魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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副題 ソイツがチートならソイツの師匠にあたる人物も大概チートである


本編を2か月近く………………お待たせしましたぁ!!


第77話 攻防戦

クラナガンに住まう一般の人々の避難誘導を行っていたスバル達フォワード組。しかし、その最中で地上本部を覆うバリアフィールドが消失したことに管制室が制圧されたことを察し、内部構造を把握しているギンガの先導で急行する。

 

 

「管制室はここの角を曲がった先にあります!!」

 

先を行くギンガから身振り手振りで行き先を示されながら廊下の曲がり角を曲がると、とある部屋の前で待つギンガとスバルの姿が見えてくる。そこで一度合流し、互いに頷きあう仕草を見せると、扉を間に挟むように壁に背をつけ、ティアナが慎重に扉の開閉ボタンに触れ、管制室の扉を開け放つ。

管制室の中から飛び出たのは、人間ではなく、白く漂うガスであった。

 

「ッ………みんな口塞いで!!!」

 

そのガスを毒ガスの類と瞬時に判断したティアナは咄嗟に周囲にそのガスを吸わないようにスバル達に警告を発する。それが幸いし、そのガスを吸い込むことはなくなったが、ガスの効果がわからない以上、途端に管制室には入りずらくなってしまったことにティアナは覆った口元をわずかに歪ませる。

 

「ティア、私とギン姉が行くよ!!」

 

ティアナがこのガスをどうにかしようと考えるより先にスバルが管制室に入り込み、中の様子を確認してくる。ガスの効果がまだわかってもいないにも関わらず突入したスバルの無謀ともとれる行動にティアナは目を見開くが、同時にスバルとギンガの戦闘機人としての機械化された肉体であれば、多少は過酷な環境での行動が可能とされることに納得を示す。

 

「ティアナさん、ここはスバルの言う通りにしましょう。私たちなら多少の誤魔化しは効くから。」

 

「…………無理はしないでくださいよ?」

 

あきらめたようにため息を吐くティアナに微笑みを返したギンガはスバルの後を追って管制室の内部に突入する。ギンガの視界に入ってくるのは、まず電力が落とされているのか全体的に薄暗くなっている部屋の中。ギンガが目を凝らして入り口付近から部屋中を見渡すと、倒れ伏している局員のそばで膝を下ろしているスバルの姿が目に映る。ギンガが駆け寄ると、彼女の接近に気づいたスバルと局員を交互に見つめ、無言でその局員の男の容態を尋ねる。

 

「意識はあるし、反応自体も返してくれているみたいだから、おそらく麻痺性の毒ガス。多分無力化がメイン。」

 

「わかったわ。とりあえずここにいる人たちを外に引っ張り出そっか。なんとかしてバリアフィールドを復旧してもらわないと………………」

 

そういってギンガは管制室の壁面にある巨大なモニターを見る。そのモニターは画面が細かく区切りが設けられており、複数の状況を同時に確認できるまさにシステムの中枢ともいえる代物であったが、今はそのたくさんの画面の全てが真っ赤に染まり、機能不全を起こしていることを如実に示していた。

姉の目線を追うようにスバルもその画面を見ると事の重大さを改めて認識したのか、力強くうなづくと三人ほどの倒れ伏している局員たちをまとめて抱えて入り口まで跳ぶ。

 

「キャロ!!誰でもいいから一人起こして!!体を痺れさせるガスみたい!!」

 

「分かりました!!」

 

入り口に戻ってくるや否やヒーラーであるキャロに注文を飛ばすが、自分が必要になることがわかっていたのかキャロはスバルの要望に戸惑うことなく応えるとスバルが救出した一人に解毒を織り込んだ回復魔法をかけていく。救護作業を始めたばかりのころは体が痙攣をおこし、まともに動けるような状態ではなかった男だが、キャロの回復魔法が効力を発揮し始めたのか、次第に身体の痙攣が収まっていき、男の表情も安らかなものに変わる。

 

「うぐっ………………す、すまない感謝する………………き、君たちは………………?」

 

「機動六課所属、ティアナ・ランスター二等陸士です。病み上がりのところ申し訳ありませんが、事態が逼迫しています。バリアフィールドの復旧をお願いできますか?」

 

目を覚ました局員に代表としてティアナが所属柄を明らかにしながらバリアフィールドの復旧をお願いする。しかし、その局員から返ってきたのは遠い目をしながら申し訳なそうにする表情だった。

 

「すまない………………状況を察せないわけではないが、それはすぐにはできないんだ………………中に入ったのなら君たちも見たのだろう?あの真っ赤に染まった画面を。」

 

局員の言葉にティアナはスバルに無言でアイコンタクトを取り、局員の言葉の真偽を問うと頷くスバルの返答が返ってくる。

 

「あっという間だった。突然アラート警報が鳴り響き、状況を確認しようとしている間に瞬く間にシステムコントロールが奪われていった。そして直後に何者かによる麻痺性の無力化ガスの投下………………まさに神業のような動きだった。私一人では、とてもではないがどうしようもできない………………!!」

 

そういって自信をなくしたように首を振りながら俯く局員にティアナたちは苦しい表情を浮かべる。ジャミングにより通信が取れない状況でもバリアフィールドが消失するなどという異常事態をレジアス中将をはじめとする司令部が看過していないはずなどない。迎撃にはでていると思いたいが、それでも陣形などの態勢が整えられるとは思えない。

だから少なくとも敵の攻勢の初段を抑えられるバリアフィールドの存在が不可欠なのだ。このままではまだ避難誘導が済んでいない一般市民に危険が及ぶ。

 

何か手段はないかとティアナたちが解決策を模索しようとした時     

 

「………………?」

 

ふと、エリオが何かに気づいたのか視線をあちらこちらへと動かす。どうやらエリオが何か異常を感じ取ったらしい。

 

「エリオ君、どうかしたの?」

 

「………………管制室の方から何か音がします!!まさか、システムが動いているッ!?」

 

「だとするのであれば非常にまずい!!バリアフィールドは外側からの干渉を受け付けない性質をしている以上、迎撃に出た部隊の分断に活用される恐れがある!!」

 

システムが動いているというエリオの言葉に局員は青ざめた表情を浮かべてそう叫ぶと、その恐れが伝搬するようにティアナたちの表情が強張る。外では状況を把握することはできないが、少なくともなのはたちが迎撃に出るはずだ。もしバリアフィールドが作動した所為でなのはたちが孤立する羽目になったとすれば、ガジェット群だけならともかく、エアリーズやトーラス、そして魔導士にとって天敵ともとれるビルゴの進軍を止められる可能性は著しく低下する。最悪、バリアフィールドに挟まれて全滅の可能性すら見えてくる。

 

「ちょ、ちょっと!!なんとかならないのッ!?」

 

思わずティアナは局員に詰め寄ると男の襟首につかみかかり、口調を取り繕うこともなくなにか方法はないのかと荒々しく問い詰める。

 

「………………データを抜き取られているのであれば手遅れだが、向こうはこちらのシステムを不正利用している。だから、大元であるこちらのシステムを破壊すれば完全に使用はできなくなるはずだ………………!!」

 

「それってつまり、マザーコンピューターを破壊するってことですか!?」

 

「で、でもそんなことをしたら………………!!」

 

男の言葉にティアナとスバルはそろって不安そうな表情を浮かべ、言葉を詰まらせる。システムのマザーコンピューターを破壊するということはバリアフィールドに関するどころか地上本部すべての機能をダウンさせることと同意犠だ。男もそれを理解しているのか、無言で頷くことしかできない。

 

「ま、待ってください!!音の正体がわかりました!!」

 

そんな時、エリオの声が管制室から飛び、廊下に響く。その声にそこにいた人間の目線がエリオに集中する。

 

「さ、さっきの音は、システムに再起動がかかったときの駆動音でした………………!!そこでなにかできないかとストラーダにシステムコンソールの確認をさせたら、システムの主導権がこちらに戻ってきているとのことでした!!」

 

エリオの報告に茫然とした様子で静まり返る一同。数瞬の思考停止があったものの、なんとか再起動をかけると慌てた様子で管制室に飛び込み、局員がパネルコンソールを操作し、システムの動作確認を行う。

 

「ば、バカな………………本当にシステムの操作権が戻ってきているだと………………!?」

 

「一体だれがやってくれたんでしょうか………………」

 

「わからない。ただここのシステムは完全に動作不能に陥っていたことだから我々と敵勢力とはまた別の第三勢力の介入があったと考えるのが一番筋だ。しかし、クラッキングを行われたところからクラッキングをやり返した上で元の場所に操作権を譲渡するなど一体どんな技術者がやったんだ………………!?人間業とは思えない………………!!」

 

     こちらロングアーチ、聞こえますか!!誰か応答を!!』

 

コンソールを操作する局員が驚嘆といった様子でいると、ティアナたちのデバイスからシャーリーの声が聞こえてくる。

 

「え………………シャーリーさんッ!?」

 

『ッ………………よかった、ジャミングが解けたんですね!!』

 

スバルが驚いたように声をあげるとその声が向こうにも届いたのかとりあえず安堵したような様子のシャーリーの声が返ってくる。完全にジャミングが解けている証拠だ。

 

「ちょっとちょっと、システムの復旧と同時にジャミングまで………………一体どこの人間の仕業なのよ………………!!」

 

突然の状況の好転に、ティアナは口ぶりこそ怪訝なものであったが、表情自体は状況が好転したことに対する喜びと感謝に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

「ッ………………そんな、ワタシがクラッキング勝負で押し負けた………………!?」

 

 

同時刻、地上本部から程よく離れた空域でクラッキングの張本人であるクアットロがワナワナとした様子で茫然としていた。なぜなら奪ったシステムのコントロールを悪用して迎撃に出てくる魔導士たちを分断しようとしたのに、唐突に現れた別方向からのシステム侵入者の手によってあっという間に制御を奪い返され、あろうことか元ある地上本部に戻されてしまったのだ。

戻されてしまったのならまた奪い返せばいいと踏んだが、その別のシステム介入者に邪魔をされ続け、あろうことか弾かれてしまう頻度も上昇している。おそらくクアットロを妨害する片手間でより強固なファイアウォールをはじめとするシステムのプロテクトを構築しているのだろう。

 

「グゥ………………お、おのれ………………なんなんですかポッと急に現れてはワタシの邪魔をして………………まるであのヒイロ・ユイのようで忌々しい      

 

急に現れては場を引っ掻き回すようなその存在にクアットロは煮え湯を飲まされたヒイロの存在を思い出し、いら立ちを隠せないでいたが、ふと彼女の脳裏にとある人間が映りこむ。

 

「いえ、ありえないこと。あの老いぼれは確かに技術者としての腕はおありのようでしたが、ドクターの足元には遠く及ばない様子。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいですし。」

 

その人物を自分の創造主であるスカリエッティより下であると見下し、切り捨てた彼女はそのいら立ちをどこへぶつければいいのかわからないままフラストレーションをため込んでいった。その様子を彼女の足場となっているガジェットⅡ型のカメラアイが捉えていたことを知る由もなかった。

 

 

 

 

「まったく、灯台下暗しとはどこの言葉だったかの………………」

 

そのカメラ映像を通してクアットロの姿をあざ笑うかのようにほくそ笑む老いぼれが一人。照明らしい照明は老いぼれの目の前にあるモニターからの光のみ。

 

「しかし、管理局が使用している技術が魔法一辺倒ではなかったのが幸いじゃった。あの程度であればワシの知識の応用でいくらでもやれるわい。」

 

老いぼれは己の義眼を隠すために装着しているゴーグルを怪しく光らせながらこれまた怪しげに右手の義手の指をカチカチと打ち鳴らす。

 

「………………行き過ぎた科学は魔法と相違ないというが、逆もまた然り、ということか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガジェット、空戦魔導士、実弾、魔力弾、爆発、墜落、機動六課隊舎の近海はまさにありとあらゆる存在が戦いを繰り広げる戦争状態に突入していた。その戦場と化した沖合の海域に二つの光が縦横無尽に駆け巡る二つの光が交差するたびに白い光が飛び散る。その疾走する光たちの周りにはガジェットやエアリーズといったスカリエッティの勢力や六課の魔導士たちもいたが、誰もその光に近づこうともしない。

 

いや違う。誰も近づけないのだ。ガジェットたちはそれを操作する統率役の戦闘機人に、六課所属の魔導士たちは己の目で認識する。あの戦いに水を刺すことはそれすなわち死を意味すると。あの光がぶつかりあうたびに白い稲光のような光が空を照らす。一人が言う。あの速さは管理局でもトップのスピードを誇るフェイト・T・ハラオウン並みだと。だがしかし、彼や彼の扱っている代物の全盛を少しでも知っているものが聞けば口をそろえて言うだろう。

 

あれは彼女(雷光)をはるかに上回っていると       

 

 

「……………………」

 

その二つの片割れであるウイングガンダムゼロ。なのはたちと初めて会った頃の白を基調とした流麗な装甲はエネルギーを武装に送る腕部分を残して全損し、操縦者であるヒイロが剥き出しになってしまっている。そのままウイングゼロの最高速を出せば、もれなく大気はかまいたちとなり、むき出しになっているヒイロの身体を傷つけるが、彼に憑いているアインスが僅かに残ったなけなしのリンカーコアからの魔力で使う古代ベルカ式の『パンツァーガイスト』による黒にほど近い紫色の魔力光が薄い膜のようにヒイロの身体を覆うことでそれを防ぐ。

 

 

「ギリギリまで魔力消費を抑えてはいるが………………それでも長くは保たないだろう。」

 

「支障がなくなるのなら問題ない。やれることをやるだけだ。」

 

アインスからの忠告にそう返しながら、ヒイロは手にしていたビームサーベルを握りなおすと目前まで迫ったハイドラガンダムの暗黒の装甲にむけて振り下ろす。対するハイドラガンダムは同じようにビームサーベルを振るい、緑と橙の光を打ち合わせ、白い稲光を両者の顔を照らし出す。

 

「………………ッ」

 

お互いにブースターから青白い光を放ち、鍔迫り合いのようなものを繰り広げていたが、苦々しい表情を見せながらヒイロが先に退いた。とはいえ退いたというより、退かされたが正しい。そもそもとして、ヒイロと戦っているハイドラガンダムは他のモビルスーツたちと同じようにダウンサイジングがスカリエッティによって施されているとはいえその大きさは軽く2メートルは超し、もはや見下ろしているといってもいいほどの相手。いくらヒイロが並々ならない筋力であったとしてもその出力は想像を絶するだろう。

そのヒイロにハイドラガンダムは右肩に固定化されている大型ライフル、バスターカノンを低出力で小分けにしながら撃つ。全盛のウイングゼロなら多少直撃を受けても傷がつくこともない程度の出力だが、今のヒイロにはどんな攻撃も致命的になりうる以上、ヒイロは回避行動を余儀なくされるが、その攻撃を巧みにウイングバインダーの主翼・副翼からの推力を操作しながらビームを回避していく。

幸運なことに素のスピードではハイドラガンダムとウイングゼロとではウイングゼロに軍配が上がっているのか多少距離が離れたとしてもなんとかビームサーベルの間合いまで詰めることができた。

 

 

振るわれたビームサーベルはハイドラガンダムが再びビームサーベルを構えたため、また白い稲光を生み出すに終わるが、ハイドラガンダムが至近距離で右肩のバスターカノンの銃口をヒイロに押し当てるように向ける。普通であればすぐさま退避するのが定石だが、ヒイロが元々とれる選択肢(武装)は少ない。

 

「ッ   ヒイロッ!!!」

 

    そこか」

 

焦ったようなアインスの声が響くと同時にヒイロは見計らったようにサーベルを手にしていない左手を冷静にバスターカノンの銃身に殴りつける。完全に固定化されているわけでもなく、可動域を設けている以上バスターカノンの銃身がずれると狙いもずれ、放たれた低出力のビームはヒイロの身体のすぐ横を通りすぎていった。

狙いを外したハイドラガンダムが次の行動に映るより早く、ヒイロは銃身にたたきつけた左手でもう一つのビームサーベルを手にすると、続けざまにそれを振るい、バスターカノンを根本から切り落とす。

たまらずといった様子でハイドラガンダムが飛び退き、ヒイロも距離をとると切断されたバスターカノンが数度のスパークを生じさせた後に爆発し、まだ太陽が明るいはずにも関わらず、両者を夕暮れ時の太陽のようにオレンジ色に照らす。

 

「………………もう驚かないぞ。」

 

「………………」

 

驚きや呆れすらを通り越してもはや何も反応しなくなり、遠い目を浮かべているようなアインスを置いて、ヒイロは鋭い目線でハイドラガンダムを見据える。アインスもウイングゼロの中からながらも決して警戒を緩めずにしっかりとハイドラガンダムをその目に捉える。

 

「あのガンダムタイプの主武装であるあの大型カノン砲を落とした。これで多少は戦い易くはなったと思うが………………」

 

ハイドラガンダムの様子を伺いながらアインスがそんなことを口にするが、ヒイロは無言でそんな楽な話があるものかというように手にしているビームサーベルを構えなおし、張り詰めた表情を見せる。

次の瞬間。ハイドラガンダムの両肩部分の装甲が展開すると、そこから左右一つずつのショルダークローが姿を見せると、そこから見えるビーム砲がヒイロに向けて掃射される。

 

「そう易々と問屋を下ろしてくれるはずもないか………………!!」

 

歯がみするアインスにヒイロはさっさと回避運動に徹し、ビーム砲の射線から逃げ回る。少しするとハイドラガンダムがビームサーベルの柄を連結し、薙刀のような形態にするとビーム砲を連射しながら自身もブースターをふかし、ヒイロに向けて接近してくる。

 

「………………」

 

接近してくるハイドラガンダムにヒイロはさっきから連射している両肩のビーム砲を観察するようにじっとした目線で見つめる。

 

(………………あの武装、何かあるな。ただの砲台とは思えん。)

 

ハイドラガンダムの両肩のビーム砲の可動域は少なくとも前方180度くらいの可動域はあるだろう。だがそれであればわざわざ装甲内部に隠すように収納する必要性はなく、最初から両肩にキャノン砲のように担いでいればいい話となってくる。

なにか隠すまでの秘密、もしくは奇襲性の高い武装である確率が高いとヒイロはにらんでいた。そしてその予想は的中することとなる。接近してくる中、直前までビームを発射していたショルダークローが突然分離すると、ヒイロに向けて単体で意志を持ったように動き始めたのだ。

 

「む、無線誘導システムか!?」

 

「いや、有線式だ。陽の光に反射してわずかにだがシステムと本体を繋いでいる線が見えた。」

 

「だがどのみちこれでは……………!!!」

 

淡々と分析しているヒイロに分離したショルダークローのビームが放たれる。身を翻してそれを回避するヒイロだが、すぐそこにまたもう一機のショルダークローからのビームが飛んでくる。

 

「ッ………………!!」

 

そのビームを大きく身体を動かしてバレルロールのような軌道で回避すると、ウイングバインダーを羽ばたかせ、一度大きく跳躍するように空高く上昇する。当然、ハイドラガンダムも後を追いはするも、追跡は分離したショットクローに任せ、機体自体は空高く飛ぶヒイロを下から見上げるようにそのカメラアイを光らせる。

そのカメラアイとヒイロの目線が交錯した瞬間、ヒイロは急降下をはじめ、ハイドラガンダムとの距離を詰める。当然ショルダークローが迎撃用にビームを掃射するが、ウイングゼロの速度と急降下した時の勢いが相乗効果を発揮し、構築された包囲を一瞬で潜り抜け、すれ違いざまに左手に握るビームサーベルでショルダークローとハイドラガンダムをつなぐ糸を切断する。

 

そして    もう片方の手に握るビームサーベルでハイドラガンダムの頭上から振り下ろす。エネルギー刃がぶつかり合い、猛烈な白い稲光が生じるが、今度はヒイロがハイドラガンダムを圧すような形で海水面ギリギリの高度までハイドラガンダムを追いやり、スラスターの出力で海水が巻き上げられる。

 

「このままいけば………………やれるかッ!?」

 

武装を使用不能まで追い込み、ハイドラガンダムの武装が攻撃を防いでいるビームサーベルだけであることにアインスが身を乗り出すような勢いでいる中、ヒイロは訝しげな表情を見せる。

 

(………………頭部の形状が変化している?)

 

気づけばハイドラガンダムの頭部が直前までのオレンジ色のツインアイから紫色のモノアイを怪しげに光らせるものにすり替わっていた。それが意味するものにヒイロは兵士として培われた経験から警戒感を抱かざるを得ない。

そしてそれは、現実のモノとなる。

 

「ッ………………!!」

 

「と、頭部に高エネルギー反応………………ッ、よけろ!!この距離では   

 

切り替わった頭部の口にあたる部分に光がともり始める。明らかにビームを放とうとしているチャージ音にヒイロが険しい表情を浮かべ、アインスが警告を促そうとする。しかし、ハイドラガンダムのビームは無情にもアインスの声を遮りながら放たれる。

その銃口の目の前に立ったヒイロは避ける間もなくそのビームを顔面に直撃を貰い、大きく上半身をのけぞりながら吹っ飛ばされる。

 

 

「ッ………………あ      

 

ヒイロの身体が吹っ飛ばされているのを、アインスはウイングゼロの中で体感で感じ取る。脳裏によぎるのは『死』の一文字。アインスのつぶやきは虚空に消えいるようなか細いものでしかなかった。

 

 

 

 




普通ビームを受けたら直撃箇所は抵抗もなく蒸発する。つまり………………わかるね?
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