病弱系女子の兄貴   作:坂本祐

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バイオre2ゾンビが硬すぎませんかねぇ…
タイラントも追跡者以上に追跡してくるし…
まあ、面白いけどそれ以上に無限ロケランが取れる気がしません。
てなわけで、2話目どうぞ。


突撃、沖田家に訪問!

人の往来が少ないとはいえ、道端で大の字になって爆睡していた青年、藤丸立花は現状に頭を悩ませていた。

 

目覚めたら知らぬ間にレイシフトしていたのだ。

 

最後にある記憶は、沖田が土方に無理矢理稽古に連れていかれたあと、体を休ませようと自室のベッドに入り、目を瞑ったところまでである。

 

アトラス院出身であるシオンの調整により、カルデアス及びレンズ・シバの代用品にトリスメギストスとペーパームーンを用いる事で、人理漂白以前の時間で発生した特異点へのみレイシフトも可能となったが、何らかの障害から勝手に作動した可能性もなきにしもあらず。

 

兎も角、レイシフトした先の時代は、沖田総司の義兄である沖田林太郎が生きていることを考えれば、江戸後期と考えられる。

 

だが、それは大した問題ではなかった。

 

というのも、寝ているうちにレイシフトすることなどカルデアで生活していたときは頻繁に遭遇していた立花に今更驚きはなく、最早日常的だったと言えてしまうため、焦りも戸惑いもなかった。

 

彼が頭を悩ませているのは、近くにサーヴァントがいないことと通信障害でカルデアに連絡できないことであった。

 

——知らない土地に放り出されるのは慣れっこだけど、僕以外誰もいないとなると寂しいな。まあ、沖田さんのお兄さんである林太郎さんに偶然会えただけでもまだ良かった。あとは、皆んなと通信出来ればいいんだけど…

 

沖田総司の義兄である沖田林太郎と偶然知り合えたのは僥倖であったが、通信機械のトラブルでカルデアに連絡が取れないのは予想だにしなかった痛手である。

 

連絡手段がない以上、通信機械のトラブルが解決するまで安全な場所に待機するのが得策だと結論付けた。

 

——今回も何かしら事件や問題があるに違いない。それを解決できたら戻れるかもしれないな

 

どのレイシフト先も何かしらの事件、問題があった。

 

それらを解決するとレイシフトから帰還することができたので、今回も同様に解決できればカルデアに帰還できるはずである。

 

しかし、それが何かは分からない。

 

時間が限られているわけではないので焦る必要はないものの、 マシュやサーヴァント達もこの場にいないため、護衛のない状態で動き回るのは危険すぎる。

 

人斬り辻斬りが横行する治安が悪かった幕末期の京都に放り出されるよりかは幾万もマシではあるが、それでも万が一のこともあるため用心したことに越したことはない。

 

——まあ、最悪、林太郎さんに頼み込んで居候させてもらおう…それにしても、この格好どうにかならないかな?

 

立花は己が纏う衣服に目を向けた。

 

今現在、彼はカルデアのマスター服ではなく紋付羽織袴を着用していた。

 

だが、全く身に覚えのない代物。

 

ご丁寧なことに藤丸家の家紋が入っている羽織と袴は汚れのない新品同然の状態であり、上質な素材で作られているのか手触りも良い。

現代の価値にすれば数十万はくだらないだろう。

 

カルデアのマスター服は、数百年先の未来の衣服であり江戸時代後期であるこの時代には不相応であり、代わりに紋付羽織袴であれば周囲から変な目で見られはしないだろうが、知らぬ間に衣服が変わっているのは些か気味悪いものの都合は良かった。

 

——とりあえず、今はこの状況を何とかしないとな

 

立花は、目の前の人物を順繰りに見流した。

 

向かい側に座るのは、寝ている自分を起こしてくれた人物である沖田林太郎。

 

短く切り揃えられた黒髪に、わずかに吊り上がった目つき、程よく鍛えられた肉体、そして老若男女虜にするであろう端正な顔立ち。

 

言葉遣いが少し悪く、若干近寄り難い雰囲気を纏っているものの、着流し姿で団扇を仰ぐ姿を見れば誰であれ見惚れてしまうだろう。

 

大人の色気と男らしさの塊のような人であった。

 

——沖田林太郎さんかぁ…やっぱりこの人、沖田さんのお兄さんだよね?だって、子供沖田さん目の前にいるんだもん。

 

心中で呟いた立花は、林太郎の膝の上に座る子供に目を移した。

 

其処には、幼い顔つきではあるが見慣れた女の子がいた。

 

沖田総司である。

 

立花の知る総司は、見た目が十代後半の少女であるが目の前にいる彼女は三歳くらいの幼女で、見慣れぬ人物が珍しいのか、総司は目を輝かせて立花を指差した。

 

その無垢で天真爛漫な姿は、幼い子供姿であっても変わらないようである。

 

「兄上、兄上!このかたは?」

 

「こいつは藤丸立花。うちの目の前で熟睡してた寝坊助さんだ」

 

「うちの前で寝てたの!?ねえねえ、藤丸さん!どうしてお家の前で寝てたの?帰る場所がなかったの?それとも眠かったから?

「こら、総司。お客様に無礼でしょう。すみません、藤丸さん。この子ったら、好奇心旺盛で口やかましくて…どうぞ、お冷です」

 

「あ、どうも…」

 

目を爛々に光らせて質問攻めをする幼い沖田を見兼ねた、台所から出てきた女性が叱りつけ、立花にお冷の入った湯呑みを手渡した。

 

差し出した人物に目を向ける。

 

立花と歳差も離れていない女性で、名を沖田ミツといった。

 

林太郎の家内であり、十二歳上の総司の実姉である。

 

ピンクがかったブロンド色の髪と人並み外れた可憐な容姿には、春に咲く桜のように老若男女問わずして人を魅了する美しさと儚さがある。

 

立花と視線が合うとミツはにっこり微笑んだ。

 

——多分、彼女が沖田さんのお姉のミツさん。綺麗な人だな。僕の知る沖田さんと同じくらいの年齢だと思うけど、でも違うのは腰まで伸びた長髪くらいかな?

 

姉妹だけあってミツは総司と瓜二つのように似ていた。

 

だが、髪の長さは異なるようで、ミツは腰まで届きそうな長髪である。

彼女が人妻なのもあるだろうが、仄かに香る白梅香と婉然と笑む姿には天真爛漫な沖田にはない大人の色気がある。

 

「それで?おめぇさん、どうしてあんなところに寝ていたんだい?」

 

「えっと、空腹で寝てしまったようです…」

 

無論、嘘である。

 

馬鹿正直に事の次第を吐露すれば、狂人扱いされてもおかしくないため、心苦しいが嘘を吐くことにした。

 

しかし、咄嗟に都合の良い嘘を考えつかなかったので、当然、林太郎は眉を顰めたが、立花の言葉を冗談として受け取ったらしく、大口を開いて笑い出した。

 

林太郎の膝の上に乗る総司も腹を抱えてきゃっきゃと笑っている。

 

どうやら笑いのツボが同じようだ。

 

「あっはっはっ、おめぇさん面白い奴だな。空腹で倒れて道端で眠るのかい?そのわりには、心地好さそうに寝てたじゃねぇか」

 

「藤丸さん面白ーい!どれだけお腹減ってても普通、道で寝たりしないよー!」

 

「いやー、お恥ずかしながら。空腹でも太陽の光の下で寝ていると心地よかったものですから…」

 

「そりゃあ、分からんこともないが。まあ、これ以上細かいことは訊かねぇが、腹が減ってんのなら飯をださねぇとな。おい、ミツ。何か出してやってくんねぇか?」

 

「いや!あの!お金とか持ってないんで結構ですよ!」

 

「馬鹿野郎、金なんていらねぇやい。道端で倒れるくらい腹減ってたんだろ?それに困ってるやつを見かけたら助けるのが人ってもんだ。なに、遠慮するな。うちの家内の飯は日の本一だからな!」

 

もう、貴方様。お客様の前でやめて下さい。

 

いいじゃねぇか。事実なんだからよ。

 

そうだとしても恥ずかしいことを口走らないで下さい

 

と新婚夫婦のような会話を繰り広げる林太郎夫妻は、立花の前で惚気と口の中が甘くなるような台詞を言い合っている。

 

当人の立花を置いてけぼりにして、自分たちの世界に入っていた。

 

今日出会った見ず知らずの人物に金を要求することなく善意でご飯を恵むというのだから、この青年は余程のお節介好きだろう。

 

困った人を見れば放って置けない質なのである。

 

そのため、彼を慕うものが数知れないのだ。

 

——ここで断れば、林太郎の善意を無下にしてしまう。素直に受け取ろう

「では、お言葉に甘えて…」

 

「あまり豪勢なものは出せないけど、それでいいのなら…」

 

「ありがとうございます!こちらこそすみません。いきなり上がり込んで、食事まで要求してしまって…」

 

「いいのよ。困った時はお互い様だもの」

 

ニッコリと笑うと、ミツは立ち上がって台所へと引っ込み、小さな茶碗にたくさん盛られた白米と自宅の庭で育てたであろう大根の漬物を立花の前に置いた。

 

林太郎とミツに礼を述べた立花は、粗相がないようにゆっくりと食べ始める。

 

すると、難しい話が一旦終わったのを感じ取ったのか、総司は林太郎に構って構ってと言わんばかりに戯れつき始め、林太郎も破顔させた。

 

此の場に黒ひげがいれば、幼女姿の彼女に興奮しただろうが、生憎、立花にはロリコンではないため興奮することなく、きゃっきゃっと笑っては林太郎の膝の上で戯れ付き甘える総司と目を細めて微笑む林太郎を生暖かい目で見守っていた。

 

——子供時代の沖田さんってあんな感じだったんだ。小さい頃は甘えん坊だったんだなぁ…それにしても、はたからみれば本当の親子のようだなぁ

食感の良い大根の漬物を咀嚼しながら、仲睦まじげに戯れ合う二人に立花はそんなことを感じていた。

 

「兄上、兄上!このあと剣の指導して下さい!」

 

「お?いいぞぉ…なら、このあと彦五郎のところに行くか。前よりどれくらい上達しているか見てやる」

 

「ふふふふ!この前のようにはいきませんよ!あれから私も上達したのです!兄上をうんと驚かせて差し上げます!」

 

「言ったなぁ〜。よし、それなら期待しているぞ。どうだ、おめぇさんも食後の運動として道場にいかねぇかい?」

 

林太郎は総司から目を離し、最後の一口を咀嚼していた立花に提案する。

 

立花は目をぱちくりとさせて嚥下すると、ゆっくりと口を開いた。

 

「ええ、お邪魔でなければ是非お伴します」

 

「よし、決まりだな。じゃあ早速、彦五郎の道場に行くか」




沖田総司(四歳)
言葉遣いがワカラン。とりあえず、子供っぽい感じにした。

ミツ(十六歳くらい)
この歳で結婚四年目に突入。クーデレ。
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