魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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文字数少なくて申し訳ない。急いで書いたし、展開を拙いかもしれない。
でも感想くれると嬉しい。


第76話 そして天使は毒竜と相対す

「はーい!!避難区画への道はこちらになります!!慌てず押さずに、落ち着いて進んでくださーい!!」

 

地上本部のエントランス。近い時刻から公開陳述会の様子が放映されるにもかかわらず、そこには大勢の一般人たちが続々と入り込んでくる光景が広がっていた。

その大勢の人の群れを案内するように大きく手を上げ、声を張り上げるスバルの姿があった。

 

「うーん………結構急な避難勧告だった割には人数多いと思うけど、クラナガンの人たち全員を避難させるってなると到底広さ的に足りない気がする……………」

 

スバルは途絶えることなく伸びている人の列に悩まし気な表情を見せる。クラナガンの一般市民が地上本部に集まってきているのは公開陳述会が行われる当日の明朝に唐突にレジアスが一般市民に対して避難勧告を始めたのがきっかけである。

 

『まず、明朝から一般市民の皆様方の時間を取らせてしまうことに謝罪を申し上げる。だが、こうしているのも1秒でも早く一般市民の皆さまの耳に入れておいてほしい事態が起きようとしているからです。』

 

明朝から唐突に始まったレジアス中将の会見を仲介する映像にまだ出勤前の大人、通学前の学生の間が画面越しに向けられる。その視線は突然中継が始まったことへの不信感や疑念が入り混じったものがほとんどであった。

 

『4年前の空港爆破火災事件を始め、数々の次元世界で起きた複数の爆発事件。それらは全て、たった一人の科学者によって引き起こされた事件でした。』

 

『その人物の名は、ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア関連の犯罪に数多く加担している広域指名手配人されている次元犯罪者であります。この男は次元世界で禁忌とされている兵器の製造に着手し、管理局の転覆を図っているとされ、現在局員の総員をあげて捜査に乗り出しているところであります。』

 

テレビの画面にスカリエッティの顔写真が表示され、スカリエッティについての説明がレジアスから為されるが、その中継を見ている市民たちの表情はあまり鬼気迫るようなものは浮かべていなかった。

なぜならそれはまさに対岸の火事のようであり、身近なところで起きてはいなかったからだ。

一番近い事件でも空港の爆破火災だがそれでも既に四年の月日が流れ、人々の記憶にも朧げなもので、言われればそのようなこともあったとされる程度の認識のレベルだった。

 

 

『ですがその努力も虚しく未だスカリエッティの拿捕には至っておらず、一般市民の皆様には多大な不安等を被ると思います。それについては地上本部の頭目の一人として謝罪を申し上げます。』

 

画面の中で頭を下げ、謝罪の言葉を述べるレジアスの姿に市民達は揃って困惑の色を見せる。クラナガンに住まう者達にとって、レジアスは文字通り、自分たちの安心と安全を守ってきた英雄のような人物だ。次元の海にある管理局本局と地上本部のどちらがいいと比べれば、姿が見えず、何をやっているのか明確には分からない本局より、実際に守っている姿を近くで感じられる地上本部の方が彼、彼女等にとっては印象は良かった。だからこそ、地上本部の頭目であるレジアスの、そんな人物が頭を下げる光景は正直に言ってあまり見たくないところでもあった。

 

『その上で、皆さまに報告とお願いがあります。』

 

頭を下げる時間こと十数秒、再び画面に写り始めたレジアスの口からそのような言葉が出る。

 

『現在、実績のある方面からの報告で、件のスカリエッティが、この地上本部を襲撃してくる可能性があることが示唆されています。ですが、それもあくまで襲撃が予見されているのみで、予想される被害、規模ともども不明となっております。ここまでの狼藉をスカリエッティに許してしまったのは我々の不徳の致すところ、重ね重ね謝罪を申し上げます。だが、我々はこれ以上、スカリエッティによる蛮行を許すつもりはありません。』

 

画面の中のレジアスは拳を握り、映像からでも十分にわかるほどその手に力を込める。

 

『我々の為すべきことはここに住まう市民皆々様の命を守ることです!!ですので、皆様にはこれより、緊急避難令を発し、避難場所を地上本部地下に定めた上で避難を開始していただきたい!!皆様のこれまでの生活、平穏を守り切るのは正直に申し上げると守りきれないかもしれない!!ですが、せめて、せめて皆さまの命だけは守らせてほしい!!命さえあれば、明日へ、未来へそのバトンを繋げることができる!!』

 

レジアスのその熱のこもった演説、いや頼みにテレビを見ていた人々は思わず足を止めてそれを聞き入っていた。

 

『避難が間に合わないかもしれません。それだけ我々はスカリエッティに対して後手になりすぎた。だがそれでも、最後まで生きる希望は捨てないでほしい!!それは地上本部の頭目としてではなく、ここに立つ、平和を望む一人の人間としてお願いしたい!!』

 

そこまで言い切るとレジアスは再び頭を下げ、市民達にお願いを申し上げる。その行動自体は最初の謝罪と変わりないが、その姿勢は先ほどまでのとは違い、興奮からか頭を下げている姿も震えていた。それだけ鬼気迫るお願いだった。

それを聞いた市民の人々は思い思い、家内、友人のみならず、たまたまそこにいた名も知らぬ隣人と目を見合わせると意を決した表情で移動を開始する。

そしてその方角はいつも自分たちを見守ってくれていた地上本部の高き司法の塔。レジアスの警告を孕んだ思いは、それまで平穏を領受していた市民達の心に届いたのだ。

 

 

 

 

 

「まさか、あそこまでレジアス中将がやってくれるとはなぁ…………絶対この前の隊舎への襲撃で何か心変わりがあったんだろうなぁ……………」

 

そう考えるスバル。確実にそのレジアスの会見はそれまで毛嫌いしていたはずのカリムのレアスキルによる予言を組んだ上での会見だったであろう。

 

(スバル……………!!)

 

 

そんな思考に耽っていると突然背後から耳打ちする声が聞こえて来る。誰かと思い振り向いてみれば、ティアナを始めとするギンガも含めたフォワード陣が勢揃いしていた。その表情を総じて険しい顔を見せていた。

 

 

「ど、どうしたの…………?」

 

仲間たちがその表情を浮かべていることに首を傾げながら尋ねるとティアナがスバルの肩を掴み、自身に引き寄せるように引っ張る。

 

(さっきから通信がどことも通じないの。一応みんなの配置は覚えていたからなんとかこうして集合できたけど、もしかしたら…………ジャミングをかけられたかも。)

 

「えっ!?そん    ングッ!?」

 

そしてそこからの耳打ち声に思わず声を荒げそうになったスバルだが、慣れた様子ですぐにスバルの口を手で覆い、周囲に聞こえないようにする。

 

(ばか!!アタシ達の様子が変わったらそれだけ一般市民に心配を与えることになるのよ!!少しは自重しなさいよ!!)

 

(ご、ごめん…………)

 

相変わらずのティアナからの叱責に苦笑いをこぼすスバル。

 

(それで?なのはさん達とかは?)

 

(多分状況を察してくれてはいるけど、動こうにも動けないと思うわ。相手の出方がわからない以上、配置からは動けない。)

 

スバルの質問にティアナは渋い表情でなのは達は動けないであろうことを伝える。

 

(じゃあどうするの?集まったところでできることは限られてるし   

 

そこまで言ったところで、何やら外の方で騒ぎが起こっているのか、ざわざわとしたどよめきがスバル達の耳に入って来る。不思議に思ったスバル達が顔を見合わせて頷く姿勢を見せると、全員で一度持ち場を離れてエントランスの外に出る。

 

「すみません、どうかしましたか?」

 

「あ、ああ!!局員さんかい!?よかった、突然シールドが消えてしまったんだけど、何かあったのかい?」

 

ティアナが適当な一人に声をかけるとその市民は空を指差しながらシールドが消えてしまったと答える。思わずその指差す方向に視線を向けると、地上本部を覆っていたバリアシールドである魔力障壁が消失しているのに気づく。

 

「わかりました。少し管制室に連絡をとってくるので、少々お待ちください。」

 

なんらかの異常が発生している。そう踏んだティアナはフォワード組に一声かけて急いで移動を開始する。

 

「ティアナさん!!これってもしかして……………!!」

 

「多分管制室がやられてる!!やったのは、おそらくあの時の物質の中を自由に泳ぎ回れる戦闘機人かも…………!!」

 

エリオの声にティアナは少しばかり声を荒げながら戦闘機人によるものだと自身の推測を述べる。

 

「管制室への道は私が記憶しています!!案内します!!」

 

「お願いします!!」

 

ギンガが管制室へのナビゲーターを名乗り出るとそれをお願いすると同時に急いで管制室へと直行する。なぜなら管制室は地下にあり、一般市民の避難場所にも地下空間が優先的に回されている。

もしかしたら、既に敵は一般市民の近くまできてしまっている可能性もあるのだ。

 

(くっ……………状況が思った異常に悪い…………市民の人たちの避難もまだ半分行ったかどうか…………!!)

 

人知れず悪化していく状況にティアナは心の中で悪態をつく。ここでの戦闘ははっきり言って悪手以外の何ものでもない。一般市民への被害もありうるというのに、それでも相手は手加減できるような相手ではない。

 

(それでも、やるしかない…………!!今は被害を最小限に抑えられるようにしないと…………!!)

 

それでも、やるしかない。ティアナは再び気を引き締めると魔力障壁の操作が行える管制室へ急ぐ。

 

 

 

「本部の部隊長達との通信途絶!!本部を中心にジャミングが展開されたと予想されます!!」

 

「現時刻より第一戦闘配備を隊員達に通達、及び随時出撃命令を発令します!!準備ができ次第ただちに出撃を!!」

 

同時刻、本部にいるなのは達との通信ができなくなったことからジャミングをかけられたと判断したロングアーチはグリフィスの指示ですぐさま隊舎にいる隊員達に出撃命令と非戦闘員に避難指示を下す。

 

「任務了解。ただちに迎撃行動に移る。」

 

館内に響き渡るアラートと忙しなく動き出した隊員達に紛れて、ヒイロはウイングゼロを展開すると大空へ飛翔する。

 

「アインス、魔力の具合はどうだ?」

 

『やはりキャパシティが大幅に下落したのが痛いな。しばらくは必要最低限に抑えて出てこないでいたが、それでも防護幕を展開できるのは30分が限界だ。』

 

「問題ない。やれることをやるだけだ。」

 

アインスの申し訳なさそうな声にヒイロは淡々とした口調で声をかけ、瞳を下ろした。するとすぐそこにシグナム達ヴォルケンリッター達がそれぞれの騎士装束で集まってくる。ザフィーラだけはやはり狼の姿のままだったが。

 

「ヒイロ………………死ぬなよ。」

 

「そちらもな。」

 

『北西のデルタグループからエンゲージ!!偵察部隊は後退して迎撃部隊との合流を最優先にしてください!!』

 

静かにヒイロを見つめていたシグナムの短い言葉に同じように短い言葉で答えるヒイロ。そして、ついに接敵したことを告げるシャーリーの声が通信で届くと再びその瞳を開き、ヒイロはウイングゼロの主翼バインダーを広げると、その翼を羽ばたかせて移動を開始する。

 

「シャマル、北東方向だ。妨害は俺がする。」

 

『北東より高エネルギー反応!!来ます!!』

 

そう言ってヒイロは北東方向にバスターライフルを向けると即座にトリガーを弾き、山吹色の閃光が水平線へ消えていく。それと入れ違いになるようにシャーリーのオペレートが聞こえるとバスターライフルと同じ色をした極太のビームが水平線の向こう側から飛んでくる。

 

「例のハイドラはこっちによこしてきたのね!!」

 

ヒイロの言葉にシャマルが答えると飛来するビームに向けて緑色に輝く盾の形をした魔力壁を幾十にも展開し、それを防ぐ。ビームが緑色の盾と衝突すると凄まじいエネルギーの余波を周辺にばら撒きながらもシャマルの展開した盾を次々と粉砕していく。

 

「そう簡単にやらせはしない!!鋼の軛!!」

 

そしてその途中からザフィーラが展開した剣山を壁として活用し、さらにビームの出力を抑え始める。そして数秒か数十秒か、時間的にどれくらいたったかは定かではないが、やがてビームはどんどん減衰していくわけではなく、突然パッと途切れるように消えた。

おそらくヒイロが撃ったカウンターのバスターライフルを避けたことで攻撃を中断したのだろう。

 

「よし!!第一射は防いだ!!ヒイロの野郎は!?」

 

「もうビームが飛んできた方向へ急行している!!現状ハイドラからの長距離射撃を抑えるのであれば、ヒイロのウイングゼロを向かわすのが一番だ!!」

 

「それでもヒイロは30分ちょいしか持たねえぞ!!アタシ達も急ぐぞ!!」

 

ヴィータの声にシグナム達は頷く姿勢を見せながらヒイロが向かった先へと迅速に急行する。

 

 

 

 

「お前がハイドラか。他のモビルスーツの特徴とは一致しない…………いわゆる新型か。」

 

そしてヒイロはアインスの魔力によるパンツァーガイストで身体に紫色の魔力を帯びた状態でウイングゼロ本来のスピードで急行する。

そしてヒイロはついにそのハイドラを目にする。ヒイロより大きいその巨体、禍々しいほどの黒を主だった装甲に幅の広いリアスカートから覗く太い脚部はブースターかなんらかのユニットが積まれているのを伺える。そして赤いアンテナが3番ほど伸びている頭部を回転させてまるで複数の顔を有しているようなその姿はまさしく複数の頭が存在する神話上のハイドラとそう姿形は変わらなかった。

 

「……………その頭部のフェイスパーツ…………ガンダムか。」

 

相対したヒイロが呟くとそれに反応するように橙色のデュアルアイを光らせたハイドラ   ハイドラガンダムは右肩に懸架していたバスターカノンの銃口をヒイロに向ける。

 

『ガンダム…………!?ヒイロ、やれるのか!?』

 

「ガンダムタイプとの戦闘には慣れている。それに、俺がやることになんら変更はない。」

 

 

ヒイロはウイングバインダーの根元のラックからビームサーベルを引き抜くとその切先をハイドラガンダムに向ける。

 

「ターゲット確認、目標…………敵ガンダムタイプ。ただちに敵機の撃墜任務を開始する。」

 

 

 




えっと多分、この話が今年最後だと思います。投稿した日からちょっと用事が立て込むので……………

ともかく今年もありがとうございました!!今年に出せた話数は17話とすこぶる少なかったですことは本当に申し訳ないです…………
ともかく来年もよろしくお願いします!!
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