防御・砲撃に秀でているなのはを欠いているうえ、基本近距離でのレンジを領分としているあいつらに対処は厳しいだろう。」

 

「なら      

 

「俺は隊舎に残る。地上本部の方も気がかりでもあるが、向こうには向こうで動ける奴も多いはずだ。」

 

「わかった。地上本部は私たちに任せてな。絶対にスカリエッティの軍勢なんかにやらせたりはしないから。」

 

そういうとはやては腕を挙げてサムズアップの姿勢をとると、笑みを浮かべて心意気をあらわにする。しかしやはりというなんというべきか、そんなはやての活力あふれている魅力的な様子にもヒイロはいつもどおりの    ある意味でなのはたち海鳴市の三人娘には感情を読み取れない見慣れた無表情でジィーッとたたずむ。

 

「……………え、えっとヒイロさん?」

 

見慣れているとはいえ、全く反応を見せないことはさすがにはやても気まずかったのかおずおずとした様子でヒイロに声をかけたがヒイロからの返答や反応はない。声掛けにも全く反応を見せないヒイロにはやては先ほどの自身のサムズアップがいけなかったのかと焦り始める。

 

「……………お前に聞いておきたいことがある。」

 

「ふぇ……………?聞いておきたいこと?」

 

「以前聖王協会に赴いた際に聞かされたカリム・グラシアのレアスキル。あれの翻訳はそれで確定されたものなのか?」

 

頭を抱え始めたところで唐突に出てきたヒイロの言葉に素っ頓狂な反応を見せるはやて。そこからのヒイロの質問に少し間があいてから思案に張り巡らせる。カリムのレアスキルは確かに未来に起こる出来事について書き記される代物だ。さらにはその書き記される言語は古代ベルカ文字であり、そこにその筋のものによる翻訳作業が挟まるため、出てくる内容が人によってまちまちになってしまうため、ヒイロが内容の翻訳に疑問を吹っ掛けるのもわからない話ではなかった。

 

「う  ん、私はその筋に明るいわけじゃないから何とも言えないけど、大筋はあっているって思ってもらっても構わへんで?実際それで防げた事例があるってのはヒイロさんも聞いていたやろ?なんかひっかかることでもあるの?」

 

「……………いや、俺自身、預言に疑いを持っているわけではない。」

 

「じゃあ……………どうしてなんや?」

 

「…………………」

 

話の様子から預言の翻訳に疑念を持っていると思っていたところにヒイロから預言には疑いを持っていないといわれると当然のようにヒイロが気にしていることの詳細に対しての気がかりが生まれてしまう。そんな人間として自然な思考からはやては尋ねるも、当のヒイロは少しばかり顔を顰め、難しい表情を見せながら黙っている   ようにはやてには見えた。

 

「……………杞憂で済めばそれだけだが、答えがいつも一つだけとは限らない。」

 

「……………え、なんか詳細教えてくれるわけじゃないの!?」

 

不意にヒイロが呟くような小さい声量でそういうと、踵を返してその場から去っていった。その場に残されたはやてはヒイロが最後に言った言葉と詳細をここで語らなかったその理由をしばらく考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママ…………行っちゃうの…………?」

 

「ごめんね、ヴィヴィオ………ママたちもいろいろやらなきゃいけないことがあるからいつもヴィヴィオのそばにいられるわけじゃないの。」

 

そして公開陳述会が行われる当日。移動するためのヘリの前で寂しそうな表情で見送るヴィヴィオになのはがヴィヴィオと同じ目線の高さになるようにしゃがむと優し気な笑みを見せながらヴィヴィオの頭をなでる。

 

「でもなのはママもフェイトママも必ず戻ってくるから、それまではパパと一緒に留守番できるね?」

 

「……………パパと一緒なら、ヴィヴィオ頑張る…………」

 

寂しげな表情は変わらずだったが、ヒイロが作ってくれたうさぎのぬいぐるみを力いっぱい抱きしめながらの言葉になのはを頬を緩める。

 

「それじゃあヒイロさん、ヴィヴィオのことお願いしますね。」

 

「……………」

 

そういってヴィヴィオの様子になのはと同じように頬を緩ませていたフェイトはヴィヴィオの傍らに立っているヒイロに頼むが、肝心のヒイロからの返答は憮然としているだけでまるで反応もなかった。それでもヒイロの性格をそれなりに理解しているフェイトはヴィヴィオのことを必ず守ってくれると信じて、それ以上なにか言うことはしなかった。

 

「はやて、留守の間のこちらの守りはお任せください。」

 

「うん。ほかのみんなもよろしくな。」

 

シグナムの見送りの言葉にはやてがそう返すと、ヴィータ、シャマル、そしてザフィーラの守護騎士たちも大きくうなずいた。その様子に満足気に表情をほころばせるが、内心では不安でいっぱいだ。はやてたちが公開陳述会の防衛にあたっている間にスカリエッティの勢力に六課隊舎が襲撃される可能性をヴィヴィオを隊舎で引き取ることになった当初からヒイロに告げられていたからだ。

さらにはガジェットでも十分な脅威になるというように、そこに追い打ちをかけるようにヒイロのいたアフターコロニーのモビルスーツたちも轡を並べるというのだから、はやての不安がつきることはないだろう。もしかしたら守護騎士(家族)の中のだれかが生死をさまようことになるような大けがを負ってしまうかもしれない。それでもはやてたちは公開陳述会の防衛にあたるしかない。なぜなら地上本部の周囲には普通の人々の生活がある。そこを戦火の炎に焼かせ、彼女自身と同じような境遇の人間を数多く生み出してしまうことはとてもではないが看過することはできなかった。

 

「ヒイロさんも、みんなのことお願いな?」

 

「………他人の心配より、まずは自分の心配をしたらどうだ?」

 

「……………そうやね。」

 

なんとなく自身の胸中を見抜かれているのか何事も自分の安全ありきだと皮肉気にいうヒイロにはやては珍しく彼が自分を心配してくれているような言葉を発したことに驚きと恥ずかしさ、それと少しの優越感が入り混じった表情を見せながらローターが回転をはじめ、離陸準備をしているヘリに乗り込む。

そのあとに続くようになのは、フェイト、そしてスバルたちフォワード組も搭乗すると機体のドアが閉じられ、そのまま空へと飛び立っていった。

 

「さてっと…………どうすっかねぇ……………お?」

 

どんどん小さくなっていくヘリを見送りながらこれからの対策をどうするかを溢すように呟くヴィータは足早に隊舎に戻っていくヒイロの姿を目にする。

 

「パパー、そんなに急いでどうしたの?」

 

そんなヒイロをパタパタと忙しなく、小鴨のように着いてきたヴィヴィオが聞くとヒイロは答えることはしなかったが、代わりに歩くスピードをヴィヴィオと同じくらいまで落とした。

 

「それはアタシも同じだな。なんかあんのか?そんなに急いでよ。」

 

さらにヴィータがヒイロを呼び止めたところで、ヒイロは隊舎に向けていた足を止め、顔だけをヴィータに向ける。

 

「………………俺の杞憂で済めばいいだけの話だ。それに、お前たちには関係のないところだ。」

 

それだけ伝えるとヒイロは再び歩き始め、隊舎の中へと戻っていった。その後ろ姿をヴィータは面倒臭そうに後ろ髪をかき乱しながら静かに見つめていた。

 

「………………ま、ここに来てアイツが変なことを起こす訳ないか。アイツなりに気になることがあんだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

『……………突然はやての名前で連絡が飛んでくるから何事だと思って出てみれば………一体なんの了見なんだ?』

 

部屋の主であるはやてのいない部隊長室の椅子に腰掛けるヒイロ。誰かと会話しているようだが、その声の主がわずかにくぐもったような声をしていることから通信越しに会話していることが窺える。

 

「その方が確実にお前は出ると判断しただけだ。」

 

『まったく君という奴は………………』

 

ヒイロの物言いに画面の中の相手、クロノは呆れたように肩を竦めるが、ヒイロの人となりをそれなりに知っているのか、その表情をすぐに改め、気を引き締めたものに変える。

 

『それで、通信をよこした理由はなんだ?』

 

クロノがそう聞いてくると、ヒイロは自身の脳裏に浮かび上がった推察を伝える。最初こそ訝しげな表情で聞いていたクロノだったが、次第にその表情を驚愕というように目を見開く。

 

『お前……………それ本気で言っているのか!?』

 

「あくまで可能性の一つにすぎん。だが、内通者からのメッセージにはスカリエッティを知識欲の塊と称するような言葉があった。さらには既にスカリエッティは管理局と10数年にわたって繋がっている。そのような技術を奴が持ち合わせていてもなんら不自然な点はない。」

 

『ッ………………!!』

 

ヒイロの淡々としながらその語ったことの根拠となっていることを羅列していく様子にクロノは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。

 

『……………わかった。確かにその線もある事は理解した。だがこちらで対応できるかどうかははっきり言ってわからないぞ。俺だって色々と立場があるんだ。できることには限りがある。』

 

「そういう可能性があることを頭に入れていれば十分だ。初めからお前の判断力にしか当てにしていない。」

 

 

 




…………なんだろ、想像以上にヒイロとはやての絡みが描きやすい。
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