魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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自分がVを知るきっかけだったVが卒業して寂しいですけど初投稿です


第78話 状況は苛烈、混沌を極める

「とりあえず………………これで、最後………………!!」

 

まだ少しばかりガスがくすぶる管制室からスバルが最後の局員を引っ張り出すとすぐさまキャロがその人物に対して回復魔法をかける。吸ったものの身体をしびれさせる性質をもっていたため、最悪心臓麻痺などを引き起こしている人物もいるかもしれないと危惧していたが、そこまでの即効性がなかったことが幸いしたのか、症状自体は四肢の一時的な麻痺とほとんどが軽い症状で治まり、少しの休憩をはさんだあとにすぐに任務に戻れてしまう状態であった。

 

さらには全員意識自体は保っていたのか、状況も把握しているものがほとんどであり、今まさに一度掌握されたシステムの復旧作業が滞りなく終わりそうなところまで来ていた。

 

「モニター、復旧します!!」

 

管制室の誰かの声が張りあがると、スバル達を含めた全員の目線が今だ暗転しているモニターに注がれると、暗い画面に光がともる。

 

「こ………………これは………………!!」

 

画面に映るのは地上本部から距離の離れた市街地の一角。そこはまさしく戦場であった。建物は崩壊し、その上から紅蓮の炎がその崩壊した建物のガレキごと焼き尽くす。その地獄の業火の中を怪しげな紫色の光が隊列を成してことごとくを踏みつぶしながら人々の集まる地上本部へと迫る。

 

「ッ………………ついに来た………………!!」

 

管制室にいる局員が未知の敵にどよめき、目を見開いている中、ティアナたちは険しい表情でその怪しげな紫色の光を見つめる。腐るほど相手をしてきたもはや見慣れた敵だが、それでもあの敵の厄介さを少しでも感じないことがなかった。ガジェットのもつアンチ・マギリング・フィールドとは違う、魔導士にとっての天敵。

 

「ビルゴ………………!!」

 

黒光りする装甲を炎の光で反射させながら、モビルドール・ビルゴは悠々とした一糸乱れない足取りで行軍してくる。その異質なまでにそろえられた行軍に、一同は本能的にその人型が機械人形の類であることを察する。

全員の目線が画面の中のビルゴに釘付けになっている中、さらに追い打ちがかけられるように地響きが起こる。

 

「な、何事だぁ!?」

 

地震の影響か、管制室全体の電光が明滅する中、局員の一人が状況確認の声を挙げる。

 

「ま………………魔力炉が何者かによって破壊されました!!それに伴い、非常用魔力炉が稼働!!」

 

「なんだと………………メイン魔力炉はここより深い地下にあるんだぞ………………観測班、どこを見ていた!!」

 

「どこもかしこもありませんよ!!ただでさえ一時的に機能不全に陥っていたんですからその間に入られたと考えるのが妥当ですよ!!というか、管制室に麻痺性のガスを撒いた侵入者の正体もわかっていないんですよ!?」

 

局員同士の間で悲鳴のようなやりとりが行われる中、ティアナたちは局員の言った侵入者の正体に心当たりがあった。以前会敵したスカリエッティの陣営に属している召喚士の少女、ルーテシア・アルピーノを捕縛寸前だった状態から一瞬で彼女を連れだした物体をすり抜けられる特異性を持った戦闘機人だ。

 

「ギンガさん!!」

 

「え、ええ!!わかったわ!!」

 

飛び跳ねるように管制室から出ていこうとするティアナ。そしてそのあとに続くスバル達の姿にギンガは一瞬戸惑うようにうろたえる様子を見せたが、彼女らが侵入した敵の迎撃に向かうことを察すると、急いでティアナたちの後を追う。

 

「お、おいッ!?どこに行くんだ!?」

 

しかし、近くにいた局員。ちょうど一番最初に回復させた男がぎょっとした形相を浮かべると咄嗟にティアナたちを呼び止める。その表情はまるで正気でも疑っているかのような目を見開いているものであった。

 

「どこって入り込んでいる敵への迎撃ですよ!!それじゃあ上の方はよろしくお願いします!!」

 

 

その男の声に反射的に振り向いたスバルが矢継ぎ早にそれだけ伝えると颯爽とした勢いで管制室から飛び出ていく。男の方もやれスバル達のような若い人間が矢面に立つことはないとか、まだ言いたいことは山ほどあったが、無情にも管制室の扉が閉まり、男の声はもうスバル達には届かなかった。

 

「ッ………………クソ!!防衛部隊の状況はどうなっている!?」

 

「機動六課所属の高町一等空尉とテスタロッサ・ハラオウン執務官が敵航空勢力の迎撃に出てくれたため一般市民の避難は今のところ9割を超えています!!」

 

「割合じゃなくて時間だ!!そんなもの気休めにしかならないだろう!?」

 

返答に男が悲鳴のようにまくしたてる声を挙げると、再度計算をする局員。

 

「おおよそですが、まだ数十分はかかる模様!!思ったより時間がかかるッ!?」

 

「だから言っただろうに!!バリアは残りどれくらい保つッ!?」

 

「先の報告に挙げた通り、高町一等空尉、ハラオウン執務官両名の奮闘でこのままの状況で進めば数十分は予備の魔力でも問題はありません。」

 

男の報告にまた別の方向から返答が返される。しかし、その報告をした局員の表情は不安そのものいった様子であった。

 

「ですが、あのアンノウンの軍勢が基地攻撃に加わればそう長くはもたないかと………………未知数ですが、手にしている武装………………素人目でも相当な威力を持っているのは明らかです。」

 

「地上部隊には防衛網の構築を急げと伝えろ!!市民を守るのも重要だが、我々大人がいつまでも少年少女たちに前線を支えさせるな!!」

 

その言葉に男は険しい表情を浮かべると、声を大にして張り上げ、そう命令を下す。大人が抱えるべき負担を子供に担がせるな。要は大人の矜持ともいうべきものであったが、それでもそこにいる局員たちを奮い立たせるには十分だったようだった。

 

 

 

 

 

「さて、どうしたものかしらね………………!!」

 

管制室から飛び出すように地下に侵入してきた敵の迎撃に向かうティアナたち。とはいえそこにいるというだけで、敵勢力の詳細などはまるでわかっていない状況の中で戦闘を行わなければならないことに、ティアナは難しい表情を見せる。

 

「幸い、敵が現れた区画と、避難してきた人たちが集められている区画は離れてはいます。だけど放置するのは流石に………………」

 

「ええその通りね。全く、防衛戦なんてあまりやりたくないわね………………どうしても敵の動向を伺ってからの対応になるからどうしても後手後手になる………………!!それに時間もそんなにかけられないし………………!!」

 

エリオがフォローするような言葉を贈るが、それでも無視することは決してできないことにティアナの表情は一層険しいものになる。さらにそこに時間をかければかけるほどにこちらに余裕がなくなっていくことがそれに拍車をかける。

 

「………………じゃあ、いっそのこと突き破っちゃう?」

 

ふいにスバルが立ち止まり、あっけらかんと言った言葉に全員の足がつられるように止まる。

 

「マッハキャリバー、敵のいるおおよそのエリアまでの最短距離はどれくらい?もちろん文字通りの意味でだよ?」

 

『………………一応確認ですが、本気ですか?』

 

悠然と右手のリバルバーナックルを振り上げながらの質問に機械音声でそう聞き返すマッハキャリバー。

 

「もちろん。多少の迷惑を被ることになるけど、これも必要経費ってことで!!」

 

『了解。であればこの先17メートルです。そこであれば文字通り最短で行けます。』

 

「おっけぇ!!それじゃあ、いっくよーッ!!!」

 

自身の相棒からの返答に表情をはにかませるスバル。そしてその言葉通りに大きく跳躍し、示された地点に向けてリバルバーナックルの拳を引き絞る。

 

「ディバイン………………バスターーーーーーっ!!!!」

 

振り下ろされた拳の先に縮小された魔力を込め、フロアの地面にそれを打ち付ける。その瞬間、込められた魔力がディバインバスターとして打ち出され、ゼロ距離砲撃が轟音とともに複数の階層にまるまる風穴を開ける。

 

「よし!!行こう、みんな!!」

 

目論見が完遂されたことにスバルは握る拳を作って喜ぶのも束の間、ウイングロードを発現させるとそのまま自身の開けた風穴に颯爽と降りていく。

 

「………………これ始末書で済むのかしら………………」

 

「………………上が丸ごとごっそり消えたらそんなもの書かなくて済むと思いますよ?」

 

「ちょ、ちょっとティアナ!?それは流石に言っていいことと悪いことが………………!!」

 

スバルの行動にギンガは驚きが一周回って冷静さが上回り、落ち着き払った様子でまじまじとこのあとの処分を心配するが、直後のティアナの発言に耳を疑うように驚きを示す。ティアナの言葉は、はっきりと明言こそしなかったが、管理局がなくなってしまえばその必要もなくなるということである。

 

「もちろん冗談ですけど………………とりあえず、スバルのウイングロードを伝って下の階層に降りましょうか。多分、スバルもそのつもりであれを残し続けていると思いますから………………」

 

呆れたように頭を抱えるティアナが指さした先には下の階層へと続く大穴から伸びたスバルのウイングロード。つまり彼女はその先で待っているのだろう。

 

「………………まぁ、そうね。その通りね。」

 

そのティアナの表情につられるように苦笑いのような笑顔を見せたギンガ。そして四人は先を行くスバルの後を追い、ウイングロードを伝って地上本部のより地下深くへと降りていく。降りた先は地下空間にしてはかなりの広さを持っていたが、そこはまるでどこかの研究所かのようなパイプとパイプが網目のように張り巡らされた空間だった。

先に待っていたスバルと合流したあとは、キャロに降りてきた空間から敵が入り込まないように簡易的ながらも召喚魔法で呼び出した鎖で覆い隠し、明かりの少ない薄暗い闇に覆われた通路を警戒しながら進んでいく。

 

「こっち?」

 

「はい。何か、燃えているようなパチパチという破裂音が響いてきています。」

 

進んでいる方向になんとなく不安を覚えたのか、ティアナがそう尋ねると、エリオが険しい表情で進む先の闇に警戒を強める。エリオの聴覚が鋭いことは知っていたが、確認ついでに人並以上の身体能力を持っているスバルとギンガに目配せを送ると、エリオの言葉があっていることを伝えるように二人そろって無言で頷いた。

 

「ねぇティアナ、ぶっちゃけたこと言っていい?」

 

「何よ突然。」

 

「………………誰かいる。数は三人。」

 

細めた視線で空間の先に広がる闇をにらみつけるスバルから放たれた言葉は、静寂を生み出し、わずかな時間をその静寂が支配する。時間にして数秒か。次の瞬間、一瞬だけまばゆい光が闇の向こう側からきらめくと一筋の光線が飛来する。

 

「ッ………………!!」

 

その光線の標的は先頭にいたスバル。闇の中からという視界が不明瞭な場所からの急襲に並みの人間であれば反応することすら難しい攻撃を戦闘機人としての視力で捉えた彼女は咄嗟に右手のひらに魔力のバリアを展開し、その光線を弾くと光線が花火のように霧散し、一瞬だけティアナたちの立っている付近を照らす。

 

    

 

攻撃にさらされたスバルをよそにティアナの目線は彼女とは別のところを凝視していた。彼女と一番付き合いが長いのは自分(ティアナ)だ。肉親であるギンガを差し置きながらもそう思っているのははっきりいって驕りが過ぎる。だが、それでもスバルのことは自分が一番よくわかっているつもりだ。だからこそ、ティアナは攻撃を受けたスバルから視線が外れた。否、外すことができたのだ。

 

    そこッ!!」

 

スバルが光線を防御したときに飛び散った時に見えたこちらにまっすぐ向かってくる黒光りしたモノ。本能的にそれを危険物と判断したティアナはクロスミラージュのトリガーを瞬時に連続で引いた。もう光源となる光は既に霧散した。それでも直線的な機動を描いていたのなら、それを脳内で補完してやればいい。

 

「外さないッ!!」

 

その心意気で放たれた魔力弾。オレンジ色の魔力光を発しながら曲線を描き、飛翔し、そして何かにあたった。次の瞬間、先ほどの光線とは比べ物にならないほどの爆光が地下通路を照らし、そこにいる全員の目がわずかに眩み、わずかにだが全員の動きが止まる、そのタイミングで幼き雷光が動いた。

 

「ハァァァァァァァッ!!」

 

ソニックムーブを付与し、爆炎の中で炎をかき分け、息を吸おうとすればのどが瞬く間に焼けただれてしまうほどの灼熱の中を強引に突破する。バリアジャケットという局地的な環境でも活動が可能とされるほどの性能を持ち合わせているがためにできる荒業にエリオはさらに壁や天井を足場とする三次元的な機動を入り含め、侵入者に肉薄し、ストラーダを振り下ろす。

 

「ッ    

 

しかし、その槍の刃が相手に届くことはなく、金属音を打ち鳴らしながら拳で相殺される。ストラーダの槍を止めたのは、ガントレットのように武装された機械的な腕。さらに近づいたために見えるようになった青いボディスーツのような代物を着込み、光源の少ない薄暗い通路にも関わらず、怪しく黄色い瞳を輝かせる相手の姿にエリオが入り込んできたのが戦闘機人であることを断定する。だが奇襲自体は相手に見切られ失敗している。これ以上は反撃される危険もあるため、エリオは一度後退しようとする。

 

「PXシステム、発動ッ!!!」

 

「え      

 

目の前から聞こえてくる声に思わずエリオの表情が強張る。決して同じなわけではなかった。口調も声質もどこか荒々しい粗野なもの。だがそれでも、その声はどこかスバルを彷彿とさせるところがあった。そんな中途半端に似ている部分が余計にエリオを困惑と驚きで動きを止めさせる。

 

さらにそこからたたみかけるように目の前の相手の身体が青白く輝くと、その光を薄い膜のように全身を包みこむ。その瞬間、エリオの身体は突然膨れ上がったように増大した相手の力に押し負け、弾かれるように吹き飛ばされた。

 

「うわッ   

 

吹き飛ばされたことを知覚したエリオは爆炎に飲み込まれまいと姿勢を整えようとするが、それより先に自分の身体を抱きよせられるような感触に息を若干詰まらせ、空気を求めて少しもがく。

 

「ご、ごめんね?大分慌てていたからそこまで気が回んなかった。大丈夫?」

 

どうやら自分を抱えてくれたのはギンガだったようだ。彼女の胸に頭をうずめさせられるような形だったとはいえ、助けてくれたのは事実だったため、ティアナたちのいるところまで連れてこられるとわずかながらに顔を紅潮させながらお礼を言ってすぐに離れた。

 

「き、気をつけてください………………!!敵はなんらかの増幅機構を備えています!!」

 

エリオの警告に全員の目線は暗闇の中でも鮮やかに輝く青白い光を目にする。その光のおかげかどうかでは定かではないが、敵の姿かたちがはっきりと見えてくる。一人は大きな盾を構えた濃いピンクの髪を後ろにまとめた少女。一見防御型にも見えるが、彼女が見せる不敵な笑みに何をしてくるかわからない得体の知れなさを感じる。その隣には片目を失っているのか黒い眼帯で覆った銀髪の少女。年甲斐にも似合わず、落ち着き払い、冷徹とも見える冷えた瞳でこちらをじっと見据えるその様子はどこかヒイロを思い出させる佇まいだ。

そしてその真ん中で青白い輝きを身に纏う赤毛のショートの少女。足はローラースケート、手には何も持たず徒手空拳を得意としているのか、右手にガントレットを装着しているその姿はさながらスバルをいろいろと反転させたような姿だった。

 

「まぁ……………………ああいうオーラみたいの纏っているのはお約束みたいなものね…………………みんな、気を付けて。」

 

エリオの報告にそう返すティアナだが、意識自体は青白く輝いているスバルによく似た戦闘機人に向けられていた。

 

(まさかとは思うけど……………スバルやギンガさんと姉妹機ってわけじゃないでしょうね……………………?)

 

スバルとギンガが戦闘機人であることを知っているティアナだが、ちゃんとした知識としてそれがあるわけではない。調べてもまともに出てはこないし、こうして機動六課に入ってようやく知れると思えば、凶悪指名手配犯が所有する技術だというのだ。知れる機会がなくて当然のことである。もっともティアナは技術畑の出身ではないので、そもそもとして一割すら理解することもかなわないと思うが。

 

 

 

 

 

 

「ッ……………………ヒイロ    !!!」

 

ハイドラガンダムの頭部のビーム砲の直撃を顔面に受けたヒイロは上半身を大きくのけぞらせながら弾き飛ばされる。装甲が事実上皆無のヒイロにアインスが施した『パンツァーガイスト』はアインス自身の魔力量と負担を考えて、必要最小限、風圧を避けられる程度の防壁としての体裁をギリギリまで保てるかどうかの極限まで減らしているため、その防御力もほぼほぼないに等しい。

いくら頑丈なヒイロとはいえ、ビームの前ではあまりにも非力だ。アインスの脳裏にヒイロの死がまざまざと想起する中、彼女はその可能性を認めないかのように悲痛な叫び声をあげる。

 

     耳元で喚くな。耳障りだ。」

 

その叫びにヒイロは煩わしいと感じたのか、表情を不快感を示すように眉を逆ハの字にすると、ウイングバインダーの主翼をはばたかせると何事もなかったかのように態勢を整える。そのビームをまともに食らったとは思えない、ケガも見当たらないピンピンとした様子にアインスは空いた口がふさがらないといった様子で茫然とするしかなかった。

 

「え……………だって、ビーム…………直撃していただろ?」

 

「確かに驚きはしたが………………説明するのも面倒だからサーベルで弾いたとだけ言っておく。」

 

口をパクパクさせるアインスにぶっきらぼうにそれだけ伝えると再びヒイロはビームサーベルを構えなおし、再びハイドラガンダムに肉薄を始める。隠し腕ともとれる頭部ビーム砲の種が割れた以上、ハイドラガンダムに接近するヒイロをけん制できるような武装は残されていない。だが、そこはモビルドールの利点がでたのか、特に人間らしく狼狽するような様子は微塵も見せずに薙刀形態にかえたビームサーベルを分割するとそれをウイングゼロのビームサーベルと打ち合わせ、白い稲光をまき散らす。

 

「高町のディバインバスターの時とは訳が違うんだぞ………………超えていい壁といけない壁があるだろう………………!!」

 

ヒイロのとんでもっぷりにアインスはため息を吐くが、その表情はヒイロが無事だったことに対する安堵なのか、ほっとしたような安心したものであった。

 

「これで奴の手の内をほとんど明かせたか。」

 

そう呟くとヒイロはハイドラガンダムに向けて肉薄を始める。射撃武器をことごとく破壊、もしくは攻略されたハイドラガンダムはその振られる刃をビームサーベルで捌く。モビルドールならではの利点で確殺のタイミングを防がれたことに機械らしく動揺を見せることはなかったが、ハイドラガンダムはそこからさらに機械らしく、接近戦を仕掛けてきたヒイロに対し、再び頭部を回転させ、モノアイの一つ目頭の口からビームを放とうとする。

 

「……………なめられたものだな」

 

その様子をヒイロは冷えた表情で冷淡に言葉を零すと、ウイングバインダーの片翼でヒイロの身体を覆う。構わずハイドラガンダムは口のビーム砲を発射するが、大気圏突入時の摩擦熱にも耐えうるウイングバインダーの装甲にはわずかに黒ずんだ痕を残すだけに留められる。

 

「同じ武装がそう何度も通用するほど、俺たちは甘くはない」

 

そう言い放つと同時にウイングバインダーを払いのけるように振り払いながら、ヒイロはバインダーの影に潜ませていた左手を突き出し、手にしていたビームサーベルをハイドラガンダムの頭部にその刃を突き立てる。

 

「終わりだ」

 

そしてそのまま突き立てたサーベルを思い切り引き摺り下ろすように下に向けて振り下ろす。装甲を抉り取るようにハイドラガンダムを真っ二つにしたヒイロはすぐさま後退。その瞬間、ハイドラガンダムが爆発し、空に巨大な光円を最後に遺し

完全に消滅した。

 

「こちらヒイロ・ユイ。ハイドラの撃破を確認。直ちに次のターゲットを選定する。」

 

事務的とも言える淡々とした報告をロングアーチに向けるとすぐに通信を切り、次のターゲットに目標を移す。

そのためヒイロの耳に聞こえることはなかったが、ヒイロが通信を切ったそのあとに懸念材料であったハイドラが撃破されたことにヒイロにはそのつもりがなくとも、ロングアーチ含めその海域にいる機動六課の隊員全員が奮い立つ。

 

「次はどうするつもりだ?」

 

アインスの問いかけにヒイロは軽く周囲を見渡す。

 

「……………敵の頭を抑える。」

 

「頭?」

 

ヒイロの言葉にアインスは首を傾げる。そのように言った理由はヒイロの中では六課隊舎を襲撃してきたモビルスーツを含めたガジェット群をスカリエッティのアジトにあると考えている制御ユニットでは限界があると考えていた。ただでさえ隊舎に送られてきた数が多いのに、そこにさらに地上本部へと襲撃の制御をしているとなれば、かなり負担も大きいはずだ。

そこで考えられるのはこちら側と地上本部への戦力にガジェットの操作権を持った存在を配備するのが一番手っ取り早い手法だ。

それがスカリエッティの陣営でできるのは戦闘機人だろうとヒイロは同時に踏んでいた。それ故にヒイロは次のターゲットをガジェットの制御をしている戦闘機人にするつもりだった。

 

しかし    

 

「ッ…………!?」

 

上空に濃い紫色の、毒々しいとも言えるような巨大な魔法陣が浮かび上がる。突然の状況にたまらずヒイロは足を止め、周囲を警戒しながらも魔法陣の様子を伺う。

 

「アインス、あの魔法陣はなんだ…………?砲撃か?」

 

「今私の方でもあの魔法陣の性質を調べてる……………!!馬鹿な、あの魔力保有量で召喚魔法!?」

 

魔力についてヒイロは専らアインスに一任している。しかし、アインスの様子と見るからに異常な状況にヒイロは両翼のバインダーからバスターライフルを取り出すとそれらを連結させ、ツインバスターライフルの状態で魔法陣を注視する。

 

「まさか…………究極召喚!?気をつけろ、ヒイロ!!あれから出てくるのは第一種希少個体、文字通りのバケモノだ!!」

 

魔法陣から白亜の巨体が現れる。まず第一印象は西洋の神話に出てくるようなドラゴン。しかし、獣のように四足ではなく、威厳すら感じさせるように前足で憮然としているように腕を組み、人型に近いフォルムをしていることから、おそらくは二足歩行が可能なのだろう。

 

呼称個体『白天王』

 

ルーテシア・アルピーノの持つ最後の切り札とも呼べる古のドラゴンが傷だらけの天使をその双眸に捉えた。

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