アナザータイム2008   作:ウェットル

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改訂部分:あとがきに書いた兵藤一誠の地の文

 本文に送りました。


変・態・上・等

「仮面ライダー、フォーゼ」

 

 ボクは胸を二回鳴らしてから、右の拳を堕天使レイナーレに突きつける。

 

「タイマン。はらせてもらう、ぜ・・・・・・!」

 

 ライダーロケットパンチ。

 本物の【仮面ライダーフォーゼ】が使用した必殺技のひとつで、少なくともライダーロケットドリルキックよりも殺傷力はないであろう、さらに単なる飛び蹴りのライダードリルキックよりも殺傷力が低いはずの、最も一誠からレイナーレを引き剥がせる技だ。

 この技がベストだと思って使ってみた。思った通りに効果があってよかった。

 ・・・・・・えっ、ジャンピング頭突きがあるだろうって?

 威力が低くて空中移動できる技なら、そっちのほうが使いやすいんじゃないかって?

 アナザーフォーゼにブースターが使えるのかはわからないし、そもそも背中にブースターがないし、ブースター単体では飛距離が足りないだろうから使いませんでした。

 

 ジャングルジムまで殴りながら運び、ジャングルジムの鉄筋で網にかかった魚のようにレイナーレの肢体を絡み取らせ、動きを封じる。

 かつ、一誠とレイナーレとの間にある距離を離し、一誠への不意打ちをされても対応できるように一誠の前に立ち、ついでに一誠にアナザーフォーゼの面構えを把握させないまま勝負をつける。かんぺきなあいであだ。

 

 ここまで徹底的にやれば、なんかちょっとかっこいいモンスターが助けてくれた程度の認識に収まって、レイナーレを一方的にボッコボコにすることができてしまったとしても「モンスターだからしょうがないね」で誤魔化せるはず。

 そう思ってたんだけどな。

 

「仮面ライダーフォーゼ、ですって?」

 

 肝心の至高の堕天使様がジャングルジムの網から脱出できている。

 いや、そもそもアナザーフォーゼの、偽物とはいえカタログスペックで低ランクの仮面ライダーながらも五メートルの隕石を粉砕できるはずの【仮面ライダーフォーゼ】のパンチを真正面から受けて、なんで平気で立っていられるのでしょうかね。

 宇宙空間での隕石というのは、ただ空中にぽつんと浮いているのではなく、惑星の公転に追従する隕石であれば公転について行けるほどの超高速で「飛んでいる」と表現するのが正しい存在だ。空を飛ぶダンプカー、宇宙飛行士にとっての転生トラックのようなもの。

 小さくっても弾丸や砲弾並みの威力がある。それが隕石だ。

 

 

 つまり、当たれば死ぬ。

 

 

 そんなものが五メートル前後の大きさもあれば、運動エネルギーは尋常ではないパワーを秘めている状態。カタログスペック上はともかく、隕石の宇宙パワー(物理)を真正面から殴り返して粉砕できる時点で、【仮面ライダーフォーゼ】のパワーは頭がおかしいレベルのはずなのだ。

 一誠とボク自身の精神衛生を考えて、あえてスプラッターな殺害現場にはならないように、かろうじて小動物の交通事故くらいの認識に収まるような方法としてライダーロケットパンチを選んだ・・・・・・はず、なのだ。

 ないぞうがでちゃったばあいはごめんなさいするつもりでした。

 

 もちろん、今のような状態で立ち上がってくる可能性を想定していなかったわけじゃない。至高の堕天使様に「来世に期待してワンチャンダイブ(拳)」をかましたとしても、意外と平然とした顔で立ち上がってくる可能性は原作にも相応に示されている。

 一誠が持つであろう神器、不思議アイテムの【赤龍帝の籠手】は使い手のパワーを倍々ゲームで強化していくと同時に、そんなパワーを誰かに叩き込んだら自分の手足が粉砕されそうなのに肩すら故障しないことから「肉体の耐久“力”」をも引き上げている可能性のある代物だ。

 デメリットのないパワーアップだなんて、スポーツ選手だったら絶対欲しがるだろう、そんな神器は。下位互換の【龍の手】でも十分すぎる。正統派トレーニングの積み重ねありきでの繊細な技巧も何もないドーピングだけど、どちらも超能力ありのスポーツだったら絶対無視されない貴重な戦力になりうる神器だ。

 

 とにかく、倍々ゲームじみた肉体強化から放たれた一誠のテレフォンパンチ。

 単純に計算、予測するとどうなりうるのか?

 

 肉体が故障するレベルでの全力を出せないのが人間の肉体なら、それすら超越しうるのが【赤龍帝の籠手】と【龍の手】の能力、”倍加”だ。

 前者は倍加できる回数に制限こそ設けられることはあるが、その制限がある間でさえも四回以上の強化が可能である。ようするに、自分の肉体を故障しかねないパンチを最初の二倍で放てて、以降の倍加は「人間の腕X本を壊せるほどのエネルギー」がたまり続けるわけだ。それを四回もやれば、単純計算で人間の腕が六本ほど粉砕できる。

 その故障加減が関節部分のみなのか、あるいは骨を骨折するほどなのかは別としても、最低で関節部分のみと解釈しても腕六本分の粉砕力は、間違いなく腕の骨を折る。

 

 もう自動車事故とかそういうレベルじゃない。たった四回の時点でだ!

 

 あと一回追加すれば破壊できる腕は十二本となり、そんなものを分散してまんべんなく全身に叩き込めれば人間の人肉ハンバーグのできあがりだ。

 そんなものを真正面から食らっておいて、回復手段の有無を別としても立ち上がれるのが至高の堕天使レイナーレ様なのである。

 すごいぞボクらのレイナーレ様。ホントは凄いぞレイナーレ様。

 フォーゼの隕石粉砕パンチを受けて平気なのも、これで納得いただけただろうか?

 

 ・・・・・・もちろん、ボクが初めてアナザーフォーゼの力を使ったこともある。

 思っていた以上に威力を出せなかっただけなのかも知れない。原作でも一誠の人肉粉砕パンチを受けた後は、どの段階でも先ず回復手段を使っておきダメージを帳消しにしていたのだから、きっと自分のライダーロケットパンチが温すぎたのだろう。

 それはそれとしても、耐久力はともかく。

 

「仮面ライダー、ねぇ? どこかで聞いたような、聞いてないような。

 ・・・・・・どっちでもいいわね、UMAであることには変わりないんでしょう?」

 

 ぶちぶちっ、と、何かが裂ける音とともに、そのレイナーレ様が立ち上がりつつあるわけなのですが。こちらの隕石粉砕パンチを受けても平然としているわけなのですが。

 

 どうして、ジャングルジムの鉄筋を引きちぎれるんですかね?

 

「うげぇっ! 夕麻ちゃん、細マッチョ的なアレだったりすんの!?」

 

 一誠が後ずさるような音を鳴らす。公園だと、やはり砂利の音が動きをわかりやすくしてくれるからか、いちいち振り返らなくって済む。特撮で採石場が戦う場所に選ばれる理由も、単純に特撮のための爆発物取扱の問題だけじゃなくって、顔を覆うマスクで周りが見えなくなっても気配で演技できるためだったりするんだろうか?

 一誠の声に眉をひそめるレイナーレは、心底嫌そうな表情で光の槍を構えた。

 

「うるさいわね、そんなわけないでしょう?

 これだから人間っていうのは。まあ確かに、私もびっくりしたけれども」

 

 いやキミもびっくりしてたんかーい。

 とりあえず、聞くだけ聞いてみようか。

 

「・・・・・・お前、どうやって、強くなった?」

 

「【龍の手】。貰い物だけど、やっぱり使い勝手はイイわね」

 

 ぷらぷらとレイナーレは右手を振る。

 そこには彼女が持っているはずもない、いいや、奪っていたとしても使ってはいなかったはずの籠手の形をした武器があった。

 

「なぁんて言っても、坊やとゴリラのUMA風情じゃわからないわよね?」

 

 なるほど、だいたいわかった。

 この【ハイスクールD×Dの世界】でのレイナーレは、物語序盤で殺されていた四人の神器使いから抜き取った神器を積極的に使っていくスタンスだったらしい。

 奪われた神器はパワーダウンするものと聞いていたが、一周まわって元の能力が単純すぎると、ひょっとしたら全く使えなくなるということが珍しいのかもしれない。

 どこかの英雄志望の誰かさんが、他の誰かさんの神器から目となる義眼を借り受け、「石化させる能力」を劣化させきることもなく使いこなせたのと同じ理屈だろうか?

 

 おそらく、ライダーロケットパンチを真正面から受ける瞬間、その一瞬で【龍の手】の能力で自らの耐久力を倍加したのだ。

 一誠の交通事故パンチを受けても立っていられるだけの耐久力ある肢体を倍加でパワーアップさせれば、あの回復手段に頼る必要のない肉盾(自分自身)の完成ということか。

 そう考えると、一誠の神器はどこぞの連続殺人犯が使いこなせそうな類の能力な気がする。倍加と別の能力を同時に使って、適当な通りすがりの一般人(異種族)を使ってのガードベント。耐久力は異種族のもともとの倍、再生能力持ちなら回復力も倍加されて実質四倍。

 うん、ベストマッチなのではなかろうか。

 

 ・・・・・・あれ、この至高の堕天使(笑)様、ガチで至高の堕天使なのでは?

 

「でも、さすがにちょっと分が悪いわね。

 今ので倍加を使い切っちゃったし、チャージし直すにも時間はかかる。

 そこのゴリラの腕力も未知数、坊やに至っては何の神器かもわからないまま・・・・・・」

 

 唇に人差し指の先を当てながら、レイナーレはこちらを見定める。

 まずい、思ったより・・・・・・レイナーレが神器の扱いに関して頭がよすぎる。

 もし【龍の手】以外の神器も持ち歩いていたなら、どんな攻撃手段と組み合わせてくるのかが想像もつかない。堕天使が製造したという人工神器ならば、その能力を使ったり身体から取り除いたりするだけでも体力を失ってしまうデメリットが有るのだが。

 普通の神器であれば、そんなデメリットがついて回ることもない。

 神器の数だけ打ち手が増えるね、では死ね(ギベ)、がアイサツとして成立しうるのではないか。

 

「・・・・・・まあ、しょうがないのかしら。

 時間と場所、あと人員を改めるしかなさそうね」

 

 そう考えていたわりには、実際の彼女の諦めは早かったらしい。

 あんまり暴れると、駒王町の人外や超人たちに気づかれるからなのだろうか?

 

「憶えてなさいよ、仮面ライダーフォーゼ。

 あなたのいないタイミングでも見計らって、そいつを殺させてもらうわ」

 

 レイナーレは黒い翼を伸ばし、一瞬で空高くまで舞い上がると、夜闇に消えていく。

 いつの間にか、時間は夕方の黄昏時を極め、そのまま夜へと移り変わりつつあったらしい。

 これは、助かったと解釈していいのか。原作以上に厄介な敵が現れたと、頭を抱えるべきなのか。原作通りに馬鹿笑いをする残念っぷりは健在で、思ったより正面突破しやすいだけの隙は残ってそうだと気を緩めるべきなのか。

 

 

 

 どちらにせよ、やはり。

 ”神様”の計画と何かしらの関係はあるのだろうか?

 

 

 

「な、なあ、お前、フォーゼ・・・・・・だっけ?」

 

 振り返ると、一誠が腰を引かせながら立ち上がり始める。

 

「なんで、俺を助けたんだ?」

 

 今の言葉を聞いて、ほんのすこし肩の力が抜ける。

 体裁はともあれ、原作のヒーロー様からそんなことを訊ねられるとは思わなんだ。

 むしろ、そういう理由であれば、彼のほうが一番よく知っているはずなのに。

 

「・・・・・・右手、出せ」

 

「えっ? お、おう?」

 

 まずは一誠と普通に握手。それを一度握り直す。

 

「お、おお?」

 

 すかさず手を離して、握手で丸まった一誠の拳骨に拳を当てる。

 

「おおっ?」

 

 そこから、一誠の手をハンマーのように下から拳で浮かせて、振り抜き、上から拳を降ろす。スイッチを上げ下げする感じを意識して、トントンと。

 

「おおぉ・・・・・・??」

 

 キョトンとした目で見つめる一誠に、わかりやすくサムズアップ。

 

「・・・・・・これで、友達。友達、助けるのに、理由がいるカ?」

 

 さすがに学校の覗きは助けない理由があるけれど、こういうところにまでセクハラの件を持ち出して助けないなんて、それこそ人間をやめているとしか言えない。

 クラスメイトが目の前にいるなら、無理でも助けたいと思うのが良心。

 心の泉が涙なら、良心の痛みからでる涙だって心の泉だ。それを馬鹿にしてしまっては、いつか誰かの優しい気持ちも理解できなくなってしまう。

 そんな歳のとり方は、嫌だなと思い続けていたものだ。前世でも、もちろん今も。

 

 そう、助けない理由はあるけれど、助ける理由はない。

 なぜなら、助けたい気持ちが理由だから。そういうことなのだ。

 

「友達・・・・・・」

 

 なんか熱帯雨林で野性的な生活を営んでいた怪人みたいな声色で呟いて、そのまま拳をじっと見つめている一誠。どうしたんだろうか、ぼっちではないだろうに。

 それとも、どこかの魔剣使いみたいに・・・・・・やめよう、いくらなんでもありえない。

 

「それじゃあ、アバヨ」

 

 とりあえず片言っぽい喋り方をそのままに、イメージを崩さないまま逃げさせてもらおう。さすがに悪魔とか世紀末魔法少女とかに捕まるのはゴメンだ。

 

Jayro(ジャイロ) ON】

 

 ベルトのスイッチを押し、左腕にジャイロモジュールを生み出して起動する。

 音だけならヘリコプターの飛ぶ音や、ラジコンヘリコプターの飛ぶ音に似ていなくもないジャイロモジュールのプロペラの回転音。夜闇に紛れるにはちょうどいいはずだ。

 着地するときは、右足のステルスモジュールで姿を消しておこうか。五秒しかもたない代物だから、こういうときには全く使いにくいのが難点なんだよね。

 

「お、おい、待ってくれよ!」

 

 一誠が駆け寄って、大声を上げる。

 

 

 

 

「また会えるよな、フォーゼ!」

 

 

 

 

 ・・・・・・ちょっと嬉しいな、偽物だけど。

 軽く右手を振りながら、一誠の声に答える。

 借り物の力でも、やればいけるもんだ。このまま頑張っていこう。

 

 

 

 

 

 

 アナザーライダーの原作描写からして、この力は”八年間”しか使えないんだ。

 原作がいつ終わるのか知らないけれど、知ってる話が終わるまでなら十分すぎるほどの猶予期間。できるだけ、友達のことは守ってあげたい。

 この、【仮面ライダーフォーゼ】の力で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへっ、友達か・・・・・・!」

 

 満月の影になりながら、遠くへと消えていくフォーゼ。

 あいつの拳はデカかったし、握手する時に見たツラも怖めだし、図体もやっぱりゴリラみたいでインパクトが凄いけど、悪いやつじゃなさそうだ。

 ゴリラって言えば、人間と同じくらいの心を持ってる動物らしいし。

 案外、あいつは見た目ほどのバケモノってわけじゃないのかもしれない。

 

「バケモノってのも、見た目だけじゃねーんだな!」

 

 バケモノ加減で言えば、フォーゼよりも夕麻ちゃんのほうが”らしかった”のは凄いショックだったな。フラれたっつーか、殺されかけたのが一番ショックだけど。

 見た目だけなら、黒い羽のエロ天使さまって感じで最高なんだけどな。おっぱいもでかいし、美人だし、なんかあの冷たい目つきもゾクゾクきてたまらねぇし!

 でも、あのつやつやした肌色の中身はフォーゼ並みのマッチョなんだろうなぁ。

 

 ゴリラ系悪女天使さまかぁ・・・・・・ありだな! 男がたたない気がするけど!

 

 そういや夕麻ちゃん、なんでフォーゼの方を見て「ユウマ」って言ったんだ?

 夕麻ちゃんの名前なんだし、同じ名前なら名字の方を呼ぶはずだし・・・・・・そもそも、フォーゼの名前はフォーゼだよな? 「ユウマ」ってなんなんだ?

 

 うーん、同音異義語ってやつ? 日本語は難しいでありますな。

 俺、日本人のはずなんだけどね・・・・・・なんか悲しくなってくるな。

 やめたやめた、俺らしくねぇ! 考えるのはやめよう!

 

 今日はもう、いろいろありすぎたもんな!

 告白されたの嬉しかったとか、デートしたとかフラれたとか殺されかけたとか、公園がめちゃくちゃになったとか、フォーゼと友達になったとかフォーゼが腕からプロペラ生やして飛んでったとか!

 

 俺の頭ん中はいっぱいすぎて、エロ成分が足りないんだ!

 カルシウムを取らなかったら骨がすかすかになるのと同じくらいの大ピンチ!

 エロパーティしないと物足りねぇぜ! 相棒は当然、”右手”だぁ!!

 

「うっし、参考書(エロ本)でも読んで寝るか!

 美少女とデートできたってだけでも御馳走様だしな!」

 

 

 

 

 

「そうか、お前はそういうヤツだったよな」

 

 

 

 

 誰の声だ?

 

 今日って満月だよな、なんか暗くなってきてないか?

 

 ちがう アツい    雲?  ねむい?

 

 

 

 

 

 おれ  はら  ひかってる  つめ?

 

 

 

 

 ねるまえ えろいこと しなき   たりな おっぱ   いい

 

 

 

 あかいな    あかい  あかい  おんなのこ

 

 

 

 

 

 

 

 ちく   しょ

 

 

 

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