「やっほー!
一誠くん、松田くん、元浜くん。
大富豪やろうぜ、大富豪。効果カード全部ありで!」
「あ、あの~、どの彼が兵藤くんなのかな?」
「・・・・・・僕の名前は木場裕斗。グレモリー先輩からのお願い事でね、兵藤一誠くんを連れてくるように言われているんだ。キミたちのうちの誰かだとは思うんだけど・・・・・・」
『【仮面ライダー】というものを、軽く見すぎていた』
旧校舎のどこかにある部室。
シェルターとしての機能も充実しつつあるオカルト研究部では、三人の少女が椅子に座って同じケーキを食器で突いていた。
・・・・・・この場合のシェルターとは、防御力あるものだけを指すものではない。
有事の際の生き残りを前提に考えた、生命維持に長けた建築物を指す。
日常的な生活スタイルを狂わせることなく、正気を保つ。これは後の彼ら彼女らの物語に置いて、非常に重要な機能を果たしたと言っていい。
きっと彼女たちであれば、外宇宙的な恐怖にさえ立ち向かえうるだろう。
だからこそなのか。
明らかにありえなかった未知なるUMA、【仮面ライダー】との遭遇を果たした”兵藤一誠”、その兵藤一誠を襲った堕天使らしき少女。
裏の事情を知るものであれば混乱をきたしうる情報、それらの乱立すら可愛げのあるものへと変わる、さらなる謎の解明を始めていた。
「どういうわけか、彼・・・・・・月隠朔郎くんだったかしら。
【“一誠くんの彼女”の記憶】が残っているのよ。噂話でしか聞いてないと言ってはいたけれども、それでも記憶を処理されていないというのは気になるわ」
「あらあら、それは面白いですわね。
部長、その時の細かい話、思い出せます?」
部長と呼ばれた紅髪の少女に、ポニーテイルの少女が問いかける。
「ええ、確か、――――」
誰が堕天使の協力者なのか。
学園内部の生徒や教師、用務員であるならば堕天使ではなかろう、しかしスパイが誰かも分からない状況にある今、最も怪しい人物とは「堕天使に狙われるほどの神器を持った少年」ではもちろんない。
実は堕天使勢力の内部で分裂・抗争が起こっているかもしれない、彼はその被害者かもしれない・・・・・・とも憶測を並べることもできるだろうが、それよりも怪しい人物が現れたのだから致し方がない。
これはいわば、凡ミスをやらかした「ある学生」の自業自得でもある。
兵藤一誠に彼女が出来た、それを覚えている”人間”はいないはずなのだから。
あるUMAの正体でもある月隠朔郎が、そうであるとも知られぬままに堕天使との関与を疑われてしまうのは致し方のないことだった。
「――――、っていう内容だったわね。
一誠くんの友達なら、堕天使が記憶を処理しないわけはないわ。
だからこそ、今みたいに覚えていることのほうがおかしい。彼に記憶改竄に対して耐性があるのかとか、あるならあるでどうやって防いでいるのかとか、堕天使と関わっているかどうかとか・・・・・・調べるだけ調べておきたいのよ。
そのためにも、初めはあえて記憶操作のために接触をするべきだと思うわ」
「なるほど、それは納得ができますわ。ところで部長?
もしもの話ですが、彼が単純に、記憶を処理され忘れていただけの場合はどうなさいますの?」
「えっ? そんなの、あり得るはずはないと思うけれど。
そうね、それはもちろん、記憶を消して誤魔化すわね。
悪魔や堕天使、記憶操作。そういった説明も忘れてもらって、今までどおりの学校生活を送ってもらいたいから・・・・・・この部室での記憶を消して、裏の社会から離すのよ」
「なるほど、それなら話は早いですわね。
当然、反対ですわ。うまくいきはしないでしょうし」
「朱乃?! そ、それは、どうしてなのかしら?」
「『兵藤くんの彼女の記憶』をさっぱり消すと、それはそれで『兵藤くんの彼女について話した瞬間の記憶』までなくなって、結果的に違和感を覚えるかもしれませんわよ?
具体的には、そう。部長と話した、『校門の前での出来事』を忘れて、あの騒ぎの中から『どうやって校門をくぐっていったのか』を思い出せなくなるとか。
ひょっとしたら、騒ぎがあったこと自体をさっぱり忘れてしまうかもしれませんわよ?
そんな時、同じ騒ぎの中で登校した生徒が、部長について話を始めたら?
きっと、すぐに違和感を覚えますわよ。
自分はどうやってその騒ぎの中を登校したんだろう? そこを思い出せたとして、自分はどうして、兵藤くんと部長が登校している時に話しかけたんだろう?
あの二人が彼氏彼女の関係だなんて、どうして勘違いしたんだろう・・・・・・そもそも、なんの話をしたんだろう・・・・・・なんて、ね?」
あっ、と、紅髪の少女――リアス・グレモリーは気がつく。
記憶改竄を行う上で大事なのは、元の記憶そのものをまるごと上書きすることで、消された時間に本当は何をしていたのかを思い出せなくさせてしまうこと。偽りの、思い出させる記憶を作ることだ。
本当になにもかもなかったことにしてしまえば、改竄した側の把握していない何らかの物事を、改竄された側が思い出すために記憶から掘り起こそうとした際に、決定的かつ致命的な記憶の矛盾に気がついてしまう原因になりうる。
たとえば、学内での休み時間に誰かが友達と何かを話していて、その最中に兵藤一誠は隣でエロ本を広げ始めたとする。そのタイミングで誰かのグループが兵藤一誠への嫌悪感を抱いたとして、そこで話題が本来の話題とは異なる内容を話し始めてしまえば、本来の話題は途中で遮られたまま終わってしまう、兵藤一誠をきっかけとした別の会話が始まるわけだ。
もしもこの翌日に、「昨日この話をしたよね」とグループの誰かが口にしたとしよう、そのグループの全員が記憶を処理され、兵藤一誠に関する記憶をなくしているとする。
ここで確かに「昨日はここまで話した」という記憶が残っていて、かつ「何を理由に話を打ち切ったのか」を思い出せれば、そこで大きな違和感を抱くことはない。
しかし、もしもグループ全員に記憶改竄を施したとして、よりにもよって「昨日の兵藤一誠に関する記憶」を消してしまっていた場合。
そのグループ全員が、「何を理由に話を打ち切ったのか」を思い出せなくなり、ここで全員が「どうしてそれを憶えていないのか?」と違和感を抱くようになってしまう。
そうなってしまえば、自分たち裏社会の存在が潜んでいる可能性を悟られてしまい、芋づる式に調べ上げられて悪魔の証明を実現させられてしまいうる。
それだけはいけないのだ。だからこそ、記憶改竄を施すならば、偽りの、代わりとなる記憶を植え付け、誤魔化しきらなくてはならないわけだ。
「そもそも『兵藤くんの彼女の記憶』ありきの会話ばかりをリアスと話してしまっていますし、そのあたりまで帳尻を合わせた記憶の改竄ができる技量の持ち主となると・・・・・・たとえ騒ぎの中を掻い潜って登校した、という記憶だけをいじるにしても、騒ぎが騒ぎですもの、駒王学園に所属する悪魔や悪魔関係者ではできる者がおりませんわ。
それこそ、堕天使のエージェントでもない限りは難しい話。むしろ・・・・・・」
原作で言うところの、「大量の兵藤一誠が現れた」という記憶改竄の失敗例と同じだ。誤魔化す記憶の帳尻を合わせきれなくなれば、いくら埋めても消しても解決できない。
かの堕天使総督でさえ、どんなに頑張っても記憶改竄しきれない限界というものがある。逆に言えば、その限界に至るまでであれば改竄できる領分と言える。
今回のケースは同じ人間が大量発生したわけではない。まだ現実的に、ある程度は「兵藤一誠やリアス・グレモリーと話した」という事実を無理に変えて、他の生徒に話題にされてしまいでもすれば破綻するような真似をするまでもない。そのためだけに、生徒全員の記憶を操作する必要さえもない。
ある程度の論拠となるものさえあれば、ぎりぎり修正は可能な範囲だ。
問題は、その論拠をもって筋書きを描けるだけの改竄の腕前を持ったプロが学園にはいないということ。もうプロに依頼する以外の方法で解決ができない事態になっていたということだ。
となると、ここまで問題を複雑化させた原因はひとつしかない。
「そうですわね。
”リアスが長く話していれば”、記憶改竄はしやすかったのではありません?」
「わっ、私のせいだって言うの!?」
「あらあら、確かにそう聞こえますわね?
わざわざ兵藤くんとリアスが並んで登校して、兵藤くんの彼女かもしれないリアスが兵藤くんの彼女かどうかを確認するために話しかけてきた。
そういう動機ありきの会話から始まった以上、そこを改竄できるだけの会話内容を事前に用意するだけの算段もなかった辺り、無策で兵藤くんと一緒に登校してしまったリアスの確かな落ち度・・・・・・かも、しれませんわねぇ?」
笑みが過ごしずつ嘲笑や怒りを帯びたものに変えつつあるポニーテイルの少女、姫島朱乃は困惑しているリアス・グレモリーへと、細めたまぶたの奥底にある目を向ける。
「うふふ、改竄をしようにも、リアス。
あなたは『仮面ライダーなる未確認生命体を知らないか』と訊ねておしまいにして、そのままウキウキと楽しそうに下級生と一緒に置いてけぼりにしたのでしょう?
改竄したくとも改竄をするためのもととなる会話が少ない状態で、どうやって会話内容を別のものだったと誤魔化して『兵藤くんの彼女』に関する記憶を消して『兵藤くんの彼女』に関する会話をする目的で近づいたというきっかけさえも変えられるというのかしら。
リアスが兵藤くんの彼女になったかも知れないという先入観をどうやって好意的に抱くのでしょう、先輩と後輩の関係で、ただでさえ他の子達がそう思い込みかけても自分で否定したがるような状況だったというのに?
そういった話は先に知っていたからこそ、あるいは心の底から兵藤くんの幸せを望んでいたからこそ、驚愕に慄くことなく話しかけられるものなのですわ。
記憶しか弄れない我々の魔法で、どうやってその気持ちがある前提で記憶を弄れるのかしら。心を操ることなんて、悪魔にも天使にも、堕天使にもできないというのに・・・・・・?」
「う、ううっ」
「つまるところ、リアス。
これ、やっぱりもう完全にあなたの凡ミスなのではありませんの?」
「ううぅ~っ!」
リアス・グレモリー、痛恨のミス。
もっとも相手方の月隠朔郎も未だに自分の凡ミスに気がついていないので、お愛顧ではあるものの、ここまで情報が入り乱れている中で即座に新しい情報を得るために腹芸をしろというのも無理があったのかもしれない。
「な、なにもそこまで言わなくったっていいじゃない!
あなただって、その、ひょっとしたらよ? 可哀想な子だけど、真面目に言うわ。
ひょっとしたら、堕天使に狙われるくらい凄い神器を持った後輩が眷属にできるかもしれないっていうビックチャンスなのよ? 【悪魔の駒】は使っちゃったけど、それでも兵士の駒が8個分、育て上げればライザーとの婚約だって破棄できるかもしれないわ!
もちろん駒何個分でも彼を見殺しになんてできないし、はぐれ悪魔にさせるわけにはいかないし、その、ひょっとしたら下手な悪魔貴族のお坊ちゃんよりも信用に足る男の子にまで成長してくれるかもしれないじゃない!
逆光源氏ってやつよ、駒8個ぶんの悪魔の眷属で後輩の男の子で!
こんなのどうやって期待しないで舞い上がるなっていうのよ!?」
「そこで裕斗くんを引き合いに出さない辺り、ちょっとどうかと思いますわよ」
「裕斗くんもアリだけど、横から突然のダークホースは予想外すぎるのよ!
だって、だって、イケメンで騎士でいろいろと受け入れてくれそうな後輩の男の子な裕斗くんでも、駒価値の総数で上回ってきた一誠くんの潜在能力と恋愛関係の一途さとか、なんか裏で変なこと考えているわけじゃないお馬鹿な弟くんって感じの気持ち悪すぎない男の子心とか!
そんなの土俵が違いすぎるわよ、一誠くんが私に近づきすぎてるのよ! 恩があるからって一歩引いてる感じじゃないし、そもそも後は誰が先に上級悪魔貴族になれるかどうかの徒競走じゃないっ、引き合いに出したくたって僅差があっても裕斗くんとほぼ同じ距離間のスタートラインに立ってるのよ、一誠くんのほうが!!
むしろ裕斗くんと同じレベルで私の心に食いついてこれていることのほうが凄いのよ! 引き合いに出さないんじゃないの、出しちゃうと方向性が違うから比較に困るの!」
「・・・・・・部長、さすがにちょっとキモいです」
「キモっ・・・・・・!?」
何気ないネコ妖怪の一言が、悪魔令嬢の心を傷つけた。
会話に今まで参加せず白いケーキに食らいついていた白髪の少女は、自分の食い意地を恥じることもなく、目の前のわかりやすい醜態に忠告をした、つもりのようだ。
見かけが華やかな紅色の白鳥とは言え、しかし乙女であることは確か。いや、むしろ「乙女になるまで恋をしたことがない」とすら言えるほどの、下手をすれば喪女一歩手前の女子高生だ。
知り合いが”種まき焼き鳥”と、”戦闘狂手前の親戚”といった異性ばかりの。
そんな彼女の逆光源氏計画とは、言ってしまえば「恋愛なんてしたことがない女の子の、まともな異性すら知らないお嬢様の非常に痛くて下卑た妄想」になりかねない(スクールカースト的な意味で)諸刃の剣。
素直に好きな相手には好きって言って、そのまま悪魔貴族らしく育つの待てばいいじゃん、回りくどいことして選り好みしている場合じゃなくない?
そういった答えがさすがに浮かびやすいのか、“姉”が“部長”と似たような発想をしやすい一方で積極的な行動力のある恋愛観を抱いていることを知っているからなのか。
残念ながら、このネコ妖怪には容赦がなかった。
忠告と書いて、その実は毒舌である。
(でも、ちょっと微笑ましいですわね、子猫ちゃん)
(・・・・・・そうですね、裕斗先輩への考え方はともかく、恋愛関係であそこまでテンパって正直に言えるくらいにはこう、普通の女の子らしくしている気はします。
やっぱり、キモいは言いすぎでしたか?)
(楽しかったので問題ありませんわ)
(うわぁ・・・・・・)
そして、この副部長も容赦がなかった。
などと二人が目配せしながら会話している間、当のリアスは「キモい・・・・・・子猫にキモいって言われた・・・・・・」と、どこか遠い目で部室の天井の溝であみだくじを始めていた。
現実逃避も過ぎれば危ない人である。
恋愛が関われば、男女問わず気分が浮かれるか、緊張しすぎて冷静を失うもの。
これまでの悪魔貴族の御子息から受けた印象はともかく、形はともあれ異性に関心を持ち始めた御令嬢にとって、初心な迷える乙女心にキモいの一言はきつかったようだ。
「・・・・・・とにかく、サクロー先輩の件はどうするんですか?」
「呼ばない、ということにするべきですわね。どうしますの、部長さん?」
「はっ・・・・・・!?」
朱乃に声をかけられ、ようやく天井の溝の世界から返ってきた。
軽く頭を振って、空想の世界独特の浮遊感を取り除くと、姿勢を変えて床を踏み直す。
「なによもう、せっかく面白い子の友達なのに・・・・・・。
本当にどうして、記憶処理を受けても憶えていたのかしらね?」
『単純に、リサーチの外にいただけだろう』
「・・・・・・ほほう?」
どことも知れない暗がりの中。駒王学園にあるはずもない場所。
ステンドグラスの虹色の輝きは”神様”と呼ばれる白い影を照らし、どこまでも暗い空間の奥底で”椅子”に座る声の主は、紫色の双眼を瞬かせていた。
『よく考えてもみたまえ。
彼は【兵藤一誠】の「友人」で、なおかつ隣のクラスの生徒だ。
兵藤一誠と関わりのある人間が「同じクラスにしかいない」と考えるのも、少々仕方のない抹殺対象だという点はあるだろうが、そもそもの兵藤一誠に告白し彼女になったという【天野夕麻】の話など相手が相手だ、本来は他のクラスや学年にまで噂が――――【天野夕麻】の存在が――――広がってもおかしくはない。
その可能性を考えれば、彼女が記憶処理を施すべき対象とは、少なくとも高等部二年のうちのひとクラスという程度では収まらないはずなのだよ』
「まあ、むしろなんでそーならねぇのよ? やっとかねぇのよ??
・・・・・・っつー話だよなぁ、アレは」
ちゃりん、ちゃりん、と声の主は手元の賞牌を弄ぶ。
「ちょいと展開に無理がある」
『もちろん、そのすべてに記憶処理を実行すれば。
シトリー家関係者の生徒会メンバーと顔を合わせてしまう危険性も生じる。
そのような内情を知らないにせよ、いち学年全体を記憶処理して回るのは無理がある。
仮に行うのであらば、彼女が実際に行うべき記憶処理は「兵藤一誠と同じクラスの生徒」と、複数のクラスを渡り歩く特異な学生に絞っておくのがベストであるはずだ。
しかし、月隠朔郎は一連の事態を憶えていた・・・・・・それは、なぜか?』
『なぜならば、至高の堕天使レイナーレは。
「兵藤一誠が学園内ではどう扱われる人物なのか?」「兵藤一誠の関係者が他のクラスにいるのか?」「複数のクラスを渡り歩く変人に、兵藤一誠の友人はいたのか?」を細かく調査していなかったからだ。
もとより兵藤一誠は何の部活にも所属していないからな、彼本人についてだけを書類上であれ表面上であれ調べたのであれば、それ以上の調査の必要はないと、そう解釈してしまうのも無理はない。
あのような馬鹿のたぐいの立ち回りなんぞ、実際に学園生活をしたことのある”人間”でもない限りは把握し切ることなど不可能だ。人間ではないレイナーレだからこその盲点というわけだ・・・・・・なかなかに興味深い』
「はっ、なにかと思えば、なんだよそれ?
しょーもねー理由で助かってんなぁ、おい?」
『そもそも、彼女が駒王学園とは別の学校の女子生徒を騙るほかないほど、あの学園には悪魔や悪魔関係者が多く在籍している。堕天使が紛れ込むには厳しい環境だ。
おそらくは彼女の慎重な調査姿勢が、結果として知るべき存在を把握しきれていなかったという事態に発展したのだよ。月隠朔郎の存在まで調査し切るには、いささか無理のある場所にレイナーレの抹殺対象は通っていた。
と、考えれば、今回のケースの真相もわかるだろう?』
『今回のケースの真相だ。
月隠朔郎、アナザーフォーゼ。
彼は、「記憶処理を受けて原作進行度を忘れ、退場するはずだった」のだが。
・・・・・・駒王学園という魔境のおかげで、彼はその未来を免れたのだよ』
「良くも悪くも、レイナーレの無能さに救われたってことか?」
『さあて、なあ?
少なくとも調査の手際までは最善手ではあったが、最高手ではない』
『しかし・・・・・・まったく、これだけは面白い。
片や貴様のような契約者が【
転生の神というものには、飽きが来ない!!!』
「神なんだか、道化なんだかな」
紫色の瞳を細めると、”椅子”の背もたれに深く寄りかかる。
声の主の視線は天井の宗教画に向けられていく。数多の天使や信仰者に見上げられ、讃えられ、仰がれる後光を放つ男の姿絵に。日本でそのような絵を描くことのできる場所など、相当な西洋かぶれの好事家か、相応の信仰心を抱くものの手によってでしか用意できない。
そう、場所という額縁にふさわしい絵。
この巨大な宗教画は、建築物や土地という額縁によってでしか飾ることはできない。
そこに、蝙蝠の羽根やカラスの羽根が描かれることなどない。トカゲの尾などなく、蛇を思わせる生き物など映りはしない。どこまでも額縁の中には、光の中に約束された虹色の世界だけが広がっている。
声の主は満足げに宗教画を見上げると、手元の賞牌を男の顔にかざす。
彼がかざす賞牌は丸く、姿絵の後光を覆い隠す。男の首は恐竜の首に変わり、一瞬にして数多の天使や信仰者たちの表情を別の姿へと作り変えた。
膝を折り祝福を乞い求める祈りは、恐怖をもって命を惜しむように。
天上の男を讃える天使は、這い上がった爬虫類に屈しているかのように。
これでこそだ、これでこそ、そうあるべき姿なのだ。
声の主の唇は動き、首を縦に振る。
「まあいい、兵藤一誠を直接殺す機会は残っている。
今日でも明日でも問題はないが、原作ではわざわざ無能姫が自転車の後ろに乗るなんて真似をやってるんだ、タイミングが悪ければ【滅びの魔力】と戦うこともありうるな。
しかも肝心の問題はチラシ配りをするルートだな・・・・・・帰り道を狙おうにも、やつの帰り道にはひと目の付く場所が多すぎる、やっぱりここは・・・・・・!」
頬が裂けるかのような、どこまでも深い笑みを顔に刻む声の主を”神様”は呆れるように肩をすくめる。
彼がどの賞牌を天井画の誰に被せていたのかは分からないが、そんなものは【ハイスクールD×Dの世界】において、もはやするまでもない現実でしかないのだから。
現実であるということは、彼にとっての【ハイスクールD×Dの世界】がどのようなものかはともかく、【ハイスクールD×Dの世界】にとっての【彼の世界】で連想した「あるもの」こそが虚構なのだ。
【ハイスクールD×Dの世界】にありもしないものを、【彼の世界】にありもしないものと比較することこそ、真に価値がない。だからこそ、“神様”は嘆息する。
『・・・・・・ところで、その悪趣味なマネキン人形、どうにかならんのかね?』
「マネキン人形? 馬鹿言うなよ。
最高の”椅子”じゃねぇか、なぁ、カーラワーナ、ミッテルト?」
カラスの羽根。
それと似た翼を持つ、二人の堕天使は。
少年の背を支え、尻を乗せる、”椅子”になっていた。
ゴシックロリィタを身にまとう少女は、少年の馬となり。
ボディコンスーツを身にまとう美女は、少年の背もたれとなり。
それぞれが少年の言葉に賛同するような言葉とともに、小さなうめき声を思わせる音を喉奥から鳴らし続けている。少年は満足げに二人の頬をなでると、二人もまた満悦に酔いしれているかのような表情で微笑む。
さきほどから、声の主はずっとこの調子だ。
「最高だな、兵藤一誠のオーラと大差はねぇけどよ。
別のチカラだったら、こうはできねーからな・・・・・・!」
『・・・・・・フン、調子がいいようでなによりだよ、貴様は。
そろそろ他の契約者の様子を伺わせてもらうぞ、私とて暇ではないのでな』
残りのアナザーウォッチを確認するように、”神様”は手持ちのアナザーウォッチすべてを使ってジャグリングをする。2000、2001、2002、2004、2005・・・・・・ひとつずつ、アナザーウォッチに刻印された数字を確認すると、安心したのかアナザーウォッチを煙に変える。
『新条大夜、――――【仮面ライダー
どうやらお前は、私を楽しませるには十分な
自らも煙に変え、ステンドグラスの輝きから逃れていく。
日本の地方都市には珍しい”教会”の壇上に座る声の主、新条大夜、あるいはアナザーオーズと呼ばれるべき少年を、黒い翼の女たちの嬌声だけが讃えていた。
なんかアナザージオウなる、ぶっとんだものが出てくるそうですな。
いやー・・・・・・アナザージオウどうしよう、出そうかな、出さない前提でプロット組んでたんだけどな。まあいいや、書こう。
毎回伏線になっちゃったものを地の文や台詞に仕込んだり、考察の余地があるものを用意したり、明らかに原作とはちがうキャラの反応をしているシーンを突っ込んでるのに、意外とみんな気が付かないっていうか、感想欄で返信するまで質問されないっていうか。
とりあえず感想欄の返信で伏線部分がどこかの解説をやってますけど、それ以外にも伏線に「なった」ものは多いんで、もうちょっと考察を楽しんでくれてもいいんじゃよ?
あ、そうだ。
投稿遅れました、今年もよろしくおねがいします。